1件1000円で手軽にテスト。ヒットアプリを育てるクラウドサービス「LaunchApp(ローンチアップ)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

リリース前後のスマホアプリを1件1000円で手軽にユーザビリティテスト
展開している事業内容・特徴

launchapp12013年5月15日、App Storeからアプリのダウンロードが行われた累計回数が500億件に達したというニュースが報じられた。ちなみに、iOSアプリ、Androidアプリともに総数は70万個を超えているそうだ。しかも、その勢いは止まらずスマートフォン向けアプリは現在も増え続け、この市場は拡大する一方だ。

しかし、大量に開発されたアプリの中には何百万人もが使う大人気アプリもあれば、人知れず静かに消えてしまうものも数多ある。せっかく苦労して開発したアプリ。開発者であれば誰しもヒットさせたいと思うだろう。

今回は、ヒット商品を生み出したいアプリ開発者に支持されている「LaunchApp(ローンチアップ)」というサービスをご紹介する。ザオリア株式会社が提供する「LaunchApp」は、アプリ開発者向けに特化したクラウドソーシングサービスだ。1件1000円という格安の値段で、開発途中アプリのフィードバックを受けることができる。

アプリ開発では、ユーザーの意見を聞き、それを反映させながら改善を繰り返していく“リーンスタートアップ”が主流となってきている。一方、自社でアプリの仮想ユーザーを探し、十分なフィードバックを受けるという体制をつくるのは、大企業でなければ難しい。既存の新商品開発などの際にテストマーケティングを行う調査会社もあるが、そうしたサービスの大半は高額なものが多い。「LaunchApp」は小規模なアプリ開発会社でも気軽に使えるサービスなのだ。

「LaunchApp」が提供しているテストの流れは3ステップ。

①開発者がアプリの想定ターゲットのプロフィールとして、性別・年齢・職業を選択
②「LaunchApp」が登録ユーザー(テスター)に対して、テスト依頼を送信
③依頼を受けたテスターがアプリを試用して、フィードバックを返信(フィードバックは、「24時間以内」「48時間以内」の2コースから選択が可能)

こうして、リリース前後のアプリを利用した人の、生の声を知ることできる仕組みになっている。

開発者がアプリの想定ターゲットを選択できるので、例えば地方在住者をターゲットにしたアプリであれば地方在住のテスターに絞り込んで依頼したり、また、40代のテスターに絞り込んで依頼したりすることもできる。

一方テスターは、フィードバックをすることで報酬を得ることができる仕組みになっている。初回報酬額は100円で、フィードバック内容は5段階で評価される。依頼者に役立つフィードバックを返していけば報酬が上がっていき、最大500円の報酬が得られる。また、報酬だけでなくフィードバックへの感謝状が贈られるので、一緒にアプリを開発しているという実感も湧いてくる。このような工夫で、優良なテスターが集まっている。

もちろん、アプリのリリースまでは機密保持が鉄則だ。しかし、ソーシャルメディア時代にアプリの存在を知っているユーザーがいるのは、アプリ開発企業にとって心強いだろう。

「LaunchApp」は、新たなアプリ開発時だけでなく、アプリのリニューアル時にも利用できる。顧客には国内トップクラスのIT企業もいるが、過去に、10万ダウンロード以上の人気アプリを開発した有望スタートアップが、リニューアルの際に「LaunchApp」を利用したことがある。

この時、開発者側から「アプリのヘビーユーザーはよく意見をくれるが、ヘビーユーザーだけの声を聞いてリニューアルのポイントを決めて大丈夫なのか」という社内で意見が分かれた。これを受け、ライトユーザーや想定ユーザーに絞ったテストを実施したところ、ヘビーユーザーのフィードバックと同じ内容の意見が多数が返ってきた。これを受け、開発者は迷わずにリニューアルを決断したそうだ。「Launch App」が提供しているサービスの品質もしっかり保証されているということがわかる実例である。

ちなみに2013年6月現在、最大3人まで無料でテスト依頼ができるお試しサービスを実施しているそうだ。

湘南のサーファーだった頃、ビル・ゲイツの本に出会って起業を目指す
ビジネスアイデア発想のきっかけ

 launchapp2「LaunchApp」を開発したのは、ザオリア株式会社代表の井上伸也氏。彼が起業を志したのは高校1年の頃。湘南藤沢でサーフィンをする日々の中で、ビル・ゲイツの本に出会い、将来、経営者になることを決めたという。

大学在学中より旅行関連の事業を手がけ、熱い仲間と社会経験を積むためリクルートへ。その後、グーグルを経て、慶應義塾大学大学院MBAで経営学を学ぶ。そこには、会計士、コンサルタント、金融マン、商社マン、起業家、官僚、医者、外国人留学生、新卒で入学した学生などさまざまな背景を持つ仲間がいた。彼らがチームを組み、企業の問題点などを解決する方法を考えた際、多面的で、多層的なアイデアが出て、それに刺激を受けたという。

井上氏はその後、ユーザーと企業が協力しながら、ユーザーが求める新製品を開発していく「コ・クリエーション(Co-creation)」 を研究テーマとして選び、修士論文を書き終えた。

 そして井上氏は、「コ・クリエーション」をスマートフォンアプリ市場に導入できるのではないかと考えた。多くの人に知られ、多くの人にダウンロードされるアプリをつくるには、さまざまなユーザーの多面的・多層的な声を生かした開発・改善が重要だと、「LaunchApp」を構想し、在学中の2月初旬にベンチャーキャピタルにプレゼンした。

1回目のプレゼンで好評価を得、リクルート時代の友人に相談すると「一緒にやろう」と言われた。そして次の週にはプログラマーを紹介され、なんとプレゼンから3週間後にはプロトタイプができ上がっていたという。

井上氏は2012年3月に大学院を卒業したが、プロトタイプの検証を3月中に済ませ、その2カ月後の5月には仲間と共にザオリア株式会社を起業していた。この行動力には驚かされる。

 井上氏は、「リクルートで営業、グーグルでマーケティング、MBAで経営学を学んだこと、また、それらの場で多くの人たちに出会えたことがとても大きな財産です」と語る。これらの学びと出会いが、「LaunchApp」の開発に導いたのだ。

海外も視野に入れ、さまざまな商品開発にも生かせるサービスへ
将来への展望

今後の展望を井上氏に伺うと、「ユーザーの声と企業を結びつけて、新しい製品やサービスをつくり出していくコ・クリエーションは、さまざまな分野へ応用できると思う。アプリ開発だけでなく商品開発などでも気軽に利用できるようにしていきたい」と語ってくれた。そして将来的には海外展開も視野に入れているという。

起業家や経営者は、社会にインパクトを与えたり、あたたかさを届ける責任があると井上氏は考えている。そのため、ただ利益を追求するのではなく、クラウドソーシングのビジネスモデルを生かし、困っている人や社会の課題を解決していける仕組みをつくることが大きな目標だ。

「多くの人に認められれば、利益は必ず後からついてくる。そう信じて今は一生懸命働くだけ」。まだ創業2年目。33歳の若き社長は、なにかを期待させる熱を持っていた。

ザオリア株式会社
代表者:井上 伸也
設立:2012年5月8日 URL:https://launchapp.jp/
事業内容:
スマートフォンアプリのテストマーケティング事業

当記事の内容は 2013/6/20 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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