パワハラ対策は、より良いチームづくりと生産性向上につながる「チャンス」

この記事は専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

心理学をベースにハラスメント対策のコンサルティングを行い、企業や官公庁、学校からの相談に応じてカウンセリングや研修で、被害者のメンタルヘルス不調の対応、行為者の改善プログラム実施、組織のハラスメント防止対策に取り組んできた宮本剛志さん。2025年9月に出版した『なぜパワハラは起こるのか:職場のパワハラをなくすための方法』(ぱる出版刊)で、パワハラの起きるメカニズムやその対策を解説しています。その内容を掘り下げ、本書をどのように役立ててもらいたいかをドリームゲートの宮本剛志アドバイザーに伺いました。

職場のパワハラの具体的なケース&実践しやすい対策法を多数紹介

―宮本さんはこれまでも多くの「ハラスメント本」を執筆・出版されてきましたね。

2019年に初めて上梓した『怒る上司のトリセツ』は、パワハラやそれに近い環境でメンタル的に疲れてしまっている被害者に向けたアドバイスでした。2冊目の『「ハラスメント」の解剖図鑑』は、パワハラ、マタハラ、セクハラ、モラハラなど、職場で起きやすいハラスメントを48種に分類して、何がハラスメントにあたるのかを解説。管理職や経営者に役立ててもらいました。

―それらと比べ、本書はどのような位置づけですか?

今回の『なぜパワハラは起こるのか:職場のパワハラをなくすための方法』では、加害者・被害者・第三者・組織など、多様な視点から、パワハラの発生要因とその対策を伝えています。具体的なケースや実践しやすいテクニックを多数紹介し、自身がやってしまいやすいパワハラ診断なども掲載して、役立ててもらえるのが特徴。実際、読者からは「こうすればよかったんだという視点を得られた」といった声があり、ハラスメント研修の副教材に採用されたりもしています。

―では、その内容を掘り下げさせてください。まず、宮本さんはパワハラをどう定義されていますか?

法的なパワハラの定義は「優越的な関係」「業務の適正範囲の逸脱」「就業環境の悪化」の3点ですが、より分かりやすく「パワーのある関係か」「権限の範囲を超えていないか」「繰り返されていないか」という3つの視点で判断することを提案しています。この3つが当てはまると、法的にもほぼパワハラといえます。

法的なことはもちろん大切ですが、現場では「例外」が多いのが実情です。

特に大企業では、弁護士や社労士から多くの例外ケースを教わることで、かえって「うちの場合はどれに当たるのか」と混乱してしまうことが少なくありません。結果として、「結局どうすればいいのか」と相談に来られるケースが多いのです。

一方で、中小企業やスタートアップ企業からは、「コストを抑えながら、現実的な対策を知りたい」という声をよくいただきます。

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パワハラの発生要因は、職場文化という環境面とさまざまな心理の複合体

―そもそも、パワハラはなぜ起きるのでしょうか?

一部の乱暴な人とか、叱られやすい人といった「個人の問題」ではなく、そうした人や状況を生み出し、許すような職場の「文化」に根本的な原因があるといえます。そこを見直していかないと、同じようなことがまた起きてしまうでしょう。加害者自身も、それまで許容されてきた環境に疑問を感じていないケースが多いものなのです。

発生の心理的要因としては、劣等感、過剰な自尊心、焦り、プライドなどがあり、自己の立場を守ろうとする防衛心理が攻撃性につながることもあります。また、「怒り」の感情というのは、部下が期待どおりに動いてくれないなど、自身の欲求や価値観が裏切られたと感じる時に発生するもの。「カッとなる」強い感情だけでなく、「モヤモヤ」とした気分の持続が、無視やネチネチとした嫌がらせといった陰湿なパワハラにつながることもあります。

―「職場」でパワハラが起きやすいのは、なぜでしょうか?

実は「パワハラ」は和製英語で、日本特有の概念です。海外では職場に限らず、家庭や学校などでも暴言などにつながる、より広い概念の「モラルハラスメント」として扱われます。
そして、組織内では「評価・権力・責任」という力学が働き、管理職や専門家、経験豊富なベテランという少数派で特権的な立場が、無自覚なうちにパワハラを誘発する土壌となり得ます。特に、相談窓口が未整備な中小企業やスタートアップでは、問題が潜在化・深刻化しやすいので注意が必要です。

―中小企業やスタートアップからの相談に何か特徴はありますか?

大手ではパワハラが意識されてきているので、最近はむしろ上司が部下を叱れない、指導できないとか、部下の態度にパワハラ的なものがあるような相談が増えています。その点、中小ではまだまだ怒鳴り声など、典型的な内容の相談が多いですね。また、中小でも経営者はパワハラを意識していますが、製造業やIT系、建築系などであるのは、ベテラン社員の部下に対するふるまい方です。

スタートアップでは、組織の成長過程で創業メンバーの強引さや一貫性のなさなどに不安が感じられるケースなどがあります。後から加わった人事担当者などが相談してきたりします。

パワハラ予防の秘訣は、多様な価値観の認め合いと自己理解

―そうした相談に対してアドバイスする、共通した内容などはありますか?

今は会社の大小にかかわらず、全ての法人に「措置義務」が課されており、パワハラの相談窓口を設置するなど、対策を講じる必要があります。それを理由にして、経営陣に対策の必要性を訴えるのはよいですね。また、ハラスメント対策をすると、チーム作りや生産性向上につながることが厚生労働省の調査など、さまざまな調査から分かってきています。その意味でも、良い会社にしていくためにといって、研修などを行うとよいでしょう。こうした対策を行っていると、人材採用においても人を集めやすく、離職を防ぎやすい職場にできる。そうした文脈だと経営者にも聞いてもらいやすいです。

―根本的に職場の文化を変えられる、よい方法はありますか?

従来の研修だけでは、パワハラに至る「前段階」のコミュニケーションの問題を解決できません。重要なのは、多様な価値観を認め合うこと、そして自己理解を深めることです。社長から新入社員まで、なるべく多くを集め、事例検討を通じて認識の違いを共有するのは一つの方法です。微妙な状況を例に取り、これはパワハラかどうかをディスカッションしてもらうと、人によって見え方や考え方が異なるのが分かるもの。そうして価値観や認識の違いを理解するのは効果的です。

心理的に重要なのが自己理解で、自らがどのようなパワハラを起こしやすいタイプかを知ることが、予防の第一歩となります。本書にはその簡易な診断も掲載しているので、役立ててほしいですね。

―最後に、この記事をご覧のDREAM GATE会員にメッセージをお願いします。

パワハラ対策は、より良いチームづくりと生産性向上につながる「チャンス」であり、本書はそのための具体的な実践方法を提供する一冊となっています。特に、中小企業やスタートアップでは経済的余裕も少なく、研修やコンサルティングを依頼して対策に取り組むのは難しいでしょう。そんなとき、本書をぜひ読んでいただき、自社の状況を理解して、紹介している具体的な対策を実践していってもらいたいです。

本の詳細はこちら:

なぜパワハラは起こるのか:職場のパワハラをなくすための方法

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

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