部下に「困ったら何でも言ってね」はNG!昭和の経営者がZ世代にやってはいけないコトとは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

新人・中堅・管理職社員研修講師歴14年、AO入試専門塾講師歴10年の経験を活かし、安心安全な上司と部下の関係づくりに尽力している、若手育成専門コンサルタントの伊藤誠一郎さん。2023年10月に上梓した『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです』(日本実業出版社刊)には、副題に『若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』とあります。本書に込めた思いや、どのように役立ててもらいたいのかを伊藤さんに伺いました。

スマホやネットで育ったZ世代の価値観をふまえ、接し方を考える

―本書はどういう方に向けたものですか。

もともとは部課長やマネージャーなど、40代以上の管理職を想定しましたが、中小企業やスタートアップの経営者にも役立つと思います。また、本書で言う「若手社員」は主に25歳以下のZ世代をイメージしています。

昨今は新卒の約30%が3年以内に退職してしまうと言われ、職場でZ世代とのジェネレーションギャップを感じさせられることが多いもの。そんな上司の価値観やコミュニケーションの盲点を知らせ、対策を伝える本となっています。

―世代間ギャップというのは、なぜ起きるのでしょうか。

平成はまだ昭和から続く同じ雰囲気を持っていたのですが、令和でガラリと変わってしまったところがあります。一番大きいのは、その世代は小学校低学年からスマートフォンやインターネットで育っているということ。だから不便を感じにくく、思考力や想像力が育まれていないのです。それをふまえてコミュニケーションしなければなりません。

―なるほど、アプローチの仕方を根底から変える必要があるのですね。すると、たとえばタイトルにある「困ったら何でも言ってね」はNGということですが、どうすればよいですか

このように言っている上司のみなさんに聞くと、良かれと思って優しく「困ったら何でも言ってね」と伝えているのに「何も言ってこない」と言います。そうなってしまうポイントは、「いつでも何でもいい」という点です。良かれと思ってウェルカムな態度を示しているのだと思われますが、インターネットで検索する世代は、キーワードがないとなかなか反応できません。いつがいいのか、これを言っていいのかと不安になってしまい、行動につなげることが難しいのです。

―では、どうするのが正解なのでしょうか。

「あの件は大丈夫か」「これはどうなっているか」などと、こちらから声をかけてあげたほうが、コミュニケーションが前に進みます。面倒かもしれませんが、待っていても何も言ってこないので、発想を変えて声をかけていきましょうということ。それで初めてコミュニケーションが成立するのです。

そんな風に、上司世代が良かれと思っていることには、根本の考え方の相違からミスマッチになっていることがいろいろあるのです。本書ではそうした例もたくさん取り上げています。

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若手を変えるのでなく、上司世代自身が「変わる」ことが大事

―そうしたことを伝えるために、本書をまとめる際に工夫された点はありますか。

「はじめに」では、研修講師として私がよく聞くようなエピソードから入り、読者が日常の業務の中で思いあたるようなシーンを示しています。そうして自分ごととして考えられるようにしました。

その後も、具体的にどうアクションすればよいのかを明示して、コミュニケーションの悩みを解決できるよう努めました。たとえば、「怒るでも叱るでもない『説明して教える』7つのルール」や「今すぐ実践『笑顔』を増やす7つのルール」などを箇条書きで明記しています。前者は、自分のノウハウをうまく伝え、信頼を得ることにつながりますし、後者は、上司というのは威圧的に見られやすいので、声をかけてもらいやすくするために役立ちます。

―読者からはどのような感想が寄せられていますか。

「はじめに」では、タイトルの例のほか、「若手と仲良くなるために『趣味の話』から入っている」や「臆病で心配性な部下を『大丈夫!』と勇気づけている」など、7つの例をあげているのですが、「自分は全部やってしまっていた」という人が本当に多いです。「これも?これもダメなの?」というわけで、もちろん、なぜいけないのかも書いてあるので、そこで納得感を得られ、読み進めてもらえたようです。「そこに気づけただけでも読んだ甲斐があった」という感想もありましたね。

大事なのは、そうやってショックを受けた後で、考え方や態度を変えていくことにあります。

―とはいえ、上司世代が自分を変えるのは大変そうです。どこから始めればよいでしょうか。

過去の思い出は自分の部屋から持ち出さないことですね。職場に行ったら、これまでの習慣や過去の成功体験はいったんリセットして、新しい自分を作るという切り替えが必要なのです。アンラーニングですね。

昔の苦労話もNGです。なぜなら、昔の仕事は「量」で測っていたので、夜遅くまでとか休日返上で働いたことが美談になるわけです。ですが今は「質」や「効率性」が大事で、価値観が違うので、切り離して考えねばならないのです。

人間は自分を肯定しようと思うと、過去の思考に陥りがちですが、後ろを振り返るのではなく、意識して前を向いていくことが大事です。

―前を向くために、上司世代はどうすべきですか。

後輩や若手社員を変えようとするのではなく、自分たちが変わるべき。それが、本書で一番伝えたかったことです。そこで副題の「肯定」が関わってきます。昭和の育成は強制と忍耐で行われてきたといえますが、令和では肯定がキーワードになります。上司世代は、自分たちが強制されて学んできたので、ついそのやり方で、相手を変えようとしてしまいます。ですが、相手を認めて自分こそが変わるべきなのです。そうして、自分たちの枠に収めず、伸ばしてあげるのがいい。実際にアスリートでもエンタメ界でも、グローバルで活躍する若手世代がたくさんいますよね。

副題にあるもう1つの「言語化」もポイントで、叱る前にまず、言葉できちんと説明をすることが大事です。

顧客やユーザーへのマーケティングにも、本書がヒントになる

―本書を書こうと思ったきっかけは何ですか。

私は、企業研修の講師やAO入試専門塾などの経験を通じて、いわば研修と受験を二刀流で支援してきた中、いろいろな世代を長年見てきました。そうした研修で、昔からの組織構造やそれを束ねている管理職が旧態依然としている様子を見て、大きな問題を感じたのです。

それを解決するには、1人1人が自分を肯定し、自信を持つことが必要だと思いました。そこで本書で、1人1人が意識改革をしていただくことで、周りの組織やその会社も良くしていけると考えたのです。

―では最後に、ドリームゲートの会員にメッセージをお願いします。

起業されているみなさんにも、時代に合わせて発想や視点を変えることや、自分自身を肯定して前向きに考えていくことは非常に役立ちます。

また、社員やスタッフを雇用していく場合も、若い世代が多くなると思います。特に創業間もないうちは本当に少ない人数なので、雇ってもすぐ辞められてしまうようだと事業に専念できません。そうした対策にも役立ててもらえるでしょう。

さらに、顧客層やユーザーなど、お客様のことを考える上でも、今の時代に合った見立てを行う、発想の転換にも役立つと思います。Z世代マーケティングなどの取り組みへのヒントにしてもらいたいですね。

そのほか、起業を考えていて、まだサラリーマンの方も、勤務されているうちに本書を参考にして組織マネジメントの練習をしておくとよいと思います。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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