今だから言える、公庫融資が受けやすいタイミングってあるの!?

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執筆者: 矢野 覚 (やの さとる)

はじめまして、2022年7月1日にドリームゲートアドバイザーとしてデビューさせていただきましたLINK財務経営研究所の矢野覚と申します。

33年間、日本政策金融公庫国民生活事業(旧国民生活金融公庫)に勤務し、早期退職後、充電期間を経て、2020年2月に財務を基軸にしたコンサルティングファームを個人事業として立ち上げました。

長年、公庫に勤務した経験から、もしかしたら「資金調達のマメ知識」になるかもしれない「貸し手」の視点に立った情報を、私なりの意見や考え方を交えながらお伝えさせていただこうと思います。

はじめに ~リレーションシップバンキング(地域密着型金融の推進)~

起業を目指す方や経営者の方の多くは、資金調達(資金繰り)に関しては常に頭を悩ませている重要な課題だと思います。

また、金融機関に資金調達をお願いするのに、金融機関とどのように付き合えば、円滑に融資が受けられるのだろうか。そんな疑問をお持ちではないでしょうか。

大企業に比べて、中小企業・小規模事業者は、情報の非対象性(情報不足)が大きく、資本市場からの直接金融が困難な状況にあります。そのため、中小企業の資金調達は金融機関からの借入という間接金融がメインになっており、事業を継続するうえでは、金融機関との付き合いは避けて通ることができないと言っても過言ではないのです。なので、最初に金融機関側の中小企業等に対する基本的な在り方について少しだけ触れておきます。

およそ20年前の2003年3月、金融庁は、「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」を公表、地域金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することにより蓄積された情報をもとに、①貸出の審査コストの軽減、②信用リスクを適切に反映した貸出の実施や借手の業績が悪化した場合に適切な再生支援等が可能になる等、金融サービスの円滑な提供を目的としたビジネスモデルを立ち上げました。

地方銀行等の地域金融機関も、以前にも増してさらに企業に近くて親しみのある存在になったのではないかと思いますが、借り手側としては、やはり自社の業績に関する報告や新規融資、リスケといった相談・交渉に関しては、手の内を見せたくなくて身構えてしまうようにも感じています。

一方、日本政策金融公庫は、全国に152支店あります。国民生活事業だけの融資先数も117万先にのぼります。また決済機能(預金・為替業務)を有していないので、融資先とのきめ細かい関係構築には物理的にも難しい面があります。そのため、敷居が高いと感じられる経営者もいらっしゃるようです。

国民生活事業では、地域の商工会・商工会議所や税理士の先生方との連携を密に取るような活動もしておりますので、公庫資金の利用に関しては、そういった公庫の連携先に相談されるのも1つの方法だと思います。

日本政策金融公庫の正体 ~融資を受けるためには、ます公庫を知れ!~

ここからが本題。勝負に勝つためには、まず「敵を知れ!」です。「公庫とはどういう金融機関なのか」について説明します。

私の記憶の範囲では、かつて、日本には9つの公庫がありました。しかし、特殊法人改革等によって統廃合され、現在は「公庫」と名のつく政府系金融機関は、株式会社日本政策金融公庫と沖縄振興開発金融公庫の2つだけになりました。

公庫をはじめとする政府系金融機関は、特殊法人と言われ、政府が政策実現のために必要な事業を行うとき、通常の行政機関に担当させても能率的な経営を期待できない場合等に、特別の法律によって独立の法人を設け、国家的責任を担保できるように、できる限り経営の自主性と弾力性を認めて能率的経営を行わせようとする法人のことです。

株式会社日本政策金融公庫も「株式会社日本政策金融公庫法」という法律に基づいて設立された特殊法人です。2008年10月1日に国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫の3公庫が統合されて誕生しました。株式会社の形態をとっているのは、そのガバナンスの仕組みを活用して透明性の高い経営を行うことがねらいです。

私の経験からすれば、国の予算の執行機関である政府系金融機関は、基本的には政策実現のための予算消化に向けて融資の推進には積極的です。しかし、融資金が不良債権化して収支が悪化すると税金等による資金補填が必要となり、国民からの批判が強まるという側面もあるため、バランスのとれた業務の推進に取り組まなければならないのです。そのため、お申し込みいただいたすべての企業に希望どおりの融資を実行することは難しいといえます。

融資判断のポイント

融資審査を担当し始めた頃、先輩職員に融資判断をするうえでの基本は忘れるなと何度も何度も指導を受けていました。基本とは次の3つです。

  • 資金使途(資金の使い道)の妥当性
  • 返済能力(約束どおり返済してもらえるか)
  • 企業の持続性(融資期間内に潰れる心配はないか)

こうした観点から融資判断をしていますので、「公庫は申し込んでも満額貸して貰えない」といったご意見もときどき耳にしますが、この基本のどれかに当てはまらない課題があったのではないでしょうか。

資金使途による融資判断の違い

資金使途というのは、文字通り「融資を受けた資金の使い途は何か」ということです。妥当な事由をもつ適切な資金でないと、原則として金融機関は融資が難しくなります。資金使途は、大きく「運転資金」と「設備資金」の2つに分かれます。資金使途によって融資審査にも濃淡が生じます。その理由についてコンパクトに解説します。

(1)運転資金

運転資金とは、企業が事業を行う場合、一定の在庫を保有すること、売上金の回収までに時間がかかること等により、在庫の支払や経費の支払が先行して必要になりますので、そのギャップを埋めるために通常の営業活動のなかで必要となる資金のことです。運転資金は、その性質によりいくつかの種類に分類することができます、主な運転資金は次のとおりです。

正常運転資金

一般的には売上債権の回収より仕入債務の支払いが先行することが多いので、資金繰りが苦しくなります。その入金と支払の差だけ資金が必要となり、それを正常運転資金(経常運転資金)といいます。「正常運転資金」の範囲内の運転資金は、売上債権の回収により返済することができます。そのため、比較的融資は受けやすいといえます。

正常運転資金の必要額は以下の算式で計算することができます。

正常運転資金=売上債権(受取手形、売掛金等)+棚卸資産-仕入債務(支払手形、買掛金等)

増加運転資金

事業が拡大して売上高が増加した場合や、売上債権の回転期間が延びることで運転資金が増加することがあります。これを増加運転資金といいます。

増加運転資金も正常運転資金と同様、売上債権の回収により返済することができます。そのため、この資金も比較的融資は受けやすいといえます。

赤字補填資金

赤字補填資金は、赤字により不足する資金を補填することが目的の資金です。この資金は、利益から返済する事になるので、要利益償還債務といいます。

利益から返済しなければならないため、赤字が続けば返済する原資がないという状態が続いてしまいます。金融機関としては、どうしても融資には慎重にならざるを得ません。収益改善を進め、返済財源となる利益を確保することが実現可能であることを金融機関に理解して貰わなければ融資は難しくなります。実現可能性の高い損益見通しや収支見込みを金融機関に理解させる資料(事業計画)が重要になります。

(2)設備資金

売上の拡大や利益の増加を目的として、投資するための資金が設備資金です。

設備投資効果によりキャッシュフローがプラスになり、企業にとっては投資した資金の回収が進む一方で、金融機関がそのキャッシュフローから返済が可能であると判断すれば、金融機関から設備投資にかかる資金の調達ができます。

設備資金も投資により増加した利益が返済財源になるので、投資計画を策定し、利益が増えることを金融機関に説明し理解して貰う必要があります。

公庫融資が受けやすいタイミングはあるの?

正直に言って、融資が受けやすくなるタイミングはほぼないと思ってください。あくまで私見ですが、強いて言うなら、政府系金融機関の融資枠は国の単年度予算によって決められます。公庫は予算の執行機関なので、予算消化が使命であり、その進捗は大きくみると四半期毎に管理しています。もしかしたら四半期の締め月(6月、9月、12月、3月)が狙い目かも?・・・くらいです。

前述した正常運転資金、増加運転資金、投資効果の見込める設備資金といった資金は、財務内容等によほどの問題が無い限り、無理なく融資を受けることができると思います。

問題になるのは、赤字補填資金あるいは同じような性質、いわゆる後ろ向きの資金に関する融資判断の甘辛が申し込みのタイミングによって変わるのか否かだと思います。判断基準の幅が大きく拡大したり縮小したりすることはありませんが、予算消化の進捗によっては上述の締め月のタイミングが・・・でしょうか。

しかし、創業融資に限ってみると、公庫の創業支援への取り組みは、政策金融の執行機関としてのミッションですから、申し込みのタイミングによって融資判断がブレることはないといえます。金融機関(公庫)が納得できる実現可能な事業計画の策定が勝負なのです。

まとめ ~金融機関に貸したいと思わせる強い企業を目指せ!~

「貸すも親切、貸さぬも親切」です。金融機関がムリをして融資しても最終的にはデフォルト(返済不能)に陥るケースが多いです。公庫の性格上、全くデフォルトを発生させない融資判断が良いとは限りません。民間金融機関の補完的役割を担っているため、一定のリスクテイクは必要であり、コロナ禍における資金繰り支援や創業融資等のリスクの高い融資にも積極的に取り組んでいます。

私は、クライアント企業の経営者の方々に「金融機関に融資したいと思わせる強い企業を目指せ!」とお伝えしています。

公庫に限らず金融機関は積極的に融資したいと思っているのです。「必要なときに必要な資金調達ができる」資金繰りにあくせくしなくて済む強い企業になりましょう。そんな企業になるための支援。それがLINK財務経営研究所の目指す「財務のチカラでヒトとカイシャを元気にする」ことなのです。

 

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 矢野 覚

日本政策金融公庫で融資に長年携わってきた経験を活かし、今は資金調達における創業計画・事業計画の策定をサポートしている矢野アドバイザー。長年の知見による的確なアドバイスと丁寧な対応が特長的です。資金のお悩みだけでなく、経営改善についての相談もできる心強い味方です。

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