民事再生と破産のちがいは?スタートアップ経営者向けに徹底解説

この記事は専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

資金繰りの悪化で「このまま会社をたたむしかないのか」と悩んでいませんか?実は、破産以外にも民事再生という選択肢があり、事業を続けながら再建を目指せる可能性があります。

本記事では、倒産手続に詳しい専門家の知見をもとに、破産と民事再生のちがいを経営者目線で徹底解説。それぞれのメリット・デメリット、手続きの流れ、再建可能性の判断軸まで具体的にお伝えします。

経営判断に迷ったら、専門家への相談が不可欠です。ドリームゲートでは、倒産手続きや事業再生に詳しい専門家に無料で相談できます。あなたの状況に合わせた最適な選択肢を、一緒に見つけましょう。

- 目次 -

民事再生と破産のちがいとは?事業再建と清算の分岐点

再建を目指す手続きには、大きく分けて、私的整理と法的整理があります。そのなかでも今回は、法的整理に焦点を当てていきます。法的整理には、破産以外に民事再生という選択肢が存在します。
ここでは両者の本質的なちがいを理解し、自社に最適な道を見極めるための基礎知識を解説します。

民事再生法とは?会社を残して再建を目指す手続き

民事再生法は、経営が困難になった会社が事業を継続しながら債務を整理し、再建を目指す法的手続きです。裁判所の監督のもとで再生計画を作成し、債権者の同意を得ることで債務を減額できます。会社の経営権は原則として経営者に残るため、事業を続けながらの立て直しが可能です
過去には、スカイマーク株式会社が民事再生法を適用した例があります。再生後、経営状況は安定し、旅客需要の回復を追い風に2022年12月14日に東京証券取引所グロース市場に再上場を果たしました。

当社は 平成27年1月28日に東京地方裁判所に民事再生手続の開始を申し立て、同裁判所より、同日付けで監督命令の発令を受けるとともに、同年2月4日付けで再生手続開始決定の発令を受けました。

引用元:スカイマーク株式会社|民事再生手続きの終結のお知らせ(最終閲覧日2025年10月15日)

民事再生は一時的な資金繰り悪化でも、事業価値が残っている場合に有効な再建手段といえます。

破産手続とは?会社を清算して債務をリセットする方法

破産手続は、会社の財産をすべて換価処分し、債権者に配当して会社を消滅させる清算型の手続きです。事業の継続が不可能と判断された場合、裁判所が選任した破産管財人が会社の資産を売却し、得られた資金を債権者に分配します。手続き完了後、会社は法人格を失い消滅します
売上が完全に途絶え、資産より負債が大幅に上回る状態では、破産を選択するのが賢明です。再建の見込みがない場合、破産で法的に債務をリセットすることで、経営者が次のステップへ進めます。

民事再生と破産の決定的なちがい

民事再生と破産は、同じ法的整理なので官報に掲載され、信用が著しく損なわれる点は同様です。しかしながら、会社の存続・経営権・債務処理などの面で大きく異なります。選択を誤ると、再建できたはずの事業を失ったり、逆に清算すべき状況で時間と費用を浪費したりするリスクがあります。
民事再生と破産の主なちがいは次のとおりです。

項目 民事再生 破産
目的 事業・会社の再建(存続) 事業・会社の清算(消滅)
手続きの主体 経営陣が再建手続きを進行
※経営陣に著しい問題がある場合は、監査監督委員・再生管財人などの選任もあり
選任破産管財人が清算手続きを実施
債務の扱い 一部減免・分割返済により再建目指す(清算価値保証(※)により、債権者は破産時より多くの弁済を受けられるのが前提) 原則全額免除、財産換価で弁済
財産の扱い 一部財産を残すことが可能 原則すべて財産処分
事業活動 手続き中も事業継続可能 原則として停止(ただし譲渡可能な事業は続行)
債権者への対応 債権者と再建計画の調整 債権の種類に応じて優先順位に基づいて平等に弁済

※民事再生では、債権者への総弁済額が破産した場合の清算価値を下回ってはならないというルール

民事再生は会社や事業の存続を前提にしている一方、破産は原則として事業の消滅・清算を目的とします。また、債務者の資格や財産処分範囲、申立後の事業活動にも大きなちがいがあります。
メリット・デメリットを理解すれば、自社の状況に応じた最適な手続きを選択可能です。

個人と法人で異なる民事再生法の適用条件

民事再生法は、個人と法人で適用される手続きと要件が異なります。法人向けは通常の民事再生手続、個人向けはそれに加えて、簡易な小規模個人再生・給与所得者等再生手続があります
個人事業主の場合、債務総額や収入の安定性によって選択肢が変わるのがポイントです。

項目 民事再生手続き 小規模個人再生 給与所得者等再生
対象 主に法人・事業者 個人(自営業者・給与所得者含む) 主にサラリーマン・公務員など安定収入のある個人
利用条件 経営再建が可能なこと、債務超過等があること 住宅ローン以外の債務5,000万円以下、継続収入あり 同左+給与等の定期的収入があり変動幅が小さい
債権者の異議リスク 高い(採決必要) あり(過半数不同意で不認可) なし
弁済基準 再生計画に定めた割合で返済 最低弁済額 or 清算価値の高い方 最低弁済額 or 清算価値 or 可処分所得2年分のうち最高額
弁済期間 通常10年以内 原則3年(最長5年) 同左
職業制限 なし(法人含む) なし(自営業可) 給与所得者に限定

個人か法人かによって、利用できる民事再生の手続きが変わることを押さえておきましょう。

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スタートアップが民事再生を選ぶべき3つのケース

スタートアップが経営難に陥ったとき、すぐに破産を考える必要はありません。事業に価値が残っていれば、民事再生で再建できる可能性があります。技術力や顧客基盤など無形の資産が多い場合は、守りながら立て直すことも可能です。
ここでは、主要債権者の同意が得られないなどの理由のため、私的整理が利用できない場合において、民事再生を選ぶべき具体的な3つのケースを解説します。

ケース1:事業価値が残っているとき|技術や顧客基盤を守る選択

独自技術や顧客基盤などの事業価値が残っている場合、民事再生で資産を守りながら再建を目指すべきです。スタートアップの価値は、設備や在庫よりも技術・ノウハウ・顧客データにあります。民事再生で債務を整理しながら、築き上げた資産を活かして事業を継続できます
スタートアップの具体例としては、名古屋大学発のSyncMOF社があります。独自のAI技術を駆使した金属有機構造体(MOF)合成技術が注目されていたものの、経営上の意思決定の対立と資金繰りの悪化で民事再生を申請。

SyncMOF(株)(所在地:愛知県名古屋市千種区千種2-22-8、代表:畠岡潤一)は8月15日、名古屋地裁において再生手続き開始決定を受けた。

引用元:JC.net|民事再生開始決定 <名古屋> 名古屋大学発スタートアップ(最終閲覧日2025年10月16日)

SyncMOFは民事再生によって技術や顧客基盤などの無形資産を維持しつつ、新たなスポンサーを募り、事業継続と再建を目指しています。事業価値が残っていれば、民事再生は合理的な選択肢といえます。

ケース2:資金繰り悪化でも売上見込みがある場合の再建戦略

一時的な資金繰り悪化でも、将来的に売上回復の見込みがあれば民事再生で立て直せます。スタートアップは初期投資が大きく、収益化まで時間がかかる傾向があります。現時点で赤字でも、顧客獲得が進んでいれば将来的に黒字化する可能性もあるでしょう。
民事再生では、再生計画で将来的なキャッシュフローを示し、債権者の理解を得られれば手続きが可能です。たとえば、次のようにキャッシュフローを示せると、民事再生を利用しやすくなります。

  • 今後5年間の各年度に「売上2億円→経費1.5億円→税引後利益2,000万円→返済額900万円(各債権者へ分配)」などを数値で明示
  • 「再生計画成立後3年以内に経常利益を黒字化、5年以内に債務超過を解消」など数値目標を設定し、進捗を事業収支予測で裏付ける
  • 現状月次売上200万円に対して月100万円の赤字だが、半年後に月次売上500万円に到達する見込みがあり、民事再生を利用して債務を3年の分割返済に変更

「売上及び入金」「経費及び支出」「債務返済」「資金残高」をキャッシュフロー表で明示しましょう。事業改善や金融支援策を組み込むことで、債権者の理解と同意を得て民事再生手続きを進めやすくなります。

ケース3:スタートアップ特有の課題を抱えている場合

スタートアップ特有の課題を理解すれば、民事再生の可能性を正しく判断できます。スタートアップは担保となる固定資産が少なく、人的資本に依存する特徴があります。また、投資家や従業員との関係維持が再建の鍵です。
スタートアップ特有の課題で、民事再生につながる可能性があるものは以下のとおりです。

  • 固定資産が乏しく、担保にできる資産が少ないため、融資や資金調達がむずかしい
  • 経営者や主要メンバーの意見対立や離脱で意思決定が停滞しやすい
  • 多額の先行投資や研究開発費が必要であり、収益化までの資金繰りが厳しい
  • 投資家や従業員との信頼関係を維持できず、資金調達や人材確保が困難になる
  • 財務管理やガバナンス不足による、資金繰りの悪化・粉飾決算のリスク

課題に対応した計画を立てれば、スタートアップでも民事再生は実現可能です

会社更生法と民事再生法のちがい:中小企業向けの選択肢

会社更生法と民事再生法は、対象企業の規模と手続きの複雑さで大きく異なります。会社更生法は大企業向けの厳格な手続きで、経営権が管財人(※)に移ります。一方、民事再生法は中小企業やスタートアップでも利用しやすく、経営者が経営権を維持できることもある柔軟な制度です。

項目 会社更生法 民事再生法
対象 主に大規模な株式会社 中小企業、個人事業主、株式会社など幅広く適用可能
経営者の地位 管財人に経営権が移るため、現経営陣は退任が原則 現経営陣は原則そのまま経営を継続可能(裁判所の監督あり)
手続きの煩雑さ・期間 複雑で時間がかかり費用も高額 比較的簡便で迅速に進む傾向がある
債権者の同意 必要 必要(小規模個人再生では異議がある場合など)
株主の地位 多くの場合、権利が失われる 株主の権利は保持されることが多い
再建の主体 裁判所選任の管財人 現経営陣が主体的に再建を進める場合が多い

会社更生法は大規模企業の抜本的再建向きです。経営権が管財人に移るため経営陣は責任を免れる一方、手続きが複雑で長期化しがちです。スタートアップには私的整理または民事再生法が現実的な選択肢といえます。

※ 裁判所が選任し、破産者の財産を管理・売却・現金化して債権者に公平に配当する人

民事再生のメリット・デメリットを経営者視点で解説

民事再生と破産、どちらを選ぶべきか判断するには、それぞれのメリットとデメリットを理解する必要があります。法律用語だけでなく、経営者がじっさいに直面するコスト、時間、リスクの観点から解説します。

民事再生の5つのメリット|事業継続と債務圧縮の両立

民事再生には、事業を続けながら債務を大幅に圧縮できる大きなメリットがあります。破産とちがい、会社を清算せずに再建を目指すため、築き上げた事業価値を守れます。雇用維持や取引関係を継続できる可能性がある点も重要です。
民事再生の5つのメリットは次のとおりです。

  • 事業継続が可能:売上を上げながら債務を返済できる
  • 債務の大幅圧縮:債務総額の相当部分がカットされるケースあり(事案による)
  • 経営権の維持:経営者が引き続き会社を運営できることが多い
  • 従業員の雇用維持:主要メンバーを手放さずに済む
  • 信用の一部保全:取引先との関係を継続しやすい

上記のメリットにより、民事再生は「再スタート」を実現する現実的な選択肢となっているのです。

民事再生の3つのデメリット|費用と担保権者対応のリスク

民事再生には、高額な費用負担や担保権者への対応といった3つのデメリットがあります。

  • 借金が減っても税金がかかり(優遇税制で軽減される可能性がある)、手続き費用(裁判所への予納金、弁護士費用)もかかるのでお金が余計に必要になる
  • 民事再生中でも担保がある財産は差し押さえや競売にかけられる可能性がある
  • 手続きが公表され信用が下がり、取引が難しくなる可能性がある

手続きには弁護士費用や裁判所への予納金が必要で、中小企業でも数百万円かかります。また担保権者は手続き外で権利行使できるため、主要資産を失うリスクもあります。
官報公告などで手続きが公になるため、取引先や顧客からの信用が減少し、取引条件の悪化や新規取引先の獲得がむずかしくなる可能性もあるでしょう。デメリットを踏まえ、費用対効果を慎重に検討する必要があります。

破産手続のメリット|債務を法的にリセットできる利点

破産手続の最大のメリットは、すべての債務(個人の場合の公租公課を除く)を法的に清算できる点です。会社の資産を換価して債権者に配当したあと、残った債務は免責されます。民事再生のように長期の返済計画を遂行する必要がなく、手続き完了後は新たなスタートを切れるのが特徴です。
ほかにも、破産手続きには次のようなメリットがあります。

  • 破産手続きが開始されると、債権者からの取り立てや差し押さえが止まる
  • 破産後も最低限の生活に必要な財産は手元に残せる
  • 資金繰りに常に悩むストレスや精神的負担から解放される

再建不可能と判断した場合、破産で早期にリセットすることで次のステップへ進みやすくなります。

破産手続のデメリット|会社清算と信用喪失のリスク

破産手続のデメリットは、会社が消滅し、経営者の信用も大きく損なわれる点です。具体的には、次のようなデメリットがあります。

  • 財産を処分しなければならない(自宅や車などを失う可能性がある)
  • 信用情報に登録され、約5〜10年間は新しい借入やクレジットカード作成ができなくなる
  • 一部職業・資格に一時的な就業制限がかかる(弁護士・税理士・警備員など)
  • 保証人に借金の返済負担が生じる
  • 破産の事実が官報に掲載される

破産では会社の資産をすべて処分し、事業を停止します。従業員は解雇され、取引先との関係も断絶します。経営者個人が連帯保証している場合、個人破産も必要になる可能性があります。
一時的または限定的な影響が多いですが、信用回復や生活再建には長い期間を要することが注意点です。破産は最終手段であり、再建可能性がある限り避けるべき選択肢といえます。

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民事再生手続の流れ|申立から計画認可まで5ステップ

民事再生を検討する際、手続きの全体像を把握しておくことが重要です。どの段階で何をすべきか、どれくらいの期間がかかるのかを事前に理解すれば、専門家との相談もスムーズに進みます。
ここでは申立準備から計画遂行まで、民事再生手続の5つのステップを解説します。

ステップ1:申立準備で必要な書類

民事再生の申立には、さまざまな書類の作成が必須です。裁判所は会社の資産状況と債務総額を正確に把握する必要があるため、詳細な書類提出を求めます。準備段階が手続き全体の成否を左右します。申立に必要な書類は次のとおりです。

項目 書類名 内容
基本書類 再生手続開始申立書 民事再生の開始を裁判所に申請するための書類。申立人の情報や経緯・理由を記載。
保全処分申立書 財産の散逸防止など手続き進行中の資産保全措置を求める書類。
債権者一覧表 全債権者の氏名・住所・債権額・担保内容などを整理した一覧表。
財産目録 所有するすべての財産(現金・口座・不動産など)を記した書類。
貸借対照表および損益計算書 直近(通常3期分)の会社や事業の財務状況・経営成績を示す書類。
資金繰り表 過去1年分の実績と申立て後6か月分の予測を示す資金繰りまとめ。
法人の場合の追加書類 定款または寄附行為のコピー 会社の目的、組織運営に関する基本規則が記載された書類。設立時に作成。
登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 会社の登記情報の詳細を示す書類。法務局で取得可能。
取締役会議事録(民事再生申立の決議) 民事再生申立を決議した取締役会の議事録。手続き開始の正式な決定を記録。
株主名簿 株主の氏名・住所・株数などを一覧にした名簿。会社が管理。
就業規則及び労働協約 労働条件や規則を定めた書類。会社が作成・保管。
個人の場合の追加書類 住民票の写し 個人の現住所や世帯構成を証明する市区町村発行の書類。
収入証明書類(給与明細、源泉徴収票等) 給与明細や源泉徴収票など収入を証明する書類。勤務先などが発行。
家計収支表 収入と支出を一覧にまとめた表。申立人自身が作成。
表は横にスライドできます

書類は申立の根拠となる重要資料であり、正確な情報の提供が求められます。弁護士と協力して、抜けなく書類準備をすることが、円滑な手続き開始の鍵です。

ステップ2:裁判所への申立と手続開始決定までの期間

申立から手続開始決定まで、通常2週間程度かかります。裁判所は提出書類を精査し、再生手続を開始すべきか判断します。申立から手続開始決定までの具体的な流れは、次のとおりです。

  1. 裁判所に書類を提出し、裁判所に民事再生の申立てと保全処分申請をおこなう
  2. 裁判所で申立てが法的要件を満たすか審査し、通常1〜2週間で再生手続開始を決定
  3. 裁判所が監督委員を選任
  4. 開始決定後、債権者に通知され、債権者は債権届を提出

開始決定後、債権者への通知がおこなわれ、正式に手続きがスタートします。保全処分により債権者の強い取立てを防止しながら、手続きが進められるのがポイントです

※ 一時的に財産の処分を禁止したり、一定の行為を命じる暫定的な措置

ステップ3:再生計画案の作成と債権者への提出

手続開始後、再生計画案を作成し債権者に提出するまでが重要なフェーズです。再生計画案は「どのように債務を圧縮し、何年で返済するか」を具体的に示す書類で、債権者の賛同を得られるかが再生の成否を決めます

項目 内容説明
再生債権者の権利変更条項 再生債権(通常の借金)の元本減額や利息・遅延損害金の免除率、返済期間・返済方法の具体的内容。
共益債権および一般優先債権の弁済 税金や労働債権など優先的に支払う債権の弁済計画。
開始後債権に関する記載 再生手続開始後に発生した債権の内容と取り扱い方法。
不足額が確定していない別除権者の取り扱い 未確定の債権者の権利など、特殊な債権の取り扱いを定める。
弁済期間の設定 原則3年以内に返済する計画(特別事情があれば最長5年も可能)。
債務引受・保証・担保の規定 債務の引受や保証人、担保の提供などの特別な取り決め。
事業計画・経営再建に関する内容 今後の事業運営方針、収益見通し、倒産原因の分析や再建方法の計画。

提出期限は開始決定から3〜6か月以内。監督委員の助言を受けながら実現可能な計画を立てます。裁判所や債権者の同意を得るため、詳細かつ合理的な計画を立てることが重要です。

ステップ4:債権者集会での決議と裁判所の認可要件

債権者集会で再生計画案の決議を得たあと、裁判所の認可を受けて計画が確定します。民事再生では、債権者の過半数の同意(議決権額の2分の1以上)が必要です。裁判所は決議結果と計画の実現可能性を審査し、認可を判断します。
決議と認可の流れは次のとおりです。

  1. 債権者集会で計画案を説明(開催は1〜2回)
  2. 債権者による書面または集会での投票
  3. 裁判所による認可審査(2週間〜1か月)
  4. 認可決定の確定

裁判所は債権者集会を招集し、債権者は再生計画案に賛成か反対かの議決をおこないます。裁判所は債権者の決議の結果を踏まえ、再生計画の内容及び手続の適法性を審査し、認可の可否を決定します。
認可要件のポイントは以下のとおりです。

  • 債権者の賛成要件を満たしていること
  • 裁判所が将来の支払可能性を認めること
  • 不適切な申立てでないこと

認可されると再生計画は法的効力をもち、債務者は計画に沿って弁済を実施します。

ステップ5:計画遂行とモニタリング期間の注意点

認可後は再生計画を遂行し、定期的なモニタリングを受ける必要があります。裁判所が選任した監督委員が、計画進捗状況の定期的なチェックを実施。計画どおりに返済できなければ、手続きが廃止され破産に移行する可能性があるため注意が必要です
計画遂行中の注意点をおさえ、再生につなげましょう。

  • 定期的な報告(財務状況・返済状況)を怠らない
  • 返済期間は原則3年、最長5年まで延長可能だが、無理な延長設定は認可に悪影響
  • 財産状況や生活状況が変わった場合は速やかに裁判所に報告する
  • 監督委員や裁判所との連携を密にし、必要に応じて計画の見直しや申請をおこなう
  • 計画遂行状況が悪化した場合は原因分析し、追加対策や計画変更申立てを検討

完済後に手続きが終結し、通常の経営に戻ります。計画の着実な実行が、真の意味での再生につながります。

再建可能性を見極める4つの判断軸と診断チェックリスト

民事再生か破産のどちらを選ぶか。判断は感情ではなく、客観的なデータと分析に基づくべきです。ここでは、再建可能性を見極めるための4つの判断軸を提示します。それぞれの軸で自社の現状を評価すれば、「再生の可能性があるか」を自己診断できます。

判断軸1:キャッシュフロー予測と債務返済能力の現実

再建可能性の第一の判断軸は、将来のキャッシュフローで債務を返済できるかどうかです。民事再生では、圧縮後の債務を3〜5年で分割返済する必要があります。返済原資となるキャッシュフローが継続的に生み出せなければ、計画は実現不可能です。
具体的なチェック項目には、以下のようなものがあります。

  • 債務圧縮後の返済額が月次キャッシュフローの30%以内に収まるか
  • 売上高の見込み(向こう3年)と変動要因を分析し、収益の安定性を評価する
  • 人件費や家賃といった固定費を何%削減できるか
  • 既存の借入返済スケジュールと新たな返済計画との整合性を確認する
  • 事業計画に基づく将来的な利益見込と設備投資などの資金需要を考慮

月次・四半期ごとのキャッシュフローがマイナスで改善見込がない場合、民事再生はむずかしいでしょう。現実的な数値分析が、最適な選択の出発点となります。

判断軸2:事業モデルの市場競争力と成長余地の分析

第二の判断軸は、事業そのものに競争力と成長余地があるかどうかです。いくら債務を圧縮しても、事業が市場で競争力を失っていれば売上は回復しません。民事再生を成功させるには、事業価値が残っていることが前提です
以下のポイントで、競争力の有無をチェックしましょう。

  • 事業のコアバリューや強みの明確化(独自技術・ブランド力・顧客基盤など)
  • 競合他社との比較による市場シェアや競争優位性の評価
  • 成長市場や新規領域への参入可能性、拡大余地の見込み
  • 収益性の安定性と将来の収益予測、利益率の推移分析
  • 規制動向や社会環境の変化が事業に与える影響の評価

事業の競争力や将来性が不十分であれば、返済計画自体の実現可能性も低くなります。事業価値の客観的評価が、民事再生の成否を左右します。

判断軸3:債権者との交渉力と金融機関の協力度

第三の判断軸は、債権者から再生計画への賛同を得られるかどうかです。民事再生では債権者の過半数の同意が必要です。とくにメインバンクや主要取引先の協力が得られなければ、手続きは進みません。

  • メインバンクにリスケ経験があるか
  • 返済遅延の履歴がなく信頼関係が築けているか
  • 債権者構成が「少数の大口債権者」か「多数の小口債権者」か
  • 所有資産に担保権があるか

担保権者が資産の大半を押さえている場合、民事再生のメリットは限定的です。債権者との関係性が、手続き成功の重要な鍵となります。

判断軸4:スポンサー獲得や事業譲渡併用の可能性

第四の判断軸は、スポンサー企業の支援や事業譲渡との併用が可能かどうかです。自力での再建がむずかしい場合でも、スポンサー企業の資金・ノウハウ提供や、一部事業の譲渡による資金調達で民事再生が成功する可能性があります
スポンサー型の再生検討ポイントは、次のとおりです。

  • 業務提携先や投資家に支援の可能性があるか
  • 競合企業が事業・技術に興味を示す可能性はあるか
  • 収益部門と不採算部門を分離できるか
  • M&Aアドバイザーとのコネクションがあるか

不採算事業を売却して得た資金を再生計画の返済原資に充当するといった、事業譲渡を併用する方法も視野にいれましょう。外部支援の可能性も探ることで、再生の選択肢が広がります。

専門家相談前に準備すべきチェックポイント

民事再生や破産を検討する際、弁護士や税理士への相談は必須です。しかし事前準備なしに相談すると、専門家に丸投げになり、主体的な選択ができません。ここでは、専門家相談前に整理すべき5つのチェックポイントを解説します。

弁護士・税理士に聞くべき質問リストと費用相場

専門家への相談前に、聞くべき質問を整理し、費用相場を把握しておくことが重要です。漠然と相談すると時間を無駄にし、費用も不透明になります。質問を準備すれば、限られた相談時間で必要な情報を得られます。
たとえば、次のような質問を準備しておくとよいでしょう。

  • 手続きの全体的な流れは?
  • 申立てに必要な書類は何か?
  • 再生計画の策定や返済期間の目安は?
  • 住宅ローンや不動産を維持できるか?
  • 費用の内訳と支払いスケジュールは?

民事再生にかかる費用相場は次のとおりです。

支払先 費用 金額
弁護士 相談料 無料~10万円程度/30分
着手金 200~300万円程度
報酬金 200~300万円程度
裁判所 申立手数料 10万円程度
予納郵券代 2万円程度
官報公告費 13万円程度
個人再生委員の報酬 150~250万円程度(専任する場合)
表は横にスライドできます

民事再生手続きは大きな費用がかかります。専門家に早めに相談し、費用構造や手続き内容をしっかり把握したうえで進めることが大切です。

提出書類のベストな準備タイミング

民事再生や破産の申立には多数の書類が必要で、準備に1〜2か月かかります。裁判所が会社の財務状況を正確に把握できるよう、詳細な書類提出が必要です。直前に準備すると不備が生じ、手続きが遅れます。具体的なタイミングと準備の内容は次のとおりです。

タイミング 準備
申立ての2か月以上前 弁護士に相談し、申立てに必要な書類リストを確認し準備開始。会社の財務情報や登記簿謄本など基本書類の収集を進める。
申立ての1か月前 申立書や債権者一覧表、財産目録、決算書類、資金繰り表などの詳細資料の作成・整理に着手。
申立ての2週間前 申立て書類の最終チェックと弁護士との確認作業をおこない、不備がないか確認。
手続き開始後(約1~3か月以内) 再生計画案の資料作成や追加書類の提出に備え、必要な資料を随時更新・整備。

余裕をもったスケジュールを立てることで、書類の不備や遅延を防ぎ、スムーズな申立てと再生計画の策定が可能です。

従業員・債権者・家族への説明戦略と伝え方のコツ

民事再生や破産を決断したら、従業員・債権者・家族への説明が不可欠です。説明を怠ると、信頼を失い、手続きがスムーズに進みません。とくに従業員の離職や債権者の反発は、再建不能につながる重要な問題です。透明性のある説明が関係者の理解を得る鍵です。

  • 従業員への説明は、給料や退職金が優先的に支払われることを強調し、安心感を与える
  • 債権者には再生計画の具体的な返済見込みを示し、誠実に対応して信頼を築く
  • 家族には会社の現状とリスクを隠さず伝え、精神的なサポートを依頼する

大切なのは「誠実さ」「具体性」「前向きさ」です。丁寧な説明が、関係者の信頼と協力を得る基盤になります。

民事再生と破産の選択は再スタートの分岐点

民事再生は会社を残して債務を圧縮する再建型の手続きで、破産は会社を清算して債務をリセットする制度です。スタートアップでも事業価値が残っていれば、民事再生は十分に選択肢となります。
資金繰りの悪化は「終わり」ではなく「再スタートの分岐点」です。キャッシュフロー予測や事業競争力を冷静に分析し、早めに専門家へ相談しましょう。適切な選択が、あなたと家族、従業員の未来を守ります。今こそ、次のステージへの一歩を踏み出しましょう。
経営の選択に迷ったら、ドリームゲートの専門家に相談してみませんか。倒産・再生手続きに精通したアドバイザーが、あなたの状況に合わせた最適な道筋を一緒に考えます。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

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