経営戦略 Vol.76 今「お試しサービス」が大人気。消費行動の変化で新たなビジネスチャンス。着目せよ!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 ここ最近、商品の購入やサービスの利用を決める際の「お試し」が本格化し、人気を呼んでいるようです。シューズやラケットなどのスポーツ用品、高級炊飯器で炊いたご飯、美容施設や飲食店を試せるポータルサイトまでが登場しています。こうした背景には「リアル」で選んで「ネットで買う」という消費行動の変化が見て取れます。マーケティングの発想に、ぜひこうした視点を加えたいものですね。

スポーツ用品を無料で試せる『XSPOT(クロスポット)』とは!?

 ここ最近、さまざまな「お試しサービス」がかなりの充実をみせているのをご存じでしょうか? 今年(2011年)7月、新横浜公園内にオープンした『XSPOT(クロスポット)』は、スポーツシューズや野球のバッド、テニスラケットなどなど、約250点にのぼるスポーツ用品を実質無料で試すことができる施設です。本人確認書類と、大人で3千円、高校・大学生2千円、中学生以下は200円をデポジットすれば、公園内のさまざまな施設で、レンタルしたスポーツ用品を使って2時間のスポーツが楽しめます。スポーツ好きなユーザーとしては、とてもありがたい施設ですよね。
 この施設を運営するのは、福島県郡山市にあるゼビオ株式会社というスポーツチェーンなのですが、「販売店」とは真逆に位置する「売らない店舗」の運営に、よくぞ踏み切ったものだと思います。これまでのビジネスの中核にあった「売る」という行為を完全に捨てた同社の潔さは、評価に値するでしょう。しかし、時流の読める経営者なら、この決断が賢いことがすぐにわかると思います。
 今どきの消費者たちは、リアル店舗で“現物確認”をした後、自宅へ戻ってすぐさまネット検索し、「一番安い店」もしくは「すぐに届く店」を選んで買い物をするのが普通です。ということは、高い家賃を払って立派なお店を構え、経験を積んだ店員さんが懇切丁寧に商品説明をしたとしても、そこでは「見るだけ」でお客さんは1円たりともお金を落としてくれないわけです。店舗経費のかからない分、安い価格で売れるネットショップにそのお客さんを取られてしまうのであれば、まさに本末転倒ですよね(――;) だったら「売らない」という選択も十分“アリ”でしょう。

高級炊飯器の賢い販促キャンペーン

 一方、パナソニックは、今年6月に発売した9万円ほどする高級炊飯器の販促キャンペーンに、ちょっとユニークな手法を取り入れました。全国で約100店舗の飲食店と提携し、その炊飯器で炊いたご飯を使ったメニューを提供してもらおうという企画です。これって、これまでありそうでなかった発想ですよね(*^_^*)
 これだけ高額の炊飯器を買うとなると、消費者心理としては、ぜひ「ご飯の味」を試したいところです。しかし一般的な家電ショップでは、それは叶いません。もちろん、専門のスタッフを派遣して、家電量販店などの店頭で炊いたご飯を味見してもらうキャンペーンを展開する選択もあったでしょうが、その経費をかけるなら、既存のお店と提携するほうがいいと判断したのでしょう。
この炊飯器を買おうかどうか検討している層は、「食」にこだわりを持っているアッパークラスのユーザーであることが予想されます。だったら、家電ショップの店頭で、使い捨て食器にちょこっと盛ったご飯を食べてもらうより、雰囲気のいい飲食店で、プロの料理と共に「銀シャリ」を味わってもらうほうがグッと印象も良くなるはず。さらに、その飲食店でこのまずっと同社の炊飯器を使ってもらえる可能性も出てきます。そう考えると、この戦略はかなり賢い選択だったと言えます。

お試しポータル『トライフィールコレクション』

 各種サービスのお試しには、『トライフィールコレクション』というポータルサイトが登場しています。通称『トラコレ』と呼ばれるこのサイトでは、グルメや美容系サロン、ホテル、はたまたスクールやスポーツジムなどが、平均70%OFFで試せるのです(@_@;) 「興味はあるけど、初めの一歩が踏み出せない」ユーザーのために、そっと背中を押してあげるような役割を担ったサイトです。利用は1回限りであることと、利用後のアンケートに答えることを条件にこの価格を実現しているのですが、「食」「美」「癒」「動学遊」のカテゴリーごとに、ショップやサロンばかりでなく、スクールなどとも提携を進めているので、将来的にはかなりおもしろいビジネスになるかもしれません。
それもこれも、背景にあるのは「リアルで選んでネットで買う」という消費者の行動変化です。今どきのユーザーがリアル店舗に求めているものは、まさに「お試し」なのです。だったら、あえてリアルでは売ろうとせずに、「体験してもらうこと」に特化したほうが得策かもしれませんね。マーケティングとは、消費者の行動や心理の変化に合わせて、常にブラッシュアップしていく必要があるものです。ぜひ、今回の事例を参考に、自社のビジネスモデルに磨きをかけてください(@^^)/~~~

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