Vol.16 Web2.0企業の株式上場 気をつけるべき審査項目

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

Google、ドリコム、mixi…インターネット業界で続くWeb2.0ブーム

 アメ リカでは、2004年8月にグーグルが鳴り物入りでIPOを果たし、その高い収益性、独特な経営スタイル、奇抜な社内風景が話題になりました。現在グーグ ルは、時価総額では米国ヤフーの4倍になるほど急成長を続けています。

 一方、日本国内では、2006年2月のドリコム(3793)の東証マザー ズへの上場に続き、9月にはWeb2.0銘柄の大本命と言われているミクシィ(2121)の東証マザーズへの上場がありました。これらの企業のIPOに よって、これまで「ブログやSNSは儲からない」と言われてきた風潮が一変し、インターネット業界だけでなく、株式市場およびTVなどのマスメディアまで もがWeb2.0という言葉を頻繁に取り上げています。

 2000年前後のITバブル崩壊後、しばらくインターネット企業のIPOはなく、 長い冬の時代が続いていました。その後少しずつITバブルを生き抜いたインターネット企業のIPOが続き、2005年以降からは「バブル後生まれ」のネッ ト企業の存在感が高まってきていました。これらの企業は世間では「第三世代」と言われ、インターネット業界内では早くから注目を浴びていました。

  そんななかアメリカからWeb2.0という概念が日本国内に持ち込まれ、第三世代からドリコムが、そしてミクシィが上場し、インターネット業界は再び元気 を取り戻しました。

 Web2.0とは、米国Tim O'reilly氏が論文「What is Web 2.0」を発表したのちに話題となった言葉で、米国Googleやamazon.comなどのインターネット企業が成功したコンテンツや技術の提供方法、 サービスの利用方法などを概念的に指摘したもので、明確な定義がなされているものではありません。しかし、同氏が指摘したその概念は、ネットビジネスとし て大きな成功を収めていることから、日本国内でもWeb2.0的なサービスを提供する企業が多く生まれてきました。

 

CGM(Consumer Generated Media)と上場審査

 Web2.0を代表す る事柄にCGM(Consumer Generated Media)というものがあります。これはインターネットを利用してユーザーが記録(書き込みや口コミ)を残していき、その残された記録全体をデータベー ス化し、メディアとしてサービスを構築いくことをいいます。

 TV、新聞、雑誌などのこれまでのメディアは、必ず編集者などの特定の作り手 がコンテンツを作成・編集していく事業モデルでしたが、CGMでは一般のユーザーが誰の編集をも受けることなく生の声をWebページに残したりすることで 口コミや評判を情報として集める事ができます。この生の声が、一般消費者向けにサービスや製品を提供する企業にとっては重要な情報であると共に、消費者に とってもメーカー側に都合のよい情報だけでなく、率直な他の消費者の意見が聞けることから購買の判断材料にするなどの情報源になっています。口コミ掲示板 サイトやブログやSNSなどがこのCGMの概念から作られているサービスといえます。
 
 しかし、このCGMという考え方は上場審査上、 非常に厄介なものです。

 もともとCGMという考え方は「ユーザーは有用な情報を提供する」という「性善説」に基づいています。しかしなが ら、必ずしもすべてのユーザーが有用な情報を残すとは限らず、ユーザーのなかには特定人物や特定商品の誹謗中傷を書き込んだり、公序良俗に反するような書 き込みをする者も現れます。

 以前にもお話ししたとおり、上場審査は基本的に「性悪説」に基づいて行われます。人間は不正を行うものであ り、その不正が生じない仕組みを企業は内部牽制機能として保有しなければなりません。この「性悪説」は上場しようとする会社のサービスにも適用されます。 上場会社が提供するサービスのなかで、誹謗中傷や公序良俗に反する書き込みなどが頻発することは望ましくありません。

 よって、サービス提 供会社は提供するサービスがユーザーにどのように利用されており、そのなかで望ましくない書き込みや情報が掲載されていないか管理しなければなりません。 サービス内の書き込みは何件あるか、1日に何件増加しているか、そのうち望ましくない書き込みは何%かなどを把握しておく必要があり、望ましくない書き込 みや情報が掲載された場合はそれを削除するなど、何かしらの対応をとる必要があります。そのサービスから広告収入を得ている場合は、特に当該管理や対応が 必要となります。
 

Web2.0企業は早い段階から手当てを

 こ の書き込みや情報に対する管理、パトロールは、その書き込みなどの数が少ないうちは対応できるのですが、1日の書き込みが数千、数万になってくると非常に 手間とコストがかかってきます。最近はブログやSNSだけでなく、写真の投稿・共有サービスや動画の投稿サービスが人気です。テキストでの書き込みの場 合、検索エンジンなどのシステムを利用すれば対応は可能ですが、画像や動画になってくるとその管理・パトロールに膨大な手間がかかることになります。ベン チャー企業は収益を上げることにすべてのリソースを割いており、基本的にサポートや管理系は手薄になりがちです。

 しかし、上場しようとす る会社はサポートや管理系にも力を入れていかなければなりません。最近はサービス内のパトロールをアウトソースする企業も登場しています。今後上場しよう とするWeb2.0企業は、ユーザーからの投稿数が莫大な数になる前に、このような管理機能を構築しておくことに留意が必要です

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