公庫のコロナ融資の返済が苦しい時にできる2つのこと

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 矢野 覚 (やの さとる)

LINK財務経営研究所、ドリームゲートアドバイザーの矢野覚です。

先日、公庫のコロナ融資の返済についても「コロナ借換保証制度」が利用できるのかという質問を受けました。残念ながら「コロナ借換保証」は民間金融機関のコロナ融資だけに対応できる制度であり、公庫のコロナ融資には適用できません

一方、公庫では、新型コロナウイルス感染症特別貸付等が20239月末まで延長されており、この融資制度を活用することができます。

公庫のコロナ融資の借換に関する質問が多いようなので、コラム第4弾として、「公庫のコロナ融資の返済が苦しい時にできること」についてお伝えさせていただきます。

公庫への返済が苦しい時にできる2つの方法

公庫のコロナ融資の返済が苦しい時にできることは、大きく分けると以下の2つになります。

  • 方法1 新型コロナウイルス感染症特別貸付等の融資制度を利用した借換により返済負担を軽減する
  • 方法2 既存の借入金の返済元金減額・元金返済猶予等の条件変更を利用する

方法1 新型コロナウイルス感染症特別貸付等の融資制度を利用した借換により返済負担を軽減する

新型コロナウイルス感染症特別貸付等の取扱いが20239月末まで延長されました。この融資制度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、最近の売上が一定程度減少している方または債務負担が重くなっている方が利用できます。

新型コロナウイルス感染症特別貸付について、日本公庫のHPに掲載されている情報を参考にしながら、その概要をまとめてみます。

なお、詳細については日本公庫のHPで確認してください。

融資対象者

融資対象者の要件は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的に業況悪化を来しており、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれることです。

また、一時的に業況悪化を来たしているとは、次の1か2に該当していることが要件になります。

1 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて売上高が以下のとおり減少している。

1)最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高が前5年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している。

2)業歴3ヵ月以上11ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少している。

ア 過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高

イ 令和元年12月の売上高

ウ 令和元年10月から12月の平均売上高

2 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて債務負担が重くなっている。

公庫のHPには、一定の要件を満たす必要があると注意書きされていますが、要件の詳細については記載がありませんので、取引のある公庫の支店に問い合わせをする必要があります。

債務負担が重くなる要因としては、利益の減少や資金収支の悪化等が考えられます。こうした事実が確認できる資料を準備しておく必要があると思います。

資金の使いみち

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする設備資金および運転資金

また、日本公庫のHPのQ&Aでは日本公庫の既存融資の借換えだけでも利用可能としています。借換日までの利息等は必要ですが、既存融資分の借換目的だけの資金としても利用できるようです。

融資限度額

8,000万円(別枠)

日本公庫の既存の融資制度を適用した貸付残高にかかわらず別枠で、8,000 万円が限度額です。

利率(年)

基準利率

ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは基準利率-0.9%と低減された金利が適用されます。ただし、4年目以降は災害発生時の融資制度に適用される基準利率になります。

返済期間

設備資金も運転資金も返済期間は20年以内です。うち元金据置期間は5年以内となっています。

運転資金の返済期間も最長20年になっていますので、毎月の返済負担は大きく減らすことができます。これは、新型コロナの影響からの回復には相当時間を要するという判断のもと、完済するまで毎月の返済負担を軽減する目的で超長期の返済期間を設定したのだろうと思われます。

担保・保証

担保:無担保

保証:保証人については、希望を聞きながら公庫と相談して決定

その他(参考情報)

参考情報として、日本公庫のHPに掲示されている「新型コロナウイルス感染症特別貸付等に関するQ&A」のポイントを抜粋して載せておきます。

① 現在ご利用中の方

直近での利用があっても、新型コロナウイルス感染症の影響により、資金繰りに影響が出た場合は相談できます。

② 創業して間もない方

創業後3ヵ月未満は、新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資は利用できません。

③ 返済が始まったばかりの方

創業時に融資を受け、返済が始まったばかりであっても、新型コロナウイルス感染症の影響により、資金繰りに影響が出た場合は、追加融資の相談ができます。

④ 実質無利子化・利子補給

特別利子補給制度は、2022年9月 30 日(金)の借入申込受付分までで取扱い終了となっています。

日本公庫 新型コロナウイルス感染症特別貸付

方法2 返済元金減額・返済猶予等の条件変更を利用する

延長になった新型コロナウイルス感染症特別貸付等の融資制度は、利用できる対象者がかなり幅広く設定されているようですので、この融資制度を活用した借換を検討することができると思いますが、それでも対象要件に該当しない方等は、条件変更を利用して返済負担を軽減することができます。

条件変更には、次の3つの方法があります。

① 一定期間、元金返済額を減額する

一定の期間、毎月の元金返済額を減額して返済負担を軽減し、その後元金返済額を増額する方法です。

② 一定期間、元金返済を据え置き(元金返済猶予)する

一定の期間、元金の支払いを据え置いて、その期間は利息だけを返済する方法です。

③ 返済期間を延ばして元金返済額を減額する

完済するまで毎月の元金返済額を減額して、その分返済期間を延長する方法です。業況の回復が見込めない場合には、この方法が有用になります。

条件変更の相談をする場合は、公庫から提出を求められなくても、経営者として経営改善計画書、少なくとも損益計画と資金収支計画(返済計画)は作成しておく必要があります。

その場しのぎの安易な条件変更は、単にツケの先送りにしかなりません。実現可能な返済計画をきちんと立てて、条件変更後も計画どおりに返済を続けていくことが大切なのです。

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まずは公庫に相談を

ここまで公庫のコロナ融資の返済が苦しい時にできることについて説明しました。ここで紹介した新型コロナウイルス感染症特別貸付以外にも新型コロナに関連したいくつかの融資制度がありますので、詳細については、日本公庫のHPで確認してください。

また、融資額、返済期間等については、融資審査のうえ個別対応になりますので、まずは取引のある公庫の支店や相談窓口へ問い合わせする等、公庫の担当者としっかり相談してください。公庫の担当者が親身になって相談に乗ってくれます。

経営者としての留意点

3年超の期間続いた新型コロナウイルス感染拡大の影響は、多くの企業の経営に大きな打撃を与えたことには疑う余地もなく、その回復にはかなりの時間を要することは間違いありません。

これから経営を立て直していくうえで大切なことは、経営者自身が主人公となって、実現可能な事業計画を作成し、主体的に経営改善に取り組むことです。国等が実施する様々な支援策は、あくまで経営改善のためのツールでしかありません。

経営者一人では、なかなか改善に取り組むことが難しい場合には、専門家の支援を受けることも必要です。

コロナ借換保証では、このドリームゲートのコラムでも紹介されている「経営行動計画書」の作成が求められており、作成に当たっては金融機関との対話等、金融機関による「伴走型支援」も要件になっています。これも金融の専門家として金融機関が中小企業の経営改善をサポートする役割を果たすことを期待しての施策です。

ドリームゲートのアドバイザーに相談することもその1つ。積極的に活用されることも経営改善の一助になると思います。

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お気軽にご相談ください

LINK財務経営研究所は、コロナ借換保証に限らず、銀行からの資金調達、条件変更等、資金繰り全般について対応可能ですので、お困り事があれば、ドリームゲートのメール相談(無料)を活用して遠慮なく相談してください。力になれることは、しっかり支援させていただきます。

 

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 矢野 覚

日本政策金融公庫で融資に長年携わってきた経験を活かし、今は資金調達における創業計画・事業計画の策定をサポートしている矢野アドバイザー。長年の知見による的確なアドバイスと丁寧な対応が特長的です。資金のお悩みだけでなく、経営改善についての相談もできる心強い味方です。

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