キッチンカーを開業したいと考えているものの、「開業資金はどのくらい必要なのか？」「どんな資格や準備、届出が必要なのか？」と悩んでいませんか？

実は、キッチンカーは店舗型飲食店と比べて開業コストが低く、自由な場所で営業できるメリットがあります。しかし、開業には一定の資金と準備、届出が必要であり、計画をしっかり立てることが成功の鍵となります。

本記事では、キッチンカー開業の基本的な流れ、必要な資金や資金調達の方法、そして集客のコツまで詳しく解説します。これからキッチンカーを開業しようと考えている方はもちろん、すでに準備を始めた方にも役立つ情報が満載です。

キッチンカー開業に必要な費用は？

キッチンカーを開業するには、車両購入費、内装設備費、営業許可申請費などの初期費用がかかります。また、開業後の運転資金も考慮する必要があります。

開業資金

キッチンカーの開業資金は、おおよそ200万円〜500万円が目安となります。開業費用の大部分はキッチンカーの取得費用で、この金額はキッチンカーを購入する場合とレンタルまたはリースする場合で大きく変化します。

購入の場合、中古車なら100万円前後、新車なら300万円以上かかることもあります。一方、レンタルやリースを活用することで、初期費用を抑えることが可能です。ただし、月額費用が発生し割高になる可能性があったり、途中解約できないなどデメリットもあるため注意が必要です。

運転資金

開業後は、月々の食材費、ガソリン代、駐車場代などの運転資金が必要です。

項目	費用目安（月額）	説明
食材費	5万～15万円	メニューにより変動
ガソリン代	1万～3万円	移動距離により変動
駐車場代	2万～5万円	営業場所により異なる
梱包材費	–
PL保険料	1万〜2万円
出店費用	–
広告宣伝費	1万～5万円	SNS運用やチラシ制作
その他	2万～5万円	メンテナンス、消耗品など

開業後は売上が安定するまで時間がかかるため、最低3〜6ヶ月分の運転資金を確保しておくことが重要です。

資金調達方法～融資や補助金を活用しよう～

新しく開業する際、年齢や開業する地域によっては補助金や創業時しか受けることができない融資を受けることができます。

融資（新規開業資金）

キッチンカーの開業資金を調達する方法の一つに融資制度の活用があります。日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、自己資金が少ない場合でも申請しやすく無担保・無保証で融資を受けられる点が特徴です。

新規開業資金の概要

• 融資対象：新たに事業を始める人（事業開始後概ね7年以内の人）
• 融資上限額：最大7,200万円（うち運転資金4,800万円）
• 返済期限：設備資金は20年以内、運転資金は10年以内

引用：日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」から引用

補助金/助成金

各自治体では、新規開業者向けの補助金制度を用意していることが多いため、「開業場所＋補助金(助成金)＋創業」といったキーワードで検索し、活用できる補助金を確認しましょう。
補助金/助成金の参考例（創業助成金（東京都中小企業振興公社））の場合）

対象者	都内で創業を予定されている方または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件（※）を満たす方 ※「TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者」「東京都制度融資（創業）利用者」「都内の公的創業支援施設入居者」等
助成対象期間	上限額400万円　下限額100万円
助成限度額	助成対象と認められる経費の2/3以内

引用：東京都創業ネットの「創業助成金」から引用

クラウドファンディング

開業前からSNSなどで発信し、クラウドファンディングを活用して資金を集めるのも有効な手段です。応援してくれるファンを増やすことで、開業後の集客にもつながります。

中には達成率が100%で100万円以上の金額を集めているプロジェクトもあります。ご自身の状況と近しいプロジェクトを探して、リターンの設計を参考にしてみてはいかがでしょうか？

参照サイト：CAMPFIRE「ハワイの料理が楽しめるキッチンカープロジェクト」

キッチンカーで必要な資格や届出は？

キッチンカー（移動販売）を開始するにあたって、食品衛生責任者資格と保健所の営業許可を取得しなければなりません。

どちらの資格も、キッチンカー（移動販売）に限らず、店舗型飲食店の営業の場合にも必要です。

• 人に必要な許可 = 食品衛生責任者資格
• キッチンカー（移動販売車）に必要な許可 ＝ 保健所の営業許可

それぞれの資格の内容や取得方法などを解説します。

食品衛生責任者資格

キッチンカーで食品を提供するには調理師免許は不要ですが、必ず1名以上の食品衛生責任者を配置しなければなりません。食品衛生責任者の配置は、営業許可を取得する際の必須条件となります。この資格は、各都道府県の食品衛生協会が実施する「食品衛生責任者養成講習会」を受講すれば取得可能で、試験はありません。注意点として、もし複数の都道府県で出店する場合は、それぞれの地域の保健所で営業許可を取得する必要があります。

保健所の許可

営業を開始する前に、保健所の営業許可を取得する必要があります。営業許可の基準は地域によって異なるため、事前に確認しておきましょう。詳細は「キッチンカー開業の流れ」にてまとめています。

開業届

キッチンカーを個人事業として開業する場合、税務署へ「個人事業の開業届」を提出する必要があります。これは、事業を開始したことを税務署に届け出るもので、提出することで確定申告が必要になります。また、「所得税の青色申告承認申請書」を同時に提出することで、青色申告の特典を受けられます。
青色申告を適用すると、最大65万円の控除を受けることができるほか、赤字を3年間繰り越せるなどのメリットがあります。特に、開業初年度は売上が安定しない可能性が高いため、節税効果の大きい青色申告を選択することをおすすめします。

キッチンカー開業の流れ

キッチンカーの開業で成功するための5つのステップをご紹介します。

① 事前準備

市場調査を行い、提供するメニューやターゲット層を明確にします。市場調査のやり方として出店予定の場所などをまわり、まわりのお店の混雑状況や金額感、客層をチェックし、どのような料理が求められているのかを知ることが重要です。

また、天候や時間帯による人の流れの変化を把握し、ピーク時の需要を予測することで売上アップにつながります。例えばオフィス街に出店する想定であれば、近くの会社の休憩時間やオフィスの出入り口などを把握することで、集客戦略に繋げることができます。

② キッチンカーの準備

提供するメニューにあわせて、必要な調理が可能な車両を準備します。車両の選定は事業計画に合わせて、新車・中古・リースなどの選択肢を検討しましょう。調理スペースの広さや必要な設備を考慮し、効率的な作業動線を確保することが重要です。また、営業エリアによっては、特定の調理時に使用する水に関する調査書や車両の構造及び設備を示す図面が必要な場合があります。販売予定の地域の自治体のルールを確認し、車両取得時に必要な書類がすぐに提出できるようにしましょう。

キッチンカーに必要な設備

• プロパン契約、発電機
• 収納スペース
• 照明設備
• 換気扇
• 手洗い・洗浄用シンク
• 給排水設備・タンク
• アルコールスプレー・手洗い石鹸
• 冷蔵庫・冷凍庫
• 食品や調理道具を補完する蓋付容器
• ゴミ箱

③ 仕込み場(調理スペース)の確保

仕込み場とは、調理の下準備を行うためのスペースを指します。
提供するメニューやキッチンカーの設備に加え、営業エリアの規制によっては、仕込み作業を別の場所で行わなければならない場合があるため、事前に使用可能な食品加工場やレンタルキッチンを探し、必要な設備・備品が整っているか確認する必要があります。また、一部の自治体では仕込み場の使用にも保健所の許可が必要な場合があるため、営業許可の申請時に併せて相談しておくとスムーズです。
仕込み場所として適切なのは営業許可がすでに下りているレンタルキッチンですが、自宅のキッチンでも調理場と日常生活の場を切り離し、害虫や害獣侵入防止用設備の取り付けなどの改装を行わなえば許可が下りるケースがあります。

④ 営業許可申請書類の提出

必要な書類を揃え、保健所へ申請を行います。
以下は東京都渋谷区で営業する場合の必要書類です。数日で全て揃えられるものではないため、余裕をもって準備をしましょう。

1. 営業許可申請書・営業届（PDF 316KB）（1部）
2. 施設の構造及び設備を示す図面（2部）
3. 水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合の水質検査成績書の写し（1部）
4. 営業の大要（PDF 100KB）（2部）
5. 登記事項証明書（1部）
6. 食品衛生責任者の資格を証明するもの
7. 自動車検査証
8. 仕込場所に許可がある場合営業許可書
9. 営業許可申請手数料

⑤ 保健所による施設（キッチンカー）の検査

許可を取得した自動車で営業予定の保健所に行き、検索をしてもらいます。施設基準に適合していた場合は、その場で「営業許可書交付予定日のお知らせ」と営業許可を示すステッカーがもらえます。施設基準に適合していなかった場合は、不適事項を改善し、再検査を受けてください。

キッチンカーの集客方法

キッチンカーの集客方法で創業初期からできることを２つご紹介します。

SNS やブログ、LINEビジネスを使ったプロモーション

キッチンカーの集客には、SNSやブログを活用することが非常に有効です。InstagramやX（旧：Twitter）では、営業スケジュールやメニューの写真を投稿し、フォロワーを増やすことで認知度を向上させることができます。また、LINE公式アカウントを活用すれば、リピーター獲得にもつながります。LINEのメッセージ機能を活用し、クーポンの配布や特典付きの案内を行うことで、顧客との関係性を築くことが可能です。さらに、ブログを運営し、開業までの過程やこだわりポイントを発信することで、ブランドの魅力を伝えやすくなります。

公園やオフィス街、イベント会場への出店

出店場所の選定は、キッチンカーの売上を大きく左右します。公園では週末や祝日に家族連れが多く訪れるため、ボリュームのある食事系メニューが人気です。オフィス街ではランチタイムにサラリーマンやOLをターゲットにしたメニューが求められます。さらに、イベント会場やフェスでは多くの人が集まるため、特別メニューや限定メニューを用意すると話題性を高めることができます。定期的に出店場所を変更することで、新たな顧客層を獲得し、リピーターの拡大につなげることが可能です。

また、公園でキッチンカーを出店するには各自治体の募集要項に沿って必要書類を提出し、審査を受ける必要があります。共通の書類もありますが、自治体ごとに異なる場合もあります。

開業時には綿密な準備を

本記事では、キッチンカー開業に必要な資金や開業の流れ、集客方法について詳しく解説しました。しっかりと計画を立て、資金調達の方法を考えながら、キッチンカー開業を成功させましょう！