飲食店の開業準備は、項目が多岐にわたるため、順番や優先順位を整理しないまま進めてしまうと、後から取り返しのつかない問題につながることがあります。特に、内装工事を始めてから許可の基準を満たしていないと分かったり、開業直後に運転資金が足りなくなったりするケースは少なくありません。こうした失敗の多くは、準備段階で「何を、いつまでにやるべきか」が整理できていないことが原因です。
本記事は、連載「飲食店経営ロードマップ」のフェーズ1(準備編)」です。開業を決めた段階から実際に店を開くまでの間に、経営者が押さえておくべき準備項目とその順番を整理します。具体的には、開業までのスケジュール、必要な資格・届出、事業計画書の書き方、開業資金の目安、専門家を活用するメリットまで、準備段階で判断に迷いやすいポイントとあわせて解説します。
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- 目次 -
この記事の要点まとめ
- 飲食店の開業には、資格取得と行政への届出が必須です
- 事業計画書は、売上予測と資金計画を数字で示す書類です
- 開業資金だけでなく、開業後の運転資金も見込んでおく必要があります
- 準備の順番を間違えると、追加工事や資金不足につながることがあります
- 判断に迷う場面が多いため、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談しながら進める方法もあります
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1. 飲食店開業までのスケジュールと準備の流れ
飲食店の開業準備は、一般的に半年から1年前から始めます。
| 時期 | やること |
| 6〜12か月前 | コンセプト決定、事業計画書の作成、自己資金の確認、物件探し |
| 3〜6か月前 | 事業計画のブラッシュアップ、資金調達の申し込み、物件契約 |
| 2〜3か月前 | 内装工事、厨房設備の発注、資格取得の準備、スタッフ採用 |
| 1か月前 | 保健所への営業許可申請、消防署への届出 |
| 開業直前 | 備品の搬入、プレオープン、最終確認 |
物件が決まらないと内装工事の見積りも取れません。順番を誤ると、後戻りしなければならないこともあります。また、保健所の検査日程は予約制の地域もあるため、開業日を先に決めてしまうと、検査が間に合わないこともあります。開業日は、保健所の検査スケジュールを確認したうえで決めることをおすすめします。
なお、資金調達の具体的な進め方については、次回のフェーズ2(準備直前・資金調達編)で詳しく解説します。
2. 飲食店開業に必要な資格と届出一覧
2-1 食品衛生責任者
各店舗に1名以上の食品衛生責任者を置く必要があります。講習は、各都道府県の食品衛生協会などで実施されており、受講することで取得できます。
2-2 防火管理者と飲食店営業許可
一定規模以上の店舗では、防火管理者の選任が必要です。要否は収容人数や店舗の広さによって変わるため、事前に消防署へ確認しましょう。
また、飲食店営業には保健所の営業許可が必要です。内装工事が完了する前に、事前相談を済ませておくと、工事後の追加対応を防ぎやすくなります。
出典:総務省消防庁
2-3 業態によって必要になる届出・許可
以下は、すべての飲食店に必要なものではなく、業態によって必要になる届出・許可です。自店に当てはまるかどうか、事前に確認しておきましょう。
- 深夜0時以降も酒類を提供する場合の「深夜酒類提供飲食店営業届出」(警察署へ届出)
- 酒類を小売する場合の「酒類販売業免許」(税務署へ申請)
- 接待を伴う営業を行う場合の「風俗営業許可」(警察署へ申請、いわゆる風営法に基づく許可)
これらは業態によって要否が変わるため、判断に迷う場合は、管轄の警察署や税務署、あるいは行政書士に確認することをおすすめします。
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3. 飲食店の事業計画書の書き方
事業計画書には、「コンセプトとターゲット」「売上予測」「資金計画」の3つの柱が必要です。感覚だけで書くと、金融機関に説得力が伝わりません。事業計画書の作成は、次回のフェーズ2で解説する資金調達にも直結する部分です。
3-1 売上予測の考え方
売上予測は、「席数×回転数」で1日の来店人数を出し、そこに客単価と営業日数を掛けて計算します。
例えば、席数20席、回転数2.0の場合、 20席 × 2.0回転 = 1日40人
この40人に、客単価1,200円をかけると、 40人 × 1,200円 = 48,000円(1日の売上)
これに月の営業日数25日をかけると、 48,000円 × 25日 = 120万円(月商)
という計算になります。この数字はあくまで一例です。実際には、近隣の競合店の状況や、立地の人通りも踏まえて見積る必要があります。
3-2 開業資金とは
開業資金とは、開業までに必要となる初期費用のことです。物件取得費、内装工事費、厨房設備費、備品費などが含まれます。
| 項目 | 内容の目安 |
| 物件取得費 | 保証金・敷金、仲介手数料など |
| 内装工事費 | 居抜きかスケルトンかで大きく変動 |
| 厨房設備費 | 新品か中古かで変動 |
| 備品費 | 什器、食器、レジなど |
カフェや小規模なレストランなどでは、開業資金の総額が500万円~1,500万円程度になるケースもあります。ただし、これはあくまで一般的な例です。立地、居抜きかスケルトンか、業態によって金額は大きく異なります。自店の場合の目安は、事業計画書を作成する段階で、日本政策金融公庫や商工会議所、専門家に相談しながら見積ることをおすすめします。
3-3 運転資金とは
運転資金とは、開業後の営業を続けるために必要なお金のことです。家賃、仕入れ、人件費などが該当します。開業後は、売上が計画通りに立ち上がらない期間があることを前提に、3〜6か月分の運転資金を見込んでおく必要があります。一般的には、家賃・人件費・仕入れなど固定費を中心に、3〜6か月程度を確保しておくと安心とされています。ここを見落とすと、開業直後に資金繰りが苦しくなる原因になります。
3-4 自己資金はどれくらい必要か
自己資金の目安は、申し込む融資制度や事業者の状況によって異なります。一般的に、開業資金の一部を自己資金でまかなえることは、融資審査でも見られるポイントの一つです。具体的な割合や金額は、日本政策金融公庫や専門家に確認することをおすすめします。
4. 飲食店開業で専門家を活用するメリット
開業準備には、複数の専門家が関わります。相談内容によって、適した専門家とタイミングが変わります。
| タイミング | 相談先の例 |
| コンセプト・事業計画の整理 | 中小企業診断、行政書士等専門家 |
| 融資の申し込み前 | 認定経営革新等支援機関、日本政策金融公庫 |
| 開業届・税金の相談 | 税理士 |
| スタッフ採用・労務の相談 | 社会保険労務士 |
| 許可申請書類の作成 | 行政書士 |
中小企業庁は、こうした専門家(認定経営革新等支援機関)による支援制度についての情報を公開しています。
準備段階のミスは、後になるほど修正コストが高くなります。早い段階で専門家に確認しておくことで、内装工事後に許可基準を満たしていないと分かる、といった手戻りを防ぎやすくなります。
複数の専門家に個別に相談先を探すのが大変な場合は、まず中小企業診断士や認定経営革新等支援機関へ相談する方法もあります。最初に相談することで、必要に応じて税理士・行政書士・社会保険労務士など、他の専門家とも連携しながら進められる場合があります。
5. 経営判断で迷いやすいポイント
- 物件と資金調達、どちらを先に進めるか:理想は資金調達のめどが立ってから物件を契約する流れですが、良い物件は早く埋まるため、先に抑えたいと考える経営者もいます。自己資金の余裕度や物件の希少性によって判断が変わります
- 居抜き物件かスケルトン物件か:居抜き物件は初期費用を抑えやすい一方、残っている設備が古く、開業後すぐに故障するリスクもあります。スケルトン物件は自由度が高い分、内装費用がかさみます。どちらが適しているかは、業態や既存設備の状態によって異なります
- 楽観的な数字か、厳しめの数字か:金融機関は厳しめのシナリオでも返済できるかを見ています。両方のシナリオを用意しておくと判断材料が増えます
- 自己資金と借入のバランス:自己資金だけでまかなえる場合でも、あえて融資を活用し、手元資金に余裕を持たせる考え方もあります。事業者の資金状況やリスク許容度によって異なります
- 補助金をあてにしすぎない:補助金は採択されるか分からず、入金も基本的に後払いです。自己資金と融資を軸に計画を組み、補助金は「もらえたら助かるもの」として位置づけることをおすすめします
6. 実務上の注意点
- 内装工事の契約前に、保健所と消防署への事前相談を済ませておくと、手戻りを防げます
- 保健所の検査日程は予約制の地域もあります。開業日を決める前に、検査の空き状況を確認しておきましょう
- 厨房機器は、機種によって納品まで数か月かかることがあります。早めに発注しておくと安心です
- 資格取得の講習は、開催日程が限られていることがあります。早めに申し込みましょう
- 事業計画書は、開業後も定期的に見直す資料として活用できます
7. こんな場合は専門家に相談すべき
- 資格取得や届出の要否が、自分の店舗のケースに当てはまるか分からない場合
- 物件契約と資金調達、どちらを先に進めるべきか迷っている場合
- 売上予測や資金計画の根拠に自信が持てない場合
- 開業スケジュール全体の組み方に不安がある場合
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8. よくある質問
Q. 飲食店の開業にはいくら必要ですか? A. 業態や規模、居抜きかスケルトンかによって大きく異なりますが、カフェや小規模なレストランなどでは500万円〜1,500万円程度になるケースもあります。開業資金だけでなく、開業後3〜6か月分の運転資金も含めて考える必要があります。具体的な金額は、事業計画書を作成する段階で、専門家と一緒に見積ることをおすすめします。
Q. 自己資金はどれくらい必要ですか? A. 金融機関の融資を受ける場合、自己資金の割合が審査で見られることがあります。必要な自己資金の目安は、申し込む制度や事業者の状況によって異なるため、日本政策金融公庫や専門家に確認することをおすすめします。
Q. 日本政策金融公庫の融資はいつ申し込めばよいですか? A. 審査には一定の期間がかかるため、物件契約や内装工事の前、資金計画がある程度固まった段階で申し込むのが一般的です。開業直前の申し込みは、間に合わないリスクがあります。
Q. 居抜きとスケルトン、どちらがおすすめですか? A. 一概にどちらが良いとは言えません。居抜きは初期費用を抑えやすい一方、設備の老朽化リスクがあります。スケルトンは自由度が高い分、内装費用がかさみます。前のテナントの業態が自店と近いかどうかによっても、向き不向きが変わります。
Q. 個人事業と法人、どちらで開業すべきですか? A. 税金の仕組みや社会的信用、将来の店舗展開の予定などによって、向き不向きがあります。一概にどちらが良いとは言えないため、税理士に相談しながら判断することをおすすめします。
Q. 食品衛生責任者はオーナー本人でなくてもよいですか? A. 店舗ごとに1名以上配置する必要がありますが、必ずしもオーナー本人である必要はありません。従業員が資格を取得し、担当することも可能です。
9. まとめ
飲食店の開業準備は、資格取得、事業計画書の作成、物件契約、資金調達という流れの中で、順番とタイミングが重要です。順番を誤ると、追加工事や開業後の資金不足につながることがあります。
「物件を先に決めるか」「居抜きかスケルトンか」「借入をどこまで活用するか」といった判断は、店舗ごとの状況によって最適な答えが変わります。迷ったときは、専門家に相談しながら準備を進めることをおすすめします。
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まずはフェーズ1で開業準備を整え、次のフェーズ2では、日本政策金融公庫の創業融資や制度融資、活用できる補助金など、実際の資金調達について詳しく解説します。連載「飲食店経営ロードマップ」では、この後もフェーズ3で開業直後〜1年目の運営、フェーズ4で資金繰り・トラブル・採用、フェーズ5で店舗展開について、順を追って解説していきます。
開業準備チェックリスト
- [ ] コンセプト・ターゲットの決定
- [ ] 事業計画書の作成
- [ ] 自己資金の確認
- [ ] 資金調達(融資・補助金)の申し込み
- [ ] 物件の契約
- [ ] 食品衛生責任者の資格取得
- [ ] 防火管理者の選任(該当する場合)
- [ ] 内装工事・厨房設備の発注
- [ ] 保健所への事前相談
- [ ] 保健所への営業許可申請
- [ ] 消防署への届出
- [ ] 業態に応じた許可(深夜酒類提供、酒類販売、風俗営業など)の確認
- [ ] スタッフ採用
- [ ] 開業
出典一覧
※本記事で紹介した制度・手続きの内容や金額の目安は、事業者の状況や地域、時期によって異なる場合があります。実際の手続き・申し込みの前には、必ず公式サイトや管轄の保健所・消防署・警察署・税務署にご確認ください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは、経済産業省後援のもと2003年に誕生した日本最大級の起業支援プラットフォームです。起業アイデアの整理から事業計画書作成、資金調達・融資支援まで、実務経験豊富な専門家が起業家一人ひとりの課題に寄り添い、実現までをサポートします。(運営:株式会社プロジェクトニッポン)
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