2-5-8. 「LLP事例集」-土建屋魂LLP-

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

土建屋魂LLP

ブログを活用して若手経営者を支援 全国ネットを目指す建設業界初のLLP

厳しい経営環境を余儀なくされている土木業界。建設業の3代目である北山大志郎さんが2005年10月20日に立ち上げた「土建屋魂LLP」は、その厳しさを 乗り越えることを目的に、若手経営者に対して情報提供を行う場だ。会員となる若手経営者がブログを活用して、「経営指導」を受けたり、独自のノウハウをや りとりしたり。将来的には全国500人規模の会員ネットワークの構築を視野に入れる。自らのホームページで、「後継者にはなるな」と訴える北山さんに、大 きなプロジェクトのテストステージとしてのLLP設立の意義を語ってもらった。

各行政区域から会員を募集

Q:LLP設立の目的からお聞かせください。
 

A:

私 は、主として自治体発注の土木工事を請け負う建設業者の3代目なのですが、ひとことで言うと、同じ境遇、すなわち“土建屋の2代目・3代目”の全国的な ネットワークをつくって、お互いに助け合っていこうというのがLLP設立の趣旨なのです。ご承知のように、仕事は減る、単価は切り下げられるで、土木業界 を取り巻く環境は日々、厳しさを増しています。経済が右肩上がりだった親父の代の経営方法ではうまくいかないことがはっきりしているわけで、単なる「後継 ぎ」では先行きは暗い。われわれの世代ならではの発想で、ともに難局を乗り越えていきたい。具体的には、各社が持つ“隠れた”ノウハウなどを共有できたら いいなと考えています。

土木事業の場合、各都道府県が10程度の行政区分に分けられていて、それぞれのブロックごとに、その地域に属する業 者が入札に参加するという仕組みになっています。原則として、このブロックから1人ずつ「会員」を募ります。1人に限定するのは、ブロック内の業者はお互 いライバル関係にあるため、複数が入ると、お互い「自由にものが言えない」可能性があるから。全国に約500のブロックがあるので、会員目標は500名。 現在のところは、テストステージとして、約10名の会員を確保し、情報提供、情報交換の場を立ち上げていますが、3年後にはすべてのブロックを埋めたいと 考えています。

Q:どのような形で助け合うのですか?
 

A:

会 員には、「ブログ」への書き込みをお願いしています。仕事上の悩みや疑問を書いてもらえば、私が答えられる範囲でアドバイスもしますし、会員相互のやり取 りも可能。また、「ウチではこうやっている」「この方法を採用して成功した」といった情報も書き込んでもらうのです。いろいろな業種を元請が管理する一般 建築業と違って、土建業は従業員を丸ごと雇い入れています。常に生産性の向上を迫られるわけですが、半面、経営面で工夫の余地も大きくて、“その業者なら では”の技術やノウハウが蓄積されているのです。まだ始めて間もないですし、会員も10人たらずですけど、私自身、「そんな手があったのか」と気づかされ たことが何度もありますよ。「共有したいノウハウ」というのは、そういうことなのです。もちろん、ブログに書くのは身辺雑記のようなものでもOK。とにか く毎日書いてもらっています。

Q:利益はどのような形で確保していくのですか?
 

A:

会 員からは年会費として1万円を徴収しますが、これは「入会して、仲間と一緒に頑張っていこう」という意思確認のようなもので、会費で利益を得ようとは考え ていません。先行き考えているのは、“500のノウハウ”を本にできないかということ。業界は43万社といわれていますから、役立つ本ができればそれなり に「商売」になるはず。セミナーなどを開くことも、可能かもしれません。ただ、そこまでにはまだ時間がかかるでしょう。

今のところ、情報提供・交換の場を運営する組合員は、私と宮脇貴代之氏(ミヤシステム社長)の2人で、出資は5万円ずつ。本などを出版して利益が出た時には、ノウハウを提供してくれた会員への還元はきちんと行いたいと考えてます。

 

簡単に設立でき、宣伝効果も

Q:なぜ、LLPという形態を選んだのでしょう? そのメリットは?
A: 全 国の土木業界の人間と交流できないかという思いは、ずいぶん前からあったのですよ。先ほど述べたように、付き合いはどうしても同じブロックの人たちに限ら れがちだし、そうすると、お互いライバルということでなかなか本音を語り合ったりできない。97年には業界向けのホームページを立ち上げて、交流、情報交 換を呼びかけました。でも、「こういう媒体を探していた」「役に立った」という反応はチラホラとあったものの、思い描いていたような広がりにはなりません でした。だから、単にネットワークを組織するより、こうした事業体として活動したほうが、会員にも本気度が伝わりやすいとも考えたのです。

LLP の存在は、福井県初のLLP『あばさけ福井』(事例集2)の組合員になった知人に教えられて知りました。LLPのいいところは、ちゃんとした事業体なの に、設立が信じられないくらい簡単なこと。最初に法務局に行った時は、担当者から「LLP? 何それ?」っていう反応をされたのですが(笑)、そんな状態 からジャスト10日で登記の手続きが完了。利益を出しても組合自体には課税されないし、運営の自由度も高く、自分のやろうとしていることにピッタリな組織 だなと感じています。「建設業界初のLLP」ということで、業界紙のみならず一般紙などマスコミにも取り上げられ、宣伝効果もバッチリ。やはり個人で細々 とやるのとは違うな、と実感しています

Q:反対に、デメリットは感じませんか?
 

A: それはまったくないですね。LLP制度を活用すれば、社内起業なんかもスムーズにできるはず。どうしてみんなもっと活用しないのかと、疑問を感じるぐらい。問題といえば、認知度がまだまだ低いということでしょうか。

 

LLC(合同会社)化を展望

Q:今後、株式会社化するといった構想はありませんか?>

A: 株 式会社の予定はありませんが、2006年春施行予定の新会社法によって誕生する、LLC(合同会社)には興味を持っています。その場合、今のLLPを一旦 解散してもう一度作り直さなければなりませんが、LLCならば、例えば、支援してくれる大手企業などが現れた場合、その出資を受けることができますから。 ただ当面は、仲間を増やすことに全力投球です。今組織している会員の中でも、積極的に私たちの事業体に携わってくれる人がいるならば、組合員への勧誘も 行っていきたいなと考えています。

Q:将来の夢を聞かせてください。
 

A:

第 一の夢は、各行政区分を埋めていくことです。そうすれば、より多くの情報が集まり、会員の人たちにも有意義な情報を流すことができ、私たちのつながりもよ り強固なものになります。そして、まだ模索段階ですが、将来は、建設・土木以外の異業種、例えばネット業界などとのコラボレーションで、新規事業が創設で きないかと思っているのですよ。名実ともに全国規模の組織になれば、今まで考えつかなかったような異業種との交流が生まれるかもしれません。

ともあれ、わざわざ1万円というお金を払って入会してくれるのですから、このLLPには真面目で前向きな人たちが集うはず。ここで生まれたものを情報発信することで、業界全体を明るく、活気あるものにしたいですね。

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