退職前でも創業融資は相談できる? 会社員のうちに準備すべきことを解説

この記事は2026/08/29に専門家 上野 光夫 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

会社員を辞めて起業を志す際、退職前に創業融資の準備や相談が進められるのか不安に思う方は少なくありません。結論から申し上げますと、在職中であっても融資の準備や相談を進めることは十分に可能です。

ただし、退職前の準備において真に重要なのは、会社員としての信用を頼りにすることではありません。退職後に発生する収入の空白期間を乗り越え、生活費と事業資金の双方を考慮した現実的な資金繰り計画を具体化させることこそが、成功への鍵となります。

そこで本記事では、会社員のうちに準備しておくべきポイントをわかりやすく解説します。

この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング/ 資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.退職前でも創業融資の相談はできる?

退職を検討している段階であっても、創業融資に向けた事前の準備や事前相談を進めることは可能です。じっさいに開業する前であっても、創業計画書の作成をはじめ、必要な資金の精緻な見積もり、自己資金の整理、さらにはこれまでの事業経験の棚卸しといった作業は退職前から着手できます。

日本政策金融公庫などの金融機関においても、新たに事業をはじめる方や創業して間もない方を対象とした創業支援の案内をおこなっており、段階に応じた相談を受け付けています。

情報出典:日本政策金融公庫「創業計画の書き方」「創業融資のご案内」https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/business-plan/

1)退職前でも創業融資の準備は進められる

創業融資の準備作業は、勤務先に在籍している段階から十分に開始することができます。事業の構想を文章化する創業計画書の作成や、開業にあたって何にいくら必要なのかを算出する資金見積もりは、時間をかけてじっくり取り組むべき項目です。

また、現在の預貯金状況を整理して自己資金の額を確定させることや、これまでの職務経歴から事業に活かせる強みを整理する作業も、在職中のゆとりがある時期に進めておくことで、より精度の高い計画を作り上げることが可能になります。

2)融資実行には事業開始の具体性が必要

事前の相談や準備は退職前でも進められますが、じっさいに融資が実行されるためには、事業開始に向けた具体性が求められます。単なる思いつきや抽象的なアイデア段階では審査を通過することは難しく、具体的な事業内容や明確な開業予定日、資金の使い道が特定されていることが前提です。さらに、現実的な売上予測に基づく返済計画が提示されてはじめて、金融機関は事業の実現可能性を評価し、具体的な融資の検討に入ることになります。

3)退職前の給与収入だけで融資が決まるわけではない

会社員として毎月安定した給与収入を得ていることは、生活面の安定性という観点で参考情報になり得ます。しかし、創業融資の審査においてもっとも重視されるのは、将来にわたって事業から生み出されるキャッシュフローと、それによる返済可能性です。

どれほど現在の勤務先が大企業であり、高い給料を得ていたとしても、退職すればその収入は絶たれます。そのため、過去の給与実績そのものが融資の決定打になるわけではない点に留意する必要があります。

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2.退職前に創業融資を準備するメリット

退職前の段階から創業融資の準備に取りかかることには、単にスケジュールを前倒しできること以上に大きなメリットが存在します。収入が確保されている状態であれば、自己資金の積立、勤務経験の整理、将来の生活費と事業資金の試算などを冷静かつ客観的に行いやすくなります。

中小企業庁においても、市区町村が地域金融機関などと連携して創業者を支援する創業支援等事業計画を推進しており、こうした外部の支援体制を早期に活用できる点も魅力です。

情報出典:中小企業庁「創業支援等事業計画について」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/sougyo_keikaku.html

1)自己資金を計画的に準備しやすい

毎月安定した給与収入が得られる在職期間中に準備をはじめることで、自己資金を着実に貯めることが可能です。融資審査においては、単に指定の口座にまとまった金額が存在するだけでなく、その資金がどのように準備されてきたかというプロセスもきびしく確認されます。そのため、給与口座から毎月一定額を蓄えてきた実績を通帳上で証明できれば、創業に向けた計画性や誠実さを金融機関にアピールすることができます。

2)事業経験や人脈を整理できる

現在の勤務先で培ってきた業務経験や専門スキル、業界特有の知識、顧客ニーズへの理解、さらには仕事を通じて築いた人脈などを整理できる点も大きな利点です。創業計画書には、なぜ自分がこの事業で成功できるのかという根拠を記載する必要があります。

在職中から自身のキャリアを丁寧に棚卸ししておけば、自身の強みを余すことなく計画書に反映させることができ、競合他社との差別化や事業の実現性を強力に裏付けることが可能になります。

3)退職後の資金ショートを防ぎやすい

会社を退職した直後は給与収入が完全にストップする一方、開業に向けた準備費用や初期の事業資金、そして日々の生活費が同時に発生しはじめます。事前の準備が不足していると、予期せぬ支出の連続によってあっという間に手元資金が枯渇し、資金ショートを起こすリスクが高まりますので注意が必要です。

退職前の段階で必要な支出の全体像を把握しておくことは、無理のない資金計画の立案につながり、創業初期の致命的な資金難を未然に回避することができます。

3.退職前に確認すべき資金計画

退職前に進める創業融資の準備において、もっとも精査すべきポイントは、退職後に訪れる収入の空白期間をどのように乗り切るかという点です。会社員時代のように毎月決まった日に給与が振り込まれる環境ではなくなるため、売上や利益が安定するまでの資金繰りをシビアに計画に落とし込む必要があります。

みずほ銀行などの大手金融機関が提示する事業計画書のポイントにおいても、現実的な収支見通しと資金使途の明確化はもっとも重要視される要素として挙げられています。

情報出典:みずほ銀行「事業計画書とは?主な記載項目と書き方のポイント」https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/account/tips/topic_09.html

1)退職後の生活費を何カ月分確保するか

創業した直後から順調に売上が上がり、十分な役員報酬や事業所得を得られるケースは決して多くありません。そのため、事業とは別に事業主自身の生活を守るための生活防衛資金をあらかじめ確保しておくことが不可欠です。

家賃や食費、水道光熱費といった基本生活費に加え、退職後に支払うことになる社会保険料や税金、家族の生活費などを細かく算出し、少なくとも半年から1年分程度の生活費を手元に残せるよう資金配分を検討することが重要です。

2)開業準備費と運転資金を分ける

必要となる資金は、大きく分けて開業準備費と運転資金の2つに整理して管理する必要があります。開業準備費とは、店舗や事務所の物件契約費用、内装工事費、機械や設備の購入費、初期の広告宣伝費など、事業をはじめるまでに支払う費用を指します。

一方の運転資金は、開業後に毎月発生する人件費や家賃、仕入れ費用など、事業を継続させるために必要な経費です。これらを混同せず明確に区分して把握することが、正確な資金調達額の算出につながります。

3)売上開始までの空白期間を見込む

事業をスタートしてからじっさいに最初の現金が入金されるまでには、必ずタイムラグが発生します。営業活動を開始して受注に至るまでの期間や、サービス提供後に売掛金が回収されるまでの支払いスパンを考慮しなければなりません。

事業開始初月から売上が計上できるという甘い見通しではなく、数カ月間は無収入の状態が続く可能性も考慮したうえで資金繰り表を作成し、必要な運転資金の不足が生じないよう計画を策定することが求められます。

4)返済開始後も資金が回るか確認する

仮に無事融資を受けることができたとしても、返済負担によって、資金繰りが悪化してしまっては本末転倒です。

融資の返済は、事業で得られた利益からおこなわれるのが原則です。そのため、当初の売上目標に届かなかった場合や、予想以上に経費がかさんでしまった場合などのリスクシナリオも想定しておく必要があります。悪条件が重なった場合でも返済を継続し、資金を回していけるかどうかを慎重に試算しておくことが重要です。

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4.退職前に準備すべき書類・情報

創業融資の相談や申込みをスムーズに進めるためには、退職前の段階から必要となる書類や根拠資料を計画的に収集・整理しておくことが推奨されます。

日本政策金融公庫の「創業計画の書き方」でも示されているように、提出書類の完成度や記載内容の具体性は審査結果に直結します。論理的で説得力のある創業計画書をはじめ、客観的な数値を裏付ける資金繰り表や各種証明書類をそろえておくことが、金融機関からの高い評価につながります。

情報出典:日本政策金融公庫「創業計画の書き方」https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/business-plan/

1)創業計画書

創業計画書は、事業の全体像や将来性を金融機関に伝えるためのもっとも重要な書類です。創業の動機をはじめ、経営者自身の略歴や過去の実績、提供する商品やサービスの強み、想定される取引先やターゲット層、開業に必要な資金の使い道、商流、そして今後の売上や利益の予測などを網羅的に記載します。

定性的な想いだけでなく、定量的で客観的な根拠を提示しながら、事業が着実に収益を生み出せる構造になっていることを分かりやすく整理して論述することが大切です。

2)資金繰り表

資金繰り表は、月単位での現金の動きを可視化するための書類です。退職後に発生する毎月の生活費をはじめ、開業時に必要な費用、毎月の運転資金、売上による現金の入金タイミング、そして融資の返済額までを月次で一覧化します。

将来の現金の出入りを詳細にシミュレーションしておくことで、どのタイミングでどれだけの資金が必要になるのかが明確になり、金融機関に対しても資金管理が徹底されているという安心感を与えることができます。

3)自己資金を確認できる通帳

融資審査では、自己資金の金額だけでなく、その資金がどのような経過を経て形成されたのかが細かく確認されるため、過去数年分の動きが記載された預金通帳の原本や取引明細が必要となります。

給与から定期的に貯蓄をおこなってきた実績を示すことで、計画的な準備能力を証明できます。また、退職金や親族からの資金援助を自己資金に組み込む場合は、それぞれの入金予定時期や契約内容を示す資料を用意し、出どころを明確にしておくことが求められますので注意が必要です。

4)見積書・契約予定・副業実績

計画書に記載する数値の信頼性を高めるためには、第三者によって発行された客観的な証拠資料が不可欠です。店舗やオフィスの賃貸借契約書や物件情報、設備や備品の購入見積書、内装工事の概算見積書などをあらかじめ取得しておきます。

また、すでに受注が確定している契約書や見込み客からの意向書、さらには在職中におこなっていた副業での売上実績や顧客リストなどがあれば、開業後の売上見通しを立証する強力な根拠資料として活用できます。

5.退職前に申し込む場合の注意点

退職前に創業融資の準備を進めるにあたっては、会社員ならではの注意点や留意すべきリスクが存在します。自身のスケジュール感だけで進めるのではなく、退職のタイミングや開業日、売上が立ちはじめる時期、商流、そして退職金の支給時期などを明確にし、辻褄の合った計画を提示できなければなりません。

日本政策金融公庫の案内にもあるとおり、手続きの順序や法的な規定を守りながら、退職後の事業収入のみで健全に返済できる強固な計画を構築することが重要です。

情報出典:日本政策金融公庫「創業計画の書き方」https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/business-plan/

1)退職予定時期と開業予定時期を明確にする

金融機関との面談や相談においては、いつ会社を退職し、いつ正式に事業を開業し、いつから売上が発生するのかという一連のタイムラインを明確かつ論理的に説明できるようにしておきましょう。

退職時期と開業時期があまりにも離れすぎている場合や、スケジュールが不透明な状態では、事業の実現性を疑問視されてしまうリスクがあります。各プロセスにおける具体的な日付やアクションプランを固め、説明の整合性を保つことが成功への第一歩となります。

2)勤務先との競業・副業規定に注意する

在職中に事業の準備を進めたり、副業としてテストマーケティングをおこなったりする場合は、現在勤務している会社の就業規則を必ず事前に確認しなければなりません。

副業が禁止されている場合や、会社の情報やネットワークを利用した準備行為が競業避止義務違反にあたる場合、勤務先とのトラブルに発展する恐れがあります。社会的信用を失うような行動は融資審査にも悪影響を及ぼすため、ルールを順守したうえで健全に準備を進めることが求められます。

3)退職金を自己資金にする場合は入金時期を確認する

支給される予定の退職金を自己資金として算定する場合、そのじっさいの入金タイミングを事前に会社へ確認しておくことが極めて重要です。

退職金は退職後すぐに振り込まれるわけではなく、会社の手続きや規定によって数カ月程度の遅れが生じることは珍しくありません。融資の実行時期や開業日までに退職金が口座に着金していない場合、自己資金としてカウントされず、計画全体の修正を余儀なくされる可能性があるため、入金スケジュールを厳密に把握しておく必要があります。

4)退職後に収入が途切れる前提で計画する

意外と陥りやすい失敗のひとつが、会社員時代の給与収入が存在することを前提とした返済計画を立ててしまうことです。融資を受けた後の返済は、すべて退職後に立ち上げる新たな事業の利益から支払わなければなりません。

現在の給与があるから返済できるという考え方は金融機関には通用せず、あくまで退職後に給与が完全に途切れた状態においても、事業収益だけで確実に融資を返済していけるという客観的な収支シミュレーションを示す必要があります。

6.よくある質問

退職前からの創業融資準備に関しては、相談を開始すべき適切なタイミングや、退職金の扱い、副業での実績がどのように評価されるかなど、疑問や不安を抱くポイントが数多く存在します。日本政策金融公庫が提供する創業融資の案内情報を参考にしながら、多くの方が直面しやすい代表的な質問とその回答を整理しました。

情報出典:日本政策金融公庫「創業融資のご案内」https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/sogyoyushi.html

1)退職前に日本政策金融公庫へ相談できますか?

退職する前の段階であっても、日本政策金融公庫へ事前に相談をおこなうことは可能です。ただし、具体的な相談や融資の検討を進めるためには、どのような事業をいつからはじめるのか、必要な資金はいくらかといった具体的な計画が固まっていることが条件となります。構想段階の抽象的な状態ではなく、事業内容や資金使途、開業までの具体的なスケジュールが明確化されていればいるほど、金融機関側からも実践的で質の高いアドバイスや案内を得やすくなります。

2)退職金は自己資金として見られますか?

すでに指定の口座に入金されており、会社の退職金支給明細書などによって出どころが客観的に証明できる状態であれば、自己資金の一部として正当に評価されます。

しかし、相談時点でまだ入金されていない未支給の退職金については、じっさいに支給されるかどうかや金額の確定要素を証明するための関連資料を用意する必要があります。支給決定通知書や退職金規程の写しなどを提示し、確実に自己資金として充当できる見込みであることを論理的に説明する準備が必要です。

3)副業実績は創業融資で評価されますか?

在職中におこなっていた副業での実績は、融資審査において非常に有効な評価材料となります。提供する商品やサービスの市場性や需要がすでに実証されていると判断されるためです。

これまでにあげた売上実績や継続的な顧客数、受注データ、あるいはECサイトやSNSでの販売・集客実績などを定量的な資料として整理して提示できれば、未経験の分野でゼロから開業する場合とくらべて事業の成功確率が高いと見なされ、審査において有利に働くケースが多く存在します。

7. 退職前に相談すべき、創業融資のプロ3人

創業融資はプロと相談しながら進めるのが得策です。

まずは無料のメール相談を利用して、申込の準備をしましょう。

上野 光夫(うえの みつお)

メール相談はこちら:

https://www.dreamgate.gr.jp/consul/pro/mmconsulting

多胡 藤夫(たご ふじお)

メール相談はこちら:

https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/fp_tago

萩原 洋(はぎわら ひろし)

メール相談はこちら:

https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/gingagyousei

まとめ

会社員を辞めて起業を目指す場合であっても、退職前から創業融資の準備や事前相談を着実に進めておくことは十分に可能です。しかし、準備を進めるうえで本質的に重要なのは、会社員としての信用力に頼ることではありません。退職後に必ず発生する収入の空白期間をしっかりと見据え、日々の生活費、初期の開業準備費、そして将来の返済計画を網羅した具体的で現実的な資金繰り計画を提示することです。

事前の資金計画や創業計画書の作成に不安がある場合や、自身の状況に合わせた最適な資金調達方法を知りたい方は、専門的な知見をもつプロにアドバイスを求めることをおすすめします。起業家と専門家をつなぐ総合プラットフォームであるドリームゲートであれば、経験豊富なプロへの初回メール相談を無料でおこなうことができます。1人で悩まずに専門家の知恵を活用し、万全の準備を整えて理想の起業への第一歩を踏み出しましょう。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
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