事業継承:Vol.3 M&Aによる継承のポイント・進め方

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

●はじめに

前回、前々回と親族内継承・親族外継承についてご説明しました。しかし、必ずしも親族内外に後継者がいるとは限りません。後継者がいなければ最悪、廃業するしかないというのがこれまでの現実的な対応でした。しかし、最近ではM&Aにより事業継承を図るという選択肢も増えてきました。M&Aとは「Mergers and Acquisitions=合併・買収」のことをいいますが、今回は、M&Aによる継承のポイント・進め方についてご説明します。

●M&Aによる継承のメリット・デメリット

田舎イメージ1 (メリット)
・事業成長の機会となる可能性がある
親族外継承は主に親族外の役員や従業員を後継者として事業継承を図っていくものですが、M&Aによる事業継承は、基本的には第三者への事業継承が前提となります。第三者が会社の業績や技術・ノウハウに魅力を感じ、事業を継承することになりますので、親族内継承や親族外継承では気付かなかった、または発揮しきれていなかった会社の強み・セールスポイントなどがこれを機会に明らかになり、第三者が事業を継承することにより、その強み・セールスポイントをさらに磨き上げ、会社の成長に繋がるケースもあります。

・経営者が創業者利益を獲得できる
中小企業のM&Aの手法としては、合併、事業譲渡、株式譲渡などが挙げられますが、株式譲渡により行われるケースが大半です。中小企業の特徴のひとつである「所有と経営の非分離」により、経営者が株式の全部若しくは大半を所有しているケースが多く、今後の設備投資などの理由によりこれまでに配当を行わず、利益が留保されたままの会社が多く見受けられます。しかし、株式譲渡の手法でM&Aを行う場合には、時価により売却することになりますので、経営者はこれまでに会社に留保していた利益分を含めた価額、つまり「創業者利益」として多額の金銭を得ることができます。

(デメリット)
・交渉が困難
M&Aはいわば「見合い結婚」のようなものです。事業継承の相手先をどこから、どうやって見つけてくるかということももちろん重要ですが、仮に候補先が見つかったとしても、買収金額をいくらにするか、現在の従業員の雇用をどの程度保証してくれるのか、などについては候補先との交渉となります。経営者側としては「なるべく高く売りたい」「従業員は100%雇用継続して欲しい」と思うでしょうし、候補先は「なるべく安く買いたい」「余剰の従業員は抱えたくない」と思うことでしょう。そうして交渉を重ねていくこととなりますが、その結果、破談に終わることもしばしばです。

・社内のモチベーションの低下
中小企業のM&Aが普及してきたとはいえ、「M&A」という言葉には依然としてマイナスイメージが付きまといます。「自分たちの会社が他人に買収されてしまう」という不安・不満からM&Aを機会に有能な役員・従業員が退職することもあります。また、マイナスイメージからくる不安・不満だけでなく、M&Aにより、それまで会社と関係のない第三者が経営者となるわけですから、M&Aを機に大幅な経営方針の変更を打ち出してくることもあります。経営方針を大幅に変更するということは、それまでの会社の文化・風土を否定することも含まれていますので、そのことに抵抗感を感じる役員・従業員のモチベーションが一気に低下する可能性も否定できません。
 

田舎イメージ2

●M&Aによる継承の進め方

 1.仲介業者の選定
普段から付き合いのある同業他社に売却を打診するケースもありますが、M&A仲介業者とアドバイザリー契約を締結して、買収候補先を見つけることから依頼するケースが一般的です。アドバイザリー契約を締結した後は、仲介業者は候補先を見つけるために、会社の経営状況の調査を行います。この時点で、買収希望価額や譲れない条件などをハッキリ伝えておく必要があります。

2.条件交渉
上記1で調査した情報をもとに、仲介業者は候補先を選定します。そして候補先が見つかると、双方に情報を開示し、交渉を進めるか否かの意思確認を行います。交渉を進めるか否かの意思決定をする際には社内の情報管理に注意する必要があります。M&Aは極秘事項です。この段階で会社がM&Aを検討していることを役員・従業員・取引先に情報が漏れてしまうと、悪い噂が広まり、最悪、破談に終わる可能性もあります。したがって、条件交渉は経営者のみ、もしくは本当に信頼できる役員を加えた数名で行う必要があります。
そして、候補先と買収価額、雇用面などの交渉を行うこととなります。

3.基本合意書の締結
上記2で合意が得られれば「基本合意書」を締結します。

4.デューデリジェンスの実施
基本合意の後には、デューデリジェンス、つまり買収監査が行われます。候補先が別途契約した公認会計士・税理士・弁護士等の専門家により財務・税務・法務などのあらゆる面で精査が行われます。この時点で明らかになった事実により、買収価額の修正などが行われますが、候補先に不信感を持たれ、最悪、破談に終わることのないよう、自社に都合の悪いことなど一切の隠し事はしてはいけません。

5.売買契約書の締結・決済(クロージング)
デューデリジェンス終了後、正式に売買契約書を締結し、クロージングと呼ばれる代金決済を行い、M&Aは完了します。
 

●最後に

 事業継承を検討する時期ですが、早いに越したことはありません。「自分が元気なうちは必要ない」と思っている経営者に限って、「もっと早めに手を打っておくべきだった」と後悔するケースが多いです。つまり、事業継承とは一朝一夕に片付けられるレベルの問題ではないのです。自分の愛する会社から離れたくないという気持ちも理解できますが、規模を問わず、会社は公器である以上、その存在を未来永劫保たなければいけません。そのためには一日も早く、事業継承を検討されることを強くお勧めします。

◆事業継承でよくあるトラブル。困ったケース。その3

 (M&Aによる継承)
地方で製造業を営むC社の経営者には後継者となる子息もおらず、役員・従業員の中にも後継者となりうる者はいませんでした。幸い、C社には高い技術力や大手取引業者からの高い信頼がありましたので、事業継承についても、会社引受先はすぐに見つかりました。事前交渉もスムーズに進み、あとは正式に調印するのみという段階で問題が発生しました。事前交渉がスムーズに行ったことで経営者の気が緩んだのでしょう。M&Aを進めている旨を役員に話してしまったのです。経営者にとっては良かれと思っていたことでも、聞かされた役員にとっては死活問題です。自身の将来に不安を抱いたその役員は、経営者に内緒で引受先の情報を得るために、金融機関や取引先に連絡を取るようになりました。情報が漏れたことにより大手取引業者との契約が打ち切られ、将来に不安を感じた技術者の退職が進むようになると、会社引受先も会社買収のメリットがなくなったとして、この話は破談に終わりました。M&Aは極秘事項です。社内での情報管理を怠ったために折角の良縁も破談に終わってしまうこともあるのです。

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