最大1440万円、キャリアアップ助成金を活用した雇用拡大の手続きまとめ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

厚生労働省の「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者などの非正規雇用労働者を正社員にしたり、非正規雇用労働者の処遇を改善したりした事業主に、助成金を支給する仕組みです。

優秀な人材の多くは正社員で働きたいと考えているので、企業がキャリアアップ助成金を使うことは、人材戦略にも寄与することになります。

キャリアアップ助成金の詳細について解説します。

なおこの記事は、厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」を参考にしています。URLは以下のとおりです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000616643.pdf

キャリアアップ助成金とは

非正規雇用労働者とは、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などのことで、正社員以外の立場で働いている人たちのことです。

非正規雇用労働者は不安定な状態にあるので、その多くは安定した正社員になることを望んでいます。

また、多くの企業が今、人手不足に見舞われ良質な労働力の確保に苦労しています。

キャリアアップ助成金はいわば、正社員で働きたい労働者と、正社員として働いて欲しい企業を支援する制度といえます。

この助成金の支給対象は企業です。

キャリアアップ助成金のポイント

キャリアアップ助成金のポイントを箇条書きで紹介します。

  • 事業者がすべきことは、有期雇用労働者を正規雇用労働者(正社員)にしたり、有期雇用労働者の基本給を増額したりすること
  • 事業者は社内にキャリアアップ管理者を置かなければならない
  • 対象労働者1人ひとりについてキャリアアップ計画を作成して、労働局長の認定を受ける必要がある
  • 対象労働者の労働条件、勤務状況、賃金支払い状況を明示する

キャリアアップ助成金の支給額はかなり幅がありますが、これは助成金の種類がたくさんあるからです。後段の「キャリアアップ助成金の受給要件と支給額」の章ですべての種類を紹介します。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正社員などの安定した立場にするだけでなく、非正規雇用労働者の基本給を増額した場合も受給できます。

キャリアアップ助成金の受給要件と支給額

キャリアアップ助成金には次の6種類があります。

  1. 正社員化コース
  2. 賃金規定等改定コース
  3. 賃金規定等共通化コース
  4. 諸手当制度等共通化コース
  5. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  6. 短時間労働者労働時間延長コース

それぞれの受給要件と助成金の支給額を紹介します。

正社員化コース

正社員化コースでは、有期雇用労働者等(非正規雇用労働者のこと)を正規雇用労働者等に転換または直接雇用したとき、助成金を1回受給できます。

下記の表の金額は対象労働者1人当たりのものです。つまり、中小企業が2人の有期雇用労働者を正規雇用労働者にすれば、570,000円×2人=1,140,000円を受給できます。

中小企業 大企業
生産性向上が認められた場合 生産性向上が認められた場合
有期雇用労働者を正規雇用労働者にする 570,000円 720,000円 427,500円 540,000円
有期雇用労働者を無期雇用労働者にする 285,000円 360,000円 213,750円 270,000円
無期雇用労働者を正規雇用労働者にする 285,000円 360,000円 213,750円 270,000円

「有期→正規」「有期→無期」「無期→正規」の3つのケースを想定していて、企業にとって最もハードルが高い「有期→正規」が最高額になっています。

また、大企業より中小企業のほうが、支給額は高くなります。

上限は、1事業所あたり1年度20人までなので、助成金の最高額は1,440万円(=720,000円×20人)になります。

例外規定は次のとおり。

  • 勤務地限定正社員や職務限定正社員、短時間正社員も正規雇用労働者とする
  • 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者にした場合は、助成金が加算される
  • 母子家庭の母、父子家庭の父が対象となる場合、加算される
  • 勤務地限定正社員や職務限定正社員、短時間正社員を新たに規定して、有期雇用労働者をそれに転換させたり、直接雇用したりしたら加算される

注意点:生産性向上について

2)を紹介する前に、注意点があります。

生産性向上が認められた場合、助成金の額が増えます。

生産性は「付加価値÷雇用保険被保険者数」で算出し、その生産性が3年度前より6%以上伸びている、または、 その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていれば、上記の「生産性向上が認められた場合」の額が採用されます。

この生産性向上による増額は、正社員化コース以外のコースでも適用されます。

2)賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、すべての、または一部の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、実際に昇給させた場合、助成金を1回受給できます。

<すべての有期雇用労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定した場合>

対象労働者数 ~当たり 中小企業 大企業
生産性向上が認められた場合 生産性向上が認められた場合
1~3人 1事業所当たり 95,000円 120,000円 71,250円 90,000円
4~6人 1事業所当たり 190,000円 240,000円 142,500円 180,000円
7~10人 1事業所当たり 285,000円 360,000円 190,000円 240,000円
11~100人 1人当たり 28,500円 36,000円 19,000円 24,000円

<一部の有期雇用労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定した場合>

対象労働者数 ~当たり 中小企業 大企業
生産性向上が認められた場合 生産性向上が認められた場合
1~3人 1事業所当たり 47,500円 60,000円 33,250円 42,000円
4~6人 1事業所当たり 95,000円 120,000円 71,250円 90,000円
7~10人 1事業所当たり 142,500円 180,000円 95,000円 120,000円
11~100人 1人当たり 14,250円 18,000円 9,500円 12,000円

申請できる対象労働者は1事業所・1年度当たり100人までです。

中小企業が賃金規定等を3%以上5%未満増額改定すると、助成金が加算されます。

3)賃金規定等共通化コース

賃金規定等共通化コースは、有期雇用労働者等に対して、正規雇用労働者と共通の「職務に応じた賃金規定等」を新設して適用した場合に1回支給されます。

助成金の支給額は以下のとおりです。額は1事業所当たりで、( )は生産性向上が認められた場合です。

  • 中小企業:570,000円(720,000円)
  • 大企業:427,500円(540,000円)

さらに共通化した対象労働者2人目以降、対象労働者1人当たり、中小企業は20,000円(24,000円)、大企業は15,000円(18,000円)が加算されます。上限20人。

4)諸手当制度等共通化コース

諸手当制度等共通化コースは、有期雇用労働者等に対して、正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新設して適用した場合に助成金が支給されます。

また、有期雇用労働者等を対象に、法定外の健康診断制度を新設し、延べ4人以上に適用したときも支給されます。

助成金の額は次のとおり。額は1事業所当たりで、( )は生産性向上が認められた場合です。

  • 中小企業:380,000円(480,000円)
  • 大企業:285,000円(360,000円)

この金額が加算されることがあり、その条件などは以下のとおりです。

1)共通化した対象労働者(2人目以降)について、助成額を加算

加算の対象となる手当は、対象労働者が最も多い手当1つとなります。

  • 対象労働者1人当たり15,000円<18,000円>(12,000円<14,000円>)

上限20人までです。

また、有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合は除きます。

2)同時に共通化した諸手当(2つ目以降)について、助成額を加算

原則、同時に支給等した諸手当について、加算の対象となります。

  • 諸手当等の数1つ当たり16万円<19万2,000円>(12万円<14万4,000円>)

上限4手当までです。

5)選択的適用拡大導入時処遇改善コース

選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、労使合意によって社会保険の適用範囲を拡大し、有期雇用労働者等が被保険者となった場合に助成金を支給します。

助成金の額は次のとおり。額は1事業所当たりで、( )は生産性向上が認められた場合です。

  • 中小企業:190,000円(240,000円)
  • 大企業:142,500円(180,000円)

この金額が加算されることがあり、その条件などは以下のとおりです。

  • 措置該当日以降に新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等の基本給を一定の割合以 上増額した場合、基本給の増額割合に応じて以下の助成額を加算する

< >内は生産性向上が認められた場合の額です。

1人当たり 中小企業 大企業
2%以上3%未満 19,000円 <24,000円> 14,000円<18,000円>
3%以上5%未満 29,000円 <36,000円> 22,000円<27,000円>
5%以上7%未満  47,000円 <60,000円> 36,000円<45,000円>
7%以上10%未満 66,000円 <83,000円> 50,000円<63,000円>
10%以上14%未満 94,000円<11万9,000円> 71,000円<89,000円>
14%以上 13万2,000円<16万6,000円> 99,000円<12万5,000円>

支給申請上限人数は45人までです。

  • 措置該当日以降に有期雇用労働者等の生産性の向上を図るための取組(研修制度や評価の仕組み の導入)を行った場合に助成額を加算する
    ・1事業所当たり100,000円(75,000円)

1事業所当たり1回のみです。
令和4年9月30日まで(従業員数が100人を超える事業所については、①及び③の助成について令和3年9月30日 まで)の時限措置となります

6)短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、さらに、社会保険の適用とした場合、次の金額が支給されます。額は対象労働者1人当たりで、( )は生産性向上が認められた場合です。

  • 中小企業:225,000円(284,000円)
  • 大企業:169,000円(213,000円)

また延長時間が5時間未満でも、以下の額が支給されます。「対象労働者1人当たりの額」「社会保険を適用させなければならない」点は同じです。

延長時間 中小企業 大企業
生産性向上が認められた場合 生産性向上が認められた場合
1時間以上2時間未満 45,000円 57,000円 34,000円 43,000円
2時間以上3時間未満 90,000円 114,000円 68,000円 86,000円
3時間以上4時間未満 135,000円 170,000円 101,000円 128,000円
4時間以上5時間未満 180,000円 227,000円 135,000円 170,000円

 

上限45人まで。

キャリアアップ助成金の受給までの流れ

キャリアアップ助成金の受給までの流れを紹介します。

  • キャリアアップ管理者を置く:キャリアアップ管理者とは、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む知識と経験を有している者のこと
  • 対象労働者1人ひとりについて、キャリアアップ計画を作成する
  • キャリアアップ計画を労働局に認定してもらう
  • 社内で取り組みを始める
    ・就業規則の改定、正社員等への転換、増額賃金の支払いなどを実施する・転換後6ヶ月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内に支給申請します(賃金には時間外手当も含む)
  • キャリアアップ助成金の支給を申請する
  • 労働局の審査をパスすれば支給される

キャリアアップ助成金における注意点

キャリアアップ助成金の注意点を紹介します。

  • 先に実施、お金はあとから入ってくる

キャリアアップ助成金の大きな流れは「認定を受け」→「実施して」→「支給」となります。

つまり、有期雇用労働者等を正社員にしたり、有期雇用労働者等の給料を増額したりしたあとでないと、助成金を得ることはできません。

  • キャリアアップ計画を、対象労働者1人ひとりについて作成しなければならない
  • 労使合意や社会保険の対象拡大、就業規則の改定など、手間がかかる作業が多い
  • 助成金の申請のための書類が多い

必要になる書類の主なものは以下のとおり。

  1. 支給要件確認申立書
  2. 支払方法・受取人住所届
  3. 管轄労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画書の写し
  4. 対象労働者の週所定労働時間の延長前および延長後の雇用契約書等
  5. 対象労働者の報酬支払簿
  6. 対象労働者の労働時間が明記されている出勤簿等
  7. 中小企業事業主であることを確認できる書類(中小企業の場合)
  8. 生産性要件に係る書類
  9. 延長後6カ月分の賃金が支給されていることについての事業主による対象労働者本人への確認書
  10. 特定適用事業所該当通知書(該当する場合)
  11. 任意特定適用事業所該当通知書(該当する場合)

なお、必要書類の詳細は、厚生労働省の以下のPDFの20、21ページに記されているので確認してみてください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000616643.pdf

申請を楽にするための方法

キャリアアップ助成金は種類も添付書類も多いので、申請を担当する総務担当者や労務担当者はとても手間がかかります。

そこで申請の担当者が楽することができる方法を2つ紹介します。

ソフトを導入する

キャリアアップ助成金の申請用のソフトが開発されています。ソフトでは例えば次のことができます。

  • キャリアアップ助成金の申請に必要な書類の作成
  • 正社員への転換や昇給のスケジュール管理

これらの書類もソフトでつくれる場合があります。

  • キャリアアップ助成金支給申請書
  • 正社員化コース内訳
  • 正社員化コース対象労働者詳細
  • 支給要件確認申立書
  • 支払方法受取人住所届
  • 就業規則申立書
  • 賃金上昇確認ツール
  • 役員等一覧
  • 事業所確認票

しかし、ある程度労務管理の知識がある方が専任で行わないと難しいというデメリットがあります。

社会保険労務士事務所に依頼してしまうのも手

もし、小さな会社で、助成金の申請に慣れている担当者がいない場合は、社会保険労務士事務所に依頼してしまうのでも手です。

社会保険労務士には次のようなことをしてもらえます。

<社会保険労務士事務所にしてもらえること>

  • キャリアアップ助成金のさまざまなコースのうち、自社にマッチしたコースをアドバイスしてもらえる
  • 何をすれば受給要件をクリアできるかも教わることができる
  • 必要書類をそろえてもらえる、または、必要書類を指導してもらえる
  • 助成金の入金までのスケジュールを管理してもらえる

助成金を受給できる確率があがり、経営者は時間と手間を節約することができます。

キャリアアップ助成金以外の企業向け助成金

企業に支給される雇用関係の助成金は、キャリアアップ助成金以外にもあります。

その一部を紹介します。

雇用関係の助成金は、雇用を増やすという社会貢献への「ご褒美」のようなものでもあるので、取りこぼさないようにしたいものです。

<雇用関係の助成金の一例>

  • 新型コロナの影響による雇用調整助成金

休業や教育訓練、出向を通じて労働者の雇用を維持した場合に支給される

  • 産業雇用安定助成金

新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされたため、従業員の雇用維持を目的として在籍型出向により従業員を送り出す場合または当該従業員を受け入れる場合に支給される

  • 労働移動支援助成金(再就職支援コース)

事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者の再就職支援を民間職業紹介事業者に委託等して行った場合に支給される

  • 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)

中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用者の採用を拡大した場合に支給される

  • 中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)

これから起業をする場合や、事業を開始して間もない法人・個人事業主が中高年齢者等を雇い入れた場合に支給される

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

高年齢者(60~64歳)・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れた場合に支給される

  • 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)

雇用情勢が特に厳しい過疎地域で、事業所を設置整備して労働者を雇い入れた場合に支給される

  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

職業経験の不足などから就職が困難な求職者を原則3か月間の試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、常用雇用への移行のきっかけとしていただくことを目的とした制度

  • 障害者介助等助成金

障害者の職場定着を図るために職場支援員を配置した場合に支給される

  • 人材確保等支援助成金(テレワークコース)

適正な労務管理下における良質なテレワークの導入・実施を通じて従業員の離職率の低下を図った場合に支給される

  • 65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

65歳以上への定年引上げ等を実施した場合に支給される

  • 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備(就業規則等の多言語化など)を通じて、外国人労働者の職場定着を図る取組を実施した場合に支給される

まとめ~正社員雇用を増やすきっかけに

経営者の多くは、有期雇用労働者など非正規雇用労働者より、正社員を雇いたいと思っているのではないでしょうか。しかし正社員は雇用コストが高いので、正社員を増やすと人件費が経営を圧迫しかねません。

そうであるならば、正社員の生産性を向上させればよいわけです。雇用コストを上回る利益をあげることができれば、「正社員にしてよかった」と思えるはずです。また、労働者も正社員になれば生活が安定するので幸福度が増えます。

キャリアアップ助成金はこうした好循環を生むきっかけになるので、経営者はぜひ積極的に検討してみてください。

助成金は「社会保険労務士」に相談ができます。ドリームゲートなら社会保険労務士へ無料のメール相談ができますので、ご利用ください。

 

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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