個人事業主として事業を続けていると、「新しい業務をはじめたけど、届出って必要?」と不安になることはありませんか?実は、事業内容の追加や変更は原則として届出不要です。ただし、許認可が必要な業種や、確定申告での扱いには注意が必要なポイントがあります。
本記事では、税務署への届出が必要・不要なケースを実例つきで整理し、開業届や住所変更の手続きもまとめて解説します。最後まで読むことで、「これで合っている」と自信をもって本業に集中できる状態になるはずです。
制度や手続きに不安が残る場合は、専門家に相談するのもひとつの方法です。ドリームゲートでは、税理士・行政書士などの専門家にオンラインで無料相談できます。あなたの状況に合ったアドバイスを受けることで、迷いなく次の一歩を踏み出せるでしょう。

監修者プロフィール:須田 幸宏(すだ ゆきひろ)
東北の起業家のみなさまをサポートします! 三楽る(みらくる)オフィス
東北を拠点に資金調達の支援で活躍する須田アドバイザー。元日本政策金融公庫融資課長で、日本公庫に33年勤務し、融資を通して、延べ2万以上の事業者、5,000以上の起業家をサポートされてきました。非常に親切・温厚なお人柄で、事業だけでなくライフプランニング(生活・家計の設計・見直し)もサポートされていますので経営者の強い味方となるでしょう。
- 目次 -
個人事業主が事業内容を追加・変更しても届出は不要
個人事業主として追加で事業をはじめたとき、「税務署に届出を出さなきゃいけないのでは?」と不安になる方も多いでしょう。結論からいうと、事業内容の追加や変更は原則として届出不要です。ただし、一部例外もあるため、ここで正確なルールを確認しておきましょう。
事業の追加・変更とは?
事業の追加・変更とは、開業届に記載した事業内容以外の業務を新たにはじめることを指します。たとえば、Webデザインで開業した方が、動画編集やライティング業務も受注するようになったケースです。
開業届の「事業の概要」欄には当初の業務内容を記載しますが、実務では事業の幅が広がることは珍しくありません。こうした追加や変更があっても、所得税法上の届出義務はありません。つまり、税務署への再提出は不要です。
届出を省略できる変更
以下のような変更は、税務署への届出が不要です。
- 事業内容の追加・変更(例:Webデザイン→動画編集も追加)
- 屋号の変更
- 事業用の電話番号・メールアドレスの変更
- 従業員を雇わない範囲での業務拡大
届出義務がない理由は、確定申告で実態を報告するためです。毎年の確定申告書にはじっさいにおこなった事業内容や収支を記載します。そのため、事業内容が変わっても、確定申告で正確に報告していれば問題ありません。
ただし、許認可が必要な業種に該当する場合は、別途手続きが必要になることがあります。
届出が必要な変更
以下の変更があった場合は、税務署への届出が必要です。
| 変更内容 | 提出書類 | 期限 |
| 納税地(住所)変更 | 開業届再提出(事務所・自宅引越しなど) | 変更日から1か月以内 |
|---|---|---|
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止 | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 事実があった日から1か月以内 |
| 青色申告から白色申告への変更 | 所得税の青色申告承認取消届出書 | 変更を希望する年の3月15日まで |
| 青色事業専従者給与の内容変更 | 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書 | 変更を希望する年の3月15日まで(その年の1月16日以後の場合は、その日から2か月以内) |
| 振替納税口座の住所変更 | 口座振替依頼書 | とくに明記なし(随時) |
とくに注意したいのが納税地の変更です。引っ越しをした場合、住所変更を忘れてしまうと、税務署からの書類が届かないトラブルにつながる可能性があります。
また、手続きにミスがあると、後から修正が大変になることもあります。「自分のケースはどうすれば?」と感じたら、専門家に相談してみましょう。ドリームゲートなら、起業や開業届の手続きを熟知したプロに無料でオンライン相談できます。
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個人事業主の住所・納税地の変更手続きは? 要不要と忘れ対応
引っ越しをしたとき、「個人事業主の住所変更は届出が必要なの?」と悩む方は多いでしょう。結論からいうと、2023年以降は確定申告で住所を更新すればOKというルールに変わりました。
ここでは、住所変更を忘れていたときの対応も含めてくわしく解説します。
2023年以降の住所変更ルール(確定申告でOK)
2023年1月以降、個人事業主の住所変更は確定申告で報告すれば届出不要になりました。これまでは引っ越しのたびに「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出する必要がありましたが、制度が簡素化されています。確定申告書の住所欄に新しい住所を記載するだけで、税務署側で情報を更新する仕組みです。
ただし、この簡略化が適用されるのは「住所地(自宅)=納税地」の場合のみです。「事業所・店舗=納税地」としており、所在地が変わった場合は、従来どおり届出が必要なので注意しましょう。
事業所移転の場合は「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届の変更届)」と「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を、移転日から1か月以内に変更前の所轄税務署に提出します。
| 届出が不要なケース | 「住所地(自宅)=納税地」として登録しており、自宅の住所が変わる場合 | 2023年1月1日以降は確定申告書の住所欄に新住所を記載すれば届出不要 |
|---|---|---|
| 届出が必要なケース | 「事業所・店舗=納税地」としており、事業所・店舗の所在地を変更した場合 | 移転日から1か月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」と「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を移転前の税務署に提出 |
納税地をどこにしているかによって届出の要不要が変わってくるので、事業所や店舗を納税地にしている方は注意しましょう。
住所変更を忘れたら?リスクと後追い手順
住所変更を忘れていたとしても、罰則はありません。ただし、以下のようなリスクがあります。
- 税務署からの重要書類(還付金通知、調査連絡など)が届かない
- 確定申告の控えや納税通知書が旧住所に送られる
- e-Taxや各種電子申告サービスで住所情報に食い違いが生じ、二重登録や確認遅延などのトラブルが発生
忘れていた場合の対応はかんたんです。次回の確定申告で新しい住所を記載すれば、更新されます。それまでに書類を受け取る必要がある場合は、管轄の税務署に電話連絡をして住所変更の旨を伝えましょう。後追いでの届出も受けつけてもらえます。
事業内容変更・追加の具体的な手続き
事業内容の追加や変更に届出は不要ですが、確定申告では正確に記載する必要があります。また、どうしても開業届の内容を更新したい場合の手続き方法もあります。ここでは、確定申告での書き方と、任意で届出を出す場合の手順を具体的に解説します。
確定申告での記載方法
事業内容の追加・変更は、確定申告書の「事業の概要」欄に記載すればOKです。確定申告書第一表には住所や氏名とともに、事業内容を記入する欄があります。ここにじっさいにおこなっている業務内容をすべて書きましょう。
書き方のポイントは、収入が発生した業務はすべて明記することです。青色申告決算書にも同様に記載します。開業届と内容が異なっていても問題ありません。確定申告の内容が正式な記録として扱われます。
e-Tax/開業・廃業等届出書での手続きと注意点
任意で開業届の内容を更新したい場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」を再提出できます。法的義務はありませんが、記録を最新に保ちたい方や、融資申請時に正確な情報を示したい方には有効です。
届出書の「事業の概要」欄に新しい事業内容を記載し、「開業」にチェックを入れて提出します。
マイナンバーカードがあれば、e-Taxで自宅から24時間提出できます。注意点として、過去の届出が上書きされるわけではなく、新しい情報として追加登録される形になります。
手続きで迷ったら、専門家に相談してみましょう。ドリームゲートなら、開業や変更手続きを熟知したプロに無料でオンライン相談が可能です。スキマ時間で不安を解消できます。
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屋号・複数事業があるときの扱いと確定申告対応
事業内容を追加すると、「屋号はどうする?」「複数の収入をどうまとめる?」といった疑問が出てきます。個人事業主は複数の事業を同時に営むことが可能で、確定申告では合算して申告します。ここでは、屋号の扱い方や事業所得の整理方法、事業税の考え方まで実務に沿って解説します。
屋号を複数使う/変更するときの書き方
個人事業主は複数の屋号を使用でき、届出も変更手続きも不要です。開業届には1つの屋号しか記載できませんが、実務では事業ごとに別の屋号を使い分けても問題ありません。たとえば、Webデザインは「〇〇デザイン」、動画編集は「△△スタジオ」といった使い方が可能です。
確定申告では、以下のように記載します。
- 主な屋号を1つ記載する
- 複数ある場合は代表的なものを選ぶ
- 収支内訳書や青色申告決算書には、じっさいに使った屋号をメモ欄に記載してもOK
屋号を変更した場合も届出不要です。新しい屋号で確定申告すれば更新されます。
複数事業の利益をまとめる際の考え方
複数の事業を営んでいても、確定申告では事業所得として合算します。個人事業主の所得税は、すべての事業収入から必要経費を差し引いた「事業所得」に対して課税される仕組みです。事業ごとに分ける必要はありません。
具体的な整理方法は以下のとおりです。
- 「売上」「経費」「利益」などの項目ごとに、全事業の金額を合算して決算書に記入
- 収支内訳書や青色申告決算書、所得税申告書の記入欄には、各事業の合計金額を記載
- 必要に応じて各事業の収支明細も添付できるよう整理しておくと安心
青色申告決算書では、売上を事業別に分けて記載する欄があります。白色・青色と申告の種類にかかわらず、帳簿や領収書を事業ごとに記録・保存し、各事業の根拠を明確にしておきましょう。
別の所得区分(不動産所得や雑所得など)がある場合は、それぞれの所得区分ごとに記載します。
事業税・所得区分を整えるポイント
事業税は、業種によって税率が異なるため、正しい所得区分が重要です。個人事業税は都道府県に納める税金で、事業所得が年290万円を超えると課税されます。業種は第1種から第3種に分類され、それぞれ税率が異なります。
業種ごとの税率の違いは次のとおりです。
| 区分 | 税率 | 具体的な事業の種類例 |
| 第1種業種(37業種) | 5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、保険業、飲食店業、広告業、製造業、電気供給業、運送業、旅館業、印刷業、出版業など |
|---|---|---|
| 第2種事業(3業種) | 4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業(主に自家労力を使わないもの) |
| 第3種事業(30業種) | 5% | 医業(医師)、設計監督者業、歯科医業、弁護士業、税理士業、行政書士業、理容業、社会保険労務士業、美容業、コンサルタント業などの高度専門職・サービス業 |
| 特別区分(第3種事業内) | 3% | あんま・マッサージ、はり・きゅう、柔道整復、装蹄師業など |
複数事業がある場合、収入が多い方の業種で判定されるのが一般的です。不明な場合は、確定申告後に送られる事業税の通知で確認できます。
屋号や事業内容を変えるときの注意点! トラブルを防ぐ手続きのポイント
屋号や事業内容の変更は税務署への届出が不要ですが、実務では取引先や金融機関への連絡、契約書の見直しなどの対応が必要です。とくに屋号を変更する場合、商標や口座名義との整合性に注意しましょう。
ここでは、スムーズに変更を進めるための実務的なポイントを解説します。
商標登録している屋号は変更に注意
屋号を商標登録している場合、変更前に商標の扱いを確認しましょう。商標登録した屋号は法的に保護されており、他者が無断で使用できません。しかし、屋号を変更すると、登録済みの商標が使われなくなるため、商標権の維持が必要かどうか判断が必要です。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 新屋号での再申請が必要か検討
- 既存の商標登録を更新するか、放棄するか検討
- 印鑑登録や取引先通知、銀行口座名義変更などの実務手続きをおこなう
- ドメイン名やSNSアカウント名との整合性をとる
商標登録の変更や新規登録には、数万円程度の費用がかかります。事業の方向性を整理してから判断しましょう。
取引先や金融機関への連絡が必須
屋号や事業内容を変更したら、取引先や金融機関に速やかに連絡しましょう。税務署への届出は不要ですが、実務では以下の関係先への通知が必要です。
- 取引先:請求書や契約書の名義変更
- 銀行:屋号付き口座の名義変更手続き
- クレジットカード会社:事業用カードの登録情報更新
- 契約中のサービス:ドメイン、サーバー、各種ツールの登録名変更
とくに屋号付き銀行口座は、名義変更に開業届の控えや確定申告書の提出を求められる場合があります。事前に金融機関に必要書類を確認しておくとスムーズです。
屋号変更の証明が必要な場合は届出を検討
金融機関や公的機関で屋号変更の証明を求められる場合、開業届を再提出しましょう。法的には届出義務がありませんが、実務では以下のような場面で公的な証明が必要になることがあります。
- 銀行口座の名義変更
- 行政許認可・登録(営業許可、建設業許可、古物商など)
- 社会保険や共済、労働保険等への届出
- 公的な契約・申請書類(助成金・補助金・行政申請、雇用関係届等)
上記の場面では「開業届控え」「確定申告書控え」「決算書」「登記簿謄本写し」などが証明書類として求められる場合があります。公的な証明が必要になる場合は、個人事業の開業・廃業等届出書で新しい屋号、事業内容を早めに届出ましょう。
屋号や事業内容の変更で迷ったときは、専門家に相談してみるのが確実です。ドリームゲートでは、開業・変更手続きを熟知した中小企業診断士や税理士などのプロに無料でオンライン相談できます。不安を解消し、スムーズに事業を進めましょう。
個人事業主の事業追加についてよくある質問をQ&A形式で解説
個人事業主が事業内容を追加・変更する際に、「これで本当に大丈夫?」と不安になる場面もあるでしょう。ここでは、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。手続きの要不要や税務調査のポイントまで、実務に即して回答します。
Q:事業内容を追加するたびに開業届を出す必要はある?
A:いいえ、事業内容の追加や変更では開業届の再提出は不要です。開業届は事業をはじめるときに一度提出すれば問題ありません。業務内容が増えたり変わったりしても、届出義務はありません。確定申告で実際の事業内容を報告すれば十分です。
ただし、事業を完全に廃止する場合や、納税地としていた事業所の所在が変わる場合は届出が必要です。開業届を任意で更新したい場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を再提出できます。
Q:屋号変更・事業追加で義務となる手続きはある?
A:税務上の届出義務はありませんが、実務では以下のような対応が必要です。
- 取引先への通知(請求書・契約書の名義確認)
- 銀行口座の名義変更(屋号付き口座の場合)
- 確定申告での正確な記載
とくに、屋号付き銀行口座を使っている場合、金融機関によっては変更手続きに開業届の控えを求められることがあります。また、許認可が必要な業種を追加する場合は別途申請が必要です。飲食業、建設業、不動産業などは、事業開始前に許認可を取得しましょう。
Q:税務調査でチェックされやすいポイントは?
A:税務調査では、収入と経費の整合性が重点的に確認されます。事業内容が増えても届出は不要ですが、以下の点は調査対象になりやすいため、注意しましょう。
- 事業所得と雑所得の区分が適切か
- 経費が事業に関連しているか(プライベートとの混同)
- 売上の計上漏れがないか
- 帳簿や領収書が適切に保管されているか
複数の事業を営む場合、事業ごとの収支を分けて記録しておくと、根拠を説明しやすくなります。青色申告なら最大65万円の控除を受けられるため、帳簿管理はしっかりおこないましょう。
Q:複数事業をもつメリット・デメリットは?
複数事業をもつことで収入の安定化が図れますが、管理の手間は増えます。主なメリットとデメリットは次のとおりです。
| メリット | ・一方の事業が不調でもほかの事業で補える。 ・異なる業種を組み合わせて、柔軟な事業展開ができる。 ・各事業で得たノウハウやネットワークをほかの事業にも活かせる。 ・自身の好きな仕事へのチャレンジや、新たな分野へのステップアップの場となる。 |
|---|---|
| デメリット | ・複数の事業の会計や資金繰りが複雑になる。 ・それぞれの事業に十分な力を注ぎづらくなる。 ・事業計画や経営判断が複雑になる。 ・確定申告や税務処理の負担が増加する場合がある。 |
複数事業をもつことは合法で、事業ごとに収入を多角化したい、専門性を広げたい場合などに有効ですが、管理面や実務負担の増加リスクがあるため、十分な計画と段取りが重要です。
正しい手続きをおこない、個人事業の可能性を広げよう
「届出を忘れていた」「これで合っている?」という不安を抱えたまま仕事を続ける必要はありません。本記事で紹介したポイントをおさえることで、自信をもって本業に集中できます。
もし手続きに迷いがある場合は、専門家に相談してみるのも安心です。ドリームゲートなら、開業や変更手続きを熟知した税理士・行政書士などのプロに無料でオンライン相談が可能です。あなたの状況に合わせて、正しい手続きを一緒に確認できます。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
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