個人事業主として事業を続けるなかで、入金の遅れや設備投資で資金繰りに悩んでいませんか。実は、銀行融資やビジネスローンなど、個人事業主でも利用できる資金調達の選択肢は複数あり、正しい準備と申請方法を知れば審査通過の可能性は高まります。
本記事では、金融機関の審査基準や必要書類、通りやすい融資先の選び方まで、実践的なノウハウを網羅的に解説します。「自分に合った資金調達方法」が明確になり、安心して次の一歩を踏み出せるはずです。
監修者プロフィール:須田 幸宏(すだ ゆきひろ)
東北の起業家のみなさまをサポートします! 三楽る(みらくる)オフィス
東北を拠点に資金調達の支援で活躍する須田アドバイザー。元日本政策金融公庫融資課長で、日本公庫に33年勤務し、融資を通して、延べ2万以上の事業者、5,000以上の起業家をサポートされてきました。非常に親切・温厚なお人柄で、事業だけでなくライフプランニング(生活・家計の設計・見直し)もサポートされていますので経営者の強い味方となるでしょう。
- 目次 -
個人事業主が資金調達で融資を選ぶべき3つの理由
個人事業主にとって、資金調達は事業の安定と成長に欠かせない経営判断です。とくに融資は、銀行や公的制度など選択肢が豊富で、計画的に活用すれば資金繰りの改善だけでなく事業拡大のチャンスにもつながります。
ここでは、個人事業主が融資を選ぶべき3つの具体的な理由を解説します。
売上の波による資金ショートの可能性
個人事業主は収入が不安定なため、資金ショートのリスクが常につきまといます。フリーランスや小規模事業者は、案件の受注タイミングや入金サイクルにより月ごとの売上が大きく変動します。
たとえば、大口案件を受注しても、入金が2〜3か月先になるケースは珍しくありません。その間も家賃や人件費、仕入れ代金などの固定費は発生し続けます。融資を活用すれば、「売上はあるが手元資金が足りない」というタイミングを乗り越えられます。
銀行融資やビジネスローンは、まさに資金繰りの波を安定化する有効な方法です。
融資を受けないことで事業継続が困難になるリスク
融資なしで資金不足が続くと、事業そのものが立ち行かなくなる危険性があります。手元資金が枯渇すると、仕入れや外注費の支払いができず、新規案件を受けられなくなります。さらに既存の取引先への支払い遅延が発生すれば、信用を失い取引停止になる可能性もあるでしょう。
悪循環を防ぐには、早めの資金調達が不可欠です。とくに個人事業主向けの制度融資や、審査が比較的通りやすいビジネスローンを知っておくことで、いざというときの選択肢が広がります。融資は「最後の手段」ではなく「計画的な経営ツール」として捉えるべきです。
資金調達で成長のタイミングを逃さない
融資があれば、事業拡大のチャンスをつかみやすくなります。新規取引先からの大型案件や、設備投資が必要な成長機会は突然訪れます。しかし、手元資金が不足していると、せっかくのチャンスを見送らざるを得ません。
たとえば、高性能PCやソフトウェアに投資して作業効率を上げれば、webデザイナーは受注できる案件数を増やせます。銀行融資や公的な資金調達制度を活用すれば、投資額をおさえながら売上アップを実現できます。
融資は単なる「借金」ではなく、「未来への投資」です。適切なタイミングで資金を調達することで、個人事業主としての競争力を高められます。
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融資方法を徹底比較|銀行・ビジネスローン・制度融資の違い
個人事業主が資金調達を検討する際、銀行融資・ビジネスローン・公的制度融資という3つの主要な方法があります。それぞれ審査基準や金利、融資スピードが大きく異なるため、自分の状況に合った選択が重要です。ここでは各融資方法の特徴を比較し、通りやすい条件や注意点を解説します。
銀行・信用金庫融資|個人事業主でも通りやすい条件とは
銀行融資は金利が低く信用力も高まりますが、審査には事業実績と信頼性が求められます。銀行や信用金庫の融資は年利1.0〜3.0%程度と低金利で、借入実績が信用情報にプラスに働く点が大きなメリットです。
ただし、審査では2〜3期分の確定申告書や事業計画書の提出が必須となります。銀行や信用金庫の融資で、審査に通りやすくなる条件は次の通りです。
- 融資希望額に対して一定(およそ3分の1~)の自己資金がある
- 過去のクレジット履歴や税金・公共料金などの滞納がなく、信用情報が良好
- 収支予測、販売戦略、資金繰り計画などが具体的で、返済が可能な事業モデル
- 複数年の確定申告書(2期分以上)と青色申告決算書がある
- 月商の3か月分以内や自己資金の10倍以内など、現実的な借入れ希望金額である
また、信用金庫は地元事業者への融資に積極的で、銀行より柔軟な審査が期待できることもポイントです。
ビジネスローン|審査は本当に甘い?金利と速度の実態
ビジネスローンは審査が比較的早く通りやすいですが、金利は高めです。「審査が甘い」といわれるビジネスローンですが、正確には「審査基準が異なる」という表現が適切です。銀行融資と比べてみましょう。
| ビジネスローン | 銀行融資 |
|---|---|
| ・柔軟な返済能力審査(赤字や債務超過も一定条件で可) ・提出書類の簡易性(決算書や本人確認のみなど少なめ) ・創業期間の制限が緩い(1年未満でも利用可のケースあり) ・スピーディーな審査プロセス(即日や数日で回答されることも) ・金利リスク考慮しつつも審査は比較的甘め(返済不能リスク管理あり) |
・資金使途の明確さ(融資金の使用目的と必要性) ・経営者の信用・人柄(過去の借入れ返済履歴や経営方針) ・担保や保証人の有無(リスク回避のために重視される) |
銀行融資と違い、事業の将来性より現在のキャッシュフローを重視する傾向があります。短期で返済可能かよく見極めてから、ビジネスローンの利用を検討しましょう。
ビジネスローンと銀行融資の主な違いを表にまとめたので、利用を検討する際の参考にしてみてください。
| 項目 | ビジネスローン | 銀行融資 |
| 金利 | 年3.0〜18.0%前後と高め | 年1.0〜3.0%前後と低金利 |
|---|---|---|
| 融資限度額 | 数十万円〜1億円程度 | 数百万円〜数億円と大型融資も可能 |
| 審査期間 | 最短即日〜数日で融資可能 | 審査に2〜4週間かかることが多い |
| 必要書類 | 身分証明書・確定申告書・事業概要など最小限 | 決算書・確定申告書・事業計画書・見積書など多数 |
| 信用審査 | 事業実績よりも個人信用情報を重視 | 財務内容・事業計画・経営者の信頼性を総合評価 |
ビジネスローンは急ぎの資金調達には有効ですが、慎重な返済計画が必要です。
公的制度融資|活用するメリットと申請の流れ
制度融資は低金利で手厚い支援が受けられる、個人事業主に最適な資金調達方法です。日本政策金融公庫の新創業融資制度や、自治体の制度融資は年利1〜2%台と非常に低金利です。創業間もない個人事業主でも申請でき、経営相談などのサポートも受けられます。
日本政策金融公庫の融資を利用する流れは、次の通りです。
- 相談:最寄りの商工会議所や日本政策金融公庫に相談
- 必要書類の準備:創業計画書、本人確認書類、見積書、許認可証の写しなど
- 申込み:公庫のwebサイトのオンライン申込みフォームまたは支店窓口で申込み
- 面談・審査:担当者と面談し事業内容や計画について説明(審査は2~3週間程度)
- 契約・融資実行:審査通過後、契約手続きを経て資金が振り込まれる
審査に時間はかかりますが、長期的に事業を育てたい個人事業主には推奨される方法です。
個人事業主が銀行融資の審査に通るための準備|書類と事業計画のポイント
銀行融資の審査でもっとも重視されるのは、事業の安定性と返済能力です。個人事業主が通りやすくするには、確定申告書や事業計画書など必要書類を適切に準備し、金融機関の審査基準を理解することが不可欠です。
ここでは、審査で見られるポイントと、面談で信頼を得るための具体的な方法を解説します。
確定申告書・決算書で金融機関が見る3つのチェック項目
金融機関は確定申告書から、事業の収益性・安定性・誠実性をきびしく判断します。銀行の融資審査では、過去2〜3期分の確定申告書が必須です。担当者は、数字から事業の健全性を読み取るため、以下の項目を重点的にチェックします。
| 項目 | 内容 |
| 返済能力 | 主に損益計算書の経常利益や営業利益を見て、継続して利益を上げているか、返済資金の余裕があるかを判断する。 |
|---|---|
| 財務の健全性 | 貸借対照表で純資産の状況や現預金残高を確認する。純資産がプラスで債務超過がないか、現金が一定量あるかが評価基準となる。 |
| 決算書の実態信頼性 | 売掛金や棚卸資産の計上が正しいか、粉飾や虚偽がないかを詳細に審査する。 |
上記のポイントは、金融機関の担当者が会社の財務状況を正確に把握し、貸出リスクを評価するために重視する項目です。個人事業主は節税目的で利益を圧縮しがちですが、融資を検討するなら適度な利益を示すことが重要です。
融資審査で通りやすい個人事業主の共通点
審査に通る個人事業主には、信用力と計画性という明確な共通点があります。単に売上が高いだけでなく、以下のような特徴をもつ個人事業主は融資審査で高く評価されます。
- 固定取引先があり、継続的な受注実績を証明できる
- 資金使途と返済計画が具体的に説明できる
- 税金や社会保険料の滞納がない
- 自己資金を一定額確保している(融資額の1〜3割程度)
- 事業計画書に説得力がある(現実的な数字と根拠)
上記の要素は「この人なら返済してくれる」という信頼につながります。開業年数が浅くても、準備しだいで審査通過の可能性は十分あります。
面談で差がつく|担当者に信頼される話し方と資料提示術
面談では誠実さと事業理解の深さを示すことが、審査結果を大きく左右します。書類審査を通過すると、担当者との面談がおこなわれます。面談の場で信頼を得られるかが融資成功の鍵です。
担当者の信頼を得る話し方と、資料提示のポイントは次の通りです。
【話し方のポイント】
| OK例 | NG例 |
|---|---|
| ・質問には具体的で簡潔に、根拠の数字や実績を示して答える ・落ち着いた態度で冷静に説明し、感情的にならない ・事業の強みや経験を具体例で伝え、誠実さを感じさせる ・担当者のきびしい質問にも焦らず前向きに答え、ウソはつかない ・面談は本人だけで受け、自分の言葉で主体的に話す |
・「だいたい」「多分」など曖昧な言葉で答える ・感情的になったり、口論や怒る態度を見せる ・わからないことを他人任せにし、「誰々に聞いて」など責任逃れをする ・事業に問題がないといい切り、リスク認識がない印象を与える ・言葉遣いや身だしなみがだらしない(清潔感がない服装など) |
【資料提示のポイント】
| OK例 | NG例 |
|---|---|
| ・事業計画書はポイントを絞り、専門用語を避けて見やすく作成する ・希望額の内訳と使い道を具体的な数字で明確にする ・売上予測や経費計画は根拠資料と一緒に提示して裏付ける ・グラフや表を活用し、視覚的に理解しやすくまとめる ・誤字脱字や不整合をなくし、一貫性を保つ |
・使途が不明確で漠然としている ・希望融資額を「だいたい〇〇万円」と曖昧に伝える ・数字や根拠が示せず、資料の信頼性に欠ける ・書類のミスや記載内容の矛盾が多い |
質問には正直に答え、わからないことは「確認して後日回答します」と誠実に対応しましょう。準備した資料を整理して示すことで、計画性もアピールできます。
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個人事業主が審査に通りやすい融資は?|ビジネスローンと公的制度の選び方
個人事業主が資金調達を検討する際に気になるのが、「どの融資が通りやすいか」という点です。ビジネスローンは審査スピードが早く、公的制度融資は低金利という特徴があります。
ここでは、各融資方法の審査難易度や条件を比較し、自分の状況に合った最適な選び方を具体的に解説します。
金利・返済期間・保証人の有無で選ぶ最適な融資先
融資選びは金利だけでなく、返済期間や保証人の要否で総合的に判断すべきです。低金利でも返済期間が短いと月々の負担が大きくなり、資金繰りを圧迫します。個人事業主の状況に応じた選択基準を整理しましょう。
金利・返済期間・保証人の有無に応じて、最適な融資先を表にまとめました。
| 融資先種類 | 金利の目安 | 返済期間 | 保証人の有無 | 最適な利用シーン・特徴 |
| 日本政策金融公庫 | 約1〜2%台 | 設備資金:最長20年 運転資金:最長10年 |
原則不要 | 創業期や中小企業の低金利で長期融資が必要な場合に最適。 |
|---|---|---|---|---|
| 自治体制度融資 | 約1〜2%台 | 5〜10年程度 | 原則不要(信用保証協会を利用) | 地元支援を受けたい、信用力がまだ低い場合に利用しやすい。 |
| 銀行融資(無担保) | 約1~3%台 | 最長10年程度 | 保証会社や個人保証が必要 | 安定した経営基盤があり信用力がある場合に向く。 |
| 銀行融資(有担保) | 約1.5〜3%台 | 最長20〜30年 | 担保に応じて保証人が必要 | 設備投資や不動産購入など資産を担保に低金利で長期融資を受けたい場合。 |
| ビジネスローン(ノンバンク系) | 約3〜18%台 | 最長1~10年程度 | 原則不要 | 急ぎの資金調達や信用力不足で銀行融資がむずかしい場合に利用。 |
金利の低さと返済期間の長さを重視するなら、日本政策金融公庫や自治体制度融資が最適です。一方で、急ぎや信用力の面で不利な場合はビジネスローンが便利ですが、金利は高めになります。
銀行融資は信用力があり、担保や保証人の用意が可能な場合に低コストで借りられます。
審査スピードと通過率を重視するならビジネスローンも検討
急ぎの資金調達や審査の柔軟性を求めるなら、ビジネスローンが有力な選択肢です。銀行融資は低金利ですが審査に2週間〜1か月かかります。一方、ビジネスローンは最短即日〜3日程度で融資実行が可能です。
また、事業の将来性より現在のキャッシュフローを重視する傾向があり、開業間もない個人事業主でも比較的通りやすいのが特徴です。次のようなケースには、ビジネスローンが向いています。
- 急いで資金調達が必要な場合
- 少額の資金調達を希望する場合
- 銀行や信用金庫で融資を受けにくい場合
- 手続きや審査を簡便に済ませたい場合
ただし、金利は年3〜18%と高めなので、短期の資金繰り対策として活用するのが賢明です。
個人事業主が申請から資金調達するまでの5ステップ
個人事業主が融資を成功させるには、正しい手順で準備を進めることが不可欠です。資金用途の明確化から書類準備、申込み、面談、そして融資実行後の活用まで、各ステップで押さえるべきポイントがあります。
ここでは、銀行融資やビジネスローンの申請から資金調達実行まで、実践的な5ステップを解説します。
ステップ1|資金用途と返済計画シートのつくり方
融資審査でもっとも重視されるのは、資金の使い道と返済能力の明確さです。金融機関は「何に使うか」「どう返すか」を必ず確認します。曖昧な説明では審査に通りません。個人事業主が準備すべき内容は以下の通りです。
| 準備事項 | 内容 | ポイント |
| 1.資金用途を具体的に書き出す | 何のためにいくら必要かを明確にする(設備投資、人件費、仕入れ、運転資金など)。 | 使い道ごとに金額を細かく分けることで説得力が増す。 |
|---|---|---|
| 2.返済計画シートの作成 | ・月単位または年単位で返済額を計画し、返済開始時期、返済期間を設定する。 ・事業の売上予測や経費予測に基づき、返済原資になりうる収支を示す。 |
・月次の売上予測と経費を記載。 ・返済額が月間利益の25〜35%以内に収まるよう設定。 ・最低6か月〜1年分の返済シミュレーションを提示。 |
| 3.関連資料の準備 | 確定申告書(直近1~3年分)、青色申告決算書など実績を裏付ける書類を用意する。 | 事業計画書や資金繰り表(キャッシュフロー計算書)も合わせて用意する。 |
資金用途は具体的な金額と内訳、必要性を示すことが重要です。シート作成が、融資審査の「返済能力」を示し、審査通過の第一歩となります。
ステップ2|チェックリストを活用して必要書類を漏れなく準備
融資申請では複数の書類提出が求められます。書類不備は審査遅延の大きな原因となるため、事前にチェックリストで確認しましょう。とくに個人事業主は法人と異なり、確定申告書が決算書の代わりとなるため注意が必要です。
審査のために準備が必要な書類は次の通りです。
▢印鑑証明書(代表者の実印証明)
▢直近1~3年分の確定申告書(収益状況証明)
▢青色申告決算書または収支内訳書(事業の財務状況証明)
▢納税証明書(税金の納付状況確認)
▢事業計画書(資金使途や返済計画を明確化)
▢資金繰り表(収支の流れを可視化し返済能力を示す)
▢事業用口座の通帳コピー(売上や支出の入出金記録)
▢開業届の控え(事業登録の証明)
▢各種控除証明書(該当する場合)
▢消費税確定申告書(納税状況確認に必要な場合)
▢借入計画書(借入額と返済計画の詳細)
▢勘定科目内訳明細書や経営分析資料(詳細な財務状況を示す場合)
リストを網羅的に準備しておくことで、審査がスムーズになります。審査においては書類の正確性と整合性が重要で、不備があると審査に悪影響を与えかねません。とくに、事業計画書と資金繰り表は具体的かつ現実的に作成し、返済能力を数値で説明できるようにしましょう。
ステップ3|金融機関への申込みと初回相談のポイント
初回相談での印象が審査結果を左右するため、事前準備が成功の鍵となります。書類がそろったら、金融機関に相談予約を入れましょう。銀行融資なら窓口または電話、ビジネスローンならwebフォームでの申込みが一般的です。初回相談する際のポイントは次の通りです。
- 資金用途や返済計画、事業計画書を明確にし、書類は整えて相談に臨む
- 自分の事業の強みや特徴をわかりやすく伝え、説得力をもたせる
- 財務状況や確定申告書などから信用力を示し、返済能力をアピールする
- わからないことは正直に話し、質問には自信をもって回答する
- 時間厳守・清潔感ある服装で臨み、担当者との信頼関係構築に努める
初回の印象で「この人なら返済してくれそう」と思ってもらうことが重要です。服装はビジネスカジュアル程度で清潔感を意識しましょう。
ステップ4|面談・審査対応で担当者の信頼を得る方法
書類審査を通過すると、担当者との面談がおこなわれます。面談では誠実さと事業理解の深さを示すことが、審査通過の決定打となります。融資の成否を分けるのは、面談で信頼関係を築けるかどうかです。担当者の信頼を得るためのポイントを以下にまとめました。
- 資金の使い道を具体的かつ現実的に説明する
- 担当者からの連絡や追加資料の要請には迅速に、誠実かつ丁寧に対応する
- 自己資金をある程度用意し、銀行とリスクを共有する姿勢を示す
- 数字の根拠を明確にした事業計画書により説得力をもたせる
- 支払いの遅延をなくし、信用情報に誤りがないか定期的に確認する
融資面談でよく聞かれる質問と、NG・OKの回答例は次の通りです。
| 質問 | NG回答例 | OK回答例 |
| なぜ融資が必要なのですか? | 資金が足りないからです。 | 新規設備投資のために〇〇万円を希望し、これにより生産性が〇%向上する見込みがあるためです。 |
|---|---|---|
| 返済計画はどうなっていますか? | 返済は売上から無理なくおこなえると思います。 | 売上予測に基づき、毎月〇万円の返済を5年間計画しています。収支シミュレーションも用意しました。 |
| 自己資金はいくら用意していますか? | とくに自己資金はありません。 | 自己資金として〇〇万円を準備しており、返済リスクを分散できる状況です。 |
| 事業の強みは何ですか? | とくにこれといって強みはありませんが、他社サービスとの差別化を一生懸命考えるつもりです。 | 地域のニーズに応えた〇〇サービスで競合他社との差別化を図っています。 |
| リスク対策はどうしていますか? | 現時点でリスク対策は考えておらず、もし問題が起きれば臨機応変に対応します。 | 価格変動リスクを回避するための契約を結び、万一の売上減少に備えた資金繰り計画も策定済みです。 |
信頼は数字だけでなく、誠実さや準備の丁寧さによっても決まるため、総合的な準備が求められます。
ステップ5|融資実行後の資金管理と事業成長への活用術
融資実行後の適切な資金管理が、次の資金調達につながる実績をつくります。融資が下りたら、計画通りに資金を活用し返済実績を積むことが重要です。信頼と実績の積み重ねが、将来の融資やビジネス拡大の信用基盤となります。
融資実行後にすぐにやるべきことは、以下の通りです。
- 融資契約書や関連書類の再確認と保管
- 必要に応じて火災保険や保証契約の手続き
- 資金を用途通りに振り分け、資金管理を徹底
- 返済用口座の設定と返済スケジュールの管理開始
- 担当者へ融資実行報告と今後の連絡体制の確認
また、以下のポイントを参考に、融資を事業成長へ活用しましょう。
- 設備投資や新規事業など成長投資に資金を活用
- 賃金改善や人材採用で組織力強化
- マーケティングや販路拡大に資金投入
- キャッシュフローの健全化とリスク分散を図る
- 定期的に事業計画を見直し、進捗管理と軌道修正をおこなう
融資は「借金」ではなく「事業を育てる投資」です。計画的に活用すれば、個人事業主として確実に次のステージに進めます。
ドリームゲートでは、資金調達・財務にくわしいアドバイザーとオンラインで無料相談できます。融資の進め方や返済計画の見直し、事業拡大のタイミングなど、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスが受けられます。
個人事業主が資金調達で失敗しないための5つの注意点
個人事業主にとって、融資は事業成長の強力な手段ですが、誤った方法で借入れると返済負担で事業そのものが危機に陥る可能性があります。とくに、銀行融資やビジネスローンをはじめて利用する方は、知らずにリスクを背負ってしまうケースが少なくありません。
ここでは、資金調達で失敗しないための重要な注意点を5つ解説します。
過度な借入れは危険|返済可能額の正しい見極め方
借入額は、月間利益の範囲内で返済できる金額におさえることが鉄則です。「借りられる金額」と「返せる金額」は別物です。金融機関は年収や事業規模から融資上限を提示しますが、それが必ずしも安全な借入額とは限りません。
以下のポイントをおさえることで、返済可能額を見極められます。
- 年間収入のうち返済に充てられる割合(返済負担率)を算出する(一般的には年収の25~35%)
- 既存のローン返済や生活費などほかの支出を差し引き、じっさいに返済に回せる金額を正確に把握する
- キャッシュフローや収支予測をもとに返済計画を立て、返済開始から完済までのシミュレーションをおこなう
- 借入期間や金利の変動も考慮し、将来的に支払いが困難にならないようリスク管理をする
- 金融機関が定める審査金利を使った返済可能額のシミュレーションを参考にする
収入・支出の実態把握と、将来的な返済負担の見通しを詳細におこなうことで、無理のない返済可能額を見極められます。売上が不安定な個人事業主こそ、保守的な計算で余裕をもった借入額を設定しましょう。
複数同時申込みのリスク|信用情報への影響を理解する
短期間に複数の融資申込みをすると、信用情報に傷がつき審査で不利になります。「審査に落ちたらすぐ別の金融機関に」と考えがちですが、逆効果です。融資申込みの記録は信用情報機関に6か月間残り、複数申込みは「返済能力に問題がある」と判断されます。
| 行動 | 信用情報への記録 | 審査への影響 |
| 1社に申込み | 申込み記録(6か月) | 影響なし |
|---|---|---|
| 1か月に3社以上申込み | 複数申込み記録 | 大幅マイナス |
| 審査落ち後すぐ再申込み | 短期間複数記録 | 審査通過困難 |
融資の申込みは1社に絞り、万が一落ちた場合は3か月以上空けてから次を検討しましょう。
高金利ローンの落とし穴|年利20%弱の融資を避けるべき理由
年利20%を超えるローンは返済負担が大きく、事業継続を脅かす危険性があります。「審査が甘い」とうたうビジネスローンのなかには、年利15〜20%弱の高金利商品が存在するのも事実です。一見便利ですが、返済総額は借入額の1.5〜2倍に膨らみます。
【金利による返済総額の違い(100万円を3年返済)】
- 年利3%:約105万円(利息5万円)
- 年利10%:約116万円(利息16万円)
- 年利20%:約133万円(利息33万円)
年利10%以上のローンは緊急時の短期利用に限定し、できるだけ早期返済を目指すのがおすすめです。銀行融資や公的制度融資(年利1〜4%)を第一選択肢としましょう。
資金使途違反は厳禁|融資金の私的流用がもたらす結果
融資金を申告した目的以外に使うと、契約違反で一括返済を求められる可能性があります。融資申請時に、「設備投資」や「運転資金」など資金使途を明記します。以下のように、使途を守らないことは重大な契約違反です。
| 資金使途の分類 | 申請した資金使途 | 違反となる具体的な流用例 |
| 設備資金 | 新規機械の購入 | ・運転資金(仕入れ代、人件費など)に充当した ・見積もり額より安く済んだ差額を事業と関係ない社長の私的支出に使った ・別の事業所や子会社の設備を購入した |
|---|---|---|
| 運転資金 | 商品の仕入れ代金 | ・既存の借入金(他社ローンなど)の返済に充てた(※借り換え融資を除く) ・社長(役員)個人の生活費や、個人的な借金返済に充てた |
また、「融資が実行される前に設備代金を支払った」「融資金をそのまま使途不明金として口座に残している」といったケースも違反の対象になります。資金使途違反が発覚した場合、次のような事業継続に関わる重大なリスクを負う可能性があります。
- 融資金の全額一括返済要求
- 今後の融資取引停止・不可能化
- 法的措置・詐欺罪の適用
- 経営悪化・倒産
融資金は事業用口座で管理し、申請通りの用途で使用することがリスク回避のポイントです。領収書や請求書は必ず保管し、使途を証明できる体制を整えましょう。
返済計画の甘さが招く悪循環|事業悪化のシグナルとは
楽観的すぎる返済計画は資金繰り悪化を招き、事業全体を危機に陥れかねません。「売上が伸びれば返せる」という希望的観測だけで借りると、予想外の事態で返済が滞るリスクが高まります。
資金繰りが悪化し、返済が困難になりつつあるシグナルとしては、次のようなものが挙げられます。
| シグナル | 内容 |
| 自転車操業になっている | 既存の借金の返済(とくに利息分)のために、別のところから新規の借入れやキャッシングを繰り返している。 |
|---|---|
| 多重債務・借入先の増加 | 銀行や信用金庫だけでなく、消費者金融、カードローン、リボ払いなど、借入先が複数(3社以上など)に増えている。 |
| 運転資金の不足 | 本業の売上から得られる現金(キャッシュフロー)が、毎月の固定費や借入れの元金返済額を下回っている。 |
| 預金残高の急激な減少 | 月商に対して手元の現預金が極端に少なくなり、毎月の支払いに追われている状態(例:現預金が月商の1か月分未満)。 |
| 支払遅延・支払い条件の変更 | 取引先への支払い、税金や公共料金、クレジットカードの引き落としが間に合わず、滞納が発生しはじめている。 |
上記のような状況が見られたら、すぐに金融機関に相談して返済計画の見直しを依頼しましょう。早めの対応が傷を浅くします。個人事業主こそ、最悪のシナリオを想定した保守的な返済計画を立てるべきです。
個人事業主は融資以外の資金調達も|補助金・出資・借入れの活用術
個人事業主の資金調達は、銀行融資やビジネスローンだけではありません。返済不要の補助金・助成金、支援者を巻き込むクラウドファンディング、信頼関係を活かした親族からの借入れなど、状況に応じた選択肢があります。
ここでは、融資以外の資金調達方法と活用術を解説します。最適な手段を見つけるヒントにしてみてください。
補助金・助成金を賢く活用する|返済不要の資金調達
補助金・助成金は返済不要で、個人事業主でも申請できる負担の少ない資金調達方法です。国や自治体が提供する制度を活用すれば、事業拡大や設備投資の資金を返済なしで得られます。ただし申請期間や用途が限定されるため、情報収集が重要です。
個人事業主でも利用しやすい補助金・助成金には、次のようなものがあります。
| 補助金・助成金名 | 概要・目的 | 補助額(上限) | 主な対象者・用途 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓・ECサイト構築・広告宣伝など、小規模事業者の経営基盤強化を支援 | 50万〜250万円 | 商工会・商工会議所に登録している個人事業主、小売・サービス業など |
|---|---|---|---|
| IT導入補助金 | 業務効率化やオンライン対応を目的にITツールを導入する費用を補助 | 最大450万円 | 会計・受発注・EC・予約管理などのIT化を進めたい事業主 |
| 省力化投資補助金 | 労働力不足や人件費高騰に対して自動化・省力化機器導入を支援 | 最大1億円 | サービス業・飲食・製造などで人手不足に悩む個人事業主 |
| 起業支援金(創業助成金) | 新規開業初期における設備投資・広告費・人件費などを補助 | 最大200万円 | 創業1〜2年以内の個人事業主・フリーランス |
| 業務改善助成金 | 賃上げを実施した中小企業・個人事業主の設備投資や環境改善費用を支援 | 最大600万円 | 従業員を雇う個人事業主で、生産性向上のための取組をおこなう場合 |
経済産業省や厚生労働省を中心に継続実施されており、オンライン申請(GビズID必須)に対応しています。公募期間を逃さないよう、中小企業庁や地域の商工会議所のウェブサイトを定期的にチェックしましょう。
クラウドファンディング|資金とファンを獲得する方法
クラウドファンディングは資金調達だけでなく、顧客獲得とテストマーケティングも同時に実現できます。新商品開発や新サービス立ち上げ時に、事前に支援者を募る方法です。融資と違い返済義務はありませんが、プロジェクトの魅力を伝える企画力が必要です。
クラウドファンディングの種類と特徴を、表にまとめました。
| クラウドファンディングの種類 | 資金の性質 | 主な特徴 | 向いているケース・事業主 |
| 購入型(リターン型) | 返済不要 | 支援者にリターン(製品・サービス・体験など)を提供し対価として資金を得る。 | ・新製品・新サービスの試作 ・デザイン制作 ・地域プロジェクト など |
|---|---|---|---|
| 寄付型 | 返済不要 | 社会貢献・地域活性化・災害支援などを目的に寄付を募る。収益目的ではなく支援重視。 | ・NPO的活動 ・地域文化プロジェクト ・社会貢献型ビジネス |
| 投資型(ファンド型) | 配当あり(出資) | 支援者が出資者として事業に投資し、収益に応じた分配を受ける。 | 飲食・宿泊・地域開発など長期収益型ビジネス |
| 融資型(貸付型) | 返済必要 | 投資家から資金を借入れ、利息をつけて返済する形式。銀行融資の代替手段。 | ・実績のある個人事業主 ・成長フェーズの店舗運営者 |
| 株式型 | 出資・譲渡型 | 出資者が株式(持分)を取得。非上場企業でも資金調達可能。 | ・法人成りを視野に入れた個人事業主 ・スタートアップ準備中の事業 |
近年、購入型と融資型の利用がとくに増加しており、個人事業主やフリーランスがWeb上で支援者を集める手段として広く定着しています。
CAMPFIRE、Makuake、READYFORなどの国内主要プラットフォームは、初期費用が低く審査も比較的通りやすいため、事業の認知拡大とPRを兼ねて活用するケースも多く見られます。
親族・知人からの借入れ|トラブルを防ぎつつ資金調達
親族・知人からの借入れは柔軟な条件ですが、必ず契約書を作成してトラブルを防ぎましょう。信頼関係のある相手から借りる方法は、審査不要で緊急時に有効です。しかし口約束だけでは、返済時期や金額で認識のズレが生じ、人間関係が壊れるリスクがあります。
親族借入れで守るべきルールには、次のようなものがあります。
- 金額・返済期限・利息・返済方法を明記した「金銭消費貸借契約書」を作成する
- 事業収入の見込みを踏まえた現実的な返済スケジュールを立てる
- 利息条件を法人・個人間取引の相場(年1〜3%など)を目安に設定する
- 振込明細や通帳コピーなどで返済実績を定期的に記録し、透明性を確保する
- 「運転資金」「設備投資」など具体的な目的を示す
たとえ家族でも、ビジネスとして書面で契約することが信頼関係を守る方法です。必要に応じて、公証役場で契約書を認証してもらうとより確実です。
よくある質問|個人事業主の資金調達Q&A
個人事業主が資金調達を検討する際、多くの方が同じような疑問や不安を抱えています。「自分の状況でも融資は受けられるのか」「審査に通るための条件は何か」など、じっさいに申請前に知っておきたいポイントをQ&A形式で解説します。
銀行融資やビジネスローンを検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
開業1年目でも融資は受けられる?
開業1年目でも、準備しだいで融資を受けられる可能性は十分にあります。銀行融資は通常2〜3期の確定申告書を求めますが、開業直後は実績がありません。しかし、日本政策金融公庫の新創業融資制度など、創業間もない個人事業主を対象とした制度が存在します。
以下のポイントをおさえることで、開業1年目でも融資が受けやすくなります。
- 自己資金を2割以上用意する
- 事業計画書を具体的に作成する
- 開業理由と強みを説明できるようにする
- 納税・クレジット履歴を整えておく
- 創業支援機関・商工会議所のサポートを活用する
ビジネスローンも開業直後から利用可能ですが、金利が高いため短期利用に限定すべきです。まずは、日本政策金融公庫などの公的融資制度を優先的に検討しましょう。
赤字決算だと銀行融資は絶対に通らない?
赤字でも、理由しだいで融資を受けられるケースがあります。絶対に通らないわけではありません。黒字決算のほうが審査で有利ですが、赤字の理由が「一時的な設備投資」や「新規事業への先行投資」であれば、金融機関も理解を示す可能性があります。
赤字経営の個人事業主でも、次のような条件を満たすことが重要です。
- 明確で現実的な事業計画書で、将来的に黒字化できる見込みを説明できる
- 返済に充てられる財源を明確に伝え、返済能力のアピールを強化する
- 過去の納税状況や信用情報を良好に保つ
- 物件や預貯金などの担保や、親族や第三者に保証人を依頼する
- 金融機関との信頼関係と連携を強化する
重要なのは赤字の理由を明確に説明し、今後の収益改善計画を示すことです。また信用保証協会付き融資なら、銀行単独より通りやすい傾向があります。
個人事業主こそ戦略的な資金調達で事業を安定させよう
個人事業主の資金調達は、銀行融資・ビジネスローン・公的制度など選択肢が豊富です。審査を通過するには、確定申告書の準備や事業計画の明確化、適切な融資先選びが重要です。入金遅れや設備投資で資金繰りに悩んでいる方も、正しい手順を踏めば融資を受けられる可能性は十分あります。
融資は単なる借金ではなく、事業を次のステージへ進めるための戦略的投資です。まずは自分の状況を整理し、本記事で解説した方法を参考に一歩を踏み出してみてください。
ドリームゲートでは、認定アドバイザーが無料でオンライン相談に応じています。あなたに最適な資金調達方法を一緒に見つけましょう。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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