その時、偉人たちはどう動いたのか? 本田技研工業創業者 本田宗一郎 1

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

エピソード1「製造業転換」
「飛躍するためには基礎からやり直すしかない」 (33歳:独立11年目)

 本田技術研究所を設立する10年ほど前のこと。繁盛していた修理工場を閉鎖し、新たに会社(東海精機重工業株式会社)を設立。ピストンリング製造に乗り 出すものの、その製造に苦闘し“絶体絶命のピンチ”に陥った時のエピソード。

  宗一郎は16歳で自動車修理工場の「アート商会」に見習い奉公に入る。修理工として活躍し、22歳で主人から郷里に近い浜松に「アート商会浜松支店」の形 でのれん分けしてもらう。繁盛させていたが、従業員が独立して競合となるのが嫌だったことと、修理業の限界(いくら技術が優れていても、東京や外国からは 誰も頼みにこない)を感じて製造業への業態転換を決意。宗一郎は元来モノづくりの職人であり、そそっかしいほどの行動力の持ち主であった。
  すぐつくれて売れるものと思って設備や50人の工員を投入したものの、うまくできない。貯金は底をつき、妻の所持品を質入れしながら、毎日、夜中まで鋳物 の研究に取り組む。「一生のうちでもっとも精魂を尽くし、夜を日に継いで苦吟し続けた」(宗一郎)が、さっぱり進展しなかった。絶体絶命のピンチに陥る。

「自分には鋳物の基礎知識が欠けているためだと気がついた。そこでさっそく浜松高工(現・静岡大学工学部)の教授を訪ねて、つくったピストンリングを分析 してもらうと『シリコンが足りない』と言われた。私は『そんなものがないといけないんですか』といった調子。全くの基礎的な知識さえなく始めるという無茶 なことがわかってあきれ返るよりほかにない。飛躍するためには基礎からやり直すしかないと、さっそく聴講生にしてもらった。大勢の工員を抱えながらもつく るものがないという状態に辛苦し、9カ月後にようやく物になるピストンリングの製作に成功した」

  しかし、量産して商品化するまで、なお血みどろの苦闘が続く。トヨタに販売しようと3万本ほどつくり、そこから50本選んで納品検査をしたら3本しか合格 しなかった。2年がかりでようやくトヨタに納品できるように。この時の苦闘が、製造業者としての宗一郎の土台をつくったのである。

私 たちならこうする!

(株)ネクシィーズ代表取締役社長 近藤太香巳氏

最近、情報が多すぎてかえって動けなくなっている人が多いですよね。本田さんは、このエピソードのようにまず動くからこそ、切羽詰っていいアイデアが出る のだろうと思います。自分を常にそういう状況に追い込んでいった人なのでしょう。
それから、修理工場からメーカーへの業態転換とありますが、新たにやり始めたことは従来の延長上のことですよね。それが大事であって、いきなりの異分野で は成功させるのは困難でしょう。本業をまず成功させ、その先を常に開拓し続けるという感覚が大切なのではと思います。

シナジーマーケティング(株)代表取締役社長 谷井等氏

僕ならば、自分が勉強するよりも、その分野に精通している人を引っ張ってくるか、技術を持っている企業と提携するでしょう。というのは、今は時代が変化す るスピードが非常に速いからです。技術は日に日に革新されていますし、毎日のように新しいサービスが登場しています。すべて0から自力で立ち上げていては とても追いつきません。

際コーポレーション株式会社 代表取締役 中島 武氏

本田さんは、発想やアイデアが先行して、それでもう商品ができるような気になってしまうタイプなんでしょう。商品はできるんだけど、なんだか荒っぽい (笑)。
ただし、キチッとしたものづくりができないと、結局、商品は売れないんです。僕もそうですが、トレンドがわかって、感覚で当たる商品をつくることはでき る。それで実際に売り始めるとよく売れるんです。キッチリしたものでなくても、最初はブームで売れていくから。でも、売れてからクレームが返ってくる。 「試してみたけど全然よくなかった」と。それでかえって危機になってしまうんです。
でも、アイデア先行で「これをつくりたい」という思いがあったから、ホンダはここまでの会社になったわけでね。本田さんが最初から基本をキッチリ積み上げ 積み上げする人だったら、こうまでなっていなかったかもしれません。ただ、最近はホンダもトヨタと同じような車をつくり出している。もっとやんちゃな「ら しい」車があってもいいかなと思います。
餃子屋で成功すると、次は高級中華料理店を出したいと思い始めるんです。自分にもできると自惚れて。でも、やっぱりDNAがないと、成金っぽい店になって 「趣味悪い」といわれてしまう。そこは自戒しています。

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