会社経営に必要な法律 Vol.52 「イクメン社員」が中小企業でも増加中

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

2010年6月30日から改正育児・介護休業法(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)が施行されています。また、2012年7月1日からは、従業員100人以下の企業についても、3歳未満の子どもを育てる労働者の短時間勤務制度の導入が義務付けられます。このような状況下において、最近、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の向上に積極的に取り組む中小企業が増えています。今回はこのニュースを取り上げて、改正育児・介護休業法の主な改正点やベンチャー企業の経営者として検討すべき事項について解説します。
 

[ニュースの概要]

イクメンイメージ1男性の育児休業取得を促進することなどを柱とした改正育児・介護休業法が2010年6月30日から施行されています。これを受け、厚生労働省では、育児に積極的な男性を意味する「イク(育)メン」という言葉を広め、働く男性の子育てや育児休業取得を後押しする「イクメンプロジェクト」をスタートさせました。

プロジェクト立ち上げの背景には、女性の育児休業取得率が約9割に達する一方で、男性の取得率が依然として低いという現状があります。厚生労働省によると、3割の男性が「育児休業を取得したい」と希望しながら、実際の男性の取得率は1.23%(2008年度)にすぎません。日本の子育て世代の男性の労働時間は、諸外国と比べても長く、他方、家事・育児時間は、先進国の中では最低レベルとなっています。

ただ、最近では、経営効率を高めるなどの目的から、多様な働き方が企業側にも受け入れられるようになり、短時間勤務や在宅勤務など、大企業と比較して、中小企業では遅れがちであったワークライフバランス向上に積極的に取り組む中小企業が少しずつ出てきているようです。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2009年12月に中小企業の経営者と従業員を対象にして実施した調査では、ワークライフバランスに積極的に取り組んでいる企業では、「会社の発展のために人並み以上の努力をすることをいとわない」「今の職場で働いていることを誇りに感じる」と答えた従業員比率が約6割と高いのに対し、消極的な企業では約3割と低くなっています。また、積極的な企業では、「退職者が減った」「現場での創意工夫が増えた」と答えた経営者が多かったそうです。こうした調査結果から、ワークライフバランスへの積極的な取り組みは、企業活動にもプラスの効果を及ぼしていることが伺えます。
 

[法律上の問題]

今回の改正育児・介護休業法改正のポイントは大きく2つ。ひとつは、子育て期に多様な働き方ができるように選択肢が広げられたこと、もうひとつは、男性が子育てに参加できるようにするための制度(「パパ・ママ育休プラス」)が新設されたことです。

(1)子育て期における多様な働き方の見直し
子育て期間中の働き方については、次のような改正が行われています。
 1:3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者から請求があった時は所定外労働を免除することの制度化
 2:子の看護休暇制度の拡充(子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)

(2)男性が子育てできる働き方の実現
男性の育児参加を推進するための制度が新設されました。
 1:父母ともに育児休業を取得する時は、子が1歳2カ月に達するまでの間に、1年まで休業することが可能(「パパ・ママ育休プラス」

(A)育児休業は1人の子について原則1回であるが、出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した時は、理由がなくても2回目を取得することが可能

(B)配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得を不可とすることができる制度の廃止
 

[ベンチャー企業として]

イクメンイメージ2「イクメン」とは、仕事をしながら育児を楽しむ男性のことをいいます。
最近では、文京区の区長が2週間の育児休暇を取得したり、タレントのつるの剛士氏が第4子の育児のために2カ月間休業したりして話題になっています。
ソフトウェア開発会社であるサイボウズ社の青野社長もイクメンのひとりで、2010年8月下旬から2週間の育児休暇の取得を予定しています。同社では2006年から最長6年の育児休暇制度を設けており、社長が率先して育児休暇を取得するのは、男性社員の育児休暇を取りやすくするという狙いもあるようです。

日本の労働時間の長さは先進国の中では高水準にありますが、日本の労働生産性は決して高くはありません。先進7カ国の中では最下位、OECD加盟30カ国中でも第20位(労働生産性の国際比較2007年)とかなり低くなっています。この調査結果からわかることは、「長時間労働は、必ずしも付加価値を生み出すことにはつながっていない」ということです。また、長時間労働は、労働者の疲労感を高め、働く意欲に悪影響を与えます。過重労働によるうつ病や自殺の発生などのメンタルヘルスの問題は、社会的問題にもなっています。

2008年のリーマンショック以降、コストの削減は、企業にとって必須となっています。仕事の効率化を図り、労働時間の短縮化に取り組むことは、大きな痛みを伴うことなく実行することが可能で、かつ、即効性も期待できるものです。また、労働者にとって働きやすい環境を整えることは、優秀な人材の確保にもつながります。サービス残業を強いられないコンプライアンスが徹底された職場では、労働者の仕事に対するモチベーションが高められ、労働効率が高まることは、先の調査結果にも表れているところです。

経営者として求めるワークライフバランスの本質は、働き方の無駄を排し、短時間で生産性の高い仕事を実現し、企業の収益力を高めることにあります。ベンチャー企業の経営者にとって、不況が長引き、市場環境が整っていない今こそ、仕事内容や仕事量を見直し、労働時間の短縮化や働き方の多様化を実現するための仕組みを整えるチャンスです。自社におけるワークライフバランスの実現に積極的に取り組んでみてほしいと思います。

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