今さら聞けない「エクイティファイナンス」とは?―スタートアップの資金調達のすべて

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 鈴木 彰悟

インターネットにより今やあらゆる世界の資本が平等化される中、世界中で情熱あふれる起業家たちが新たな市場の開拓に向けて、闘志を燃やし続けています。

今回は、社会や世界に対して何らかの課題意識をもち、より良い未来を作ろうと志す起業家の皆さんのために、より事業のスケールを加速するための「エクイティファイナンス」について、くわしく説明していきます。

エクイティファイナンスとは?

エクイティ(Equity)という言葉の意味は、「株式」「株主資本」などという意味があり、ファイナンス(Finance)には、「財政」「資金管理」「資金調達」などの意味があります。「エクイティファイナンス」とは、この2つの言葉を合わせたものであり、「株式を使った資金調達」という意味です。

エクイティファイナンスの特徴

エクイティファイナンスは、新しい株式を発行し、それを資金を出資してくれる投資家やベンチャーキャピタルに分配し、資金を調達することです。エクイティファイナンスの特徴は以下になります。

  • 返済義務がない。
  • 株式を配分した方が経営に関わる。
  • 全体の発行株式数が増えることにより、一株の株価の希薄化が起こる

エクイティファイナンスの活用場面

エクイティファイナンスとは、投資家などに株式を買い取ってもらい、資金調達をする手法だということは前述しましたが、投資家たちは一体何のために多額のお金を支払ってまで資金援助をするのでしょうか。それは、「成長する見込みがあるから」です。

これを踏まえて考えると、一般的にエクイティファイナンスを行うタイミングは、「出資による事業のさらなる成長に乗り出すタイミング」になります。具体的には、より価値のある人材を多く雇ったり、サービスの認知を一気に図るためにテレビCMを打つ資金を集めたりするタイミングなどがあります。

エクイティファイナンスの種類、資金調達と発行の仕組み

エクイティファイナンスには主に4つの種類があります。

この中でも現在、多くのスタートアップが外部から資金を調達するときに行う方法は、「第三者割当増資」になります。また、既存な株主が追加の出資などを検討してくれている場合は、「株主割当増資」というやり方で資金調達をとる場合が多いです。

公募(時価発行増資)

公募とは、時価に近い株価で新株を発行することを表しています。この発行価格については、価格決定から払込までに起こるであろう株価変動を考慮しながら、投資家の需要動向等も考慮して決定されます。公募増資とは、この新しい株式の発行し、取得の申し込みを一般投資家から募り、増資を行うことを表します。

株主割当増資

株主割当増資は、既存の株主に対して、新たな株式を割り当てる権利を与える増資のことを表しています。権利の割り当てに関しては、すでに保有している株式数に応じて決まります。この株式は有償であるため、既存の株主は株式の権利を新たに獲得するか否か自分自身で判断することができます。

第三者割当増資

第三者割当増資は、新たに発行した株式を特定の第三者に買い取ってもらい増資するやり方のことです。第三者とは、提携先の企業の役員やベンチャーキャピタル、エンジェル投資家などを表しています。

その他にも、M&Aなどで大企業の子会社化する場合などもこのやり方で行われる場合もあります。提携企業などに第三者割当増資を行ってもらうことで、より強固な関係性が築かれ、経営に有用な情報提供などもより積極的に行ってくれるようになります。

転換社債型新株予約権付社債(CB)

転換社債型新株予約権付社債は、株式と債券というどちらの側面ももった社債です。一定の価格で発行する企業の株式に転換できる権利がついた社債のことで、英語表記として、「Convertible Bond」となり、CBと略されることもあります。株式に転換するか、社債として転換しないままの状態にしておくかは自分で判断することができます。株式に転換した場合、予め価格は決定しているのでその決定している株価を上回った場合、大きな利益を得られることがあります。

「エクイティファイナンス」と「デットファイナンス」の違い

一般的にスタートアップなど会社に資産がまだ少ない企業は、大きく分けて2つの資金調達方法があります。それが「エクイティファイナンス」と「デットファイナンス」というやり方です。これらには、それぞれメリット/デメリットが存在するので、その違いについて詳しく説明していきたいと思います。

エクイティは資産、デットは負債

エクイティファイナンスで資金調達を行った場合、バランスシート上では「資本」の欄に記載されます。これがどんなことを表すのかについて説明していきます。

会社経営にとってキャッシュフローの管理は最重要項目です。経営状況が悪化し、銀行からの借入など「デットファイナンス」を行いたいと考えたとき、バランスシートの「負債」の欄をチェックされ、会社に今後返済する力があるのかどうかを検討されます。

このとき、負債額が大きいと銀行からの借り入れも難しくなります。エクイティファイナンスでの資金調達は負債にならないため、以降経営状況が悪化してデットでの資金調達を行うことも可能です。

返済義務の有無

エクイティファイナンスは、基本的に株式を譲渡する代わりに資金を貰うやり方なので、たとえ会社に返済能力がなくなったとしても返済をする義務はありません。デットファイナンスは、お金を借りるだけなので、もちろん返済義務は発生します。

ただ、これは一般論であり、エクイティファイナンスを行ったとしても、返済義務が発生する場合もあります。たとえば、第三者割当増資で外部の個人投資家から資金の援助を受け、その契約の一部で返済を約束した場合、返済義務が発生してしまうこともあります。

外部の個人投資家やベンチャーキャピタルなどを株主に迎え入れ、資金調達をする場合、契約形態など自社の顧問弁護士や税理士さんなどに相談してみることをお勧めします。

経営権への影響

エクイティファイナンスにて新株を発行し、その株を譲渡した場合、既存の株主の構成にも影響します。一番強く影響を受けるのが「議決権」です。会社を経営していく上で、この議決権という権利を過半数以上保有する人が取締役や監査役の選任や解任、3分の2以上保有していると、定款の変更や組織変更、事業譲渡などの経営判断もくだせるようになります。

基本的に過半数以上の株式を代表者が保持しているほうがさまざまな経営判断に対して迅速に対応することができることから、外部の投資家やベンチャーキャピタルは代表者がどのくらいの持ち株比率を保持しているのかも投資の検討材料になります。

投資家に支払うもの

エクイティファイナンスは配当金の支払い、デットファイナンスは利息の支払いを行います。配当金の支払いは経費になりませんが、利息の支払いは経費になります。

エクイティファイナンスにて支援する投資会社や投資家、事業会社などは一体何を目的としているかというと、キャピタルゲインや自社事業とのシナジーをうむ事業と強い関係値をもつために行っています。どちらも「投資によるリターン」を期待して出資を行います。

つまりエクイティファイナンスを行うということは、投資を受ける側の企業には「事業の成長」が求められるということです。いくら崇高なビジョンを掲げていたとしても、事業として成長する見込みがなければ、株式公開によるキャピタルゲイン(ここでは、株式公開=上場によって生まれる株価の急激な上昇から発生する利益)によるリターンもなく、投資によるメリットがなくなってしまいます。

投資家は良い意味でも悪い意味でも、事業の成長に率直な意見を出してくれます。彼らにとって、最大の恩返しは事業の成長によるリターンであることを心に刻んでおくことをお勧めします。

エクイティファイナンスのメリットは大きい

エクイティファイナンスは、前述してきた通り「企業の大きな成長」見込みがあれば可能な資金調達方法です。難易度は高いですが、エクイティファイナンスで資金調達ができると大きなメリットがいくつもあります。

返済義務がない

エクイティファイナンスは、基本的に「返済期限のない資金調達方法」です。会社経営にとってキャッシュはとても重要な資産の一部であり、毎月決まって何かを返済する必要もなく、返済に追われて経営が圧迫されることもないので、その点安心できる資金調達方法です。

多額の資金を調達できる

エクイティファイナンスは、デットファイナンスと違い、そもそも「企業の大きな成長」を一番重要な指標として用いて、投資をするやり方で、企業価値が高いことや、起業家に大きな魅力がある場合などは、担保なしで大きな資金を獲得することができます。

赤字でも調達できる

エクイティファイナンスとデットファイナンスの大きな違いの一つでもある、出資の視点。デットでの資金調達は、「今」>「未来」となり、今現状の経営状況が見られる一方、エクイティでの調達は、基本的に「今」<「未来」が大切にされます。これが何を表しているかというと、いま経営状況が悪かったとしても、起業家のポテンシャルや組織の強さ、事業の成長率、市場の可能性など様々な点を加味した上で、「企業の成長可能性が高い」場合は資金を調達することが可能だということです。

エクイティファイナンスの注意点

エクイティファイナンスは、返済期限もなく、多額の資金を調達することが可能など多くのメリットもある一方、株主が増えることの影響など、デメリットも発生します。

会社の経営権や配当方針に影響が出る

エクイティファイナンスで、株主が増えることで、経営の舵取りに影響が出ることもあります。それは、新しく入った株主が「議決権」を保有する形になるためです。そのため、エクイティファイナンスを行う上で重要なのが、まずは、調達をする以前に、企業全体の今後の経営方針、事業成長戦略など中長期のスパンでしっかりと計画を立てておくことです。そして、その方針を株主とすり合わせた上で資金調達を行うことをおすすめします。基本的に方針があっていないと、そもそもエクイティで資金調達をすることはできないことが多いです。

株主からの信頼が落ちる

エクイティファイナンスを行うことで、発行株式数が増え、株主の持ち株比率に影響がでます。これにより、既存の株主がもつ影響力が薄くなるので、エクイティファイナンスを行うときは必ず既存の株主と相談をした上で行いましょう。

株価に影響が出る

エクイティファイナンスを行い、新株の発行をすることによって、1株当たりの価値が低下し、既存の株主の期待値が探り、株価を下落させてしまう可能性もあります。ただ、これも一概には言えずに、シナジーある分野の企業からの調達だったりすると株価が上昇することもあります。

手続きに時間がかかる

エクイティファイナンスを行う手続きは、基本的に会社法に沿って、投資元の条件や内容などについて取締役会/株主総会にて決議を行った上で、入金を受けます。そして資本金を増やしたことによって、資本変更登記を法務局で行う必要があります。

直近で入金が必要な場合は、手続きにある程度時間がかかることを考慮しておきましょう。

エクイティファイナンスを成功させるには

エクイティファイナンスを成功させるためにやるべきこと、集中して取り組む必要があることは何かについて説明していきます。

エクイティファイナンスを行うことでの影響をしっかり認識する

これまで述べてきた通り、エクイティファイナンスを行うと株主へ大きな影響を与えることになります。そのためエクイティファイナンスを行うタイミングもしっかり見定めて行いましょう。タイミングとは、注力したい事業を大きく成長させるために、多額の資本投下をしてでも市場の中でもいいポジションを取りにいきたい場合などがあります。株価の希薄化や株主などの影響も、基本的に「事業成長に必要な調達」であり、事業の方向性もしっかり統一されていれば大きな問題はあまり起こらないでしょう。

ただし、第三者割当増資などでエンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどからエクイティファイナンスを行う場合、その時に交わす契約内容によっては今後の事業の進捗に悪影響を及ぼす可能性も十分にあり得ます。資金調達の詳しいことについては、専門家に相談することをお勧めします。

何よりも事業の成長にコミット

エクイティファイナンスで資金提供をしてくれる株主は、基本的に「企業の成長可能性」を信じて、出資をしてくれます。エクイティファイナンスを成功させるためには、起業家として短期的な収益のみならず、世界や社会の大きな課題に対して真摯に向き合う姿勢や、組織としての強さなどあらゆる点を研ぎ澄ます必要があります。

実際の事例

ここまでエクイティファイナンスのメリット、デメリット、重要なポイントなどを説明してきましたが、実際にエクイティファイナンスで資金調達を行っている事例について、次はいくつかのスタートアップの資金調達実績をピックアップしていきます。

株式会社YOUTRUST

<サービス概要>

「友人の友人」までの転職・副業意欲が閲覧でき、スカウトメッセージが送れるサービス

<詳細>

2018年4月にサービスを本リリースしてから、約半年でユーザー4000人、約1年半でユーザー8000人/累計導入企業数180社以上という実績をもつ企業で、2020年1月にプレシリーズAラウンドにて1.1億の資金調達を実施しました。採用による組織拡大とプロモーション活動をより加速させるために行いました。

株式会社PoliPoli

<サービス概要>

2018年にサービス展開を始めたPoliPoliは、日本の国家システムの一部である「政治」にイノベーションを起こしているスタートアップです。ユーザーは、身の回りの社会課題をプロジェクトとして投稿ができ、そこで政治家の方々と議論ができるプラットフォームになっています。

<詳細>

2019年1月、第三者割当増資により総額約6000万円の資金調達を実施。F Venturesなど複数ベンチャーキャピタルからの出資を受けました。この資金は、「PoliPoli」の事業の発展のための開発・マーケティング費に主に使用されます。

まとめ

エクイティファイナンスは、返済義務もなくいい条件で多額の資金調達を行うことができるとても魅力的な手法ですが、その分デットファイナンスよりも重い「責任」が発生します。エクイティファイナンスを受けるということが何を意味するか、それは「会社を成長させる義務」が発生するということです。

もし、あなたが起業し、エクイティで資金調達をするのであれば、自分の立ち上げた事業や会社を信じて、出資してくれた株主たちへ、「会社の成長」をもって恩返しができるよう全力でコミットすることが求められます。

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