価値を生み出す力

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

出題・解説:羽根 拓也(アクティブラーニングスクール代表)

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起業家に共通する資質に、「価値を生み出す力」がある。誰もそこに価値を見出せなかったところに、誰よりも早く価値を見出し、これを意味づけして、市場に出していく力だ。どうすればそのような力を身に付けることができるのか?カギは「視点移動」にある。

ト ム・ソーヤの話をご存じだろうか?トムはいたずらの罰として、ポリーおばさんにペンキ塗りを命じられる。せっかくの土曜日にペンキ塗りという不名誉な仕事 をおおせつかったトムは、なんとかこの仕事から逃れたいと思った。そして名案を思いつく。本来、つらくていやなはずのペンキ塗りなのに、楽しそうに口笛を 吹きながら始めたのだ。とおりかかった友達はトムを冷やかす。トムはお構いなしでご機嫌なままペンキを塗っている。

怪訝に思った友達は、 なぜ楽しそうなのか?と聞く。「なぜかって?ペンキ塗りって毎日できる仕事じゃないだろ?」。確かにペンキを塗る機会は少ない。友達は、あまりにも嬉しそ うなトムを見て、ついつい自分も塗らせてくれと頼み込む。トムはこれを断る。なお一層、興味を示した友達は、自分の持っている宝物と交換に塗らせてくれと 頼み込む。ならばと、トムはその宝物と交換に、「とっておき」のペンキ塗りという仕事を友達にやらせてあげる。やっとペンキ塗りという「価値ある」仕事を 手に入れた友達は、大喜びで仕事にとりかかる。それを見た他の友達も次々にペンキ塗りに加わっていく。

この話を聞くと、一見、トムはずるい ようにも思える。しかし、実際にはトムは人をだましているわけではない。自分の宝物まで差し出した仲間達は、皆、本当にペンキ塗りを楽しんだのだ。なぜ楽 しめたのか?それはトムがペンキ塗りに「新しい価値」を与えることに成功したからだ。その価値に共感したからこそ、仲間達は対価として労働力と宝物を支 払ったのだ。

ここに、起業家に必要な資質が隠されている。ペンキ塗りをそのままに見てしまうと大変な肉体労働である。しかし、見方 を変えると、ペンキ塗りは対価を払ってでもやりたい仕事になりうる。年に一度、いや、数年に一度しかないペンキ塗りは、子供にとっては名誉ある仕事であ り、面白みあふれる仕事なのだ。その意味付けをきちんと構築することができれば、肉体労働は100万ドルの価値ある商品に変わりうる。

ま だ、だれも価値を見出していない時に、そこに何かを見出す。そして、だれもが納得できる「意味」を構築し、「価値あるもの」に作り変えていく。これが「価 値を生み出す力」である。日常生活の中には、新しい価値を発見するヒントがたくさん転がっている。それを現実化するカギは「視点移動」にある。

例えば、目の前にお茶のペットボトルがあるとしよう。これは物理的視点からとらえると、紛れもなく「ペットボトル」であり「お茶」である。しかし、このペットボトルを違った視点から考察してみると、以下のようになる。

「たしか自分が子供の頃には、ペットボトルのお茶なんてなかったな。でも今、コンビニエンスストアの冷蔵庫はペットボトルのお茶が所狭しと並んでいる。それだけ売れるということなのだな。でも、なぜ今、こんなに売れているんだろう?」

考察の中に「なぜ?」を入れていくことが最初のカギだ。

「お小遣いでお茶を買って飲むことはしなかったけど、お茶は確かに毎日飲んでいた。需要はあったということだ。なるほど、需要はあるのだから、どうやれば売れるかを考えればよかったわけだ。」

「なぜ?」に対する理由を自分なりに導くこと。これが二つ目のカギになる。

そして最後に仕上げる。

「ということは、今、だれもがタダ同然で享受しているものの中に、売り方さえ考えれば、将来大きなビジネスに変わるものがあるかもしれない。」

こ うやって、視点を移動させながら、ある結論を導いていく。そして、この条件に該当するものを次々にリストアップしていき、その中で実現可能性が高く、自分 が興味をもてそうなものを、事業として検討してみるのである。そして、テーマを見つけたら、トム・ソーヤのように意味づけをしていくのである。新しい価値 の創造とは、この世の中に存在しなかったものを作り出すことだけではない。既存のものに新しい意味づけをしていくことでもあるのだ。

身の回りにヒントは無限にある。あなたの視点移動から、トム・ソーヤのペンキ塗りのような人気ビジネスが生まれること楽しみにしている。

 

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 【羽根 拓也 プロフィール】

日 本で塾・予備校の講師を勤めた後、1991年渡米。ペンシルバ大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカでも高い評価を受 け、94年、ハーバード大学より優秀指導賞(Certificate of Distinction in Teaching)受賞。「知識を与える教育」から、「自己成長力を向上させる教育」こそが、世界に求められていると考え、97年に東京に「アクティブ ラーニングスクール」を開校。これまで日本にはなかった「自己成長力」を育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。独自の教育理論とその指導 方法に、有名企業、政府関係機関、教育機関などより指導依頼が絶えない。

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