Vol.21 正しい「資金繰り表」の管理で経営危機は回避できる!?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
こ の「効率よく業務を進めるノウハウとは?」のVol.2で、倒産の危険性を回避するためには、資金繰りがいかに重要かについて解説しました。では、資金繰 りはどうやって管理すればいいのでしょうか。Vol.2を再度読み直してからこの記事を読むと、さらに理解が深まると思います。

 

資金繰り表は毎日更新を

 

「資 金繰り」を管理するには、「資金繰り表」を作成し、日々のお金の出入りをチェックすることに尽きるといっても過言ではありません。資金繰り表には、「資金 繰り予定表」と「資金繰り実績表」があります。表の項目はどちらも同じものですが、予定表は入出金の予定を見通したものを、実績表はその日ごとに発生した 入出金を記載します。

 そして、資金繰り表は毎日更新します。「ウチは入金も支払いもまとめて月末にあるから、資金繰り表の更新は月1回でいい」、なんて考えていると、そのうち足をすくわれてしまうかもしれませんよ。

 

 

資金繰り表の管理とは、すなわち「危機管理」

  確かに、すべての支払いや入金が月のある1日に集中していれば、それでも事足りるかもしれません。しかし、実際は細かい現金支出などは日々発生するのが普 通ですし、入金も何日かにばらけることが多いでしょう。それらを「まとめて更新」しようとしているうち、本日の入金予定をチェックし忘れ、入金が1日ズレ てしまったために、支払期日に現金を回すことができなくなり信用を失ってしまう、などということが起こりがちです。

 資金繰り表の管理とは、すなわち「危機管理」。入出金のチェックや記載にモレや記入ミスがあると、命取りになりかねません。資金繰りは経営の根幹をなす仕事。人任せにせず、経営者自ら日々把握するようにしたいものです。

 

資金繰り表は銀行口座ごとに作成

 では、資金繰り表はどう作成すればよいでしょうか。これは人それぞれに使いやすいものがあるので一概にはいえませんが、参考までに私が顧客にアドバイスしているものをご紹介しましょう。エクセルで作成する前提です。

  まず、銀行口座が複数ある場合、資金繰り表は銀行口座ごとに作成します。そうでないと、どの口座の残高がいくらあるのかがわからなくなり、ほかの口座には 残高があるものの、ある口座が資金不足で決済できなくなって、最悪の場合は不渡りを出してしまうことになりかねないからです。

 

管理しやすい項目を立てる

 縦軸には日付を記入します。ここは、前述のとおり、日々発生する入出金をその日ごとに記載・管理するためです。

 横軸は、大項目として「入金」、「出金」、「残高」を立てます。次に、大項目の内訳を立てていきます。

 私の場合、入金は「売上収入」、「利息収入」、「借入金収入」などに分けます。売上収入は、さらに「前受金収入」と「売掛金収入」に細分化します。
 資金繰りを良くするコツは「入金は早く、出金は遅く」です。前受金は文字とおり商品等の出荷前に入金されるもので、前受金が多くなればなるほど、資金繰りに余裕が生じます。逆に売掛金が多くなればなるほど入金が後回しとなるので、資金繰りはタイトになっていきます。

  出金は、「仕入支出」、「諸経費支出」、「人件費支出」、「固定資産支出」、「借入金返済」などに分けます。さらに、仕入支出は「前渡金支出」、「買掛金 支出」に、人件費支出は「給与賞与支出」、「源泉税法定福利費等支出」などに、固定資産支出は「有形固定資産支出」、「無形固定資産支出」、「敷金保証金 支出」、「長期前払費用支出」などに細分化します。

 繰り返しますが、これらの項目は、業種や規模などによって異なりますので、税理士や会計士などと相談のうえ、決めていくとよいでしょう。

 

さまざまな前提条件を把握、決定

  資金繰り予定表を作成するためには、まず、資金繰り上のさまざまな前提条件を把握、もしくは決定する必要があります。具体的には、売上予測、売上代金の回 収条件(現金か売掛か、売掛の場合はサイト<現金化できるまでの日数>)、仕入代金の支払条件(同様に現金と買掛の割合、買掛金の支払条件、支払手形のサ イトなど)、売上総利益率、固定費、借入金返済条件、設備投資予算などについて、現状把握および予測を行います。

 そして、それらの入出金が具体的に何月何日に発生するのかを把握して、表の各項目に記載します。

 

売上予測に「希望的観測」はご法度

 資金繰り予定表を作成するにあたり、最重要なのは、売上予測をできるだけ正確なものにすること。売上予測が決まって、はじめて損益予測、資金繰り予測が成立するからです。ここが不正確だと、表のすべてが不正確なものになってしまいます。

  ポイントは、売上予測に「希望的観測」を入れないこと。事業計画書の売上目標もそうですが、何事も保守的に見積もり、根拠のない希望的観測はご法度です。 特に資金繰り予定表に、このような「根拠のない希望的観測による売上目標」に基づいた金額を記載するのは危険です。資金繰り予定表上の数字は堅く読んだ保 守的なものを記載するようにしましょう。

 

 支払い項目も同様です。金額や支出用途は多めに見積もって、余裕を持たせておくことが肝心です。

 日々実績表を作成しながら、予定表との違いとその原因を確認・更新していけば、入出金のモレも把握でき、またしだいに資金繰り予定表も精緻なものにしていくことができるでしょう。

 

「キャッシュフロー計算書」とは

  財務諸表の1つに「キャッシュフロー計算書」というものがあります。法律的に作成しなければならないものではありませんが、銀行の融資審査の際に非常に重 視されるなど、重要性の高いもの。前述のような入出金区分を用いた資金繰り表を作成しておけば、簡単な組替作業により、このキャッシュフロー計算書を作成 することができます。では、キャッシュフロー計算書とは何で、なぜ重要視されるのでしょうか。

 損益計算書が「減価償却費」や「引当金」な ど実際には現金が動かない数字も含まれるのに対して、キャッシュフロー計算書は、現金の動きだけをまとめたもの。つまり、利益ではなく、その会社がどれだ けの現金を生む能力を持っているかがわかります。これを作成することで、利益は上がっていても現金がないことで倒産する、いわゆる「黒字倒産」の危険性を 把握することができます。損益計算書だけではわからない、その会社の経営内容をより詳細・正確に把握することができるわけです。

 

「黒字倒産」のメカニズム

  例えば、売上が500万円で原価が200万円、経費が100万円という仕事があった場合。損益計算書では、500万円-(200万円+100万円)で利益 は200万円となります。ところが、500万円の売上のうち、250万円が1カ月後の入金、残り250万円は2カ月後に入金という条件で、原価と経費は1 カ月後に支払わなければならないという場合。1カ月後の時点では250万円-(200万円+100万円)で50万円の赤字となってしまいます。

  こういう条件の仕事をどんどん引き受けていくと、損益計算書ではどんどん黒字が積みあがっていくものの、現金の動き(キャッシュフロー)ではどんどん赤字 が積みあがってしまうことになり、しまいには倒産に至るということがあるわけです。これを「黒字倒産」といいます。キャッシュフロー計算書を作成すれば、 こうした傾向を読み取ることができるといわれています。

 

「外部向け報告資料」と「内部向け管理資料」

 キャッシュフロー計算書と資金繰り表の関係は、前者が「外部向け報告資料」であり、比較可能性から書式が確定しているのに対し、後者は「内部向け管理資料」であり、書式は各会社の実情に応じてまちまちであるということができるでしょう。

  忙しい毎日の業務の中で、きっちり資金繰り表を作成していくのは手間がかかって面倒という気持ちもわかります。たとえば、市販の会計ソフトには、資金繰り 表はもちろん、キャッシュフロー計算書を簡単に作成できるものがあります。資金繰り表は企業経営の生命線となる資料とはいえ、エクセルなどで作成するには 手間がかかりますよね。その手間を大幅に削減できると考えたら、活用してみることも一案だと思います。

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