起業のアイデアを150%進化させる、壁打ち式思考法

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 近田 侑吾 (ちかた ゆうご)

あなたは、自身が想い描く製品・サービスのアイデアはあっても、考えがあちこちに発散してまとまらなかったり、想いをうまく人に伝える形にできずモヤモヤしてしまったりした経験はないでしょうか。

そのような時は、一人で考え込むのではなく、誰かと対話しながら一緒に頭の中を整理することが有効です。私は、製品・サービスの開発をサポートするベンチャー企業を経営しながら、起業家のように個人で活動されている方から大企業にお勤めの方まで、色々な方を相手に、対話を通じた頭の中の整理をお手伝いしています。

私はこれを「壁打ち」と呼んでいます。壁打ちを受けると、事業アイデアのコンセプトをブラッシュアップしたり、新しいアイデアや気付きを見出したりできます。今回は、この壁打ちに関する話題をご提供したいと思います。

製品・サービスの開発に有効な思考法

まず、壁打ちの際に私が活用している思考法をご紹介したいと思います。それは、製品・サービスに関するニーズとシーズの情報を整理し、その関係性を見える化するといったものになります。ニーズとは顧客の要求のこと、シーズとは顧客に提供する製品・サービスの中に含まれる技術やノウハウのことだと思ってください。

壁打ちの際には、PC画面を共有しながら、ニーズとシーズに関する情報を文字にして並べていきます。この時、左側に近いほど本質的な目的に近い情報を書き、右側に近いほど具体的な手段に関する情報を書くようにします。つまり、製品・サービスに関する「Why/何のために?」と「How/どうやって?」を考える、ということがポイントとなります。

具体的な例として、「透明なマスク」というテーマについて考えてみましょう。

新型コロナウイルスの影響で我々の生活に欠かせない商品となったマスクの素材に透明なフィルムを用いたものをイメージしてください。この製品に関する情報を整理しながら、その魅力をブラッシュアップしてみましょう。

① 製品・サービスが解決できるニーズを考える

まず、「透明なマスク」や「フィルム」というシーズに関する情報を右の方に書きます。そして、これがどのようなニーズを解決しているのか、つまり、「透明である」という特徴についての「Why/何のために?」を考え、左側に情報を追加していきます。

透明であると、「口元を見せる」ことができます。そして、それには「口の動きが分かる」という効果があります。これが果たせる目的を考えると、「聴覚障害がある人と話がしたい」というニーズを解決できることが分かりました。

さらに、「口元を見せる」が何の役に立つかを他にも発想すると、「表情全体が見える」という効果があり、それにより「会話相手に安心感を与えたい」というニーズや「自分の顔を覚えてもらいたい」というニーズを解決できそうだと分かりました。同様に、「複数人の中で誰が話しているのか分かる」といったことも実現できるので、「多くの人が集まっても円滑に会話したい」といったニーズにも対応できそうだと分かりました。

② 課題を見つける

次は、マスク本来の機能である「飛沫の吸入・飛散を防止する」というニーズに注目し、その実現に向けて検討すべきことを整理してみましょう。この場合は、「How/どうやって?」を考え、想定される課題や用いる手段に関する情報を右側に追加していきます。

「飛沫の吸入・飛散を防止する」の実現方法を考えると、「顔とマスクの間に隙間を作らない」ことが必須であり、そのため製品には「耳掛け紐」が要るということが整理できました。さらに、「顔とマスクの間に隙間を作らない」ためには、マスクのフィルムは「柔らかい」ものでないといけない、ということが明らかになりました。

また、「顔とマスクの間に隙間を作らない」と「透明である」という二つの情報に注目すると、フィルムが曇るという問題が発生する可能性に気付きます。つまり、「フィルムを曇らせない」という課題があることも明らかになりました。課題の解決手段をその場で思い付かない場合には、調査が必要になります。今回は、解決手段として、「フィルムを曇らせない」という機能を持った「コーティング」をフィルムに施すことにしました。

③ 製品・サービスのコンセプトをブラッシュアップする

最後に、製品のコンセプト全体を見直してみましょう。例えば、今回の検討で出てきた「多くの人が集まっても円滑に会話したい」と「飛沫の吸入・飛散を防止する」という情報を組み合わせると、「ウイルスの感染拡大に対策した対面の会議空間を実現したい」というニーズに統合することができそうです。「透明なマスクがあります」と宣伝するより、「ウイルスの感染拡大に対策した対面の会議空間を実現します」と宣伝した方が具体的な興味や購入動機を持ってくれる顧客を多く獲得できることは明白でしょう。

このようなコンセプトが決まれば、そのために必要となる他の機能やアイデアも追加で出てきます。例えば、「室内を換気する」や「会議参加者の体調をチェックする」といったことも同時にできるように、「空気清浄機」や「検温器」をマスクとセットにして展開してみても面白いのではないでしょうか。このように考えていくことで、扱う製品を透明なマスクという単純なモノではなく、「対面会議 安心セット」というサービスパッケージに進化させられました。

以上のように、「Why/何のために?」と「How/どうやって?」を考えていくことで、製品・サービスの全体像やコンセプトを整理し、その魅力をブラッシュアップできるのです。

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思考法の効果

今回ご紹介した思考法を活用して目的と手段の関係を繰り返し整理していくと、顧客に提供すべき本質的な価値や、それを実現するために取り組むべき具体的な課題を明らかにできます。また、その過程を通じて、新しいアイデアや気付きが得られることも多いでしょう。

このような検討を重ね、物事を突き詰めて考え抜くことがあなたの起業アイデアの魅力を高めたり、類似の製品・サービスと差別化すべきポイントを明確化したりすることにつながります。面白い事業アイデアや製品・サービスを持っていても、顧客はその良さをすぐに理解してくれるとは限りません。

製品・サービスに込められた想いや世界観を顧客に正しく理解してもらうためにも、ぜひご紹介した思考法を身に付け、検討の精度を高めたり、伝えるべきメッセージの表現を見直したりしてみてください。

私は、このような思考法を用いて製品・サービスの全体像を整理することを「Solution Structure(ソリューションストラクチャー)を作成する」と呼んでいます。Solution Structureを作成することには、先述したように物事を突き詰めて考え抜くことができるようになるといったメリットに加え、あなたの思考を見える化した結果がアウトプットとして残るというメリットもあります。文字になったアウトプットが残ることで、検討の過程や変遷をいつでも振り返れるのです。

思考の効果を高める対話・壁打ち

このような検討の際に視野を拡げたり客観的に考えたりするためには、一人で考え込むのではなく、対話相手を見つけることが有効になります。これが冒頭でご紹介した壁打ちです。

私はこれまで、幅広い業界の経営者や技術開発部門の方々の壁打ち相手を務め、今回ご紹介した思考法と対話を組み合わせた検討が極めて有効であることを実証してきました。「そうか、そういうことだったのか!」と頭の中で考えていたことを整理できた人の晴れ晴れとした笑顔や、「難しいと思っていたことを解決できそうな気がしてきた!」と活動を前に進める意欲が高まった人のキラキラした顔をたくさん見れるのは仕事冥利に尽きます。

壁打ち

壁打ちの効果や様子をもっと詳しく知りたいという方は、ぜひ一度ご連絡ください。

今回ご紹介した思考テクニックを活用して、あなたの考える製品・サービスの中にある想いと技術・ノウハウの全体像を整理してみましょう。あなたの起業を心から応援しています。

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執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 近田 侑吾(ちかた ゆうご) /オモイエル株式会社

大手企業からベンチャー企業まで、多数のテーマで製品・サービスの開発プロジェクトを支援。
製品・サービスの全体像や開発の方向性を整理するための思考法「Solution Structure」を提唱し、それを用いた壁打ちサービスの展開、セミナーの開催、コミュニティの運営等に尽力している。

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