出題･解説： 羽根 拓也（アクティブラーニングスクール代表）
起業できる人とできない人の違いは「思考回路」の違いにある。このコラムの第一回目（「問題を乗り越える思考パターン」を身に付ける）にそのお話をした。今回は、さらに深く突っ込んで、「不可能を可能にする思考術・巧妙思考」についてお話を進めてみたい。
なんとなく起業に興味を持っているが、まだ起業には至っていない。どうもこのままでいくと、起業という「夢」を楽しむだけで、実際に起業することはなさそうだ。そう思っている人へ！
おっ しゃるとおりである。もし、あなたが今までと同じやり方を続けるのなら、これからも同じ結果しか得られないだろう。起業する人と、しない人の違いは思考回路 の違いだ。今までと同じ思考法を続ける限り、起業はおろか、人生そのものにおいて、望むものを手にすることは難しい。
例えば、資金不足で起業が困難である場合、あなたならどんなふうに考えるだろうか？いくつかのパターンに分類して考察してみよう。
■正当派思考を持つ人
1. なぜ、起業できないのか？
2. お金がないからだ。
3. じゃあ、お金をためよう。
問題が発生したときに、いつもこんな前向きな思考ができる人は、まさに正統派！本気でそう考え、即座に行動にうつせるとしたら、そう遠くない時期に起業できるに違いない。
さて、次はどうだろう？
■逃避型思考を持つ人
1. なぜ起業できないのか？
2. お金がないからだ。
3. 起業は困難だ。
問題が発生したときに、いつもこんな「後向き」な思考をしてしまう人は、まさに「逃避型」、第一回でご説明した「萎縮へ向かう志向」の持ち主である。行動もしないうちからあきらめている人のだから、もちろん起業は無理である。
そこで、ここで「逃避型」をやめて、「正統派」に思考回路を変えようという「正統派」なアドバイスをするつもりはない。なぜなら、「逃避型」の思考回路を持つ人にそんなアドバイスをしても、
1. なぜ起業できないのか？
2. 逃避型思考を持っているからだ。
3. じゃあ、起業は無理だ。あきらめよう！
と「逃避」してしまうからだ。
では、「逃避型」の人は一生起業することはできないのか？いや、できる！むしろ逃避型っであるほうが有利に働き、さらには着実にビジネスも成長させていくことができるとっておきの思考法がある。
できないことを受け入れて、その上でできることを探る思考、アクティブラーニングではこれを「巧妙思考」と呼んでいる。例えば
■巧妙思考を持つ人
1. なぜ、起業ができないのか？
2. お金がないからだ。
3. だったら、お金がなくても起業できる方法はないか？
こ の思考法は、一見、単純であると思われたかもしれない。しかし、正統派の場合、直面した問題に対して袋小路に入ってしまって解決法が見出せなくなることが 多々ある。例えば、やりたい事業の規模が大きく、スタートアップ時に多額の資金調達が必要になったとする。もちろん、現実的には調達はたいへん厳しいもの となる。そのときに
1. なぜ、うちの両親は、莫大な遺産を残してくれなかったのか？
（残してくれたら起業資金にすることができたのに、、、。）
2. 両親も、祖父母も貧乏であったからだ。
3. 金持ちの家の子どもになればいい。
当 然、両親、祖父母を変えることはできない。「金持ちの養子になる」とかいろいろ方法論はあっても、現実的とはいえないだろう。もちろん、これは極端な例 だ。しかし、理屈の上では正しいようでも、現実的ではない。正統派の考え方は一つ間違えると、自分が発揮すべきパワーを非現実的な方向に向けてしまい、か えって虚しい回り道をする結果となりかねない。
そんな時、巧妙思考を持つ人は、こんな思考回路で解決を図ろうとする。
1. なぜ、うちの家族は僕に遺産を残してくれたなかったのか？
（残してくれたら起業資金にすることができたのに、、、。）
2. 両親も、祖父母も貧乏であったからだ。
3. だったらお金がなくても起業できる方法はないのか？
巧妙思考に死角はない。どんな問題に直面しても、その危機的な状態を否定せず、自分でできる解決法を探ろうとしているからだ。
私自身、この思考法のお陰で起業することができた。具体例を挙げてみよう。
1. なぜ、起業できないのだろうか？
2. 資金的余裕がないからだ。
3. だったらお金がなくても起業できる方法はないのか？
あった！資金的余裕がある人で、自分の事業に興味をもってくれそうな方にお会いし、お金を借りる依頼をしてみればどうかと考えたのだ。私はこの方法で、自己資金ゼロで資本金の1,000万円を集めることができた。
こんな思考法を持っていれば、起業前はもちろん、起業後も、多くの問題から自分を助けてくれる。ある日、自社の決算書を見つめながらこんな風に考えた。
1. なぜ、こんなに営業費が高くついたのか？
2. 広告費にお金がかかったからだ。
3. だったら広告費をかけなくてもできる営業はないのか？
あっ た！格安で人の多く集まるところに出て行き、無料で講演を引き受けるという方法だ。だれしもがよく知っている大会社が主催するイベントには多くの人が来 る。そこで無料で講演を引き受けるというのは、相手にとっても悪いことではない。何万人という人が参加するイベントで、アクティブラーニング流の体験型講 演を行うことになった。結果は大成功であった。翌日からその講演に参加した人、あるいは参加した人からの紹介で、問い合わせが殺到した。
問題が発生した時、できないからと「逃避」してはならない。そんなときは以下の公式を使ってあらゆる問題に挑戦していってほしい。
■巧妙思考の公式
1. なぜ、○○できないのか？
2. ○○がないからだ。
3. だったら、○○がなくてもできる方法はないのか？
実に単純かもしれないが、困ったときは思考が柔軟さを失ってしまうのが現実。この公式は、困ったとき、本当に解決法を見出せないとき、きっとあなたを助けてくれるはずだ。
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【羽根 拓也 プロフィール】 日 本で塾・予備校の講師を勤めた後、1991年渡米。ペンシルバ大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカでも高い評価を受 け、94年、ハーバード大学より優秀指導賞（Certificate of Distinction in Teaching）受賞。「知識を与える教育」から、「自己成長力を向上させる教育」こそが、世界に求められていると考え、97年に東京に「アクティブ ラーニングスクール」を開校。これまで日本にはなかった「自己成長力」を育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。独自の教育理論えおその指導 方法に、有名企業、政府関係機関、教育機関などより指導依頼が絶えない。 |
