会社経営に必要な法律 Vol.17 「着うた」無断配信事件に学ぶ、著作権問題

法務・知的財産

執筆者: ドリームゲート事務局

2008年3月、株式会社ニワンゴは、同社が運営する動画共有投稿サービス「ニコニコ動画」上にアップされている著作権侵害動画に対する対応策を発表しました。その内容は、同サービス内における既存の著作権侵害放送番組動画はすべて削除することなどです。今回はこれと同様、著作権侵害に関する事例として、 2007年5月、「着うた」の違法配信により著作権を侵害した事業者が初めて逮捕されたというニュースを題材にベンチャー企業にとっての著作権に対する認識の重要性について説明します。

1.事案の概要

 2007 年5月14日、山口県警は、自己の管理するホームページ上で、「着うた」を、レコード会社に無断で配信した会社員を、著作権法違反(著作隣接権者としてのレコード製作者の送信可能化権の侵害)の疑いで逮捕しました。
この会社員は、2006年5月から携帯電話向けに音楽ファイルを無料でダウンロードできる掲示板を開設・運営し、レコード会社に無断で1000曲以上の楽曲をアップロードして、不特定多数がダウンロードできる状態にしていました。
エイベックス・エンタテインメント株式会社は、権利侵害を発見してから、会社員に対し3回にわたりHPの削除を求めたにもかかわらず、無断掲載が続けられていたため、告訴し、今回の逮捕につながったということです。
なお、着信メロディーの無断配信についての逮捕は過去にありますが、「着うた」の無断配信による逮捕は今回が初めてです。

日本レコード協会による発表
→ http://www.riaj.or.jp/release/2007/pr070514.html

IT media News 「着うた」無断配信
→ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0705/14/news069.html

ITmedia News 着信メロディー無断配信
→ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0611/27/news060.html
 

2.法律問題

 「着うた」の無断配信は、作曲と作詞者の著作権侵害が問題となり、実演家とレコード製作者との関係では、著作隣接権侵害が問題となります。「着メロ」では、メロディー自体の著作権者である作曲家の著作権侵害しか問題にならないことと比較すると、「着うた」は、多くの権利侵害が問題となるものです。
 今回の逮捕は、上のような「着うた」の多数の権利関係のうち、告訴者のエイベックス・エンタテインメント株式会社(レコード製作者)の著作隣接権のうちの送信可能化権の侵害を問題としたものです。
そもそも、著作権とはどのような権利なのでしょうか。著作権とは、著作物について著作者に認められる権利です。そして、この対象となる著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。
 また、著作隣接権とは、実演家、レコード製作者、放送事業者および有線放送事業者の利益を保護するための権利をいいます。そして、その事件の逮捕で問題となった「送信可能化権」とは、著作物を、端末からのアクセスに応じ、自動的に公衆に送信しうる状態に置く権利です。
このような著作権や著作隣接権を認めている著作権法に違反して、著作権等を侵害した場合の責任は、民事責任と刑事責任とに分けられます。民事責任としては、損害賠償請求や、差止請求がなされる可能性があります。また、刑事責任としては、原則として、懲役(10年以下)および罰金(個人の場合には1000万円以下、法人の場合には3億円以下)がそれぞれ規定されています。
なお、本記事における記述は、2007年7月1日から施行される改正法に基づくものです。

文化庁「著作権制度の概要」
→ http://www.bunka.go.jp/chosakuken/gaiyou.html

文化庁「著作権法の一部を改正する法律の制定について」(2007年7月1日に施行された新法についての解説です)
→ http://www.bunka.go.jp/chosakuken/18_houkaisei.html
 

3.ベンチャー企業として

 ベンチャー企業としては、この事件から何に気をつければよいのでしょうか。まず、著作権侵害の警告を受けながら違法行為を続けるということはないと思いますが、著作権侵害をわざとするのではなく、著作権法を知らないことにより、過失で著作権侵害をしてしまうがないように注意しなければなりません。
 著作権法の保護対象は、思いのほか広範囲にわたり、著作物には、芸術性などが求められるものではなく、例えば幼児が書いたような絵も著作物となるのです。このため、日常目にする多くのものには、何らかの著作権があります。しかも、企業の業務において、他者の表現物の利用は、日常的に行われています。そこで、例えば、サイトを開設している場合や、自社のパンフレットなどを作成する場合に、図画、音楽、文章などを利用する場合には、必ず権利関係を意識する必要があるのです。

 著作権法は、違反すると今回のように刑事事件ともなりえるし、罰金も多額です。また、著作権法違反という問題を引き起こすことにより、信用を失うおそれがあります。また、著作権については、近年の権利意識の高まりとともに、国も保護強化の方針を打ち出しています。

 そこで、ベンチャー企業にとっても、今後ますます著作権についての知識と認識が求められています。その反面、著作権に関する権利関係は、複雑でわかりにくいことが多いものです。そこで、気になることがある場合には、あいまいにせず、弁護士等の専門家に相談することが大切です。

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