Vol.19 消費税の申告には注意点がいっぱい!?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
個人でも法人でも、売り上げが1000万円を超えると、消費税が課税されます。この申告作業を行うにあたって、どういったことに注意が必要でしょうか。

 

消費税は「担税者」と「納税者」が異なる

 

  消費税とは、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課される税金のこと。1989年に導入された当初の税率は3%でしたが、97年4月から 5%(国に収める分消費税4%、都道府県に納める地方消費税1%の合計)に引き上げられました。少子高齢化の進展で年金の財源が不足し、近い将来、社会保 障費用を確保するためにさらに税率を引き上げる議論がされていることは、皆さんご存じのことと思います。

 所得税や法人税は事業者が申告・ 納税することになりますが、消費税は間接税のため、実際の税金を負担する担税者と納税者が異なります。担税者とは、消費税を負担する消費者のこと。消費税 は、商品の販売やサービスの提供などを受けたときに課され、消費者がこれを負担することになります。納税義務者とは、国内において課税資産の譲渡などを 行った事業者、つまり商品の販売やサービスの提供を消費者に対して行い、その分の消費税を(国や都道府県に代わって)受け取った事業者を指します。

 

2年前に*課税売上が1000万円以上あると課税事業者に

  納税義務者、つまり課税事業者は、課税される年度(個人事業者の場合は1月1日から12月31日まで、法人の場合は事業年度)の2年前に*課税売上が 1000万円以上あった者。この2年前のことを「基準期間」といいます。つまり、2006年度に1000万円以上の課税売上があった事業者は、2008年 度に課税事業者になるわけです(ただし、資本金1000万円以上の法人は、設立初年度から課税事業者となります。2006年5月に会社法が改正され、株式 会社の最低資本金1000万円という規制が撤廃される前は、株式会社はおしなべて課税事業者になったわけです)。

*課税売上:国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付および役務の提供を行ったものが対象となる。つまり、通常の商品の販売やサービスの提供以外に、資産の売却なども対象となる。詳細は国税庁のホームページを参照のこと。

 

「原則課税」と「簡易課税」の2種類がある

 消費税を申告・納税する際には、「原則課税」と「簡易課税」の2種類があり、課税売上が5000万円以下の課税事業者はどちらかを選ぶことができるようになっています(課税売上が5000万円超の事業者は原則課税のみ)。

 原則課税とは、売り上げによって受け取った消費税から、仕入原価や経費として支払った消費税を差し引いて消費税額を求める方法のことをいいます。原則課税の計算方法は以下のようになります。

Ⅰ 課税期間の課税売上高(税抜)×4%-課税期間の課税仕入高(税込)×4/105=消費税の納税額
Ⅱ 消費税の納税額×25%=地方消費税の納税額
Ⅲ Ⅰ+Ⅱ=納めるべき消費税額

 簡易課税とは、課税売上にかかわる消費税額に*事業区分に応じた「みなし仕入率」を乗じて簡易に消費税額を算出する制度のことです。簡易課税の計算方法は以下のようになります。

Ⅰ 課税期間の課税売上高(税抜)×4%(売り上げに対する消費税額)-売り上げに対する消費税額×みなし仕入れ率(仕入れに含まれる消費税額)=消費税の納税額
Ⅱ 消費税の納税額×25%=地方消費税の納税額
Ⅲ Ⅰ+Ⅱ=納めるべき消費税額

事業区分 事業内容 みなし仕入れ率(≒売上高に対する経費比率)
第1種 卸売業 90%
第2種 小売業 80%
第3種 製造業等(建設業等も含む) 70%
第4種 その他の事業(飲食業、金融業等) 60%
第5種 サービス業(不動産業、情報通信業、労働者派遣業等) 50%

 

 

どちらがトクかは要シミュレーション

  サービス業は、経費の大半が人件費であることから、物財の仕入れは少ないと判断されているようですね。なお、2種類以上の事業を営んでいる場合には、原則 として、事業の種類ごとの売り上げに対する消費税額にそれぞれのみなし仕入れ率をかけた金額の合計額が、仕入れに含まれる消費税額とみなされます。

  簡易課税は、原則課税のように複雑な課税仕入れを計算しなくてもよいというメリットがあります。なお、納税額としてどちらがトクかは一概にはいえません が、一般的に売上金額が減る場合は原則課税のほうが得になる場合が多いようです。実際は、それぞれの方法で計算して比較するしかありません。確かめてみる には、それぞれの方式で税額をシミュレートできる会計ソフトの利用が手軽でしょう。

 

消費税の手計算は「至難の業!?」

  なお、簡易課税の選択は、法人の場合は適用事業年度開始の前日、個人の場合は適用年度の前年の12月31日までに税務署に届け出なくてはなりません。ま た、一度簡易課税を選択すると、2年間は原則課税に変更できませんので注意が必要です。課税売上が大きい事業者の場合、どちらにするかで相当な違いが出る 場合もあり、税務署に対する各種の届出書の提出を忘れた税理士が損害賠償の請求をされたというケースもあります。

  受け取った消費税、支払った消費税を手計算で算出するのは、作業として大変な上に、集計ミスや計算ミスがつきもの。さらに、*非課税取引の選別や*端数計 算など、消費税の計算は相当面倒です。そういった計算を全部自動的にやってくれて、申告書の作成もワンタッチでできるのが会計ソフトなので、課税事業者に なる可能性のある人は、ぜひ活用することをお勧めします。

*非課税取引:土地、有価証券、商品券などの譲渡、預貯金の利子や社会保険医療など
*端数計算:
●課税標準額の金額に1000円未満の端数があるときは、その端数を切り捨て。
●課税仕入れにかかわる消費税額の金額に1円未満の端数があるときはその端数を切り捨て。
●課税標準額に対する消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額などを控除した税額に100円未満の端数があるときは、その端数を切り捨て。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める