個人事業主も人を雇うと対象に!【パワハラ防止法】無関心でいることのリ スク

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 箕輪 和秀

昨今、パワーハラスメント(以下パワハラ)という言葉を聞かない日はない気がします。すぐに「それってパワハラ!」と言われ、言葉が独り歩きしている感もありますが、何にしても今から起業する方も無関心ではいられません。

パワハラ

パワハラに無関心でいることのリスク

こんにちは。ドリームゲートアドバイザー、社会保険労務士の箕輪和秀と申します。

令和元年(2019年)6月5日、企業にパワハラ防止措置を義務付けた、パワハラ防止法の声もある「労働施策総合推進法」の改正法が公布されました。
今後、令和2年(2020年)6月1日(中小企業は2022年3月31日まで努力義務)に施行されることになります。

実はパワハラというのは造語であり、これまでパワハラの定義などを明確に示した法律はありませんでしたが、今回の改正により起業したばかりの会社(個人事業主も含む。以下同じ)でも、今後「企業として明確なパワハラ防止措置等を講じることを義務付けられる」こととなります。

起業したばかりだから!小さい会社だから!というのはもはや通用しません。というより、法律がどうのこうの言うよりもパワハラに無関心でいると、せっかく採用した人材がすぐに退職してしまいます。退職だけで済めばまだいいのですが、その後訴えられるリスクも非常に高くなっています。

バイトテロや世の中の情報の複雑化・進歩の速さを考えると、起業されたときのサービス内容がどんなに世の中のニーズに合っていても、その他の部分で潰れてしまうことも十分ありえます。そのひとつがパワハラです。

起業される人に多い営業色

営業

今から起業するのに、パワハラなんて言っていたら商売にならないよ!」というお怒りの声が聞こえてきそうです。元々起業者は営業なら任せておけ!というタイプの方が多いので(職人タイプもいらっしゃいますが)、育ってきた職場環境もいわゆる体育会系の方が多いと思います。

ちなみに、起業するとき1人ではなく従業員が必要な職種でも、最初から新規に採用するということは少ないと思います。家族を除いては、まず友人知人又は前職の後輩や同僚などをひっぱってくることが、ほとんどではないでしょうか。

しかし、もともと友人同士というのは、力関係に上下が付きにくいため、喧嘩別れしやすいという側面があります。また、職場の後輩などにしても、起業当初や業績が良いときはいいのですが業績が悪いと、将来に不安を感じやはり退職していくことが多くなります。

余談ですが、このような相談はメールで夜中にくることが多いです。朝メールをチェックすると、夜中の1時前後に社長から「仕事のことで言い争いになり、ついクビだ!と言ってしまいました。本人がそのまま帰宅してしまったのだけど・・・どうしたらいいのでしょうか?」というメールがきていることがあります。

起業したばかりで社長にも余裕がなく、イライラしてつい言ってしまったということも多いものです。眠れなくなり、酒でも飲みながらモンモンとして書いたのだろうなと思います。起業するということは、こういう悩みも自分で請け負うということに他なりません。

こういった場合、今までは「解雇」だけの問題でした。解雇予告手当を払うかどうかや、不当解雇になるかどうかが論点です。ただ、現在ほぼ間違いなく、漏れなくパワハラが付いてきます。

後で何らかの請求がくる場合、「経営者の酷いパワハラにより非常に辛い思いをして、不当解雇されたので、〇月〇日までに金〇円支払ってください」と、解雇予告手当にプラスし損害賠償も請求してくる内容が、簡易書留か内容証明で届く可能性が高いです。

ちなみに、パワハラと言ってもどのような内容によるかにより、会社のなすべきレベルがあります。パワハラ=損害賠償になるかどうかは、また別の話です。

パワハラなどハラスメントのレベル(責任)は上にいくほど重くなります。

1.法的責任(損害賠償等)を負うレベル

2.会社内の処分対象(懲戒処分等)になるレベル

3.経営者(や上司等)が雇用管理上、注意・指導する必要があるレベル

4.通常の従業員が不快と感じるレベル

しかし、1番の損害賠償請求に当たらないからいいのではなく、その解決に費やす時間やお金、エネルギーは膨大なものになりますし、仮になによりも裁判などの紛争で勝っても、何も得るものがないのは肝に命じて欲しいのです。

仮に紛争になって和解退職されることになったとしての試算ですが、和解金として給与の6ヶ月分(仮に25万円×6)+弁護士費用が訴訟だと50万円前後としても合計200万円程度かかります。

ましてや起業したばかりの時間は、プライスレスのものでありお金には変えられません。その時間をもめ事に費やすことになります。

パワハラと指導・教育の境界線あいまいさ

指導

ちなみに厚生労働省が行った「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワーハラスメントを受けた経験があると回答した従業員数は以下になります。

平成24年度25.3%

平成28年度32.5%

上昇しているのは、パワハラ自体の認知度が高まったことがもっとも大きな理由だと思いますが、今調査すると40%は超えると思います。

しかし、パワハラと指導・教育の境界線(線引き)はかなり難しいところがあり、パワハラと言われても本人は指導しただけで、そもそもパワハラであるという自覚がないことも多くあります。

パワハラとは

パワハラとは

まず、パワハラの定義をおさらいします。

パワハラの定義とは

職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、雇用する従業員の就業環境が害されることです。

ポイントは以下の4つです。

  1. 職場において行われる。職場はいわゆる事業所だけでなく、業務を遂行するために必要がある場所を含みます(例えば、懇親会の席での暴言などもパワハラとなる可能性があります)。
  2. 優越的な関係を背景とする。上司だけでなく、同僚や部下も該当する場合があります。例えば、同僚や部下が業務を進めるため必要な知識をもっている場合、優越的な地位に当たる可能性があります。
  3. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動である。業務の目的を逸脱していたり不適当だったりした場合です。
  4. 就業環境を害する。平均的な従業員の感じ方を基準とし、身体的精神的な苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりすることです。

上記の要素をすべて満たすものがパワハラとなりますが、具体的にはケース・バイ・ケースで検討せざるを得ません。

パワハラに当たる言動とは

もちろん、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラの対象にはなりませんが、具体的にパワハラに当たると考えられる言動として、以下の6つの類型になる予定です。

  1. 身体的な攻撃(暴行や傷害など)
  2. 精神的な攻撃(脅迫、侮辱、ひどい暴言、必要以上の長時間の叱責など)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離、無視)
  4. 過大な要求(業務上不要なことや、遂行不能な過大な要求)
  5. 過小な要求(能力や経験とかけ離れた、レベルの低い仕事などを長期に渡り命じる)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

1番は殴る蹴るです。これは明確にわかる気がしますが、他はなんとなく分かったような、分からないような感じでしょうか。

実際、裁判などでも適正な業務指導との線引きが難しいケースも多く、1、2審で結論が変わている場合もあります。

ざっとまとめると、業務の適正な範囲を超えて、パワハラにならないよう注意するのは以下のようなことです。

  1. 暴力は論外として、本人の人格を否定したり、退職、解雇を示唆したりする発言はしない。
  2. 本人の能力や性格、勤続年数に応じた指導を行う。
  3. 指導する際、回数や程度(しつこいくらいに行う、長時間に及ぶ)に注意する。また場所も注意ください。人前で叱る場合も人格否定につながる可能性があります。
  4. 業務に関係ないプライバシーなことに過度に立ち入らない。

やはり、一般的なことではありますが、相手を1人の人間として認める(尊重する)姿勢を忘れないことです。

今後、会社が行う必要がある措置

ちなみに、今後会社が行う必要がある措置は以下のようになると思われます(今後、規則や指針により明確になってきます)。これは起業したばかりであっても講じる必要があります。

  1. 事業主によるパワハラ防止や行為者への厳正な対処など、企業方針の明確化と、従業員への周知・啓発
  2. 相談(苦情)などに応じ、適切に対応するために必要な窓口設置など体制の整備
  3. 職場におけるパワハラへの、事後の迅速かつ適正な対応(事実関係の確認や、被害者のケア、行為者への処罰・再発防止措置など)
  4. 1から3に併せて、パワハラの相談者・行為者等のプライバシー保護や、相談者の不利益取り扱いを行わない旨の周知・啓発の措置

しかし、事業者が行う必要のある義務だけでもかなりのものがあります。現実的に起業した後パワハラで揉め事があっても、起業したばかりでそれに割く時間やお金の余裕がありますでしょうか?

先に述べたように、これは何も得ることもない時間なのです。起業にとってパワハラなどの労働トラブルは本当に不毛なものだと思ってください。当初よりパワハラを正しく理解し、そういったことを起さないようなコミュニケーション作り、お互いを尊重し合えるような職場環境を作っていくことが大事になります。

それでも、もし起こってしまったら専門家などに相談し早めにキチンとした対応をしてください。

まとめ

以上、長く述べてまいりましたが、指導の仕方は業務の内容によりまったく異なります。何が適正かの判断は非常に難しいところですが、くれぐれも感情のまま怒ったりするのではなく、人事評価の基本である「起業家と、職場の従業員が、同じベクトルに向かって共に成功して行けるよう指導していく」ことを忘れないで頂ければと思います。

いろいろな落とし穴があるのが起業ですが、起業成功に向けて邁進できるように願っています。

注意)本内容は令和元年10月末現在の法改正内容を今から起業される方向けにわかりやすく加筆・修正して掲載しているため、本記事の記載により生じたいかなる損害に関しても責任を負いかねます。

また、本コラム執筆時点でまだ未確定・協議中の点もあるためその後の状況で本コラムに記載のあるとおりではない可能性があります。

 

参考サイト:パワーハラスメントおよびセクシャルハラスメントの防止対策等について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000360719.pdf

参考サイト:職場でのハラスメントでお悩みの方へ(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

参考サイト:あかるい職場応援団(厚生労働省)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

引用資料:職場のパワーハラスメントに関する実態調査について(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html

パワハラ関連のおすすめ書籍(21世紀職業財団)
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執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 箕輪 和秀(社会保険労務士 行政書士)
箕輪オフィス 代表

東京都中央区にオフィスを構え社会保険労務士の資格以外に行政書士の資格も持つ人情派のアドバイザー。
特に建設関連の業界に強く、多くのクライアントから支持を得ている。経営者にとって最善の方法を常に模索し、的確なアドバイスには定評がある。

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ドリームゲートアドバイザー 箕輪 和秀氏

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