「米」由来のバイオエタノールを武器に、
農業振興や農産物の地域循環に貢献!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 髙橋 光二  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

無農薬・無化学肥料、ほのかな香りで
工業用エタノールの数十倍の付加価値
展開している事業の内容・特徴

20170427-1岩手県奥州市の休耕田を活用し、無農薬・無化学肥料で栽培された非食用品種米。この米のみを使い、高付加価値のバイオエタノールを製造し、自社オリジナル商品をプロデュースするほか、化粧品メーカーなどに供給している株式会社ファーメンステーション。

同社のオリジナル商品には、消臭スプレー「コメッシュ」や、石鹸「奥州サボン」、虫よけの「アウトドアスプレー」、福島産の桃の種とブレンドしたボディミルク「ピーチカーネル」などがある。これらの商品は、自社ECサイトのほか、セレクトショップやオーガニック系雑貨店、デパートの催事で販売している。

また、米を発酵させてバイオエタノールをつくる際にできる残渣の「もろみ粕」は、鶏のエサとして栄養満点で、奥州市のブランド養鶏農家に販売。その鶏卵「まっちゃんたまご」も大人気なのだという。

一般的なエタノールは鼻をツンとつくような刺激臭がするが、同社のバイオエタノールは、ほのかな吟醸香がする。そんな無農薬・無化学肥料による国産米を原料とし、完全にトレーサビリティ可能な安心・安全さが、取引先企業から、化粧品やアロマ剤の原料として重宝される要因となっている。

「化粧品の原料は油分と水分で、エタノールはそれらを中和する機能として使われています。このバイオエタノールは、化粧品の香りの邪魔をしない上に、肌につけても安全です。アウトドアスプレーは、赤ちゃんにも使えますよ」と代表取締役の酒井里奈氏。ちなみに、一般的な工業用エタノールは1リットルあたり数百円で取引されているが、「うちのバイオエタノールは、その数十倍以上の付加価値を認めていただいている」と胸を張る。

大口取引先の化粧品メーカーが、自社製品のコアなユーザーに原料米の産地ツアーを企画したところ、今では毎年大勢の熱心なファンが参加する人気企画となった。その産地でつくる食用米の購入にもつながるという副次効果も表れている。

農大で発酵を学び
「奥州市バイオエタノールプロジェクト」アドバイザーに就任
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170427-2酒井氏は、銀行に勤務していた1997年に、独立行政法人国際交流基金に出向する。NPO法が成立したその年、同基金の業務を通じて社会問題を解決するNPOの活動に魅力を感じたそうだ。その後、銀行に戻ってエネルギーに関するプロジェクトファイナンスに携わり、バイオマスや農産物の地域循環に興味を深めていった。

「こういった活動に取り組みたいとは思いつつも、無理なんだろうなと思っていた矢先、たまたま見ていたテレビで、ある農大の先生が『生ごみを発酵させて蒸留すればバイオエタノールができる』と。しかも『難しくない』と。これだ!と思いました。次の日に書店で関連書籍を買い込んだのですが、味噌や醤油も発酵で出来上がるでしょう。そんな取りかかりやすいイメージも手伝って、製造工程がなんとなくわかったような気がしたのです」

その直後に、東京農業大学で“高校生向け”のオープンキャンパスが行われていることを知り、“社会人”の酒井氏は足を運ぶ。そこで話を聞いた先生から「興味があるなら学べばいい」と背中を押され、なんと東京農大への入学を決意する。会社を辞めて、4年間、一学生として発酵を学ぶこととなったのだ。「入学した年に結婚しましたが、学費は夫に頼らず、自分の蓄えで賄いました」。

在籍した研究室には、米農家の新たな収入機会づくりに取り組む奥州市の自治体と農業グループがバイオエタノールの実証実験の相談に訪れていた。これが縁となって、酒井氏は大学卒業後の2009年に、ファーメンステーションを設立し「奥州市バイオエタノールプロジェクト」のアドバイザーに就任する。東京と岩手を足繁く通う生活が始まった。

「実証実験は廃業した酒蔵を借り、ミニプラントを設置して行ったのですが、大学の実験室よりはるかに大規模です。経験したことがなかったので、機械の選定や雑菌のコントロールなどに悩まされました。強風でシャッターが吹き飛ぶといったトラブルもありましたし、遠隔地とのコミュニケーションも厄介でしたね」

そんな苦労を重ねながらも、実証実験期間の3年間は、奥州市や農家、酒造会社などさまざまな立場の人たちの協力を得ることに注力。徐々に、安定した発酵技術の開発や、原料から製品までの地域循環の仕組みを確立させるなど、一定の成果を上げていくのである。

原料米の栽培からブランディングまで
“奥州モデル”を確立、エリア展開を推進
将来の展望

2013年4月、3年間の実証実験期間が終了する段階で、酒井氏はバイオエタノールづくりの事業継続を決意する。「誰かがやらなければ、実証実験のままで終わってしまいます。せっかく苦労した3年間が無駄になってしまう気がして、ならば自分がやろう、と思ったのです」。

その後が、さらに大変だった。拠点を移転させなければならず、さらに、事業者としてアルコール製造業免許を取得しなければならなかったからだ。ゆえに、当初の商品は免許不要の石鹸だけ。この一アイテムのわずかな利益と自己資金だけで、従業員や機械などのコストを賄わなければならなかったのだ。

「アドバイザーとして稼いだ貯蓄があったので『何とかなる』と甘い気持ちがあったと思います。でも、通帳の残高がどんどん減っていくプロセスはきついものがありましたね」

2013年秋、無事にアルコール製造業免許を取得し、同年10月にはバイオエタノールを初出荷。そこから少しずつ売り上げを増やしていったが、「その後3年間は赤字続きでした」と打ち明ける。2016年はほぼ収支トントンで、2017年度は黒字転換が確実なところまできた。今年度は、製造設備の増強に投資する。

そして、同社のオリジナル商品のロゴデザインやカタログ、ホームページなどを手伝ってくれたクリエイティブディレクターの友人を同社のメンバーとして、「クリエイティブ事業」もスタート。自社商品のブランディングにさらに注力しながら、これまで手がけてきたビジネスモデルを“奥州モデル”としてパッケージし、他エリアへの展開を推進していく計画だ。

「休耕田の再利用や農家の収入軸の拡大、副産物の地域循環など、メリットがたくさんあるビジネスモデルであると自負しています。今まで以上に頑張って、日本各地に広めていきたいですね」

株式会社ファーメンステーション
代表者:代表取締役 渡辺(酒井)里奈氏 設立:2009年7月
URL:http://www.fermenstation.jp スタッフ数:4名
事業内容:バイオマスソリューション事業、クリエイティブ事業

当記事の内容は 2017/04/27 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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