Vol.15 世界最大級!中国工商銀行のIPOに迫る

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
10月27日に香 港・上海市場に上場を果たした中国工商銀行の資金調達額が、これまで世界最大であったNTTドコモを抜き、世界最大級の219億ドルになったことで非常に 話題になっています。今回は、この中国工商銀行のIPOから「規模」に焦点をあてて見ていきたいと思います。

NTTドコモを抜き世界最大級となった中国工商銀行のIPO

  中国工商銀行の香港・上海市場へのIPOが資金調達額で世界最大級になるということで、世界中から注目を浴びています。これまでは1998年のNTTドコ モのIPOが世界最大級でした。

 中国工商銀行は、1984年に中国の中央銀行である中国人民銀行から分離・独立しました。中国の4大国有 商業銀行(工商銀行、中国銀行、建設銀行、農業銀行)の中で最大規模であり、2006年6月末時点で総資産が約130兆円あります。日本のメガバンクであ る三菱UFJフィナンシャルグループで総資産が約187兆円(2006年3月末)、みずほフィナンシャルグループが約149兆円(2006年3月末)、三 井住友フィナンシャルグループが約107兆円(2006年3月末)です。また日本国内で今年最大規模のIPOであるあおぞら銀行の総資産額が約6兆円で す。これらと比べても日本のメガバンク級の銀行がIPOすると考えれば、その規模の大きさが想像できると思います。

 また中国4大国有商業 銀行のうち、中国銀行、中国建設銀行そして中国工商銀行の3行が上場している香港証券取引所がその存在感を増しています。香港証券取引所はIBMのパソコ ン部門を買収したレノボ・グループが上場していることで有名ですが、2006年上期はIPOによる資金調達額がニューヨーク証券取引所を抜いて世界最大規 模となりました。ニューヨーク証券取引所は企業改革法による規制強化によって上場を回避する企業が多くなるなか、香港証券取引所はその立地のよさを利用し て中国本土の企業へ上場の誘致を進め、成功しています。

 

 

IPOに伴う資金調達上位10社

調達金額(億ドル)

調達時期

1

中国工商銀行(中国・銀行)

219

2006年

2

NTTドコモ(日本・通信)

181

1998年

3

エネル(イタリア・電力)

166

1999年

4

NTT(日本・通信)

137

1986年

5

ドイツテレコム(ドイツ・通信)

125

1996年

6

中国銀行(中国・銀行)

112

2006年

7

AT&Tワイヤレス(米国・通信)

106

2000年

8

ロスネフチ(ロシア・石油)

104

2006年

9

JR東日本(日本・鉄道)

99

1993年

10

テルストラ(豪州・通信)

98

1997年

(出 所:トムソンフィナンシャル)

 

民営化企業のIPOはいつも巨大

  日本国内においても大型IPOと言われた銘柄には国営企業が民営化した後のIPOが多いです。上述したNTTドコモに始まり、JR東日本(1993年上 場)、JR西日本(1996年上場)、JR東海(1997年上場)、JT(1994年上場)などがあげられます。

 今後国有企業などが民営 化し、IPOを目指している会社は、成田国際空港(2008年上場目標)、ゆうちょ銀行(2011年までに上場予定)、かんぽ生命保険(2011年までに 上場予定)、東京メトロ(2010年をめどに上場予定)があります。これらの企業のIPOも大規模な資金調達が行われるものと期待されています。

  国営企業が民営化後に行うIPOには特有の問題があります。当然ながらもとは国営企業であったので、これらの企業は国策上重要な役割を担っています。株式 を公開するということは、誰でも自由に公開会社の株式を購入する事ができます。これは日本の投資家だけではなく、当然に海外の投資家も自由に購入する事が できます。

 しかし、海外の投資家に買収されてしまっては国策上困る民営化後の公開会社も多数あります。そのため、一般の民間企業では認め られにくい買収防衛策、もしくは法律で一定割合以上株式が保有できないなどの規制が設けられていることが多いです(放送局などのように民間企業であっても 外資規制があるものもあります)。このような元国営企業に関わる買収防衛策や法令による規制は、少数株主の権利が損なわれる可能性があるばかりでなく、上 場子会社が親会社の意向によって経営が左右されるように、民営化後とはいえ国の政策によっては経営方針が大きく変更されるなどの可能性もあるといえます。

  上述した中国の商業銀行では、国が上場後も60%以上の株式を保有し続け、また、資本だけでなく人事権を握っていることを「リスク」と投資家からは認識さ れているようです。

 

逆に、もっとも小さい規模のIPOは?

 では逆 に、これまででもっとも小さい規模のIPO(日本国内)はどのような会社だったのでしょうか。

 下のランキングを見ると、福岡証券取引所が開設 する新興市場のQ-Boardに上場する会社が上位を占めています。1位のエムビーエスは独自の研磨技術とコーティング剤を使用する外装のリフォーム会社 です。上場直前期の業績は売上高が2億3300万円、経常利益が1100万円と売上規模、利益規模ともに非常に小規模です。上場後1年程度が経過していま すが、現在の時価総額は約11億円程度しかありません。

 このような小規模の企業でもIPOが可能となっている日本の新興市場ですが、最近 は新興企業による不祥事が相次いでいることから、新興市場のあり方が問われています。東証が現在ある東証1部、2部、マザーズの市場区分の見直しに着手し た、との報道がありました。

 また、今回の市場区分見直しのテーマとしては新興市場の再編も視野にあるのではともいわれています。東証は現 在ニューヨーク証券取引所との資本提携も含めた連携を検討しており、アジア地域の中心的な取引所になるべく検討を始めています。そのためには東証がマザー ズという不祥事の多い新興市場を保有せず、時価総額や好業績の大企業のみを上場させる国際的な取引所になるべきだ、という議論も出てきております。このよ うな議論から、近い将来IPOのハードルがあがり、下記のランキングのような小規模企業のIPOは難しくなる可能性があります。

 

 

IPOに伴う資金調達下位10社

調達金額(百万円)

調達時期

1

エムビーエス(福証Q-Board・建設)

56

2005年

2

TRUCK-ONE(福証Q-Board・卸売)

80

2006年

3

タイセイ(福証Q-Board・卸売)

96

2005年

4

エコミック(札証アンビシャス・情報通信)

96

2006年

5

プラネット(ジャスダック・サービス)

108

2004年

6

塩見(大証2・サービス)

120

2003年

7

新日本瓦斯(ジャスダック・電気ガス) 

167

1998年

8

東京貴宝(ジャスダック・卸売) 

175

1998年

9

ウィン(大証2・サービス)

176

1998年

10

アルファ・トレンド(札証アンビシャス・情報通信)

182

2004年

(プロジェクト・オーシャンLLP調 べ)

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める