新事業進出補助金は個人事業主も使える? 対象条件・注意点・申請準備を解説

この記事は専門家 上野 光夫 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

中小企業や個人事業主が新たな市場への進出や高付加価値なビジネスモデルへの転換を図る際、強力な支えとなるのが「新事業進出補助金」です。この制度は法人だけでなく、一定の条件を満たす個人事業主も申請対象となり得ます。

ただし、単に対象になるか否かを確認するだけでは不十分です。大きな投資額に対する経営判断や、後払いの資金繰り、きびしい賃上げ要件などを踏まえ、自ら事業を完遂できる管理体制が整っているかが採択の鍵となります。

本記事では、個人事業主が本補助金を活用する際に必須となる基礎知識や、審査を勝ち抜くための準備のポイントを網羅的に解説します。制度を戦略的に活用し、さらなる飛躍を目指すためのロードマップとしてお役立てください。

この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング/ 資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
プロフィールを見る>>

- 目次 -

1.新事業進出補助金とは?

中小企業等の成長を後押しするための本制度は、従来の事業の枠組みを越えた新たな挑戦を支援するしくみです。ここでは、制度の基本構造を理解していきましょう。

1)新市場・高付加価値事業への進出を支援する補助金

本制度のポイントは、既存事業とは明確に異なる新市場への展開や、より付加価値の高い事業への進出を促進することにあります。単なる設備の買い替えや、既存商圏内での販売促進ではなく、事業構造を大きく変革しようとする意欲的な取り組みが必要です。企業規模の拡大や生産性向上を目的とし、結果として従業員の賃上げや地域経済の活性化へつなげることが最終的なゴールとして設計されています。

2)補助金額・補助率の概要

補助上限額は従業員数に応じて細かく設定されており、規模に応じた投資が可能です。補助率は原則として2分の1ですが、賃上げ特例などを活用することで引き上げられる枠組みも存在します。

一方で補助下限額も設定されているため、あまりに小規模な設備投資では制度の趣旨から外れる可能性があります。自身の事業規模が、どの補助枠に適合するのかを確認することが大切です。

3)対象経費の概要

補助対象となる経費は、機械装置やシステム構築費といった設備投資が中心です。そのほかにも、建物の改修費や技術導入費、専門家の活用経費、さらには販路開拓に必要な広告宣伝・販売促進費なども認められます。ただし、経費として計上すれば必ず全額が認められるわけではありません。事業計画との関連性が高い経費であるかどうかがきびしく精査されるため、計画段階から的確な予算配分を検討しておく必要があります。

【無料で完成】事業計画書作成ツール
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

  • 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
  • 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
  • ブラウザに一時保存可能。すべて無料
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

2.新事業進出補助金は個人事業主も対象になる?

個人事業主にとって、補助金は大きな投資への足がかりとなりますが、法人とは異なる慎重な確認が求められます。

1)公募要領上、個人も対象に含まれる

公募要領を確認すると、中小企業者の定義のなかに「個人」が含まれています。そのため、個人事業主であっても申請じたいは可能です。ただし、ここでいう個人事業主とは、法人と遜色ない規模で事業を継続しているケースを想定していることが多く、単に副業や小規模な形態でおこなっている場合は対象外となる可能性が高いといえます。

2)すべての個人事業主が対象になるわけではない

法人と同様に、業種や従業員数さらには事業の実態が審査され、とくに過去の確定申告実績や事業としての継続性、収益の安定性など、経営者として事業を継続できる能力が問われます。また、従業員を使用していない事業者や、反社会勢力に関連している事業者は対象から除外されます。自身が公募要領の定める要件をクリアしているか、早期に自己診断をおこなうことが肝要です。

3)開業前・創業直後の人はとくに注意

本補助金は「既存事業とは異なる新事業への進出」が前提条件です。つまり、現在すでに一定の事業実態があり、そのうえで新しい市場へ挑戦するというストーリーが必要です。開業したばかりで既存事業の実績がない場合、審査において「既存事業の強み」を説明することが困難になります。創業間もない時期は、本補助金よりも別の創業支援制度の方が適合するケースが多いため、自身のフェーズに合わせて適切な制度を選ぶことが必要です。

3.個人事業主が確認すべき主な要件

新事業進出補助金は、公的な資金を投入する制度であるため、その申請要件は非常に厳格です。個人事業主が申請を検討する際には、制度が求める高いハードルをすべてクリアし、計画期間終了後もその状態を維持できるかを冷静に判断しなければなりません。ここでは、申請の前提となる重要な要件をひとつずつ詳細に解説します。

1)新事業進出要件

本制度でもっとも重視されるのが、この「新事業進出」の定義です。既存の事業内容をわずかに修正したり、提供しているサービスに多少のオプションを追加したりする程度では、新市場へ進出したとは認められません。既存事業の枠組みを超え、新しい製品やサービスを用いて、全く異なる市場を開拓しようとする明確な意志と計画が求められます。公募要領に記載された「新事業進出要件」を熟読し、自社の計画が「前向きで革新的な挑戦」であることを論理的に証明してください。なぜ既存のままではいけないのか、そしてなぜ新市場でなければならないのかという必然性を審査官に伝えることが、補助金採択への第一歩となります。

2)付加価値額要件

次に確認すべきは、将来の成長を示す「付加価値額要件」です。これは、事業計画期間(通常3〜5年)において、付加価値額の年平均成長率が一定基準以上増加する見込みを示す必要があります。付加価値額とは、営業利益、人件費、および減価償却費の合計を指します。つまり、単に売上を伸ばすだけでなく、人件費を支払い、設備投資をおこないながらも、経営としての利益率をしっかりと高めていくというバランスのよい成長ロードマップが不可欠です。この数値目標は計画書内で根拠をもって算出しなければならず、実現可能性の乏しい過大な数値目標は、かえって審査上のマイナス評価につながるため注意が必要です。

3)賃上げ要件・事業場内最低賃金要件

補助金の採択において、賃上げは避けて通れない最重要事項となります。計画期間を通じて一人当たりの給与支給総額を年平均で一定割合以上増加させなければならないため、高いハードルとなるでしょう。また、事業場内最低賃金についても、地域別の最低賃金より一定水準以上高く設定し、継続的に引き上げていく義務が生じます。

これらは単なる努力目標ではなく、目標が未達となった場合には受給した補助金の一部返還を求められるという厳重なペナルティが存在します。事業収益が計画どおりに伸び悩んだ場合でも、この賃上げを断行できる資金的な余力を考慮したうえで申請判断をおこなうことが、経営者としての責任ある姿勢といえます。

4)ワークライフバランス要件

職場環境の整備についても、国は高い基準を設けています。「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画を策定し、公表することが求められます。これは、従業員が仕事と家庭を両立しやすくするための具体的な取り組みを宣言するものです。個人事業主であっても対象となりますので、自社の組織状況に合わせて計画を作成し、関係各所へ届け出る手続きを進めてください。この行動計画の内容は、単なる事務手続きと捉えず、自社の生産性向上や優秀な人材を確保するための経営戦略の一環として捉えることが望ましいといえます。

5)金融機関要件

最後に、金融機関との連携についてです。補助事業の実施にあたって金融機関から資金調達を検討する場合、あるいは本制度のしくみ上必要な場合、取引のある金融機関等から事業計画の客観的な確認を受けることが推奨、あるいは求められることがあります。金融機関による確認は、単なる事務的なプロセスではありません。プロの視点から、自社の事業計画の甘さや、財務上のリスクを指摘してもらう貴重な機会です。資金計画に無理がないか、この事業には返済能力があるかといった観点からきびしくチェックを受けることは、結果として申請書の質を大幅に高め、採択の可能性を押し上げる結果につながります。金融機関への相談は、申請の直前ではなく、計画の骨子が固まった段階で早めにおこなっておくのが賢明です。

【無料で完成】事業計画書作成ツール
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

  • 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
  • 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
  • ブラウザに一時保存可能。すべて無料
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

4.個人事業主が申請時に注意すべきこと

個人経営だからこそ、投資判断には冷静な視点が求められます。補助金を活用した後の経営まで見据えた準備をしましょう。

1)既存事業と新事業の違いを明確にする

審査官は「既存事業の延長で、単に設備を更新したいだけではないか?」という疑いを持って申請書を読みます。既存事業の成功体験を活かしつつも、これまでとは全く異なる顧客層や市場へのリーチ方法を具体的に言語化してください。既存事業が安定しているからこそ、新しい挑戦ができるという構図を示すことが重要です。

2)事業規模に対して投資額が過大でないか確認する

個人の資金力は法人にくらべて限定的であることが一般的です。背伸びをした過剰な設備投資は、万が一事業が想定どおりに進まなかった際に、経営者個人の資産を大きく圧迫する恐れがあります。売上の成長見込みと投資額のバランスをシビアに精査し、借入金を含めた返済能力の範囲内で計画を立ててください。

3)補助金は後払いであることを前提に資金計画をつくる

多くの申請者が忘れがちなのが、補助金の入金時期です。補助金は事業が完了し、実績報告が受理されてから支払われます。つまり、投資に必要な資金は、あらかじめ自己資金や融資で用意しておく必要があります。手元の現金が枯渇して事業じたいが頓挫しては本末転倒ですので、資金繰り計画は慎重に作成してください。

4)申請書は本人が責任を持って作成する

外部のコンサルタントや専門家から助言を受けることは認められていますが、計画書の内容そのものを外注して提出するのは避けるべきです。審査では「経営者自身の言葉で語られているか」「熱意があるか」が問われます。他人の書いた文章では、いざという時のリスク対応や市場の変化に対する適応力が伝わりません。必ず経営者自身が責任者として作成してください。

5.個人事業主が事業計画書で書くべきこと

事業計画書は、審査官に向けた提案書であり、同時に自らの経営ロードマップです。

1)既存事業の内容

まずは、今の事業がどのように成り立っているのかを整理します。売上の主な構成、ターゲット顧客、そして自社の強みと課題を客観的に記述してください。ここがしっかりしていないと、新規事業の説得力も生まれません。

2)新規事業の内容・目的

新規事業は具体的に何をおこない、誰に何を売るのかを定義します。既存事業とは何がちがうのか、そしてなぜこの事業を今始める必要があるのかという目的を明確にしましょう。

3)現状分析・SWOT分析

SWOT分析を用いて、自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を整理します。この分析を通じ、新規事業への進出が外部環境の変化にどう対応し、自社の強みをどう活かすものなのかを説明します。

4)競合分析・市場性

市場は本当に伸びているのか、競合他社にはない自社だけの勝ち筋は何かを論じます。価格競争に巻き込まれないための独自の強みや、顧客から選ばれる理由を明確にしてください。

5)収益計画・資金計画

数字の根拠を明確にすることが不可欠です。売上単価、販売数、原価、人件費、そして補助金を活用した投資の減価償却までをシミュレーションします。利益がどう向上し、賃上げ原資をどのように確保するか、具体的な収益計画として提示してください。

6.個人事業主に向いているケース・向いていないケース

すべての個人事業主が本補助金を活用すべきというわけではありません。自社の状況を冷静に分析しましょう。

1)向いているケース

すでに既存事業が安定しており、一定の資金的な裏付けがある場合は非常に有利です。加えて、新事業と既存事業の相乗効果が明確であり、賃上げ等の要件を満たしたうえで、今後数年間の成長ロードマップを具体的に描けている事業主であれば、本制度を最大限に活かせるでしょう。

2)向いていないケース

開業して間もない事業主や、本業の足元が不安定な場合は注意が必要です。また、補助金がないとそもそも事業計画が成り立たないような、補助金依存型の経営計画も不採択となる可能性が高いといえます。資金繰りに余裕がない状態で補助金に頼り切ることは、リスクの増大につながります。

3)ほかの補助金を検討した方がよいケース

設備投資が小規模であったり、販路拡大が目的であったりする場合は、小規模事業者持続化補助金や、自治体独自の支援制度の方が適していることがあります。まずは、自身の投資規模と、期待する支援内容が本制度の趣旨と合致しているかを比較検討してください。

7.よくある質問

1)個人事業主でも申請できますか?

はい、条件を満たせば申請可能です。ただし、公募要領を確認し、自身が対象事業者として認定されるか、まずはその点から確認してください。

2)開業したばかりでも申請できますか?

実態があるかどうかが重要です。確定申告の実績などが全くない状態では、事業計画の実現可能性を証明することが難しく、審査において不利になるのが一般的です。

3)採択後すぐに補助金はもらえますか?

いいえ、原則として後払いです。事業実施期間中は自社の資金で持ちこたえる必要があるため、事前の資金調達計画を立てることは不可欠です。

8. 新事業進出補助金の相談先

補助金申請はプロと相談しながら進めるのが得策です。申請書の書き方や事業計画を一緒に練ってもらえます。

上野 光夫(うえの みつお)

相談はこちら:
https://www.dreamgate.gr.jp/consul/pro/mmconsulting

中野 裕哲(なかの ひろあき)

相談はこちら:
https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/vspirits?advisor_field_id=

西尾 英樹(にしお ひでき)

相談はこちら:
https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/hidekinishio?advisor_field_id=

9.まとめ|個人事業主は「対象になるか」だけでなく「実行できるか」を確認する

まとめ概要

新事業進出補助金は、個人事業主にとっても大きな飛躍を遂げるための有力なツールです。しかし、申請資格があるかどうかはあくまで入り口に過ぎません。真に重要なのは、制度目的を正しく理解し、自社の既存事業の強みを活かしつつ、新市場で確実に勝てるための事業体制を整えることです。

投資額の妥当性、後払いを前提とした資金繰り、そして賃上げ要件という責任をともなうハードルを、自分自身で乗り越える覚悟があるか。そうした経営者としての姿勢を証明することこそが、採択への最短ルートといえます。補助金という機会を単なる資金援助としてではなく、事業そのものを次のステージへ引き上げるための戦略的な投資として活用してください。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
Facebook | X(旧:Twitter)

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める