1号店の経営が安定してくると、「2号店を出すべきか」「このまま1店舗を続けるべきか」「将来的に事業を譲る選択肢はあるか」など、次のステージを考える経営者が増えてきます。
本記事は、連載「飲食店経営ロードマップ」のフェーズ5(運営編:店舗展開)です。フェーズ1〜4で、開業準備、資金調達、運営、資金繰りやトラブル対応を解説してきました。最終回のフェーズ5では、複数店舗展開のポイントと、事業を譲渡する際に知っておきたい基本(スモールM&A)を解説します。
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- 目次 -
この記事の要点まとめ
- 多店舗展開は、1号店の経営数字が安定してから検討するのが基本です
- 2号店以降の資金調達は、既存店の実績と、全店舗合計の返済負担の両方が見られます
- 店舗を譲渡する方法には株式譲渡と事業譲渡があり、引き継がれる範囲が異なります
- スモールM&Aは、後継者不在などの理由から選択肢の一つとして検討されます
- どちらの判断も、早めに専門家へ相談しながら進めることが大切です
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1. 多店舗展開のタイミングと資金調達
多店舗展開は、1号店の売上・利益・資金繰りが安定し、店長候補などに現場を任せられる体制が整ってから検討するのが基本です。目安としては、「数か月連続で黒字を維持している」「資金繰りに余裕がある」「店長候補へ日々の運営を任せられる」といった状態が挙げられます。経営者が1号店の現場から離れられない状態で2号店を出すと、どちらの店舗にも目が届きにくくなります。
2号店以降の資金調達では、1号店の実績(売上・利益・返済状況)に加え、既存の借入残高や返済負担とのバランスも確認されます。日本政策金融公庫は自ら資金を貸し出す政策金融機関であり、制度融資は民間金融機関が貸し出し、信用保証協会が保証をつける仕組みです(フェーズ2参照)。この2つを比較しながら進めるのは、開業時と同様です。
2. 多店舗展開で経営判断に迷いやすいポイント
- 直営かフランチャイズ化か:直営は自由度が高い一方、資金と人材の負担が大きくなります。フランチャイズ化はブランドの標準化が必要です
- 近隣に集中するか、離れた地域に出すか:近隣はやりくりがしやすい一方、商圏が重なることもあります。離れた地域は新しい商圏を開拓できますが、目が届きにくくなります
- 借入をどこまで増やすか:2号店の借入を増やすと、全店舗合計での返済負担が大きくなります。無理のない返済計画かどうかの確認が必要です
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3. 飲食店を売却する方法(スモールM&A)
後継者が見つからない、経営者の体調や年齢、事業の選択と集中など、店舗を譲渡する理由はさまざまです。廃業と違い、事業を譲渡することで、従業員の雇用や取引先との関係を引き継げる場合があります。
会社ごと譲渡する場合は「株式譲渡」、店舗の設備やのれんなど事業の一部を個別に譲渡する場合は「事業譲渡」と呼ばれ、引き継がれる範囲や税金の扱いが異なります。個人事業の場合は、事業譲渡に近い形で店舗や契約を引き継ぎます。
一般的には、相談、財務状況の整理、譲渡先探し、条件交渉、契約という流れになります。譲渡が成立した後は、従業員・取引先・店舗運営を円滑に引き継ぐ「PMI(譲渡後の統合プロセス)」も重要です。契約の成立をゴールにせず、その後の引き継ぎまで含めて計画しておくことをおすすめします。中小企業庁は「事業承継」ポータルで関連情報を公開しており、公的な相談窓口として「事業承継・引継ぎ支援センター」を案内しています。
出典:中小企業庁「事業承継」 出典:事業承継・引継ぎ支援センター
4. スモールM&Aで経営判断に迷いやすいポイント
- 譲渡価格をどう考えるか:設備や在庫だけでなく、常連客やブランドといった「のれん」の価値をどう評価するかが、価格に影響します。専門家の評価を受けると、客観的な目安が分かります
- 従業員の雇用をどう引き継ぐか:雇用を維持したい場合、契約にその条件を盛り込めるか、譲渡先と交渉する必要があります
- 取引先との契約をどう引き継ぐか:仕入れ先や賃貸借契約は、譲渡方法によって、そのまま引き継げる場合と、あらためて契約し直す場合があります
5. 実務上の注意点
- 譲渡先を探す段階では、秘密保持契約を結び、情報の取り扱いに注意しましょう
- 従業員や取引先への説明のタイミングは、譲渡の進み具合を見ながら慎重に判断します
- 税金の扱いは株式譲渡か事業譲渡かで異なります。契約前に税理士へ確認しておくと安心です
6. このタイミングで相談すべき専門家
| 相談内容 | 相談先の例 |
| 多店舗展開の資金調達・体制整備 | 日本政策金融公庫、中小企業診断士 |
| 譲渡(M&A)の相談全般 | 事業承継・引継ぎ支援センター、M&A仲介会社 |
| 譲渡に伴う税金・契約の確認 | 税理士、弁護士 |
具体的に進める前の段階であれば、まず事業承継・引継ぎ支援センターや中小企業診断士に相談し、選択肢を整理する方法もあります。
以下のようなケースでは、専門家への相談をおすすめします。
- 2号店の資金調達が、1号店の借入とのバランスとして無理がないか確認したい場合
- 譲渡価格や、従業員の雇用引き継ぎ方が分からない場合
- 譲渡か廃業か、どちらを選ぶべきか迷っている場合
ドリームゲートでは、多店舗展開や事業承継の相談について、中小企業診断士など、経験豊富な専門家に無料で相談できます。 ドリームゲート専門家への相談はこちら
7. よくある質問
Q. 2号店はどのタイミングで出すべきですか? A. 1号店の売上・利益・資金繰りが一定期間安定し、店長候補に現場を任せられる体制が整った段階が一つの目安です。
Q. 個人経営の飲食店でも売却できますか? A. 個人事業であっても、店舗の設備やのれん、契約を引き継ぐ形で譲渡することは可能です。株式譲渡ではなく、事業譲渡に近い形で進めるのが一般的です。
Q. 赤字の飲食店でも売却できますか? A. 赤字であっても、譲渡自体は可能です。ただし、譲渡価格や条件には影響します。立地や設備、常連客の状況などによって評価が変わるため、専門家に相談しながら現実的な条件を検討することをおすすめします。
Q. M&A仲介会社と事業承継・引継ぎ支援センターは何が違いますか? A. 事業承継・引継ぎ支援センターは、公的な相談窓口です。民間のM&A仲介会社は、譲渡先の探索や交渉支援を専門的に行います。まず公的な窓口で相談し、必要に応じて仲介会社を紹介してもらう進め方もあります。
8. まとめ
飲食店経営は、開業して終わりではありません。フェーズ1で準備を整え、フェーズ2で資金を調達し、フェーズ3・4で日々の運営や課題に向き合いながら、フェーズ5では多店舗展開や事業の譲渡といった、次のステージの選択肢が見えてきます。
多店舗展開は1号店の安定と体制が整ってから、事業の譲渡は後継者不在などの理由から検討されますが、いずれも判断に迷う点が多くあります。経営者一人で抱え込まず、早い段階から専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
経営の次のステージについて相談する窓口として、ドリームゲートの専門家相談も活用してみてください。 ドリームゲート専門家への相談はこちら
店舗展開・事業承継チェックリスト
- [ ] 1号店の売上・利益・資金繰りの安定確認
- [ ] 2号店を任せられる店長候補の育成
- [ ] 2号店の資金調達方法の検討(既存借入とのバランス確認)
- [ ] 譲渡を検討する場合、事業承継・引継ぎ支援センターなどへの相談
- [ ] 株式譲渡か事業譲渡か、税理士への確認
- [ ] M&A支援者との秘密保持契約の締結(譲渡先探しの段階)
出典一覧
※本記事で紹介した制度・支援機関の情報は、時期によって変更される場合があります。実際の相談・手続きの前には、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
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