Vol.4「特許権を使った安定収益確保モデルの構築」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

特許発明を使った商品を製造販売したいけど、自社だけでは市場を大きくできない場合にとり得る手段とは?

 特許権を取得すると、特許権の権利者はその特許発明の実施を独占することができます。  つまり、赤の他人が特許発明を実施している場合には、その行為を排除できます。

 それでは、ということで特許発明を使った商品を早速製造・販売します。他社が参入できないのでその商品を製造販売できるのは特許権者のみです。

 ところが、せっかく特許発明を使った商品を販売しても、製造販売する体力が十分になければ、市場の大きさも限られてしまいます。

 せっかくの特許発明なので他社の参入を防ぎたい、けれども自社だけでは市場形成に限界がある場合、どうしたらいいのでしょうか。

 そんなときは、特許権を他社にライセンス(実施許諾)して、他社の力を借りて製造販売することが一つの解決手段になります。。

 なぜ、iPhoneやiPadがあれだけ世界中で売れているかといえば、製品の良さはともかく、米アップル社が自社だけで製造販売するのではなく、台湾メーカー等に製造を委託(ライセンス)して大量に製造してもらうとともに、例えば日本ではソフトバンクやKDDIに販売を委託(ライセンス)する、といったことを行っているからです。

 こうして他社の力を借りることで、短期間であっても世界中に展開することができたのです。

 ライセンス契約することで、他社に特許発明品の製造・販売を許しても、実質的には自社で製造販売するかのごとく市場を形成することができます。

 

ライセンスによって収益を得るためのモデルとは?

 このように特許権を取得しても自社だけでは製造や販売が十分にできない場合、他の企業に製造販売を委託してその委託料(ライセンス料)を得るビジネスモデルとして他にはどのようなものがあるのでしょうか。

 例えば、創薬分野では、ベンチャー企業が大手製薬会社に製造販売をライセンスする、というケースがよく見られます。

 ただ、創薬ベンチャーが、大手製薬会社に新薬を売り込むためには、創薬であれば物質特許の取得、サプリメントであれば公知の成分を活用するための用途特許の取得が不可欠になります。さらに商品価値を高めていくためには、製剤特許等も取得してライセンス供与先以外の競合会社の参入障壁を固めておくことが重要になります。

 株式会社NRLファーマ(http://www.nrl-pharma.co.jp/)もそのような創薬ベンチャーの一つです。

 同社は、世界で初めて腸まで届いて溶ける腸溶性LF製剤の実用化に成功し、取得した特許権に基づきLFサプリメントとして自社販売を開始したところ、大手メーカーが、このサプリメントに注目。ライセンス契約を締結して大手メーカーもサプリメントの販売に乗り出しました。
 
その後、大手メーカーの営業力のおかげもありLFサプリメントの市場が拡大、ライセンス契約に基づく事業収入を継続的に得ることができました。
 
 なお、OEM(Original Equipment Manufacturing/ Manufacturer)は、メーカーが納入先の注文を受けて依頼主の名前で製品を製造すること、または、ある企業がメーカーに対して自社ブランド製品の製造を委託することであって、必ずしも特許権に基づく契約である必要がない点でライセンス契約とは異なります。
 

同業者同士で手を結んで得られる収益モデルもあります

一方、例えばFSテクニカル株式会社(http://www.fs-tec.co.jp/index1.html)は、別のライセンス方法により事業収入を得ています。

 同社は外壁の剥離落下防止用の機材や部品等を開発するメーカーです。  社員16名という小さな企業ながら、外壁改修補強工事において、高強度、合理化に優れた工法(FST工法)を生み出し、特許権を取得しました。

 このとき、同社は、自社だけでこの特許発明を独占するのではなく、ビジネスとして、このFST工法を展開することができないかを考えたようです。

 そこで考え出したのが、「FST工法工業会」という、専門技能者の育成とこれを可能にする組織です。会員には、この工法の実施を希望する同業者が名前を連ねます。

 このFST工法工業会は、FST工法の理論や技術を修得した職人だけが施工できる認定制度を導入したり、FST工法の職人の育成や工法実施の品質を確保したりする役目を果たしています。

 そのために、同社はFST工法工業会の会員企業に向けて、特許権をまとめてライセンスしています。また、FST工法の指導だけでなく、そのための会員向けに施工用の工具類をリースしたり関連部材を販売したりもしています。

 こうしてFST工法を自社で独占する代わりに同業者にも広めることで、FST工法の市場を拡大して収益を得るというビジネスモデルは、1回目のコラムに登場した株式会社テスクも同じです。

 

特許権で継続的な収益モデルを構築するとは?

 特許権を使った商品を自社のみで展開できれば、市場も利益も独占できます。でも、そこまでの体力がなければ、市場形成しないうちに終わってしまうリスクもあります。

 そのようなリスク回避の一つの手段であるライセンス契約では、特許権に基づき第三者に何を許容するか決めることが重要になります。許容範囲としては、特許発明の製造だけなのか販売だけなのか、それとも両方なのか、といった実施範囲や、日本全国なのか北海道だけなのか、といった実施場所や、5年間なのか10年間なのか、といった実施期間を決めます。

 通常、ライセンス料は売上高や工場出荷額の~数%程度なので、この金額が定期的に得られることになります。
 技術指導料、会費という名目で会員組織を作ることも同様ですね

 特許権をせっかく取得しても活用しきれないから、という理由で大事なお宝アイデアを眠らせていませんか。

  もしそうであれば、ライセンスというビジネスモデルをぜひ一度ご検討してみてはいかがでしょうか。

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