創業融資の据置期間とは? 設定のメリットと注意点を起業のプロが解説

この記事は2026/04/27に専門家 上野 光夫 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

新たな事業を立ち上げる際、多くの起業家が直面するのが資金繰りの壁ではないでしょうか。とくに創業直後は、売上が安定するまでに時間がかかるケースも珍しくありません。

せっかく融資を受けても、すぐに返済がはじまってしまうと、手元のキャッシュが底を突いてしまうリスクがあります。そこで重要になるのが、元金の返済を一定期間待ってもらえる据置期間というしくみです。

本記事では、創業融資における据置期間の基礎知識から設定する際のメリット、そして見落としがちな注意点までを専門家の視点でくわしく解説します。

この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング/ 資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.そもそも創業融資とは

創業融資とは、新たに事業をはじめる方や事業開始後間もない方を対象とした公的機関や金融機関による融資制度のことを指します。通常、実績のない新設法人や個人事業主が銀行から直接融資を受けるのは非常に困難です。

そのため、国が100%出資する日本政策金融公庫や、信用保証協会がバックアップする制度融資などが、起業家支援の目的で積極的に融資を提供しています。これらの融資は、事業を軌道に乗せるための貴重な原資となります。しかし、あくまで借入金であるため、決められたスケジュールに沿って確実に返済していく義務が生じる点を忘れてはいけません。

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2.据置期間の役割と期間

創業融資を検討する際、返済期間とセットで必ず確認すべき点が据置期間です。ここでは、その役割と具体的な期間について、プロの視点から掘り下げて説明します。

1)据置期間とは

据置期間とは、借入金の元金の支払いを猶予してもらい、利息のみを支払えばよい期間のことを指します。

たとえば、返済期間が10年で据置期間が1年という契約を結んだ場合、最初の1年間は毎月の利息だけを金融機関に払い、2年目から元金と利息を合わせた返済がスタートします。この制度があるおかげで、事業が赤字の状態であっても、キャッシュの流出を最小限におさえながら運営を続けることが可能になるのです。創業期はとくに支出が先行するため、この猶予が大きな助けとなります。

2)創業直後の資金繰りを楽にする

起業したばかりの時期は、広告宣伝費や設備の導入費用など、想定外の出費が重なることも少なくありません。また、システム開発をともなうITスタートアップや、在庫を抱える物販業などでは、現金が入ってくるまでに数ヶ月のラグが生じることも一般的です。

このような不安定な時期に元金の返済まで始まってしまうと、事業を拡大させるための投資に回すお金がなくなってしまいます。据置期間を適切に設定することで、手元に現金を残したまま、もっとも苦しい初期段階を乗り切ることができるようになります。

3)据置期間の期間

日本政策金融公庫の融資制度には、それぞれ据置期間の上限が定められています。主な制度ごとの特徴を見ていきましょう。

まず、多くの事業者が利用する一般貸付の場合、制度上の据置期間は通常2年以内(運転資金は1年以内)とされています。しかし、じっさいには半年から1年程度で設定されるケースが多いといえるでしょう。

次に、創業融資のメインとなる新規開業・スタートアップ支援資金については、より柔軟な対応が期待できます。この制度では、据置期間が最長で5年以内と設定されており、中長期的な視点で事業を育てる起業家にとって非常に有利な設計となっています。

さらに、売上の減少や、社会情勢の変化に対応するための経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)では、最長3年の据置期間が認められます。

もし据置期間を設けたいと考えているのであれば、基本的にはその制度の枠組みのなかで、最長期間を選択することをおすすめします。自分でどのくらいの期間にするか判断がつかない場合でも、日本公庫の担当者が事業計画書の内容を見ながら適切なアドバイスをしてくれるので、過度に心配する必要はありません。プロの意見を聞きながら、無理のない計画を立てることが肝要です。

4)返済シミュレーションをするとよい

据置期間を決める際には、必ず複数のパターンで返済シミュレーションをおこなってください。据置期間が終了した後に毎月の返済額がどのくらい増加するのかを数値で把握しておくことが、将来のキャッシュフロー管理に直結します。

据置期間中は楽であっても、その後の返済負担が重くなりすぎて事業が立ち行かなくなるようでは本末転倒です。予測される売上の推移と照らし合わせながら、何ヶ月目から元金を返していけるのかを論理的に導き出す作業を怠らないようにしましょう。

3.据置期間の注意点・デメリット

据置期間は非常に便利なしくみですが、決して万能ではありません。利用にあたっては相応のリスクやデメリットも存在することを、十分に理解しておく必要があります。ここでは、据置期間の注意点についてくわしく解説します。

1)利息総額が大きくなる

据置期間を設定することの最大の盲点は、支払う利息の総額が増えてしまうという点です。これは、利息が常に借入金の残高に対して発生するというしくみに基づいています。元金を一切返済していない据置期間中は、借入残高がまったく減りません。

つまり、元金の返済をはじめている場合とくらべて、高い利息が発生し続ける期間が長くなるわけです。金利が低いからと楽観視せず、最終的にいくら多く払うことになるのかを正確に計算しておく姿勢が求められます。この点を正しく理解していない経営者は多いため、注意が必要です。

参考:返済期間や方法で総返済額はどう変わる?【日本政策金融公庫の創業融資】

2)据置期間終了後は負担が大きくなる

据置期間が終わった後の毎月の支払額についても、警戒が必要です。融資の総返済期間はあらかじめ決まっているため、据置期間を長くすればするほど、残りの期間で元金を返さなければならないペースが速くなります。

たとえば、10年返済で1年の据置期間を設定すれば、残りの9年で全額を返済することになります。もし2年の据置期間を設定すれば、残りの8年で返さなければなりません。据置期間が終わった途端、毎月の支払いが急激に増えるため、そのタイミングで資金繰りが悪化するリスクを考慮に入れておくべきでしょう。

3)据置期間中は追加融資を受けづらい

ここがもっとも注意すべき項目となりますが、据置期間を長く設定しすぎると、追加の融資が受けづらくなるという弊害があります。金融機関が追加融資を判断する際の重要な指標のひとつに、返済実績があります。

これは、約束どおりに元金を返済し続けているかという信用度を測るものです。据置期間中は元金を返していないため、金融機関側から見れば、返済能力がまだ証明されていない状態とみなされます。事業を急拡大させるために途中で追加資金が必要になっても、実績がないことを理由に断られる可能性があることは覚悟しておくべきです。

4)好きなように設定できるわけではない

据置期間は、借主が希望すれば無条件で通るものではありません。あくまで金融機関が、事業計画書や収支予測を審査したうえで決定するものです。なぜその期間が必要なのか、その間にどのような事業展開をおこない、いつから返済が可能になるのかという合理的な根拠が求められます。

単に不安だから長くしたいという理由だけでは、審査の段階で見直されることもあるでしょう。計画の妥当性を示すことが、希望どおりの据置期間を勝ち取るための絶対条件となります。

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4.据置期間を設定した方がよい状況

デメリットがあるとはいえ、特定の状況下にある起業家にとっては据置期間が強力な武器になります。どのような場合に設定を検討すべきか、代表的な4つのパターンをご紹介します。

1)黒字化するまで時間がかかる

開発期間が長いITサービスや、認知度を上げるまでに時間を要する独自のビジネスモデルの場合、最初の数ヶ月から1年は赤字が続くことが予想されます。

このようなケースでは、最初から元金を返済しはじめると、自己資金を削りながら返済することになり、非常に危険な状態に陥ります。収支がプラスに転じるタイミングまで据置期間を設定し、資金的な余裕を持たせることが賢明な判断といえます。

2)仕入れが先行するビジネスモデル

小売業や製造業のように、先に材料や商品を仕入れ、その後の販売によって現金を得るビジネスも据置期間の活用が有効です。仕入れから現金回収までのサイクルが長い場合、手元の現金が常に不足しがちになります。

返済という現金の流出をおさえることで、その分を仕入れや広告費に回し、回転率を高める戦略をとることが可能になります。

3)固定費の比率が高い

店舗の家賃や従業員の給与など、売上の増減にかかわらず発生する固定費の比率が高いビジネスも、キャッシュフローが硬直化しやすい傾向にあります。そのため、売上が伸び悩んだときの安全網として、据置期間を設けておく意義は大きいです。固定費の支払いを優先し、事業基盤を固めるための時間を確保できます。

4)自己資金が少ない

潤沢な自己資金を用意できなかった場合、融資を受けた資金が生命線となります。元金の返済を遅らせることは、融資された現金をより長く手元に留めておくことと同義です。

不測の事態に備えるための現預金を少しでも多く維持したいのであれば、据置期間を長めに設定し、資金ショートの確率を極限まで下げることが重要です。

5.よくある質問

据置期間に関して、起業家から寄せられることの多い疑問に対して、専門的な視点でお答えします。

1)据置期間を最長で申請しても、審査に悪影響はありませんか?

据置期間を最長で申請したからといって、それが直接的に融資審査の合否を左右することはありません。むしろ、初期の資金繰りを慎重に考えている経営者として、一定の評価を得られることもあります。

ただし、計画では創業当初から十分な収益を見込んでいるのに「念のため据え置きをお願いしたい」というと、審査担当者は「この人は実は自信がないのかな?」と思う可能性があることに留意が必要です。
また、事業計画の内容と据置期間のバランスが取れていない場合は、担当者から期間の見直しを打診されることがあります。最長で申請することじたいはリスクではありませんが、認められないケースがあることは理解しておきましょう。

2)据置期間中に利息の支払いすらきびしい場合はどうすればいいですか?

残念ながら据置期間中であっても利息の支払いが免除されることはありません。元金の返済がない分負担は軽いですが、利息は毎月確実に引き落とされます。

もし利息の支払いすら困難な状況に陥った場合は、極めて深刻な経営難であるといえるでしょう。そうなる前に、事業計画の見直しや追加の経費削減など、根本的な経営改善に取り組む必要があります。

3)契約後に据置期間を伸ばすことはできますか?

融資の契約が完了した後に、当初の予定よりも据置期間を延長することは、原則として認められません。

一度決まった返済スケジュールを変更することは、リスケジュールと呼ばれ、金融機関にとってはリスク管理上の大きな問題となります。契約後に期間を延ばすのは非常にハードルが高いため、最初の契約時点で慎重に検討し、余裕を持った設定をしておくことが不可欠です。

6.創業融資の相談なら

創業融資のしくみや据置期間の判断は、専門知識がないと難しい部分が多々あります。1人で悩んで判断を誤る前に、経験豊富なプロフェッショナルに相談することを検討してみてください。

以下に、資金調達の分野で高い実績を持つアドバイザーを紹介します。

こちらの専門家へは、ドリームゲートの「創業融資のプロへの無料メール相談」でアドバイスがもらえますので、ぜひご活用ください。

1)上野 光夫

元・日本政策金融公庫の融資課長という、融資審査の裏側まで知り尽くしたスペシャリストです。現在はYouTubeチャンネルにおいて、登録者7,000人超の起業家に役立つ情報を発信しており、現場感覚に基づいた極めて具体的なアドバイスが期待できます。審査担当者がどこを見ているのかを的確に把握したい方にとって、これ以上ない相談相手となるでしょう。

https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/mmconsulting

2)川居 宗則

中小企業の融資支援実績が累計1万社を超える、資金調達のスペシャリストです。元メガバンクの支店長という立場から執筆した著書「元メガバンク支店長だから知っている
銀行融資の引き出し方」は、銀行融資のノウハウをまとめたバイブルとしてベストセラー1位を記録しました。銀行が何を基準に貸し出しを判断するのかを熟知しており、企業の成長ステージに合わせた最適な提案を得意としています。

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3)古寺 真浄

独立支援から資金調達、さらにはその後の営業支援や経営サポートまでを一貫しておこなうアドバイザーです。単に融資を通すだけでなく、事業が継続的に利益を生み出すためのしくみづくりを重視しています。起業家が直面するあらゆる悩みに寄り添い、多角的な視点から実効性の高いソリューションを提供してくれる頼もしい存在です。

https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/ibs001?advisor_field_id=

創業融資の据置期間は、経営者の心強い味方になります。しかし、その特性を十分に理解せず活用すると、かえって首を絞めることにもなりかねません。プロのアドバイスを受けながら、あなたの事業にとって最適な返済計画を立てていきましょう。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
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