FAQ:ミスが多いのを理由に、アルバイトのシフトカットは違法ですか?

この記事は2025/10/08に専門家 鈴木 圭史 大城 敦子 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

課題・悩み

2026年3月末までの契約で採用しているアルバイトについて相談です。
業務上でのミスが多く、何度か注意しても直らない。そのため、完了した仕事の確認にかなり時間を取られてしまってます。
簡単なマニュアルも渡して説明するも、中々改善されないため、シフトを減らしていただきたいと考えております。
(他の方に依頼するとミスが無いため、マニュアル自体にはあまり問題がなさそうです。)
また当日欠勤が月1回は発生します。

契約書では、契約期間のみを明記。週の最低限の勤務時間については明記しておりません。ただし、採用時に口頭で週2日程度お願いしたいとは伝えました。

この様な場合、例えば来月はシフトを組まないなどは違法ですか?また週2日を2週間に1日などに減らすことは可能でしょうか?
もちろん、アルバイトの方にはこちらの意向を伝えたうえで行いますが、そもそも「ミスが多いのでシフトカット」という打診をしても良いのか判断が付きませんでしたので、アドバイスをお願い致します。

回答:円満な解決のためには、アルバイトの方の立場にも配慮し、丁寧に話し合うことが重要 (回答者:鈴木 圭史氏)

1. 法的な観点
まず、ご相談のケースでシフトを減らすことが法的に問題となるかどうかについてです。

* シフトをゼロにすること(来月はシフトを組まない)
契約書に「週の最低限の勤務時間」の明記がない場合でも、採用時に口頭で「週2日程度」と伝えていること、また継続的にシフトを組んでいる実態があることから、労働者側には一定の労働日数が確保されることへの期待(「期待権」)が発生していると解釈される可能性があります。
そのため、一方的な理由(業務上のミスが多い)で、シフトを全く入れないことは、「解雇」とみなされる可能性があります。たとえ契約期間満了前であっても、実質的な解雇と判断された場合、解雇予告手当の支払い義務や、不当解雇として争われるリスクが出てきます。
* シフトを減らすこと(週2日を2週間に1日など)
シフトを大幅に減らす場合も、労働者側が期待していた収入を著しく下回ることになるため、実質的な「雇い止め」や「不利益変更」と判断されるリスクがあります。
ただし、ご相談のケースでは、業務上のミスが多く、業務遂行に支障をきたしているという具体的な理由があります。このため、シフトを減らすこと自体が必ずしも違法となるわけではありませんが、いきなり大幅に減らすとトラブルの原因になりかねません。

2. コミュニケーションの進め方
法的リスクを最小限に抑え、円満に解決するためには、事前の丁寧なコミュニケーションが不可欠です。
* 現状の共有と改善の機会提供
いきなり「シフトを減らす」と伝えるのではなく、まずは現状の課題を具体的に伝え、改善を促す機会を設けるべきです。
例:「〇〇さんの担当業務で、ミスが続いており、他のスタッフの業務に影響が出ています。具体的には、〇月〇日の△△業務で、××というミスがありました。簡単なマニュアルもありますが、改善が見られないため、このままでは業務を任せることが難しくなってしまいます。もし何か困っていることや、分からないことがあれば相談してください。」
* 双方の合意形成
改善が見られない場合や、改善に時間がかかると判断した場合でも、一方的にシフトをカットするのではなく、まずはアルバイトの方に相談し、双方の合意を目指すことが重要です。
例:「これ以上、業務に支障をきたすわけにはいかないため、大変申し訳ありませんが、〇〇さんのシフトを調整させていただきたく、ご相談させてください。現状、お任せできる業務が限られてしまっているため、来月は勤務日数を週1日に減らしていただくことは可能でしょうか?」
* 解雇ではなく「配置転換」や「業務内容の調整」を検討
アルバイトの方の能力に合わせた、よりミスの少ない業務に変更する(配置転換)ことも有効な手段です。もしそのような業務がない場合は、業務遂行能力が不足しているため、現状の業務を任せることができないという説明に説得力が増します。

●アドバイスのまとめ

* いきなりのシフト全カットは危険です。 「不当解雇」とみなされるリスクがあります。
* まずは具体的な事実(業務上のミス)に基づき、本人に改善を促してください。
* 改善が見られない場合、シフトの減数について丁寧に相談し、合意形成を目指してください。
* 解雇ではなく、「業務の調整」「配置転換」という表現を用いる方がトラブルになりにくいです。
* どうしてもシフトを減らすしかない場合でも、一方的な通告ではなく、理由を明確にし、今後の契約についても話し合う姿勢を見せることが重要です。
円満な解決のためには、アルバイトの方の立場にも配慮し、丁寧に話し合うことが何よりも大切です。

回答者
鈴木 圭史(すずき けいじ)
ドラフト労務管理事務所 代表/社会保険労務士
大阪の玉造に社会保険労務士事務所を起業して16年を超えました。関西弁が得意分野の社労士が在籍しています。難解な問題をいかに端的かつ簡単に説明するのかを常に考え、問題解決のドラフト(草案)をご提案することを理念に事業を運営しています。
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回答:合意違反と受け取られるリスクも残ります (回答者:大城 敦子氏)

契約書に週の最低勤務日数や時間の記載がない場合、原則として「どの程度シフトに入れるか」は会社側の裁量に委ねられます。

しかし、採用時に「週2日程度勤務」と口頭で合意し、その運用を継続してきた場合には、黙示的に労働契約の内容として定着していると判断される可能性があります。
そのため、**一切シフトを入れない(月ゼロ日)**とすると、実質的に「休業命令」と同様に扱われ、労働基準法第26条の休業手当(平均賃金の60%以上の補償)の支払い義務が生じるリスクがあります。

一方で、勤務日数を「週2日 → 隔週1日」といった形で削減することは、合理的な理由があれば許容され得ます。特に業務上のミスが多いなど、業務遂行上の適性に基づく理由は、単なる経営上の都合よりも正当化されやすいといえます。
ただし、本人が「採用時に週2日程度と聞いていた」と主張する場合には、合意違反と受け取られるリスクも残ります。

1.ミスの記録
注意書や指導書を作成し、内容を明確に残す。
例:「この作業で○回ミスがあり、他スタッフと比べても多い状況です」と事実を具体的に伝える。
2.フィードバック面談
改善のために本人へ直接フィードバックを行う。
3.改善期間の設定
1〜2週間程度の観察期間を設け、改善状況を確認する。
4.シフト調整の実施
改善が見られない場合、「改善が見られないため、当面は勤務日数を減らさざるを得ません」と説明。
5.トラブル防止策
シフト削減は段階的に行う(いきなりゼロにせず「週2日 → 週1日」など)。
どうしても継続が困難な場合は、契約満了をもって終了するか、本人合意による途中終了を検討する。
6.契約更新の判断
契約社員であるため、更新のタイミングでは契約を継続するか否かを明確に判断し、契約書に反映することが望まれます。

回答者
大城 敦子(おおしろ あつこ)
あお社会保険労務士法人 代表/社会保険労務士
大採用の段階から企業と伴走し、“自走する社員”を育てられる素地のある人材を見極め、育成と定着まで一貫して支援します。
「採って終わり」ではなく、「採って、育て、伸ばす」。組織をともに成長させるパートナーとして、採用から育成、組織づくりまでお手伝いします。
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