飲食店経営でよくあるトラブルとは?資金繰り・人手不足・税理士社労士の活用法【飲食店経営ロードマップ フェーズ4】

この記事は2026/08/19に専門家 萩原 洋 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

飲食店の経営を続けていると、売上が伸びてきた時期でも、資金繰りの悪化、スタッフの離職、クレーム対応など、さまざまな課題に直面します。これらは、経営者一人の努力だけでは解決しづらい場合もあります。

本記事は、連載「飲食店経営ロードマップ」のフェーズ4(運営編:資金繰り・トラブル・スタッフ採用)です。フェーズ3では、開業後1年目の数字の見方と売上改善を解説しました。フェーズ4では、経営を続けるなかで直面しやすい「資金繰り」「トラブル対応」「人手不足」という3つの課題と、税理士・社労士をどう活用すべきかを解説します。

この記事の監修者
萩原 洋(はぎわら ひろし)
有限会社銀河企画/ フードビジネスコンサルタント
外食産業に携わって35年。フードビジネスコンサルタントとしても20年になります。その間、外食FC立ち上げに参画し、また自らも複数店舗の経営を行ってきました。経営者としてまたアドバイザーとして感じたことは、経営者にとって最大の悩みが資金問題であること。創業から開業後の運転資金まで悩みは尽きません。これからはドリームゲートを通じ、飲食店経営者の皆様を資金面からサポートしていきます。
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この記事の要点まとめ

  • 資金繰りが苦しいときは、早めに資金繰り表を作り、金融機関に相談することが大切です
  • 資金繰り悪化の原因は、売上高の減少だけでなく、利益率や取引条件の悪化なども含まれます
  • 人手不足には、採用チャネルの見直しと、既存スタッフの定着策の両方が必要です
  • 税理士・社労士には、それぞれ得意分野があり、相談するタイミングも異なります
  • 判断に迷う場面が多いため、早めに専門家へ相談する方法もあります

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1. 飲食店の資金繰りが苦しいときにやるべきこと

1-1 資金繰り悪化の主な原因

資金繰りが苦しくなる原因は、売上高の減少だけとは限りません。原価や光熱費の上昇による利益率の悪化、取引先からの支払いサイトの変更といった取引条件の悪化なども、資金繰りに影響します。また、天候不順や感染症の流行など、自社の努力では避けられない外部要因が影響することもあります。

1-2 資金繰りが苦しいときにやるべきこと

まず、今後数か月の「お金の入り」と「お金の出」を一覧にした資金繰り表を作ります。そのうえで、事業継続に不可欠な支払い(仕入・給与・社会保険料など)を優先します。支払期限の調整が可能なものについては、取引先へ相談しながら調整します。支払いが遅れそうだと分かった時点で、取引銀行や日本政策金融公庫に早めに相談することが大切です。相談が遅れるほど、選べる対応の幅が狭くなります。

日本政策金融公庫には、業績が一時的に悪化している事業者向けの融資制度として「セーフティネット貸付」があります。信用保証協会にも、同様の趣旨で通常より手厚い保証を受けられる「セーフティネット保証」という制度があります。日本政策金融公庫は自ら資金を貸し出す政策金融機関であり、セーフティネット保証は信用保証協会が保証を行い、実際に貸し出すのは民間金融機関です。事業者の状況によっては、両方の制度を組み合わせて活用できる場合もあります。

1-3 リスケジュールと回復見込みの考え方

返済が難しい場合は、金融機関に返済条件の見直し(リスケジュール・返済条件変更)を相談する方法もあります。返済条件の変更には、金融機関の承認が必要です。この際、金融機関は、今の資金不足が一時的なものか、その後も継続して返済できる状態に戻れるかどうかという、返済継続性の観点を確認します。事業者自身も、リスケジュールを検討する際は、目先の資金繰りだけでなく、その後の返済を無理なく続けられるかという視点で計画を見直すことが大切です。

※制度名・要件は変更されることがあります。申し込み前に必ず公式サイトまたは窓口で最新情報をご確認ください。


2. 飲食店経営でよくあるトラブルとその対応

2-1 クレーム・食品トラブル

異物混入や食中毒の疑いなど、食品に関するクレームは、初動対応が重要です。事実確認を急ぎつつ、保健所への相談・届出が必要なケースもあります。

2-2 労務トラブル

残業代の未払いや、シフトをめぐるトラブルは、飲食店で起こりやすい労務トラブルの一つです。トラブルが大きくなる前に、労働条件を書面で明示しておくことが予防につながります。

出典:厚生労働省「労働条件の明示」

2-3 契約・取引先とのトラブル

仕入れ先や不動産の契約をめぐるトラブルも起こり得ます。契約書の内容を事前に確認しておくことが、トラブルの予防につながります。


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3. 飲食店の人手不足を解消する方法

3-1 採用チャネルを見直す

求人媒体だけでなく、既存スタッフからの紹介、SNSでの発信など、複数のチャネルを組み合わせることで、応募の間口を広げられます。

3-2 既存スタッフの定着策を考える

新規採用だけに頼ると、育成コストがかさみます。シフトの柔軟性、評価の仕組み、働きやすい環境づくりなど、既存スタッフの定着策もあわせて考える必要があります。

3-3 業務の効率化・多能工化を進める

一人が複数の業務をこなせるように育成しておくと、急な欠勤にも対応しやすくなります。券売機やモバイルオーダーなど、省人化につながる設備の導入も選択肢の一つです。


4. 飲食店経営で税理士に相談すべきこと

  • 月次の試算表の確認、経営状況の把握
  • 確定申告・決算、税務調査への対応
  • 資金繰りが厳しい場合の資金計画の見直し
  • 個人事業から法人化するかどうかの判断

税理士は、税金の手続きだけでなく、日々の数字をもとにした経営相談の相手にもなります。資金繰りが厳しくなってから相談するのではなく、日頃から数字を共有しておくことで、早めの対応がしやすくなります。


5. 飲食店経営で社労士に相談すべきこと

  • 労働条件通知書や就業規則の整備
  • 社会保険・労働保険の手続き
  • 残業代や休日出勤の計算方法の確認
  • スタッフとの労務トラブルが起きた際の対応

社労士は、スタッフを雇用している飲食店にとって、労務トラブルを未然に防ぐための相談相手になります。トラブルが起きてからではなく、採用のタイミングから相談しておくと、後の対応がスムーズになります。


6. 経営判断で迷いやすいポイント

  • 正社員を増やすか、アルバイト・パートで対応するか:正社員を増やすと固定費は増えますが、業務の安定にはつながります。売上の季節変動が大きい業態では、アルバイト・パートを中心に組む考え方もあります
  • 賃上げをすべきかどうか:人手不足が続く場合、賃上げによって採用力を高める考え方があります。ただし、原価や家賃も上がっている状況では、賃上げが利益を圧迫することもあります。売上や利益率とのバランスで判断する必要があります
  • 資金繰り改善は、経費削減か売上増加か:どちらか一方だけに偏ると、サービスの質の低下や、機会損失につながることもあります。両方のバランスを考えながら進める必要があります
  • 借入を増やしてでも人材投資をすべきか:人手不足を解消するために借入を増やす選択肢もありますが、返済負担とのバランスを見て判断する必要があります

7. 実務上の注意点

  • 資金繰り表は、一度作って終わりではなく、毎月見直すことが大切です
  • 労働条件は、口頭だけでなく、書面やデータで明示しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります
  • 採用時だけでなく、退職時の手続きにも、社会保険や雇用保険の届出が必要です
  • 資金繰りの悪化が続き、事業の継続が困難だと判断せざるを得ない場合、早期に専門家へ相談することで、破産手続開始の申立てなど、より重い選択肢を避けられる可能性もあります

8. このタイミングで相談すべき専門家

課題 相談先の例
資金繰りの悪化、リスケジュール 税理士、取引金融機関、日本政策金融公庫
労務トラブル、就業規則の整備 社会保険労務士
契約トラブル、法的な対応が必要な場合 弁護士
経営全体の立て直し 中小企業診断士、認定経営革新等支援機関

複数の課題が同時に起きている場合は、まず中小企業診断士や認定経営革新等支援機関に相談し、状況を整理したうえで、必要な専門家につないでもらう方法もあります。


9. こんな場合は専門家に相談すべき

  • 資金繰りの悪化が一時的なものか、構造的な問題なのか整理できていない場合
  • スタッフとの労務トラブルへの対応方法が分からない場合
  • 人手不足の解消策として、何から手をつけるべきか迷っている場合
  • 複数の課題が同時に起きており、優先順位がつけられない場合

ドリームゲートでは、資金繰りや人材の課題について、税理士や中小企業診断士など、経験豊富な専門家に無料で相談できます。 ドリームゲート専門家への相談はこちら


10. よくある質問

Q. 資金繰りが苦しいとき、まず何をすべきですか? A. まずは資金繰り表を作り、今後数か月のお金の動きを見える化することが大切です。そのうえで、支払いの優先順位を決め、金融機関に早めに相談することをおすすめします。

Q. 人手不足の解消には、採用と定着、どちらを優先すべきですか? A. どちらか一方では解消しにくく、両方に取り組む必要があります。新規採用を増やしても、離職が続けば人手不足は解消しません。既存スタッフの定着策と、採用チャネルの見直しを並行して進めることをおすすめします。

Q. 税理士と社労士、どちらに先に相談すべきですか? A. 相談したい内容によって異なります。数字や資金繰りの相談は税理士、労働条件やスタッフの労務相談は社労士が適しています。両方に関わる課題の場合は、中小企業診断士など、経営全体を見る専門家に相談する方法もあります。

Q. 銀行にはいつ相談すればよいですか? A. 返済が遅れてからではなく、資金不足が見えた時点で相談することが大切です。早めに相談するほど、リスケジュールや追加融資など、選べる対応の幅が広がります。


11. まとめ

飲食店経営を続けるなかで、資金繰りの悪化、トラブル対応、人手不足は、多くの経営者が直面する課題です。資金繰りが苦しいときは、資金繰り表の作成と、金融機関への早めの相談が基本になります。人手不足には、採用と定着の両方から取り組むことが大切です。

税理士・社労士には、それぞれ得意分野があります。トラブルが起きてから相談するのではなく、日頃から相談できる関係を作っておくことで、問題が大きくなる前に対応しやすくなります。

経営課題の相談先として、ドリームゲートの専門家相談も活用してみてください。 ドリームゲート専門家への相談はこちら

次回のフェーズ5では、複数店舗の展開や、店舗の売却(スモールM&A)など、経営の次のステージについて解説します。


資金繰り・人材課題チェックリスト

  • [ ] 資金繰り表の作成、3〜6か月先までの更新
  • [ ] 支払いの優先順位の整理
  • [ ] 金融機関への早めの相談
  • [ ] 労働条件通知書・就業規則の整備
  • [ ] 採用チャネルの見直し
  • [ ] 既存スタッフの定着策の検討
  • [ ] 税理士・社労士との定期的な連携

出典一覧

※本記事で紹介した制度の名称・要件は、事業者の状況や時期によって変更されることがあります。実際の相談・申し込みの前には、必ず公式サイトまたは窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
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