元日本公庫融資課長が明かす 「融資したくなる起業家」と「融資したくない起業家」の違い

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 須田 幸宏

ドリームゲート認定アドバイザーの須田幸宏です。日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に33年勤務し、融資を通して延べ2万以上の事業者、5,000以上の起業家をサポートしました。金融機関の見方・目利き力を生かして、起業家の方々が金融機関に好かれる鉄壁の経営基盤を確立できるよう伴走支援をしています。

「起業したいが不足するお金をどうしたらよいか」、「公庫から融資を受けられるか不安に感じている」、「起業準備はどのように進めたらよいのかわからない」、「起業直後で不安定なので早期に軌道化させたい」。起業家の方々が、そうした悩みや不安を解消して事業経営を楽しめるよう、二人三脚でアシストしていくことを目指しています。

金融機関の融資審査判断の内側

「どういう人が貸してもらえるのですか?」
金融機関勤務時代に、融資申込をされた方からよく聞かれました。融資してもらえるのかどうか、結果を知るまでは、だれしも「まな板の鯉」の心境でしょう。金融機関では、そんな不安でいっぱいの起業家の方々に真剣に向き合い、念入りに検討して結論を出します。その過程を少しだけお伝えしましょう。

担当者から決裁者まで複数で慎重に協議(りん議)

融資申込した方と接するのは担当者だけですが、担当者の一存で融資の可否を決めるわけではありません。担当者が審査面談内容などをまとめたりん議書をもとに、決裁者を含めて複数で協議します。担当者が迷っていることや、ときには意見が相反することもあり、じっくりと話し合い、一つの結論へと集約します。

融資をする、しないのいずれの場合でも、その根拠をはっきりさせて、融資申込した方などに説明できるようにします。結果を伝えた後に反論されてひっくり返されては金融機関として信用を失いかねません。結論を導き出した根拠には、だれもが納得できる客観性と、きちんと筋道が通っている論理性を備えることに金融機関は力を入れます。

金融機関の本音

担当者や決裁者も人間なので、融資を断ることは実はストレスになります。多くの起業家の方々を支援したいという使命感に燃えている人が大半であり、できるだけ融資をしたいと本音では考えています。監督官庁や世間の目は無視できないので、客観的にみて融資することが妥当でないと判断されるときに、やむなく融資を断るのです。

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融資したくなる起業家の特徴

金融機関の担当者や決裁者が融資の可否を判断するとき、融資申込者である起業家の方々の人柄や経営者としての能力を重視します。人間は感情の生き物と言われます。客観的で論理的な根拠を集め、融資ができるかできないかを考えていくなかで、融資をしたい、あるいはしたくないという感情が自然と生じてくるものです。

まず、融資をしたくなる起業家は次のような方々です。

1.約定通りの返済が期待できる

金融機関は、融資が回収できなくなることをもっとも恐れます。収入と支出のバランスがとれている。これまでさまざまな支払いをきちんとしている。そうしたさまざまな事実をもとに、この起業家はきちんと返済してくれそうだと判断できることが何よりも必要です。

2.成業や事業継続が見込める

金融機関は、融資申込した方の事業の維持や発展のために使ってもらうという目的を明確にして事業資金の融資をします。せっかく起業しても見込み通り立ちあがらなかったり、返済の途中で廃業したりといったことがあっては、融資した意味がありません。この起業家は事業意欲がある、経営能力が高いといった判断ができ、十分維持していけるという確信をもてることが必要になります。

3.応援したい気持ちになる

金融機関は、融資した起業家が成功することや事業が順調にいくことを期待して融資をします。融資を決めるまでには相応の時間や労力をかけているので、無意識に思い入れが強くなることもあります。「ご活躍を期待します」、「ご健闘を祈ります」、「ご成功を願っています」などと言葉を掛けて応援したい気持ちになるものです。

融資したくない起業家の特徴

一方、融資をしたくない起業家は次のような方々です。もちろん、決して審査判断に私情を挟むわけではありません。審査を進め融資の可否を検討していく過程で、融資を断るのが妥当という結論に結びつく要因をもっている起業家という意味です。

1.約定通り返済してくれる確証をもてない

前述の通り、金融機関は約定通り融資が回収されることを重要視します。きちんと返済してもらえないのではないかと金融機関が不安視してしまう起業家を例示すると次の通りです。

①お金や時間にルーズである

それなりに収入があるのに手持ち資金が過少な人がいます。自分の収入と支出をきちんと把握できていない人です。お金の管理ができていないので、融資をしても約定通りに返済できないだろうと思われてしまいます。約束の時間に連絡なしに遅れる人や、事務所等の整理整頓ができていない人も、お金にもルーズなのではないかと推測されます。

②債務観念や計数観念が弱い

債務観念とは、借りたものは約束通りに返さなければならないという考え方です。計数観念とは、お金の動きや財務の数字などをきちんと把握し管理しようという考え方です。どちらも当たり前のことと思われるかもしれませんが、なかにはできていない人もいます。これまでの行動や考え方からみて返済が難しいのではと、金融機関を不安がらせる人が存在するのです。

③諸支払いに遅延が多い

既存の借入金、税金や社会保険料、家賃や公共料金などを期日通りに支払できていない場合は、資金繰りが厳しいことの証左です。それは金融機関が融資に二の足を踏む要因となります。

④自己資金や手元資金が過少である

起業時に投入する自己資金がわずかで借入に依存しすぎると、返済負担が大きくなり成業可能性を低くする要因となります。また、事業には予定通りにいくとは限りません。不測の事態が起き、借入ができなかった場合でも、当面しのげる手元資金がないと資金繰りが破綻してしまうリスクが高まります。ケースバイケースですが、相応の資金を自分で準備する力があることが必要です。

2.計画性に疑問がある

起業や事業継続には、羅針盤となる計画が必須です。創業計画書や事業計画書、審査面談時の受け答えが無計画で行き当たりばったりと思わせては大きなマイナスとなります。進路が明確でないと途中で難破して沈没する可能性が高いと判断されてしまいます。

①動機があいまい

起業動機や新たに取り組むことの動機は重要視されます。思いつきや、確固たるものでない場合には、途中で困難に陥った場合に挫折するかもしれないと思われます。

②楽観的過ぎる

悲観的になったり必要以上に慎重論になったりするのはよくありませんが、楽観的過ぎるのは危険と思われます。見込み通りにいかなかったらそのときになってから考えればよい。リスクを想定していない。そのような考え方では先行きが不安と思われて融資は難しくなります。

③優先順位をつけていない

新たなことを始めようとする場合、気持ちだけが先走り多くのことに手を出したくなりがちです。あれもこれもやりますでは、そんなにできないだろうと思われます。自分の能力も踏まえて、優先順位をしっかり示して説得力のある計画にする必要があります。

3.論理的でない

前述のように、金融機関は、きちんと筋道が通っていて論理性がある結論を出すことに注力します。したがって、計画書などの提出書類や審査面談時の受け答えなどが論理的でないと融資が難しくなる方向へ行ってしまいます。

①整合性がない、一貫性がない

計画書と矛盾することを話したり、話していることがぶれたりといったことがあると、金融機関の担当者は何が正しいのかわからなくなってしまいます。自分の考えをしっかり確立し、考えていることや思いが間違いなくきちんと伝わるようにする必要があります。

②客観性が弱い、根拠が弱い

前述の通り、客観的な根拠を示すことができないと金融機関は前向きな結論を出しにくくなります。

③説得力が弱い

前述の①と②をクリアすることは、融資することが正しいと、金融機関のみならずだれもが納得することができる材料となります。つまり、説得力のある書類や話を金融機関に提供することは、融資を希望する起業家にとって必要不可欠なのです。

提出書類や話す内容を事前にチェックするなどして、論理的な書類であること、論理的な説明ができることを確実にしておくとよいでしょう。

4.説明できない

自分は口下手だからとか文章がうまく書けないとかで、うまく説明できないのではないかと不安に思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、そのようなことは問題ではありません。自分の考えや思いをきちんと固め、一生懸命に伝えようとすることが大切です。そうすれば口下手でも文章が上手でなくても、担当者にわかってもらえるものです。

①他人事になっている

自分のことなのに自分で説明できないことは致命傷になりかねません。自分の事業がわかっていないとか嘘をついているのではないかと思われるでしょう。担当者は「この経営者は大丈夫だろうか」と不安に感じてしまいます。とはいえ、そこまでは考えていなかったと、担当者の質問に即答できないこともありえます。そのようなときは、いったん持ち帰り、わかり次第速やかに回答すれば問題ありません。

②提出書類に誠意が感じられない

達筆であっても読みにくい字は印象が悪くなります。字が下手でも丁寧に書いていれば好意的に受け取ってもらえます。また、記入欄を最大限埋めようとする方がいますが、必要以上にだらだらと書くと読む気が失せてしまいかねません。

支離滅裂だとかいい加減だとか思われないよう、簡潔かつ論理的に書くことを意識しましょう。

なお、他人に依頼して書いてもらうことは望ましくありません。また、サンプル等の丸写しも避けるべきです。たとえ不得手であっても、自分で真剣に書くことによって、自分の考えや思いが込められた説得力のある文章になるのです。

5.態度がよくない

前述の通り、金融機関は融資申込者である起業家の方々の人柄や経営者としての能力を重視します。そういったものは態度に表れるものです。したがって、態度がよくないと思われないようにする必要があります。

①自信過剰である

自分の計画なら必ずうまくいくとか、一生懸命頑張るので何とかなるとか、客観的な根拠に乏しい自信に満ちあふれている人がいます。熱意はもちろん必要ですが、説得力に欠ける自信は担当者の心に響きません。

終始自分の主張をまくしたて、担当者が疑問を呈しても「そんなことはない」などと人の話を聞こうとしない態度もよくありません。耳の痛いことにも正面から向き合い、問題があるのなら乗り越えようという態度を示せないと経営者としてどうかと思われます。

②感情をあらわにする

自分の主張が通らなかったり都合が悪くなったりすると、怒り出すとか大声を出すとかして感情をあらわにする人がいます。いわゆるクレーマーの類ですが、たとえ正論を言っていたとしても、感情的になってしまうのは得策ではありません。相手はクレーム処理に専念しようとし、まともに話を聞こうとする気持ちが小さくなってしまいかねないからです。

どうしても反論したい場合は、まず冷静になり、相手の言い分もきちんと理解して、論理的に話をすることが必要になります。

③嘘をつく

起業する気がないのに融資申込する詐欺師などは論外ですが、自分の都合が悪いことを隠そうと、嘘をついたり白(しら)を切ったりしてはいけません。

金融機関は、提出書類や面談内容以外にもさまざまな調査をして、融資申込した方の申出内容を検証します。もし嘘をつけば矛盾が生じたりするので担当者に見抜かれてしまいます。知らないふりをするのも同様です。そういったことをすれば担当者からの信用を一気に失ってしまいます。

担当者には何事も包み隠さず正直に話すことがマストといえるでしょう。

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まとめ・融資を成功にみちびく3つのポイント

①日ごろからの心がけが大事

人は急に態度を改めることは容易ではありません。諸支払いをきちんとする。お金は適切に管理する。人と話すときも文章を書くときも理路整然となるよう努める。何事にも正直にふるまう。そうしたふだんからの心がけが大事といえます。

②自己確認、第三者に確認を依頼

金融機関へ提出する書類や話す内容に問題があるかどうかは自分ではなかなかわからないものです。作成した書類を推敲して読み返したり、内容を説明する様子を録音して自己確認したりといった方法があります。また、家族や友人知人などに見てもらい第三者の立場から意見を求める方法も考えられます。

③専門家にアドバイスを受ける

とはいえ、金融機関に何を見られるのか、何を聞かれるのかがわかる人はそういるわけではありません。

中小企業診断士などの専門家にアドバイスを受けることが効果的です。金融機関の見方や考え方を熟知している専門家なら、提出書類に問題がないか正しくチェックしてもらえる可能性が高くなります。また、想定問答や模擬面談などに協力してもらえれば、審査面談の本番に対する不安が軽減され、さらに自信をもつことができるかもしれません。

前述のように、金融機関の担当者や決裁者は、できるだけ融資を実行して、多くの起業家の方々が成功するよう支援したいと心から思っています。そのような熱い思いに応えられる「融資したくなる起業家」になれる方々が増えることを切に願っています。

融資に関して、創業に関して、ご不安な点やご相談したいことがありましたらぜひ無料のメール相談を利用してご相談ください。日本政策金融公庫に33年勤務した経験をもとに、サポートさせて頂きます。

執筆者プロフィール:須田 幸宏(すだ ゆきひろ)
東北の起業家のみなさまをサポートします! 三楽る(みらくる)オフィス

東北を拠点に資金調達の支援で活躍する須田アドバイザー。元日本政策金融公庫融資課長で、日本公庫に33年勤務し、融資を通して、延べ2万以上の事業者、5,000以上の起業家をサポートされてきました。非常に親切・温厚なお人柄で、事業だけでなくライフプランニング(生活・家計の設計・見直し)もサポートされていますので経営者の強い味方となるでしょう。

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ドリームゲートアドバイザー 須田 幸宏

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