飲食店は、開業してからが本当のスタートです。開業前にどれだけ丁寧に事業計画を作っても、実際の売上や客数は、開けてみないと分からない部分があります。開業後1年目は、数字を見ながら軌道修正を重ねる時期であり、この時期の判断が、その後の経営を左右します。
本記事は、連載「飲食店経営ロードマップ」のフェーズ3(運営編:開店直後〜1年目)です。フェーズ1で準備を整え、フェーズ2で資金調達を終えたあと、実際に店を開けてから押さえておきたい数字の見方と、売上が伸びないときの原因・改善策を解説します。
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- 目次 -
この記事の要点まとめ
- 開業1年目の目標は、大きく利益を伸ばすことよりも、安定して営業を続けられる状態をつくることです
- 開業後1年目は、日々の数字を継続して確認することが大切です
- 売上が伸びない原因は、認知不足・リピート不足・客単価の低さなど、複数考えられます
- 原因によって、打つべき対策は変わります
- 値上げやメニュー変更などの判断は、一度きりで終わらせず、効果を確認しながら進めます
- 数字の読み方や改善の方向性に迷ったときは、専門家に相談する方法もあります
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1. 飲食店開業後に確認すべき経営数字
開業1年目の目標は、「大きく利益を伸ばすこと」よりも、「安定して営業を続けられる状態をつくること」です。この時期は、感覚だけで経営せず、数字で状況を確認することが大切です。最低限、次の数字は月ごとに確認しましょう。
| 指標 | 内容 |
| 売上高 | 日商・月商の推移 |
| 客数 | 新規客・リピーターの内訳 |
| 客単価 | 売上高 ÷ 客数 |
| リピート率 | 一定期間内に再来店した客の割合(店舗ごとに定義は異なります) |
| 原価率 | 売上高に対する食材費の割合 |
| 人件費率 | 売上高に対する人件費の割合 |
これらの数字を事業計画時の予測と比べることで、どこにズレが生じているかが分かります。日本政策金融公庫総合研究所は、開業した事業者を対象にした調査研究を継続的に公表しており、開業後に売上が計画を下回る事業者が一定数存在することも指摘されています。開業直後に計画とのズレが生じること自体は珍しくありません。大切なのは、そのズレの原因を早めに把握し、対応することです。
出典:日本政策金融公庫総合研究所「調査・研究」(「新規開業パネル調査」等の関連レポートを掲載)
2. 飲食店の売上が伸びない主な原因
2-1 認知不足
そもそも店の存在が近隣に知られていない、という状態です。開業直後は特に起こりやすい原因です。
2-2 リピート率の低さ
初回は来店しても、2回目以降につながっていないケースです。味やサービスに問題がなくても、印象に残らなければリピートにはつながりません。
2-3 客単価が低い
来店客数は十分でも、客単価が低いために売上が伸びないケースです。メニュー構成や価格設定に原因があることがあります。
2-4 立地・時間帯とのミスマッチ
ターゲットとしていた客層と、実際に店の前を通る客層がズレている場合、想定していた集客が実現しないことがあります。
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3. 売上改善のためにできること
3-1 認知を広げる
近隣へのチラシ配布、SNSでの発信、Googleビジネスプロフィールや口コミサイトへの登録などがあります。特に開業直後は、まず「知ってもらう」ことが優先です。
3-2 リピーターを増やす
ポイントカードや、常連向けの声かけなど、再来店につながる工夫を考えます。料理の味だけでなく、接客の印象もリピートに影響します。
3-3 客単価を見直す
セットメニューの提案や、ドリンク・サイドメニューの提案など、無理のない範囲で客単価を上げる工夫ができます。値上げそのものについては、次の章で詳しく解説します。
3-4 原因を切り分けてから対策する
「客数が少ないのか」「客単価が低いのか」「リピートがないのか」によって、打つべき対策は異なります。原因を切り分けずに、思いつきで手を打つと、効果が出ているのかどうか分からなくなります。改善策は一度に複数実施するのではなく、一つずつ試して結果を比較すると、どの施策が効果的だったか判断しやすくなります。
4. 経営判断で迷いやすいポイント
- 値上げをすべきかどうか:原価が上がっている状況では、値上げを検討する経営者も多くいます。ただし、値上げは客離れにつながるリスクもあります。近隣の価格帯や、提供している価値とのバランスを見て判断する必要があります。価格だけで判断されないよう、食材やサービスの改善内容を店頭やSNSなどで伝える工夫も重要です
- メニューを増やすか、絞るか:メニューを増やすと選択肢は広がりますが、仕込みや在庫の負担も増えます。逆に絞りすぎると、リピーターの選択肢が減ることもあります。どちらが適しているかは、オペレーションの余力や客層によって変わります
- 広告費をかけるべきか:広告には即効性があるものと、時間がかかるものがあります。開業直後の資金に余裕がない時期に、どこまで広告費をかけるべきかは、資金状況とのバランスで判断する必要があります
- 改善策をどれくらいの期間で判断するか:1つの施策を試してすぐに結果が出るとは限りません。短期間で判断を変えすぎると、何が効いているのか分からなくなります
5. 実務上の注意点
- 数字は、月ごとだけでなく、前年同月や開業時の計画とも比較しましょう
- 原価率だけでなく、人件費率もあわせて確認することが大切です。どちらか一方だけを見ていると、全体の収支バランスを見誤ることがあります
- 繁忙期・閑散期の差がある業態では、単月の数字だけで一喜一憂せず、数か月単位の傾向で判断しましょう
- 値上げやメニュー変更を行った場合は、変更前後の数字を必ず記録し、効果を確認しましょう
- 利益が出ていても、資金繰りが苦しくなることがあります。売上や利益だけでなく、預金残高や資金繰りも定期的に確認しましょう
6. このタイミングで相談すべき専門家
| 相談内容 | 相談先の例 |
| 月次の数字の見方、試算表の確認 | 税理士 |
| 売上改善の方向性、経営全体の相談 | 中小企業診断士 |
| 集客・販促の具体的な施策 | 中小企業診断士、販促に詳しい専門家 |
税理士は、税金の申告だけでなく、月次の試算表をもとに経営状況を確認する相談相手にもなります。中小企業診断士は、売上が伸びない原因の切り分けや、改善の方向性について、第三者の視点で相談できる専門家です。資金繰りに不安がある場合は、日本政策金融公庫や取引金融機関への早めの相談も選択肢になります。
7. こんな場合は専門家に相談すべき
- 売上が伸びない原因が、自分では特定できない場合
- 値上げをすべきかどうか、判断に迷っている場合
- 数字の見方に自信が持てず、経営判断がしづらい場合
- 複数の改善策を試したが、効果が実感できない場合
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8. よくある質問
Q. 開業後、どれくらいの期間で売上が安定しますか? A. 業態や立地、経営者の経験によって異なり、一概には言えません。一般的には、認知が広がり、リピーターがつくまでに一定の期間がかかるとされています。まずは月次の数字を記録し、傾向を確認することが大切です。
Q. 値上げは、いつ検討すべきですか? A. 原価や人件費の上昇が続き、利益が圧迫されている場合は、値上げを検討するタイミングの一つです。ただし、客離れのリスクもあるため、近隣の価格帯や提供価値とのバランスを見ながら判断することをおすすめします。
Q. 開業1年目で赤字でも問題ありませんか? A. 開業直後は、認知やリピーターの獲得に時間がかかるため、計画上、一定期間の赤字を見込んでいる事業者もいます。ただし、赤字が続く場合、その後も継続して資金繰りが回るかどうかを確認する必要があります。判断に迷う場合は、税理士や中小企業診断士に相談することをおすすめします。
Q. 売上はあるのに利益が残りません。なぜですか? A. 原価率や人件費率が高くなっている可能性があります。売上高だけでなく、原価率・人件費率をあわせて確認し、どこにコストがかかりすぎているかを把握することが大切です。
Q. SNSでの発信はやったほうがよいですか? A. 地域や客層によって効果は異なりますが、開業直後の認知向上には役立つ場合があります。まずは無理のない範囲で継続し、来店客数の変化を見ながら続けるかどうか判断することをおすすめします。
9. まとめ
飲食店の開業後1年目は、売上高・客数・客単価・原価率・人件費率といった数字を継続して確認しながら、計画とのズレを早めに把握することが大切です。売上が伸びない場合は、認知不足・リピート不足・客単価の低さなど、原因を切り分けたうえで対策を考えます。
値上げやメニュー変更、広告費の使い方といった判断は、店舗ごとの状況によって最適な答えが変わります。迷ったときは、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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次回のフェーズ4では、開業後に直面しやすい資金繰りの悪化、トラブル対応、スタッフ採用について解説します。売上が伸びても、資金繰りや人材の問題で経営が苦しくなることがあります。フェーズ4では、こうした開業後に直面しやすい課題への向き合い方を解説します。
開業後1年目チェックリスト
- [ ] 月次の売上高・客数・客単価の記録
- [ ] 原価率・人件費率の確認
- [ ] 事業計画時の予測との比較
- [ ] 売上が伸びない場合の原因の切り分け
- [ ] 認知拡大・リピーター施策の実施
- [ ] 値上げ・メニュー変更を行った場合の効果測定
- [ ] 預金残高・資金繰りの確認
- [ ] 税理士との月次確認
出典一覧
※本記事で紹介した調査結果や数値の傾向は、調査時点や事業者の状況によって異なる場合があります。最新の情報は、公式サイトでご確認ください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
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