上場ストップもある。遅れがちな労務人事の対応

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
今回は、特に株式 公開(IPO)との関係で、労務人事に関してどのようなことに注意すればよいのかについて、具体的に説明していきたいと思います。

 

労働関連法規の遵守(コンプライアンス)

 株式公開のための上場審査においては、コンプライアンス(法令遵守)状況が重視されます。労務との関係では、特に、労働関連法規を遵守しているか が問題となります。そこで、まず、人事関係の諸規程がきちんと制定されて、運用されているかが問題となります。ベンチャー企業のなかには、単に人事関係規 程集などからのサンプルを使っているだけで、実態に合致しない諸規程で、従業員とのトラブルを発生させているところもあります。従って、人事関係の諸規程 について会社に合わせたものを制定することが大切です。

 人事関係の諸規程を整備したとしても、その運用状況も重要で、行政が取り締りを強めている残業代未払いやアルバイト・パート従業員の社会保険未加 入には注意が必要です。

 労働基準法では、法定労働時間(一日8時間)を超える労働については割増賃金の支払いが必要とされています。しかし、実際には、近年問題となって いるように、「サービス残業」として残業代が支払われないケースが多くあります。

 また、アルバイトやパート職員の社会保険未加入もしばしば問題となります。本来、正社員でなくても、法律に定められた一定の条件を満たした職員に ついては社会保険への加入が義務付けられているのです。加入希望者だけの加入は法律に違反しています。

 ベンチャー企業においては、これらの事項に関して問題が生じがちです。これらが発覚した場合には過去にさかのぼって不足分を支払う必要があり、も し恒常的に行われていたとしたら莫大な額になりかねません。このような問題には大きなリスクを招く可能性があるために上場審査がストップしてしまうことも あります。労務関係のコンプライアンスは上場審査ではもっとも重要な事項ですので、公開を目指すことを決めた段階で、社会保険労務士の先生に依頼するなどし て、問題をなくすことが大切です。

 

個別人事労務問題への対応

 人事関係の諸規程をすべて整えたとしても、人を雇っている会社にとって、個別の人事労務問題は避けて通れません。最近、新聞でよく報道されるもの としては、セクハラ、うつ病、過労死などの問題が挙げられます。これらが発覚し、当事者が訴訟を提起した場合、そのこと自体が会社に対する市場の信頼の低 下をもたらします。また、会社に対して損害賠償を認める判決が出た場合には、会社の資産が減少することになりますので、上場審査中において会社の公開のた めに大きなリスクになるといえます。

 個別の人事労務問題を、根絶することはなかなか難しいものですが、リスクを軽減していくことは必要です。予防手段としては、社員教育を徹底し、問 題が起こりにくい風土を築くことや、就業規則などにおいて禁止される行為やそれに対する罰則を明確化し、周知徹底しておくことなどが考えられます。また、 万が一問題が起こったとすれば、問題が大きくなる前の早い段階で、会社として把握し、対処していくことが必要となります。

 

管理部門の強化の必要性

 管理部門とは、一般的には会社において人事、法務、経理、財務を担当する部門のことを指します。つまり、これまで説明してきたような会社内で起こ りうる問題に対処するのが管理部門なのです。そこで、管理部門が組織化され適切に動いていることは株式公開にとって重要なことといえます。また、そもそも 上場審査の段階では、管理部門が会社の先頭に立ってさまざまな準備をすることになります。このような意味で、ベンチャー企業の株式公開の準備においては、 管理部門の人材が極めて重要となり、そのための人材確保が大切なのです。

 

 

<参考サイト>
みらいコンサルティング株式会社 http://www.miraic.co.jp/case/column/
みすず監査法人のグループ会社であり、経営コンサルティングを行う会社のサイトです。
「事例紹介」のコーナーにおいて、法律、会計、労務などの専門家が株式公開(IPO)に
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