金融業界に16年、信用金庫勤務から始まり、独立系FP事務所を7年営み、起業時や起業後のお金の悩み相談を年間300件以上もサポートしているドリームゲートアドバイザーの永田智睦(ながた ともちか)さん。
その初めての著書である『脱・高収入貧乏』(幻冬舎刊)には、帯に「年収1000万円からはライフプランニングがカギ~ライフステージに合わせた投資計画で資産を増やす」とあります。本書に込めた思いや、どのように役立ててもらいたいのかを永田さんに伺いました。
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行政や企業はもう頼れない!? 自分でお金を管理し、増やす時代
―2023年1月31日に発売されましたが、本書はどういう方に向けたものですか?
私自身、FPとして主に経営者や医師、士業の方たちにライフプラン設計から投資・保険についてのアドバイスを行ってきましたが、そうした年収1000万円前後やそれを目指す方たちに、お金の知識を多少はつけ、しっかり管理してほしいと思っています。それだけの収入があっても、なんとなく感覚的にお金がないという、十分な資産形成のできていない「高収入貧乏」が意外と多いのです。
年収1000万円というのは、給与所得でいえば4%、世帯収入まで含めると12~14%くらいいますが、その方たちにマネーリテラシーをもっと高めてもらい、自身が豊かだと感じられるようになるための本なのです。
―たしかに、日本人はマネーリテラシーが低いといわれますね。
日本は構造的にサラリーマンが多く、行政や企業がお金に関することはいろいろとやってくれる社会でした。逆に言えば、個人のお金の知識があまり必要なかったのです。20年近く前、ゼロ金利時代が続いてもお金への意識はさほど高まりませんでした。
しかし、税金や社会保障費の負担は年収1000万円前後の層に特に重く、また、生活水準を下げることも難しいのがこの層です。
―本書の第1章「年収1000万なのに貧乏人が続出中!?」では、高収入貧乏がいかに危険かを説いておられますが、放置しているとどうなるのでしょうか?
計画がうまく立てられないのと、何かあったときに対応ができない。この2点が怖いですね。人生は山あり谷ありですが、さらに不確実性の時代といわれ、変化が多くなっています。
たとえば仕事も、転職が非常に増えていますし、自分で起業するかもしれません。働き方も多様になり、リモートワークによる在宅勤務で住まいも見直されたり、地方暮らしもしやすくなりました。副業も推奨されてきています。このように誰にでも変化が起こりやすい時代ですから、普通の方でも2~3年に一度はライフプランニングの見直しが必要だと思われます。
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ライフプランニングは2~3年ごとに見直しを
―第3章「税金、保険、ローン……貯蓄なしの原因を洗い出す」では、お金の使い方でいろいろな指摘がされています。「学資保険は意味がない」「持ち家は50代以降」など、目からうろこでした。
学資保険については、それよりも利回りの見込める運用を心がけて、教育資金にすればよいということ。持ち家は、子どもが独立してから半分以上自己資金を入れて、なるべく短い年数でローンを組むのをよくお勧めしています。もちろんケースバイケースですが、いずれ不要になる子ども部屋を含めて買う必要はなく、賃貸で十分でしょう。しかし老後の賃貸は不安定です。
―これまで常識とされてきたことが、一概には言えなくなっているのでしょうか?
人生が多様化している時代なのです。これまで日本の常識が、典型的な家族のライフプランとして単一のもので通用していたのが、100通りくらいになっている印象ですね。ですからネットや口コミの情報だけでは参考にならず、個別のコンサルテーションが求められます。
たとえば、海外移住に関するお金の相談も非常に増えていて、月2件はあります。それもリタイア後についてではなく、30代から50代前半くらいのファミリー層です。資産があると税金対策として検討されるのと、子どもの教育を考えてという背景ですね。移住先として検討されるのは、もともと留学先として多かったアメリカやオーストラリア以外に、ヨーロッパやアジアも増えています。また、国内のインターナショナルスクールも選択肢として人気です。
―そういう変化の時代、多様性の時代のライフプランニングでは、何が大事でしょうか?
計画は「修正ありき」だということです。ライフプランニングには大きく2通りあり、かつては理想の人生から逆算していくやり方が流行りました。しかし、計画通りにはほとんど行かなかったりしますので、それだと無理が生じやすいように思います。ですから私自身は、現在の状況を確認したうえで、未来をどうしたいかを聞いてプランを作るようにしているのです。どこに向かいたいかという方向性が大事で、そこに向けて随時修正を行っていくわけですね。資産が多いほど、修正のタームは短いほうがよいですが、一般的な給与所得の個人であれば、2~3年ごとでよいでしょう。
辛かったり面倒でも、収支や資産の「現状把握」から始めよう
―本書をまとめるにあたり、心がけたことはありますか?
あえて刺激的な内容にはせず、教科書的なものを心がけました。5年10年と長くそばに置き、何かのときに思い出して見直してもらえるようなものですね。反響としても、「基本的なことを改めて理解できた」「プランニングが大事だと分かった」といった声が多いです。
基本を理解するためにも、FP3級程度の知識はつけておくとよいですね。そうして金融の用語が分かると、いろいろと考えやすくなります。FPとして相談に乗らせていただく場合にも、共通言語があると、より深い話がしやすいです。
―本書をまだ手にしていない人にアドバイスをください。最低限やっておくとよいことは何でしょうか?
現状把握する癖をつけることですね。一般的には、家計簿くらいは作ったことがあるかもしれませんが、私は個人でもBS(貸借対照表)が重要だというのが持論です。収支だけでなく、資産の現状把握が大事ということですね。月々のローンや電気代、子どもの塾代などの費用から、貯蓄やローン残高なども明らかにしておくべきです。
さらに、費用の内訳まで分析・評価できるとよいですね。法人だと分かりやすいですが、交際費・交通費の内訳まで見る経営者はなかなか少ないもの。ですが、どこまで売上につながったのか、本来は検証すべきでしょう。そこまで現状を把握できると、お金の使い方の意識も自ずと改善するはずです。
―最後に、その記事をご覧の方にメッセージをお願いします。
プランニングするのは、事業でも個人でも大事なことで、そのなかでお金をどう配分するかと考えるのも共通しています。たとえば起業したての頃は、個人と会社のお金が一緒くたになっているものですが、これをいかに分けて考えていくか。いかに事業への投資と人生のためのお金を使うかを頭に入れておくことで、進みやすさが違ってくるでしょう。
事業においては、失敗も想定して資金繰りを考えますが、個人のお金でもいろいろ想定して意識することで、未来は大きく変わってきます。ぜひ本書をきっかけに、意識を高めてみてください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 永田 智睦
会社のお金だけでなく事業主の個人のお金のサポートを手厚く行う永田アドバイザー。豊富な経験をもとに、中立的な立ち位置から的確なアドバイスをいただけるでしょう。
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