2-5-9. 新たな事業体制度・LLPの可能性を追求 後編

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

自分たちでビルドアップできるLLPの可能性は無限大

 昨 年スタートした、有限責任事業組合(LLP)制度。全国でもLLPの活用者が増えており、制度の浸透を裏づけているが、一方でまだまだ広がりに乏しく、地 域格差も大きいのが現状だ。どんな人や組織が、どのようにLLPを活用できるのか、またするべきなのか? 制度に詳しい(株)シンクの森祐治CEOに聞い た。今回は後編をお送りする。

バリューチェーンにも、ネットワークにも

――R&D型以外には、どんなパートナーシップが考えられるでしょう?

ひ とつは、「集まる」ことで相乗効果を生む、例えば個人運送業者が集った『赤帽』のような事業形態。必ずしも全国組織である必要はないでしょう。特定エリア の不動産屋さんが、安価に空き部屋情報を交換し合うといった形も考えられます。仕事の繁忙期・閑散期の落差が大きい土建屋さんのような業者がLLPをつく れば、取りこぼさずに仕事を受けられるかもしれません。これらは、“ネットワーク型”、“規模系”のLLPです。

 また、同じITでもハードとソフトのように、違う分野・業種の人間が集まってLLPをつくる場合もあるでしょう。こちらは、“バリューチェーン型”LLP。ネットワークとバリューチェーンの複合型というのも、もちろん考えられます。

――もう少し具体例を挙げていただけますか。

  都心部の住宅地などには、小さな高齢者住宅が密集している地域があります。こういう場合、例えば1区画の住民がLLPをつくり、そのLLPがマンションな りアパートなりを建てて、利益を配分するといった「事業」も可能なのではないでしょうか。不動産の売却には、やはりそれなりのコストが生じます。このやり 方なら、土地の登記変更の必要もないので、低コストで新たな価値を生むことができます。先ほど述べた知的財産もそうなのですが、すぐに評価するのが難しい 案件、評価しようとすると相応のコストが避けられない事案をとりあえず“ラッピング(包み込んで)”して、そこから価値や利益を生み出していくことが、 LLPには可能なのです。誤解を恐れず表現すれば、「転がすと面倒が生じるものをラップするのに、最良のツール」がLLPです。

 

“ビジネスプランコンテスト”を

――かなりユニークな活用の仕方ができそうですね。

 率直に言って、「具体的な活用例を」という質問には、答えにくい。なぜなら、「これがあるべきLLP」というのは存在しないと思うからです。言葉を変えれば、どう使うかは、使おうとする人間の考えしだい。そこにこそLLPの可能性があります。

  これまでは、特例の“1円起業”なども含めて、基本的に「お役所」のつくったルールに従い、お伺いを立てながら事業化を目指すという形でした。でも、 LLPは根本的に違う。自らが裁量権を持って、やりやすいようにビルドアップすることができる、非常に柔軟なツールなのです。

――柔軟すぎて、問題は生じませんか?

制 度を悪用しようとするのは論外として、個々の事業の具体化に当たっては、前例がないことを理由とする、さまざまな問題が発生するかもしれません。しかし、それ ぞれの事例が抱える問題を例えば裁判所の仲裁や調停に付してでも解決し、「前例」を積み重ね、発展させていくべきものだと考えます。

  経済産業省も、登記された事例を蓄積し、情報公開していく方針だと聞きます。民法上の組合などに比べ、透明性は高い。公開された情報をもとに、外部の人間 がアクセスし、活用することも容易です。それが当該LLPにとっても、より高い利益を生んでいく。こう考えると、LLPという発想はまさに「公共財」と言 えるでしょう。

――今後、さらにLLP制度を発展させていくためには、何が必要でしょうか?

柔 軟なツールをどのように使うのか、今は、その知恵を出し合う時期だと思います。「こんなのができた」という先進事例があれば、「それはいい」と、LLPの 裾野は加速度的に広がっていくはず。まずはケースを集めることが大事で、そのためには“ビジネスプランコンテスト”もいいのではないでしょうか。

 LLPの取り組みについても、どうしても都市部、特に東京中心になっているきらいが否めません。LLPに関する法務、税務関係の取り扱いなどについも、「地域格差」が指摘されていますが、そうした現状は1日も早く改める必要を感じます。 <了>

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