スタートアップの事業計画書の書き方―VCや投資家から資金調達する極意を解説

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

スタートアップの事業計画書は、スモールビジネスの起業家が創業融資を受けるために作る事業計画書とは明らかに異なります。

その差は相手が金融機関か、VCまたは投資家かという違いから生じます。この記事ではスタートアップの起業家がVCや投資家から資金調達を成功させるために必要な事業計画書の書き方について説明します。

これを読めば自分がどのような事業計画書を書けばいいのかがわかるでしょう。

スモールビジネスとスタートアップでは事業計画書の作り方がまったく違う

事業計画書の書き方は本やインターネットでいろいろと情報が出ていますが、スモールビジネスとスタートアップでは書き方がまったくちがいます。それは資金調達の方法や「何を伝えないといけないか」が異なるからです。

スモールビジネスとスタートアップの資金調達における違い

スタートアップとは、今までにない新たなビジネスモデルを作り、世の中にイノベーションを起こすような企業のことです。これに対し、スモールビジネスはすでに確立されたビジネスモデルに小規模で取り組むことを指します。

スモールビジネスは大きくスケールすることを前提としていないため、利益で少しずつ返済する融資(デットファイナンス)と相性が良いとされています。

しかしスタートアップの場合は創業期で融資を受けることはほぼ不可能と考えておきましょう。創業当初のスタートアップの事業計画は当面利益が出ないことが普通なので、確実な返済を必要とする銀行融資とはそもそも相性が悪いのです。

スタートアップの資金調達に相性が良いのは「エクイティファイナンス」と呼ばれる、株式と引き換えに出資をしてもらう手法です。この出資者になるのがVCや投資家と呼ばれる人たちです。

スタートアップはどのようなシーンで事業計画書が必要とされるのか

スタートアップの事業計画書が必要となるシーンとは、ズバリ「出資をしてもらう時」です。出資するかの判断材料はピッチ(プレゼンテーションの短い版)のウエイトがとても大きいので、もちろん事前に事業計画書は提出することになりますが、最終的には創業者の人となりやビジネスに込める想いなども加味して判断されることになります。

数値が緻密に組まれていることは大前提ですが、ビジネスモデルや将来性がしっかり伝わるように仕上げ、魅力的なピッチをすることが必要です。

通常の事業計画書が使えない理由

まだ世間に存在しないビジネスモデルを創り出すのがスタートアップなので、既存のビジネスと単純に比較することができません。そのため、スタートアップの事業計画書は数値の緻密さよりもビジネスモデルや将来性が伝わることに重点を置くべきなのです。

通常の事業計画書は「定期的に融資の返済をしていくことができるか」を判断するために作ります。そのため売上予測も月単位でかなり細かいものになります。

しかしスタートアップの場合は返済の必要がない「出資」を受けることになります。短期的に赤字だったとしても将来的に大きく成長をすることが重視されるのです。投資家やVCはスタートアップが上場したり買収されたりした時に株式を売却することで利益を得ているので、短期的な収益からのリターンは最初から期待していません。

スタートアップの事業計画でありがちな失敗

スタートアップでもスモールビジネスのように細かな目標を設定した事業計画づくりに終始してしまう例が散見されます。まだ世の中にないものを検証するのに売上予測など立てられるはずもないのですが、分かりやすい成果を出資者に約束したいという心理からなのでしょう。本来自由な発想で動けるはずのスタートアップが売上にがんじがらめになってしまい、ついには売上をでっち上げるという話もよくあります。

会社を経営するには具体的なKPIを設定するのは必要なことですが、優先順位を見誤らないようにしましょう。スタートアップに本質的に求められるのは、確実に計画を達成する手堅さではなく、世間の価値観を変えてしまうようなイノベーションです。

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スタートアップの『事業計画書』に欠かせない4つの項目

スタートアップの事業計画のゴールはEXIT(出口)

スタートアップ投資の主な出口戦略は、IPO(新規株式公開、上場)かバイアウト(株式譲渡による事業売却)の2つのみです。創業時にはIPOを目指した事業計画書になることが大半だと思いますが、この場合はIPOという出口を目指して、短期集中で大きく成長できる計画になっているかが重要です。特にVCはそれぞれの案件から売却益を出しながら運営しているので、上場までに長時間かかる事業計画は基本的に好まれません。また、出口をIPOに設定するのであれば

  • IPO時点での想定株価
  • IPOによる想定リターン

上記2点を設定して経営指標と矛盾がないように計画を調整していきます。構成は大まかに以下のようになります。

項目1:経営者のプロフィール

投資家は経営者の人格や経験を重視しています。スタートアップが置かれる環境は不確定要素が多く、きびしい状況の中でも会社が成長できるかどうかは経営者の資質によるところが大きいからです。経歴や支援者、あればIPO経験などを書きます。経営者は優等生タイプより天才肌の方が良いこともありますので、あなたの強みが表現できるよう表現の仕方を工夫してみてください。

項目2:市場の成長性や差別化要因

市場の成長性がなぜ必要になるのでしょうか。これはシンプルな理由で、市場規模が大きい方が、会社が成長しやすく、IPOまで持っていくのが簡単だからです。まだ、どんなマーケットでも競合に勝った者だけが急成長を遂げることができます。サービスの付加価値、顧客、価格、販路、流通方法など幅広い面から納得感の持てる差別化要因を見つけ出してください。

項目3:戦略と一致した数値計画

単なる数値の寄せ集めではなく、損益計画、売上計画、人員計画、投資計画などが相互に矛盾なくつながっている必要があります。いずれIPOを目指す会社の数値計画がいい加減では出資などできるはずがありません。会社の戦略と一致した資金計画を立て、ビジョンだけではなく計画もきっちりした会社であることをアピールしましょう。

項目4:資本政策、株価算定書など

ここでは、上場することによって出資者にどれほどのリターンが期待できるのかを説明します。リスクに見合うリターンがあることを伝えられるようにしましょう。

専門家の支援を受けるという選択肢もある

ここまで読んでいただいて、スタートアップ用の事業計画書はスモールビジネス用のものと全く異なる構成となっていることがお分かりになったと思います。知らない言葉や概念ばかりで、自分で作れるか不安になった方も多いのではないでしょうか。そんな方は、事業計画書作成サポートのアドバイザーに相談してみるのがおすすめです。


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相手がVCなのか投資家なのかでも、つくる事業計画書は変わる

スモールビジネスにおける創業融資のための事業計画書とスタートアップの事業計画書は異なるということは説明しましたが、さらにいうとスタートアップにおいても相手がVCか、投資家かでつくる事業計画書は変わります。ここではその違いについて説明します。

VC向けの事業計画書のポイント

VCとはベンチャーキャピタルの略。スタートアップを専門にしたハイリターン・積極的投資を行うファンドのことで、スタートアップにとっては心強い存在です。VCが投資先に求めるのは主に次の2点に集約されます。

  • 会社の将来性
  • ビジネスの収益性

銀行融資は確実に返済されることを重視しますが、VCはハイリスクな投資を行うことになるため、将来的に成長して大きなリターンを出してくれることを期待しています。VC向けの事業計画を立てる際には、将来的に大きく成長できること、高い利益率のビジネスモデルになっているかが重要です。

VCによってはリターンが期待できるだけでなく、何らかの方向性をもって投資をしている場合があります。特定の分野にのみ出資していたり、条件を明示していたりなどさまざまですが、複数のVCに会う際には資料を完全に使い回しするのを避け、そのVCに合わせた構成の事業計画書を持ち込むようにしましょう。当然、自分の事業にあったVCを見つけるのも重要です。

投資家向けの事業計画書のポイント

投資家は個人的な判断基準で投資を行うので、一貫した傾向というのはありません。EXITでの収益を重視する投資家もいれば、収益度外視でビジョンに投資するようなエンジェル投資家もいます。

もし投資をしてもらいたい投資家がいるのであれば、その人が何を重視して投資判断を行うのか事前にリサーチする必要があるでしょう。人脈があれば、投資先のスタートアップに直接話を聞きに行くのも有効です。

プライベート資金で投資を行っているため投資額はVCに比べて少額になる傾向はありますが、組織ではないので意思決定が早く、経営者への共感や事業への期待で投資してもらえる可能性があります。経営上の力強い助言者になることが多いのも投資家の特徴です。

投資家は「個人」であることを意識して、事業への想いが伝わる事業計画書を作りましょう。営業や雑談の際に、意図せず出資の話になることも起業家にはよくあります。事業計画書とは別に、いつでも簡潔に事業内容を伝えられるように「エレベーターピッチ」の練習もしておくと怖いものなしです。

エレベーターピッチとは・・投資家とエレベーターに同乗する1分未満の短い時間内で行うプレゼンのこと。シリコンバレーを発祥とする。

参考になる資料

エクイティファイナンスは株式の知識が必要不可欠となるため、用語が難しかったり馴染みがなかったりで難しく感じる方も多いでしょう。エクイティファイナンスの入門書としておすすめなのが『起業のファイナンス』という本です。

新規に株式を発行するのはどういうことか、IPOするとは投資家にとってどういうことなのかが非常に分かりやすく解説されており、入門書の決定版といえるでしょう。

また、web上で気軽に閲覧できるこちらのサイトもおすすめです。

https://www.find-job.net/startup/business-plan-of-nanapi

このサイトではなんと、実際に3億3,000万円の資金調達に成功した事業計画書がすべて公開されています。実際に計画策定した人だからこそわかる細かなノウハウがたくさん共有されているので、これさえ読めばスタートアップの事業計画書がどんなものかイメージを膨らませることができます。

まとめ

スタートアップの資金調達は株式が絡むことで難解な印象を持ってしまいますが、慣れればシンプルなことです。基本的な知識さえあれば難しくありません。うまく外部の専門家などを活用して事業計画を作成し、資金調達を成功させましょう。

 

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