事業再構築補助金、採択率90%の専門家が語る採択率を高めるポイントと陥りがちな落とし穴

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 神吉 耕二(かんき こうじ)

今後の事業再構築補助金

令和4年度2次補正予算が閣議決定されました。事業再構築補助金は5800億円で昨年から微減ですが、ほぼ同等規模の予算となります。

令和3年度は新型コロナウィルスの影響からの脱却という側面がありましたが、令和4年度では縮小している市場からの事業転換や成長分野への進出に挑戦する事業者を支援する流れは同じものの、円安対応や国内回帰、そして賃上げに取り組む企業への支援を手厚くするなど世相を反映した内容になります。

令和3年度も計8回の公募がありましたが、毎回内容が少しずつ変わっていることから、今後も申請する際は、公募内容について毎回、しっかりと確認することをお勧めします。

この記事では私がサポートさせていただいた事業再構築補助金が採択率90%である実績を踏まえ、採択率を高めるポイントについてお伝えします。

申請書を書く前に、押さえておくべきポイント

補助金の目的を理解し、それに沿った書き方をしましょう

条件さえ合えば、またはアイデアさえ良ければ、補助金をもらえるわけではありません。採択されるためには、補助金を出す側(行政)の立場で考えてみることが大切です。どの補助金にも明確な目的があります。

例えば事業再構築補助金だと、中小企業等の事業再構築を支援し、日本経済のさらなる構造転換を図り、世界と戦えるだけの産業に盛り返したい、という大目的があります。また最初のうちは、コロナで疲弊した中小企業の救済面が強く出ていましたが、今は賃金アップや成長面、競争力面で伸びる企業が求められているなど、その都度、小目的は変わっています。自社の事業計画の書きぶりも、目的に合わせていきましょう。

毎回、仕様や条件など変更点があるので必ずチェックしましょう

公募要領をよく確認するというのは基本です。気を付けたいのは、毎回、何かしら変更点があることです。必要書類の不備や記入漏れは即、不採択となりかねません。少し前では、支援機関がチェックしてくれたこともありましたが、今は行政から厳しく対応するように指導が入っているようです。高額の補助金をもらうのだから、求められているものは完璧に対応すべきだということでしょう。

すべて審査項目を漏れなく対応しましょう

公募要領に「審査・加点項目」は明記されています。実際の審査項目では多少の重みづけで配分の違いはあるでしょうが、すべての項目にしっかりと対応することが採択へつながります。アイデアなど、どこか1つが傑出していても、総合点が届かなければ採択されません。一見して、自社には当てはまらないと早合点せず、諦め悪く少しでも点を稼ぐつもりで地道に得点を積み上げていく姿勢が重要です。

極端に評価が低い審査項目があれば、不利ですし、足切りされる場合もあります。一旦、作成し終わっても、諦めずに、特に不安な項目は補強をしていきます。例えば、財務面では、メイン銀行の支店長から資金融資に前向きなコメントをいただいたり、顧客企業から補助事業達成後の受注を確約頂いたり、自社だけで実施体制が不安なら協力先を巻き込んだ体制を構築したりすることです。

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採択される事業計画とは?

分かり易い事業計画書の書き方

11件の事業計画書を審査員が時間を十分にかけて、漏れなく隅々まで正確に理解して審査してくれるなどとは考えないほうが良いでしょう。審査員がパッと見ても要点がすぐに把握できるような分かり易い事業計画書の作成を心掛けるべきです。そのためには、全体構成、ストーリー性、簡潔な文章、図表、文字の修飾、章立て小タイトルの工夫、に注意しましょう。

全体構成・ストーリー性

いきなり文章を書き出さず、まずは全体構成を考えることをお勧めします。章立てと各々のキーワードやポイントを箇条書きで列挙してみます。基本的な事業再構築の類型やSWOT分析のみならず、収益化計画まで、抜け漏れがなくダブりもなく配置でき、分かり易いストーリーになっているのか十分に検討しましょう。

簡潔な文章・重要箇所の協調

接続詞をあまり使わず、簡潔な文章を心掛けます。段落は4-5行ほどで改行、段落間は1行スペースを空けるなど、見やすさを考慮しましょう。ダラダラ長文や主語のない文章、あいまいな修飾語(非常に、かなりなど)の使用は避けましょう。

特に強調したい箇所や単語は太字や下線などすぐにわかるように工夫しましょう。

図表の挿入

言いたいことが一目でわかるように図表を作成し挿し込みましょう。目安は1ページに1枚程度です。しかし文字が小さすぎる図解や読み込まないとわからない複雑な図表は読み飛ばされるかもしれないので要注意です。ビジネスモデルや競合比較表、市場動向や導入予定の設備や現在の工場などの写真なども効果的に挿入しましょう。

説得力がある文章の書き方

事業計画は1015ページの上限指定があります。自社の補助事業がどうして優れているのか、正確かつ効果的に審査員に伝わるように下記に注意しましょう。

一貫性・整合性・網羅性をチェック

全体を通じて、書いてあることがブレておらず、主張が一貫しているのかは重要です。いろいろと検討しすぎるといつの間にか書いていることがズレていることがあります。そして特に数値などの整合性も確認しましょう。例えば、事業計画の収支計算とGビズでの申請書入力と数値が違っているなどです。

具体的な数値や結果、固有名詞を盛り込む

全体を通して、具体的な表現はとても大事です。自社の業績や競合比較など具体的に数値で示したり、ターゲット顧客、取引先名、従業員名、協力会社など、できるだけ固有名詞を出したりしていくことも説得力を高めるのに有効です。

客観的な根拠を明確に示す

「何故そう言えるのか?」、「背景や根拠は何なのか?」、「本当に補助事業を実施できるのか」など、審査員の立場に立って、その不安や疑問を出来るだけ取り除くように考慮します。ただし誠実さや熱意などをやたらと訴えるのではなく、客観的で信頼できる事実や数値で簡潔かつ明瞭に伝えるようにしましょう。例えば、新事業の収益計画など、根拠となる計算の内容を示しましょう。

インパクト

補助対象事業の要件として、通常、補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%以上の増加等を達成する取組みであることが必要条件として提示されています。事業者側は基準を満たしていればそれでよいと考えがちですが、政治行政側からみると、補助金を使って事業を大きく成長させてくれるのが理想です。ギリギリ基準をクリアしているよりも、新規事業をもっと儲かり大きく成長できるビジネスになるよう検討することで評価も高くなります。

だからと言って、数値だけ盛って、明確な根拠を示せないのは逆効果ですのでご注意ください。

その他

審査項目には記載されていませんが、事業計画書の印象を良くするために、審査員が応援したくなるような書きぶりにしていくことをお勧めします。具体的には、共感を得られるような、経営者の考えや経営理念、会社概要を記載しましょう。ポイントは、自社利益だけでなく地域社会や業界産業への貢献につながることです。

押さえておくべき重要項目

① 補助金対象経費

公募要領には、補助金対象系に関して、「基本的に、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応規模の投資をしていただく必要があります。」と記載されており、短期間で無くなったり売ったりはできません。

また対象外経費にも該当しないか十分な注意が必要です。例えば建物や建物付属設備は対象だが、構造物にかかわる経費は対象外などです。

事前にきちんと確認して申請しましょう。

② 強み

「強み」の記述は、特に重要です。事業再構築補助金は、「中小企業等が将来にわたって持続的に競争力強化を図る取組を支援することを目的としている」と、明記されています。よって市場や競争相手を明確に想定して、長期に渡って勝ち続けられるような取り組みを求めています。

その根拠となる自社の「強み」を明確に示すことが求められています。しかも本補助金によって、既存事業や商品等とシナジーを生む、市場で競合と差別化された「強み」を可能な限り具体的に示さないといけません。

曖昧で一般的な表現ではなく、自社独自の客観的な、できれば数値や事実で示せる説得力のあるところまで深堀りすることが求められます。

③ 今後成長可能性のあるニッチ市場

新しく取り組む市場についても十分な検討が必要です。今後、確実に成長していく市場であることはもちろん、大企業が参入するほどの規模ではないが、自社の計画が達成でき、ある程度のシェアが獲得できる、ほど良いサイズの市場を特定または絞り込んでいくことが求められています。

ニッチ市場とは、言い換えれば、大企業とガチンコに勝負するような大きな市場ではなく、独自の強みが効果的かつ継続的に活きる場所なのです。

④ ターゲット顧客とニーズ

自社の強みとターゲット市場が明確になったら、次は「ターゲット顧客」の明確化も重要です。具体的な固有名までに絞り込めば説得力が増します。そしてターゲット顧客の課題やニーズを探り出し、自社が優位性を持てる程度にまで落とし込むことが重要です。

⑤ 顧客から選ばれる理由

競合と比べて、何故、顧客に自社が選ばれるのかを明記することが大切です。例えば競合との比較を図表にして、客観的に事実や数値を示して、説得力のある記述が有効です。文章で強調したり大げさな表現を使ったりと、文章表現の工夫だけで乗り切ろうとするのは逆効果です。

⑥ 実施体制

実施体制の記述は重要なのにもかかわらず、意外と注力していない申請企業が多いのです。本補助金を採択されても、「きちんと事業を遂行できるのか」「計画したような成果を上げられるのか」を、審査員だけでなく、行政側も強く懸念しています。組織面だけでなく、財務面、事務作業面でも注意が必要です。補助金事業遂行のための専用のチーム体制構成し、実名で役割分担と責任範囲を明記することや、外部との協力体制を構築しておくと評価が高まります。

⑦ 費用対効果

結果として、多額の投資に見合った収益を達成できるのか、を説得力のある根拠を示して明確に記述することが重要です。補助事業終了後の計画で、単に計画数値を上振れさせるだけではなく、その計算根拠を理由と共に具体的に示していくことで、説得力が増します。

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まとめ

採択を得るためには、隅々まで手を抜かず考え尽くし、それを書面で分かり易く表現するという難しく根気のいる工程が不可欠です。従来の補助金に比べて、事業再構築補助金は、比較的容易に多額の支援が受けられるため人気がありますが、それだけに目先の金額だけに惑わされずに、将来の自社の成長のために本気で考え尽くして取り組むことが、結局は採択のみならず成長への近道なのです。
不安なこと、相談ごとがあったらいつでもメール相談よりお問い合わせください。初回相談は無料です。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 神吉 耕二(かんき こうじ) /KMC株式会社

補助金採択率90%、補助金に精通したベテランの中小企業診断士です。創業前の方を含めた、若手経営者ゼミナールを毎年開催しており、起業家の育成に力を注いでいます。

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神吉 耕二(かんき こうじ)

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