融資5原則とは? 銀行取引を成功に導く基礎知識を起業のプロが大公開

この記事は2026/05/26に専門家 上野 光夫 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

製造業での起業を志す際、最新設備の導入や、工場の確保には多額の資金が必要となります。そのため、多くの方が銀行融資を検討しますが、審査の基準が分からず不安を感じることも珍しくありません。金融機関が何を基準に貸し出しを判断しているのか、その根底にあるのが融資5原則という考え方です。

本記事では、起業初心者が知っておくべき融資の基礎知識を分かりやすく解説し、成功への道筋を具体的に示します。

この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング/ 資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.融資5原則の概要とは? 3原則とのちがい

金融機関が融資を検討する際に、最も重要視する判断基準が「融資5原則」です。この原則は、銀行が預金者から預かった大切なお金を運用するにあたって、守るべき鉄則のようなものだと考えてください。

もともとは「安全性」「収益性」「流動性」という3原則が基本とされていました。しかし、時代の変化とともに企業の社会的責任や将来性が重視されるようになり、「公共性」と「成長性」を加えた5原則が現在の主流となっています。

3原則が「貸したお金が返ってくるか」という金融機関側のリスク管理に焦点を当てているのに対し、5原則は「その事業が社会に役立ち、将来的に発展するか」という広い視点を含んでいるのが特徴です。どんなに利益が出ていても、反社会的な活動に関わる事業や環境を破壊する事業には、公共性の観点から融資は実行されません。また、現時点での財務状況がよくても、将来の成長が見込めなければ、長期的な取引相手としては選ばれにくくなります。

はじめて起業する方にとって、これらの原則は非常にハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、銀行側も闇雲にきびしくしているわけではなく、事業の成功をともに願うパートナーとして、基準を設けているのです。

この5つの視点を理解して事業計画に反映させることで、担当者からの信頼を勝ち取り、スムーズな資金調達へとつなげることが可能になります。まずは、それぞれの項目がどのような意味を持ち、審査にどう影響するのかを整理していきましょう。

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2.融資5原則の詳細

融資5原則の各項目について、具体的な内容をくわしく見ていきましょう。これらを理解することは、銀行の担当者がどのような視点であなたの事業計画書を読んでいるかを知ることに直結します。

1)安全性の原則

安全性の原則とは、貸し出した資金が契約どおりに確実に回収できるかどうかを確認する基準です。金融機関にとって最大の懸念は、融資先が倒産して貸し倒れになることです。そのため、企業の自己資本比率や資産の状況、これまでの実績などを厳しくチェックします。

製造業の場合、設備の導入によってどれだけの負債を抱えるのか、その返済を支えるための安定した経営基盤があるかどうかが問われるでしょう。自己資金をどれだけ準備できているかも、この安全性を示す大きな指標となります。

2)公共性の原則

公共性の原則は、その事業が社会に貢献するものであるか、あるいは公序良俗に反していないかを判断するものです。銀行は社会的な公器としての側面を持つため、倫理的に問題がある事業への支援はおこないません。

地域経済の活性化や雇用の創出、環境保護への配慮などが含まれていると、高い評価を得やすくなります。製造業であれば、地元のサプライヤーとの連携や、優れた技術による社会課題の解決などが公共性を示す具体的なアピールポイントになります。

3)成長性の原則

成長性の原則は、その事業が将来にわたって拡大し、継続していく可能性を評価するものです。現在の数字だけでなく、3年後、5年後にどのような姿を目指しているのかが重視されます。市場のニーズを的確に捉えているか、競合他社にはない独自の強みがあるかといった点がポイントです。

とくに製造業では、技術革新のスピードが速いため、将来の市場変化にどう対応していくかという戦略的な視点が、融資判断における重要な加点要素となります。

4)収益性の原則

収益性の原則では、事業を通じて十分な利益を生み出し、利息を含めた返済を無理なくおこなえる能力を有しているかを判断します。どれほど素晴らしい理念を持っていても、利益が出なければ返済は滞ってしまいます。

売上高だけでなく、売上総利益や営業利益の推移、原価管理の徹底具合などがきびしく精査される項目です。確実な収益構造を証明するためには、実現可能性の高い売上予測と、それを裏付ける具体的な販売先や受注見通しを提示することが求められます。

5)流動性の原則

流動性の原則とは、必要なときに必要な現金を確保できているか、という支払い能力に関する基準です。利益が出ていても、手元の現金が不足して支払いができなくなる「勘定合って銭足らず」の状態は、黒字倒産のリスクをはらんでいます。

売掛金の回収サイクルや在庫の回転率、急な出費に対応できる資金繰りの余裕があるかがチェックされます。製造業は原材料の仕入れから製品の販売までに時間がかかるため、この流動性の管理がとくに重要視される傾向にあります。

3.企業の融資5原則への対応

融資5原則を理解したら、次は自社の事業においてどのように対応すべきかを具体的に考えていきましょう。銀行に対して「この企業なら安心して貸せる」と思わせるための準備が必要です。

1)安全性の原則への対応

安全性を高めるためには、財務体質の健全性をアピールすることが第一歩となります。起業時においては、可能な限り自己資金を積み増し、借入金に依存しすぎない計画を立てることが重要です。

また、万が一の事態に備えて、個人の資産状況や保証の有無についても整理しておきましょう。製造業の場合、導入する設備の資産価値や、その設備が将来的にどれだけの収益を生むのかを数値化して説明することで、担保価値や返済能力の裏付けとして機能させることができます。

2)公共性の原則への対応

公共性を具体化するには、自社の事業が地域や社会にどのようなよい影響を与えるのかを言語化してください。たとえば「地域の若手エンジニアを雇用し技術承継をおこなう」「環境負荷の低い製造プロセスを導入する」といった取り組みは、銀行にとって非常に好印象です。

これらを単なるスローガンに留めず、事業計画書の一部として明確に記載することが求められます。社会的な信用を得るために、法令遵守の姿勢や誠実な取引関係を維持する具体的なしくみについても言及しておくとよいでしょう。

3)成長性の原則への対応

成長性を証明するためには、徹底した市場分析と具体的な将来計画が必要です。客観的なデータを用いて、参入する市場が拡大傾向にあることや、自社の技術が既存の課題をどう解決するかを論理的に説明しましょう。

製造業であれば、特定のニッチ市場でシェアを獲得するシナリオや、新製品開発のロードマップを示すのが効果的です。また、経営者自身の経歴やスキルが事業の成長にどう寄与するのか、人的資源の面からも根拠を積み上げていくことが信頼の獲得につながります。

4)収益性の原則への対応

収益性を担保するためには、利益構造の見える化が欠かせません。原価計算を精密におこない、損益分岐点がどこにあるのかを明確に示す必要があります。とくに初期投資が大きい製造業では、減価償却費を考慮したうえでのキャッシュフロー計画が重要です。

単なる希望的観測ではなく、すでに内定している受注案件や、見込み客からの引き合い状況を具体的に提示してください。複数の収益シナリオを用意し、最悪のケースでも返済が滞らない工夫を見せることが、審査における説得力を高めます。

5)流動性の原則への対応

流動性を維持するためには、精緻な資金繰り表の作成が不可欠です。日々の現金出納を可視化し、いつ、いくらの支払いが発生するのかを正確に把握できる体制を整えましょう。

仕入れ代金の支払いと売掛金の回収時期にズレが生じる場合は、その期間を埋めるための運転資金をどう確保するか、明確な対策を練っておく必要があります。銀行に対して「資金管理が徹底されている」という印象を与えることができれば、不測の事態においても柔軟な支援を受けやすくなるメリットもあります。

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4.よくある質問

融資に関する疑問を解消しておくことで、より自信を持って金融機関との交渉に臨むことができます。起業家からよく寄せられる代表的な質問とその回答を確認しておきましょう。

1)融資5原則はすべて満たさないと融資は受けられないか

すべての原則を100点満点で満たす必要はありませんが、総合的な評価で合格点に達する必要があります。金融機関は各項目をバランスよく評価しますが、とくに「安全性」と「収益性」は貸し倒れを防ぐために重視される傾向にあります。

もし、起業直後で安全性の実績が乏しい場合は、ほかの要素である「成長性」や「公共性」でその不足を補うような説明が必要です。自社の強みを活かして、全体としての信頼スコアをいかに高めるかという戦略的な視点を持ってください。

2)成長性はどこまで具体的に示す必要があるか

単に「売上が右肩上がりになる」と述べるだけでは不十分です。その数字の根拠となる市場規模の推移、競合に対する優位性、具体的な販売チャネルなどをセットで提示してください。

製造業であれば、試作品の評価やターゲット層へのヒアリング結果など、客観的な裏付けがあると説得力が格段に増します。数字としての計画だけでなく、どのようなストーリーを経てその目標を達成するのかという過程を、担当者がイメージできるように伝えることが成功の鍵となります。

3)事業計画書はどの原則に影響するか

事業計画書は、実は融資5原則のすべてに関わってきます。将来の売上予測は「成長性」に、コスト管理と利益計画は「収益性」に、資金繰り計画は「流動性」に直結します。また、事業の理念や目的は「公共性」を示し、確実な返済プランは「安全性」を証明するものです。

つまり、事業計画書を丁寧に作りこむことは、5原則への対応を一つひとつ積み上げていく作業そのものだといえます。抜け漏れのない計画書を作成することで、銀行側のあらゆる懸念を払拭できます。

参考:事業計画書の書き方|テンプレート・記入例付きで融資に通る作り方を解説【元日本公庫融資課長監修】

4)金融機関ごとに重視する原則はちがうのか

基本的な枠組みは共通していますが、評価の重み付けは金融機関によって異なります。たとえば、日本政策金融公庫のような公的な機関は、創業支援や雇用創出といった「公共性」や「成長性」を比較的重視する傾向にあります。

一方で、民間銀行や信用金庫は、確実な返済能力である「安全性」や「収益性」をよりシビアにチェックすることが多いです。相談に行く相手の特性を理解したうえで、どのポイントを強調すべきかを柔軟に使い分けることが、賢い資金調達の立ち回りといえるでしょう。

5)はじめて融資を受ける場合、どの原則を優先すべきか

まずは「収益性」と「安全性」を固めることに集中してください。銀行が最も恐れるのは、貸したお金が戻ってこないことです。

まずは事業としてしっかり利益が出るしくみを証明し、自己資金を準備して安全性をアピールすることが、審査の土俵に乗るための最低条件となります。その土台が整ったうえで、事業の将来的な可能性を示す「成長性」や、社会的な意義を説く「公共性」を肉付けしていけば、融資の成功確率はよりいっそう高まっていきます。

5.創業融資の相談なら

起業に向けた資金調達や事業計画の作成で、一人で悩む必要はありません。専門的な知識を持つプロに相談することで、融資獲得の可能性を大きく広げることができます。

ドリームゲートでは、創業融資のプロに対して無料のメール相談をおこなえるしくみが整っています。自分だけで進めるのが不安な方や、具体的な書類の書き方に迷っている方は、ドリームゲートのサービスを積極的に活用して、起業の夢を確実に形にしていきましょう。

1)上野 光夫

元・日本政策金融公庫の融資課長という経歴を持ち、審査する側の視点を熟知した資金調達のスペシャリストです。現在はYouTubeチャンネル「上野光夫の起業と経営チャンネル」を運営し、7,000人以上の登録者に有益な情報を発信しています。

現場での豊富な経験に基づき、どうすれば審査に通る事業計画になるのかを、初心者にも分かりやすく論理的にアドバイスしてくれるため、はじめて融資に挑戦する方にとって非常に心強い存在です。

相談はこちら:https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/mmconsulting

2)中野 裕哲

ドリームゲートでの面談相談数で12年連続全国1位という、驚異的な実績を誇るアドバイザーです。経営全般に関する業務を一括してサポートできる体制を整えており、補助金や助成金の採択実績も600件を超えるなど、多角的な資金調達に精通しています。

膨大な相談事例から導き出される的確な助言は、起業家の不安を自信に変えてくれます。融資だけでなく、その後の経営を見据えたトータルな支援を求めている方に最適の専門家です。

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3)須田 幸宏

上野氏と同じく元・日本政策金融公庫の融資課長を務め、数多くの融資案件を執行してきた実績があります。現在はとくに東北地方の起業家支援に力を入れており、地域の経済状況に即した親身なアドバイスに定評があります。

金融機関の内部事情を知り尽くしているからこそできる、実効性の高い資金調達サポートが魅力です。資金面での悩みを抱える起業家に対し、優しく丁寧に寄り添いながら、成功へと導くための道筋をともに考えてくれます。

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執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
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