会社経営に必要な法律 Vol.12 松下電器産業の製品事故から学ぶべきこと

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
先日、松下電器産業株式会社が2008年10月1日の予定で社名を「パナソニック株式会社」に変更することを発表しました。これはブランドを統一することにより、ブランドイメージを向上させることを目的としたものです。そこで今回は、これに関連して、法にのっとった対応により松下電器のブランドイメージの低下を免れた事例として、2007年5月に発生した松下電器の製品事故を例にとり、ベンチャー企業として注意すべきことについて説明します。

1.事案の概要

 2007年5月13日、東京都内の住宅で、松下電器産業が製造した電気コンロの電源が誤って入ったことが原因で、室内の一部が焼損する事故が発生しました。松下電器産業は、消費生活用製品安全法に基づき、この事故を経済産業省に報告しました。また、これを受けて、2007年6月6日、経済産業省は、松下電気産業が製造した電気コンロが原因の火災が過去に54件起きていたことを発表しました。
 このほか、2007年5月30日、松下電器産業は、電子レンジ・冷凍冷蔵庫・電気衣類乾燥機につき、発煙・発火のおそれがあるとして、該当製品の回収・修理を公表しました。対象製品は、1988年から2001年に製造・出荷した、計28機種・約305万台にのぼります。これらの製品については、2000年から2007年3月までに、23件の発火事故の報告があったとされています。

経済産業省「報道発表」
http://www.meti.go.jp/press/20070606001/20070606001.html
 

2.法律問題

 その松下電器産業の電気コンロに関する製品事故は、2007年5月14日に施行された消費生活用製品安全法の初めての適用事例となりました。消費生活用製品安全法は、消費生活用製品による一般消費者の生命・身体に対する危害の発生の防止を図るため、特定製品の製造・販売を規制することを目的とする法律です。
 一昨年2006年、パロマの瞬間湯沸器の欠陥による死亡事故など、重大な製品事故が相次ぎました。これら一連の事故では、行政に事故情報が報告されていないことにより、対応に遅れが出たことが指摘されていました。そこで、国は、製品事業者等に対して事故報告を義務付けるために、2006年消費生活用製品安全法の改正を行いました。
 改正法では、製造事業者に対して、重大な製品事故につき、主務大臣への報告を義務付けています。そして、この報告に基づき、主務大臣が必要と判断した場合には、事故情報が公表されます。
また、実際に製品を製造する事業者でなかったとしても、製品の小売販売事業者、修理事業者または設置工事事業者であれば、製品事故を知った場合には、製品の製造事業者や輸入事業者に、事故情報を通知するよう努めなければならないとされています。

経済産業省「消費生活用製品安全法のページ」
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/index.htm
 

3.この事件から何を学ぶべきか

 製品事故は、大手企業でもベンチャー企業でも関係なく問題となるものです。特に自社の製造した製品、自社のブランドを冠する製品などに重大な欠陥があるということは、大きなイメージダウンにつながります。そして、ベンチャー企業の場合、倒産につながりかねません。
 また、現在、企業に対してはコンプライアンス、言い換えれば法令順守が厳しく求められています。そして、消費生活用製品安全法においては、自社が製品の製造をしている場合だけでなく、小売販売を行っているような場合には、事故情報の通知をするよう努力が求められていますので、いずれにしても自社で製品を扱う場合には、その製品の欠陥について注意を払うことが必要です。
 結局、事業として製品を扱うベンチャー企業は、取り扱う製品に関する情報を把握し、製品事故を未然に防ぐ努力はもちろんのこと、製品に関する法律の規制内容を認識しておき、製品事故が発生したような場合、消費生活製品安全法に基づいて、きちんと報告ができるように体制を整えておくことが重要になるのです。

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