Vol.17 リアルタイムで財務状況を把握するには?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
「会 社を起こしたい。でも会計の知識がない」。そう心配に感じて起業をためらっている人もいるかもしれませんね。でも、会計の知識がなく起業し、会計ソフトを 役立てながら会社を軌道に乗せている先輩経営者もいます。そんな人にインタビューしてみましたので、大いに参考にしてください。

 

「働く」ことに関するイベントのスペシャリスト集団

 

 代表取締役 北出 実さん

  株式会社トラクション。採用セミナーなど「働く」ことに関するイベントの企画・制作・運営を事業とするスペシャリスト集団です。「“体感できる”という、 テレビやネット、印刷メディアに勝るイベントならではの特長を生かす企画にこだわり抜いています」と2005年2月に同社を創業した代表取締役の北出実さ ん。

 現在35歳の北出さんは、「28歳までニート状態だった」と言います。
「周りの友人たちは、当然のようにみんな働いて頭角を現している。それにコンプレックスを感じた私は、何にもしていない自分の存在価値を疑問に思いました。やっぱり、人の存在価値は働くことと切り離せないな、と」

 

「働く楽しさをもっと世の中に伝えたい」

 28歳になって、偶然、アルバイト先のイベント会社で役員をしている先輩から誘われて、その会社で仕事をやり始めた北出さん。

「仕 事をしていなかった反動で、猛然と働き始めました。1日18時間ぐらい(笑)。それまで、仕事なんて苦役でしかないと思い込んでいたんですが、こんなに楽 しいものだったのか、と思えたんです。しばらくして、この楽しさをもっと世の中に伝えたいと考えるようになりました」

 その会社で最初に担当した仕事は、就職情報サービス会社の主催する就職イベント。以降、もっぱらその顧客の仕事を担当し、「働く」ことをアピールするイベントの魅力に取りつかれていった北出さん。それが起業の動機になりました。

 

創業当初、会計業務はエクセルで

 創業以来、会計業務は北出さんがすべてこなしてきました。営業で精一杯だったので、会計は片手間の作業だったと言います。

「創業当初はなかなか仕事がなく、時間がありました。入るお金も出る経費も少なかったので、エクセルで十分でしたね。会計については全く知識がありませんでしたので、本を読みながらの作業でした」

 エクセルに入力したのは、請求書を発行した売上金額と、請求書を受領した原価金額、および経費。2月に創業し、8月に半期で第1回目の決算を行うことにして、7月に北出さんは税理士に決算業務を依頼します。「無頓着過ぎました(笑)」

「領収書や請求書の控えなどを全部渡して、上がってきた決算書を見てもわけがわかりませんでした。その時初めて“科目”という概念を知りましたし(笑)」

 

エクセル管理では「不安」が

 北出さんは、エクセルで管理している間、「実は不安があった」と言います。
「請求したお金が振り込まれるのは、請求月の翌月だったり翌々月だったり。また現金だったり手形だったり。手形もサイトに長短があったり。エクセルでは、それをわかりやすく一覧化して把握するのがとても大変でした」

 そのことを税理士に相談したところ、「会計ソフトを使えば簡単」と勧められたと言います。「凝り性」を自任する北出さんは、ホームページで“お試しダウンロード”を使って複数の会計ソフトを比較検討。使いやすいと感じたものを購入します。

 

 

貸借対照表が簡単に出力できることに注目

「税理士に決算業務で入力したデータをもらい、それを使っていろいろ触りながら会計ソフトをマスターしていきました」と言う北出さんは、貸借対照表が簡単に出力できることに注目。株式のオンライントレードが趣味だった北出さんは、その見方を知っていました。

「それまで、経営というものに気負っていたところがあったと思います。貸借対照表を見て、うちには固定資産も在庫もないことを再認識。もっとシンプルに考えればいいんだ、と思い直しました」

 

ファイナンシャル・リテラシーの重要さを実感

 会計ソフトを導入してからというもの、エクセルではできない貸借対照表や損益計算書、資金繰り表などの出力や、前月との比較などが簡単にできるようになりました。
「入力などの作業時間も短くて済む。さすが専用ソフトだと思いましたね」

 独立する時にはあまり考えていなかった会計業務。
「起業して、ファイナンシャル・リテラシーの重要さを実感しました。会社の未来をつくっていくには、現状の財務状況を数値的に把握することがベースになりますから」

 

財務状況を公開、“全員参加”の経営

 来年度に事業拡張を検討しているという北出さんは、よく貸借対照表を持って銀行を訪れているそうです。
「会 社の担保価値を確認しておきたくて。いま事業資金を借りるとしたらいくらまで借りれるか、常に把握しておきたいんです。前年度と比較した資料を使って自社 の状況や将来展望を説明し、銀行の担当者と議論すると、鍛えられる感じがしています。それができるのも、会計ソフトで財務諸表が簡単に出力できるおかげで すね」

 そして、財務データは従業員全員に公開し、業績管理に役立てているそうです。
「会計ソフトからエクセルデータを出力し、共 用サーバーに入れて全員が閲覧できるようにしています。受注したら、売上額のほか、原価や経費の見込み額を入力して、会社の業績状況をリアルタイムで把握 できるようにしています。イベント会社は、現場で思わぬトラブルが起きて余計な経費が発生することがよくあります。だから周到な準備が大切。社員一人ひと りが高い意識や経理感覚を持って仕事をしてほしい。そんな“全員参加”の経営をしていきたいですね」

 

店舗概要

株式会社トラクション
事業内容/イベントの企画・制作・運営
設立/2005年2月
資本金/1000万円
代表者/代表取締役 北出 実
売上高/3億円(2007年8月期見込み)
従業員数/5人
所在地/東京都新宿区

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