実用化目前! 個人の人格をコピー・再構築し、自分の分身ともいえる人工知能をつくるサービス「al+(オルツ)」

企業紹介

執筆者: ドリームゲート事務局

電通と共同でアイドルの篠崎愛を人工知能化!? まるでSFのような仕組みが本当にかたちになりつつある
展開している事業・特徴

20150910-12015年8月19日、電通との共同プロジェクトで、アイドルの篠崎愛さんを人工知能上に再現するという取り組みを発表した株式会社オルツ。また、2015年3月28日には日本テレビの「世界一受けたい授業」で、同社の人工知能が紹介され、アイドルの高城亜樹さんの思考情報を「al+(オルツ) 」が学習し、高城さんらしいメールへの自動返信を自立して行うというデモンストレーションを行った。

すでに人工知能界隈で、知られる存在となったオルツ社。筆者も人工知能系ベンチャーを取材するなかで、よく耳にしていたベンチャーだ。今回、オルツ社の代表である米倉千貴氏にインタビューする機会を得たので、人工知能「al+」の内容、そして同社の起業の経緯から、人工知能の未来について伺ってきた。

オルツ社はパーソナル人工知能「al+」を開発している。Personal Artifical Intelligence (略称P.A.I)と同社が呼んでいる人工知能は、クラウド上にあるシステムがスマートフォンなどを媒介して、利用者個人の情報を取得、人格をコピー・再構築して、自分の分身ともいえる人工知能をつくり出すというものだ。

まるでSFの世界のような話だが、すでにクローズドベータ版のテストが行われている。2016年の実用化・商業化を目指して、急ピッチの開発を進めており、様々な分野の大手企業などと提携交渉が始まっているという。

「al+」の仕組みはこうだ。まず、利用者がスマートフォンからメールアドレスで利用者登録を行い、さらに自分の使っているSNSのアカウントなども紐づける。メールアドレスをもとにメールの履歴、内容、やり取りしている相手、またSNS上でのコミュニケーションの内容などをもとに、人工知能が利用者の人格を学習する。

例えば、利用者Aさんにとって、「上司」といえば、○○さん、「社長」といえば○○さん、「奥さん」といえば○○さんというように、テキストだけでは一般用語でも、利用者の視点で見れば誰を名指しているか明確なことを人工知能でも判断できるようになる。あるいは、「いつもの報告書を月曜9時までに」とか「渋谷のいつもの店で待ってるね」といったやり取りも、人工知能が過去のやり取りから文脈を理解し、いつもの報告書=○○社に提出する営業レポート、渋谷のいつもの店=道玄坂○○ビル2階のBar、といったことまで理解するのだという。

これが実現すると、かなり気の利く秘書のような存在、いや、それ以上に利用者本人の嗜好や特性を理解した「第2の自分」が生まれることになる。

このインパクトを理解するのには、少々時間がかかるかもしれない。筆者の稚拙な文章で伝えきれるかが不安なため、米倉氏からわかりやすい例えを教えてもらった。米倉氏によれば、以下のようなことが可能になるという。

<利用者の人口知能al+>
「今日の予定で朝からmtgが5件続いていますが、台風の影響で電車も遅れそうですし、いつも4件目の○○社との会議は長引く傾向があるので、5件目のアポは早めにリスケしておいたほうがトラブルにならないかと思います」

<利用者>
「そうだな。5件目のアポは少し遅い時間にずらしてもらえるか。先方の担当者に伝えておいてほしい」

<利用者の人口知能al+>
「それでは、○○社の担当者にメールをしておきます」

つまり、利用者の行動や外部環境を総合的に判断し、トラブルになりそうなことを予測して、利用者の承諾があれば、そのための行動を行う(上記の例では、人工知能がメールを書いて送る)。まさに秘書のような存在だ。

また、いつも買っている日用品が底を尽きそうになると、追加注文するか聞いてきたり、利用者が好むブランドから新商品が出た場合、それが利用者の嗜好に合っていれば案内をしたり、人工知能が利用者のニーズを把握し、働いてくれるというわけだ。

ITベンチャーでヒットサービスを開発し、取締役に。多忙ななか、ルーチン業務を自動化するシステムからパーソナル人工知能を着想
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150910-2米倉氏の経歴を簡単に紹介したい。小学生の頃はゲームリクエイターに憧れ、大学生の頃は現代アートの制作に取り組んでいた。しかし、アートでは食えないと考え、儲かる仕事を探した結果、ITの世界に飛び込んだ。

2001年からメディアドゥというITベンチャーで取締役を務め、2004年に独立し、コンテンツプロデューサーとしての活動を開始。また、グラフィックやゲーム、メディア系のサービスを展開する株式会社未来少年を2006年8月に設立している。同社を年商15億円の企業に成長させた後、全事業を売却し、2014年11月にオルツを創業した。

米倉氏がIT業界に飛び込んだ当時、iモードが登場して携帯電話でインターネットが楽しめるようになり、爆発的に利用者が増え始めた時期だった。米倉氏はこの時、「パケ割」という、パケット通信料を自動的に下げられるサービスの企画・開発に従事した。このサービスは大ヒットし、ユーザー数は150万人にもなったという。このヒットが認められ、2001年に同サービスを運営していた株式会社メディアドゥの取締約に就任。

その後、2004年に独立し、2006年に株式会社未来少年を創業。経営者として多忙な日々を送っていた。多くのスタッフを管理する上で、例えば人事、組織運営などの業務の7割が、ルーチン業務であることに気づいた。

そこでスタッフとのコミュニケーションを自動的にマニュアル化するシステムを開発したのだが、今度はそのシステムを使うためのマニュアルが膨大になってしまった。マニュアルが多すぎると誰も見なくなる。業務を効率化しようとシステム化しても、それを使う人間の側に限界がある。思考錯誤した結果、業務効率化には、スタッフが業務で困った時に、気軽に聞けることが重要と考えた。上長に細かな相談はしづらいが、機械が相手であれば気兼なく質問やコミュニケーションが行える。スタッフが判断に困った時に、どうすればいいか教えてくれるツールがあれば、業務効率が格段に高まると考えた。そして、「上司の代わりに回答してくれるサービス」という構想にたどりつく。

もう1つ、課題として目を付けたのが、世界中に大量のITサービスが生まれては消えていくという現実だった。膨大なITサービスのなかから、最適なものを探して活用する、あるいは大量のサービスを連携させて使いこなすことは、人間には難しい。

さらに、サービスごとに「レコメンド」や「自動化」などの取り組みも進んでいるが、個別のサービスごとに開発していたのでは無駄が多い。それならば、独立した人工知能が大量のITサービスを探して自動的に活用したり、ECサイトの購入履歴を学習してレコメンドを行ったり、メールやスケジューラーを分析して行動予測する。そうした人工知能エンジンを提供できないかと考えた。

いくつかの課題を発見するなかで、米倉氏は人工知能の開発に取り組み始めた。創業チームは米倉氏がCEO、CTOとして実兄である米倉豪志氏を迎えた。豪志氏はメディアドゥ時代、米倉氏と一緒に「パケ割」を開発、同サービスの特許も取得している。さらに未来少年でもCTOとして共に経営を担っていた。

また、富士通研究所で人工知能開発に携わった後、青山監査法人、トーマツを経て、2011年より株式会社Klabの取締役を務めていた中野誠二氏をCFOに迎えた。

技術顧問には日本人工知能学会会長であり、公立はこだて未来大学教授の松原仁氏と、電気通信大学の栗原聡教授を招聘。

さらに人工知能の研究員として、NTT通信研究所からドイツと日本マイクロソフトで検索システムの開発に従事、自然言語処理(NLP)に深い知見を持つエンジニアや、コンピューターサイエンスの博士でフランステレコムの元研究員など、人工知能開発の精鋭メンバーを集めた。

すべての人がAIを持つ未来を目指す。まずは日本最大の人工知能研究所を
将来への展望

米倉氏に今後の展望と人工知能の未来について伺った。まず、同社の人工知能のアプローチとしては「パーソナル」「一人称」というコンセプトがポイントだと語ってくれた。

IBMのWatsonは、昔のSF的イメージのマザーコンピューター、つまり巨大な1つの人工知能である。また、Googleなども同様のアプローチだ。しかし、「al+」 は1人に1台の人工知能である。個人の人格をコピーしたうえで、最終的な行動の意思決定はあくまで人間側にあり、人間の代わりに働く、意思決定のサポートをする、予測をして提案するといった点がマネタイズのうえで重要なポイントになると考えている。

例えば、人工知能同士をつなげることで新しいビジネスが生まれる可能性がある。P.A.Iの先に、Moral Artifical Intelligence(M.A.I)があるという。モラル、つまり倫理や道徳という概念だが、P.A.Iから属人性を排除したうえで、全AIを分析可能にする。そうして大量のAIにマーケィング調査など行う。そうすると、人間相手にヒアリングをするより、より正確で潜在的なニーズが浮かび上がるのではないかと米倉氏は考えている。

人間相手のマーケティング調査ではヒアリング自体の労力が膨大になるが、AI相手であれば膨大のヒアリングも短時間で済む。「明日食べたいものは何?」「この新商品を買いたい?」といった調査を、大量に行い続けることも可能だ。そうなると、マーケティングの概念が根底からひっくり返るような成果が得られるかもしれない。

米倉氏の見とおしでは、そう遠くない未来、少なくとも5年以内には実用化できる段階を迎え、10年以内には現在のスマートフォンのように広く普及すると見ている。そうした未来予測を踏まえたうえで、米倉氏は2016年中に人工知能の研究者・開発者を100名集めた人工知能研究所を設立する構想を立ち上げ、資金調達などを進めている。

オルツ社は、2016年から様々なITサービスとの連携によって、人口知能ビジネスの実現化と商用化を本格的にスタートさせる計画だ。さらに2017~2020年にはAI同士がコミュニ―ションを行う世界の実現を目指している。

パソコンやインターネットが当たり前となった現代だが、それ以前はどのようにして仕事をしていたか、今や想像することも難しい。しかし、紙とペンで書類をつくって、ソロバンで計算していたのはほんの50年前の話である。

人工知能界隈では2045年の「シンギュラリティ」、つまり地球全人類の知能を超える究極のAIが生まれるという予測が話題となっているが、30年先どころか、人工知能の爆発的発展に伴い、10年後は今からは想像ができないほど、世界が大きく変わっているかもしれない。日本発のAIベンチャーが世界の標準になり得るか、オルツ社の動きから目が離せない。

株式会社オルツ
代表者:米倉 千貴氏 設立:2014年11月
URL:
http://alt.ai/
スタッフ数:
事業内容:
パーソナル人工知能「P.A.I」の開発

当記事の内容は 2015/9/15 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める