Vol.9 経営状況が早めにつかめて、業務拡大も加速化できるそのワケは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
前 回は、飲食店オーナーの会計業務の効率化事例をご紹介しました。経理担当者を置ける会社の場合でも、業務の効率化が求められるのは同様です。さらに、経営 に必要な財務データをタイムリーに取り出す必要も。そこで、今回はあるベンチャー企業の事例を、経営者のコメントを織り交ぜながらご紹介しましょう。

 

“モンスター”を知って起業を決意

 
  ITベンチャーの株式会社グロービズは、2つの大きな事業を手がけています。まずひとつは、ホームページの企画・制作、システム開発、運営サポートからイ ンターネット広告代理業まで行うソリューション事業、そしてもうひとつが、世界最大級のホームページテンプレート販売サイト 「TemplateMonster.com」の、日本語サイト「テンプレートモンスター ジャパン」の運営を行っています。
 同社は、2004年に大阪で創業されました。起業の経緯を、代表取締役の木嶋諭さんは次のように言います。

  「メーカー系のシステム会社でプログラマをしていた時、『TemplateMonster』を知ったのです。ホームページデザインのひな型が1万3000 種類くらいあって、毎日10個くらいずつ追加されていくんです。これはまさに“モンスター”だと思いました(笑)。この日本語版のサイトをぜひ手がけてみ たいと思ったのです」

 

当初はエクセルで管理

 そのコンテンツ事業でスタートし、翌年には早くも東京に営業所を開設するなど、グロービズのアーリーステージは順調でした。会計業務は、初年度は自ら行ったそうですが、翌2005年度の決算前からは税理士に手伝ってもらうようになりました。

 「最初の頃は、社員は2、3人と規模も小さく、エクセルで現金出納帳をつくって日々の売り上げ、経費を入力するだけで何とか管理していました。入力作業は、月1回にまとめて、3時間くらいかけて自分でやりましたよ」

 しかし、木嶋さんは、エクセルでは試算表はじめ損益計算書や貸借対照表がアウトプットできないことに問題を感じていました。

 

試算表のアウトプットがすぐにできた

 

  職業柄、起業前から木嶋さんは会計ソフトの存在は知っていましたが、いざ起業した時はエクセルで事足りると思っていたそうです。ところが、依頼した税理士 が会計ソフトを使っているのを見て、これならそれらの財務諸表がパッと出力できると再認識。価格も高くないし、さっそく自社にも取り入れてみようと思った そうです。

 「いざ使ってみると、月末や月初に、1カ月前の試算表をアウトプットしてチェックできるようになったのです。これは便利だと思 いました。それまでは、エクセルのデータを税理士に渡して試算表をつくってもらっていたのですが、出来上がってくるのに2カ月くらいかかっていたのです。 それが1カ月くらい早くなったのは、非常に大きいですね」

 

1カ月も早くチェックできるように

 急成長中の同社は、社員も増加の一途。何かとかかる経費のチェックやキャッシュフロー状況の把握は、早め早めに行う必要があります。それが1カ月以上も早くできるようになったことは、それだけ運転資金の手当てなど余裕をもってできることを意味します。

 「2006年4月から、以前、税理士事務所に勤めていた人を経理担当として採用しました。もちろん会計ソフトを使ってもらい、日々の入力はじめ、さまざまな分析資料をタイムリーにアウトプットさせています」

 

「後追い」の管理は危険

 このファーストナビ「業務のノウハウ」のVol.2で も説明しましたが、月末に1カ月分の伝票類を税理士などに渡し、試算表などのアウトプットの作成を依頼すると、上がってくるまでに2~4週間ほどのタイム ラグがあるのは普通です。それでは「後追い」で管理することになり、気づいた時には1週間前になって支払う現金が足りないことがわかり、最悪「倒産」とい う事態になりかねない、と読者の皆さんに注意を促しました。

 税理士に依頼するにしても、丸投げにするのではなく、自分でもキャッシュフ ローや資金繰りの状況を把握することは、経営者にとって極めて重要なことなのです。木嶋さんは、エクセルでの管理と、それを税理士に渡してからの時間のか かり方に問題意識を持たれていました。だからこそ、会計ソフトの機能を見た瞬間に、自社でも導入しようと思われたのでしょう。税理士や経理担当に任せきり にする「社長」が大勢いる中、木嶋さんは自ら業務を担当したことで、そのポイントにすばやく気付かれたのでしょう。

 

会計ソフトを使って簡単な経営分析も

  「決算前は、通期の収支を予測して『このままだと計画よりこれだけ足りそうもない』などと導き出し、仕事の獲得に力を入れるようにしていました。そのこと も、会計ソフトを使い始めてからは1カ月以上早く予測できるようになって、よりじっくり取り組めるようになりました。そんなメリットもありますね」

 さらに、税理士は会計ソフトを使って簡単な経営分析をしてくれるそうです。
 「具体的なデータを用いて財務状況について専門家からレクチャーしてもらうと、自社のアキレス腱がわかって非常にためになります」

 

「世界中で使われる日本発のソフトをつくりたい」

 今後の課題についても聞いてみました。
  「例えば、1人の担当者が複数のWebサイトの開発を同時並行で行う仕事について、案件ごとの業務管理をやりきれていません。開発料金は、どれだけ時間が かかったかということをベースに算定するので、ここをもっと精緻に把握できるようにしていきたい。それが経営管理の基本になると思うからです」

 知名度のある「TemplateMonster」を販売する仕事を通じて、いろいろな会社とつながりを持てたという木嶋さん。「いずれは『スカイプ』のように、世界中で使われる日本発のソフトをつくりたいですね」と夢を語ってくれました。

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