社員が辞めなくなる「一往復半のコミュニケーション」とは

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 長田 英史

はじめまして。私は「場づくり®」の専門家として、東京で25年間、職場の人間関係やコミュニケーションの改善、チームづくり、組織開発に関する研修やコンサルをしています。

職場の居心地が悪く空気が重苦しいと、生産性が落ち、離職にもつながります。離職率が高くなると事業も安定せず良いことはありません。かといって待遇を上げるのは容易ではありません。経営者としては、辛いところです。

しかし、すぐに待遇を変えられなくても、離職を減らすためにできることがあります。それは、職場の「空気」を変えることです。

今回は、すぐに実行できる「一往復半のコミュニケーション」や、もう一歩踏み込んだ施策として「感想会」の導入などの具体例を示しながら、離職を減らす「居心地のよい空気」の作り方についてお話したいと思います。

離職の「本当の理由」とは?

一度は「ここで働きたい」と思った人が、やがて「もう辞めたい」と思うようになる。その理由は何だと思いますか。

  1. 待遇への不満(給与や労働時間など)
  2. 人間関係への不満

以上のように、やはり待遇への不満がトップです(厚生労働省が発表「平成30年雇用動向調査結果の概況」「平成30年若年者雇用実態調査の概況」参照)。

待遇への不満は、入社前に示した条件と実際の乖離が激しければ当然ですが、多くの場合、ある程度は予想した上で入社しているはず。つまり、「待遇への不満」と言っても、「こんな人間関係の悪い居心地の悪い職場で、こんな待遇では不満」というケースが想定されます。

もし、職場の人間関係が改善され、「居心地のよい空気」が流れるようになれば、たとえ待遇に不満な部分があっても、そこに踏み留まる積極的な理由になります。

「空気」の正体とは?

職場の「空気(雰囲気)」の正体は、何だと思いますか。私が専門にしている「場づくり」の観点では、「空気の本質は人間関係」だと考えます。

試しに、劣悪な人間関係を想像してみてください。ちょっとでも本音を漏らそうものなら、後でどこにどんな風に伝わるか分からない…というような、警戒すべき人間関係です。

一方で、率直に本音を話し合える良好な人間関係も想像してみてください。意見の違いが合っても攻めたりせず、問題があっても「なんとかしよう」と話し合えるような人間関係です。

両者の空気は、大きく違います。空気の差は、人間関係の質の差です。もし、職場の空気が悪いと感じられるなら、それは人間関係が悪いのが原因です。

職場の立地や設備などへの不満も空気への影響はありますが、限定的です。たとえどんなに設備の整った快適な部屋でも、集まる人々の人間関係が劣悪なら、空気は悪くなります。

「空気」は作れる

多くの場合、目の前の空気は「なんとなくそうなってしまった結果」です。誰かが「こんな空気がいいな」と思って意識的につくったものではなく、気がついたらそうなってしまっていたのです。

また、日本社会は「空気を読んでそれに合わせること」を良しとします。根拠の曖昧な考え方ですが、そういう行動を取る人が多いことは、みなさまもご承知の通りです。

つまり、多くの職場では、「なんとなくできてしまったイマイチな空気に、みんなで合わせる」ということが起こっています。これでは、「居心地のよい空気」になどなるはずがありません。

「居心地のよい空気」をつくるためには、惰性の結果である目の前の空気を当たり前とせず、それを「つくろう」と意識することから始めます。適切な空気をつくることは、働く人たちを元気にし、生産性を向上させ、離職率の低下に直結する、大切な仕事です。

「本当に思ったこと」を伝える

居心地のよい空気をつくるためには、風通しをよくします。人間関係の風通しを改善するには、コミュニケーションの「質」と「方法」をワンセットで見直すことでアプローチできます。

コミュニケーションの「質」を改善するための基本は、率直なコミュニケーションを心がけること。「本当に思ったことを言う(心にもないことは言わない)」のが原則です。

日本社会は、相手への配慮から本音を隠し、上辺だけのやりとりに終始しがちです。でも、こちらが本音を隠して話しかけるということは、相手も本音を隠して返事をするということ。それが意図せず「本音は言えない空気」をつくることにつながります。

とはいえ、いきなり本音をぶちまけては相手を驚かせてしまいますから、そこは相手の身になって、言葉選びには配慮が必要です。「本音を隠すための配慮」ではなく、「本音を伝えて、本音を返してもらうための配慮」を心がけます。

一往復半のやりとり(ふんわりをはっきりに)

「配慮を持って本音を伝える」という基本を、実際に日々のやりとりに活かすとどうなるでしょうか。私は「一往復半のやりとり」を推奨しています。会議の場面などは、それを実践するにはちょうどいい機会です。

Aさん:「私は、◯◯については、△△すべきだと思います」

誰も反応せず、し~んとなりました。「一方通行」ですから、コミュニケーションとして成立していません。それに対し、

Bさん:「つまり、△△すれば、□□を改善できるということですよね?」

とBさんが返します。あなたの言っていることを、私はこう受け止めたけれど、それで合っていますか、という確認です。これで「一往復」。

さらに、AさんがBさんに「その通りです」や「そこはちょっと違って…」と返せば、「一往復半」が成立し、物事がはっきりしました。

「一方通行ではダメ」と考えている人が多いのですが、実は「一往復」でもまだ足りません。受け止めた方(Bさん)は納得していても、投げかけた側(Aさん)には分からないからです。

こうした「ふんわり」した状態を、「はっきり」に変えることで、コミュニケーションの成立を実感でき、「通じている」という感覚が安心感につながります。安心感は、空気を劇的に変えます。

余談ですが、ピンポイントで会議の場を改善すると、職場の空気を改善することにつながります。会議のやり方については、また別の機会にご紹介できればと思います。

感想会を開く

さらに、突っ込んだ手段を、ひとつだけ紹介します。それは「感想会」を開くことです。

「感想会」とは、会議や朝礼のような業務上の意志決定や連絡を行う機会ではなく、1日働いた後などに開かれる、一人ひとりが感じたことなどを出し合う集まりです。

少し前までの日本社会では、お酒の席でのコミュニケーションが活発でした。その場で普段話せないことを話して、人間関係を育んできた経験のある方も多いでしょう。でも、時代の移り変わりとコロナの影響で、そうした場はどんどん開かれなくなっています。

感想会のやり方はとてもシンプルです。一人ひとりが、その日の仕事を振り返って、嬉しかったことや悔いが残ったことなど、感じたこと=感想を話します。

例えば日報は、業務だけに焦点が当てられ感情面には触れません。当然のことですが、感じたことを表現しないでその場に居続けると、人は居心地の良さを感じにくい傾向があります。

1名3分話しても、5人なら15分ちょっとで終わります。ささやかな機会ですが、通常の報連相では出てこない一人ひとりの感じたことを知る良い機会になり、チームビルディングにも有効です。

全体でやるのが難しければ、少人数に分かれて開きます。デイリーが難しければ、週1回でもいいですね。業務の様子ではなく「人の様子」が分かるのは、お互いを知り、コミュニケーションを円滑にし、直接「居心地の良さ」をつくります。

居心地の良い職場で働ける幸せを

職場の居心地の良さは、立地や設備のことだと誤解されてきました。また、それらを改善するには、お金をかけるのが一番です。

でも、本当の意味での「居心地の良さ=人間関係」を改善するために必要なのは、お金ではなく心がけと工夫です。従業員をお客様扱いするのではなく、人と人のコミュニケーションをするだけでいいのです。

居心地の良い職場で働けることほど幸せなことって、そうそうないのではないでしょうか。

居心地の良さは、生産性を向上させ、離職率を引き下げます。ぜひ、あなたの職場に合う形で、実践していただけたらと思います。もしご自分の職場への活かし方で疑問などがあれば、お気軽にご相談いただければ幸いです。

執筆者プロフィール:長田 英史

社内のコミュニケーションやマネジメントに関する執筆や全国での講演・研修を中心に活躍されている長田アドバイザー。チーム作り、強い組織作りを支援します。温和で丁寧な対応で、起業家に寄り添ってくれるでしょう。

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