採血いらずの脂質測定器を世界で初めて開発!
国民の健康増進に貢献する“北大発”ベンチャー

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 東 雄介 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

「いつでもどこでも」できる血液検査!
「食後高脂血症」の診断・予防に役立てる

事業や製品・サービスの紹介

photo1.jpgメディカルフォトニクス株式会社は、採血することなく血中の脂質を測る小型機器を開発、製造している。その手法は、近赤外光を腕などに照射し、体内を透過した光を分析するというものだ。

この計測器がターゲットにしているのは、「食後高脂血症」だ。食後に血液中の中性脂肪が上昇する症状で、放置すると動脈硬化や心筋梗塞になるリスクが高まるとされる。しかし食後の一時的な症状であるため、食事を制限した上で行う通常の血液検査では見逃されやすい。これまで精密な診断には6〜8時間内に10回もの採血をする必要があり、人体への負担も大きくなるといわれていた。

同社が開発した計測器であれば、肌の上に機器を装着するだけで、脂質の検査ができる。採血不要で痛みもないため、医療機関にかからずとも、患者自身の手で1日に何度でも測定できることから、「食後高脂血症」の予防や再発防止に役立つと期待されている。測定したデータはパソコンやスマホなどに転送されるため、管理も簡単に行える。

現在同社は、医療やヘルスケア関連の研究機関向けのレンタル、販売をスタートしている。今後はさらに小型化・低価格化を進め、一般および病院など医療機関向けた提供を目指す。

血液検査をヘルスケア領域にも拡大!
小型化・軽量化のニーズにも応えていく

対象市場と優位性

現在のところ、非侵襲(注射針などで人体を傷つけないこと)で脂質をモニタリングできる計測器は、同社の製品のみである。

従来、血液検査は、法規制や高い費用などが障壁となる「閉ざされた世界」だった。だが、採血をなくすことで、それが「開かれた世界」に。栄養指導や健康管理、スポーツなどヘルスケアの領域にも簡易な血液検査が活用されると期待されている。

また、医療用途においても、がんに次いで日本人の死因第2位である心筋梗塞の早期発見・予防に寄与できるとあって、普及後のインパクトは大きい。国民の健康増進や医療費削減に貢献することになれば、600億円以上の市場が開拓できると同社は見積もっている。

注目すべきは、同社の製品を装着することで血液の連続モニターが可能になる点だ。脂質は体調を反映し、変動が激しい。内臓の調子や直前の食事の内容にも大きく左右される。こうしたデータを経時的に採取することで、異常値の見落としがなくなり、食後高脂血症以外の、さまざまな病気の早期発見にもつながるという。

現在のメインユーザーである研究者からも「経時的な変化を追いたい」という声が多く寄せられている。そのためには、24時間の装着にもストレスがないレベルでの小型化が課題。これまでも2億円近くの資金調達を行ってきたが、さらに投資家へのアプローチを進め、小型化の早期実現を急ぐ方針だ。

デバイス開発会社などへのライセンス供与で
市場開拓に弾みをつける

事業にかける思い

photo3.jpg同社の飯永一也代表は、診断薬メーカーなど、医療分野に長く携わっていた人物。業務を通じて血液を目にすることが多かった。「脂質を多く含んだ血液は、見てわかるほどはっきり濁っている。これを機械で測定できないはずがないと考えていました」。そんなある日、北海道大学の清水孝一教授が研究していた、光を用いた整体の診断技術に着目した。

「その技術を使えば、注射針を使わず、どこでも簡単に血液検査ができるかもしれない。このアイデアを自分の手で、世に出したいと思ったのです」と飯永氏。

35歳にして東京農工大学大学院に入学し、MOT(技術経営=Management of Technology)を取得。同大学院修了後は北海道大学大学院の研究員として、清水教授との共同開発にあたった。北海道大学発ベンチャーとして同社を創業したのは、2015年のことである。

現在のところ、研究者用の“非医療機器”という扱いであり、法律上、効能についてのプロモーションができない。今後さらに機器の精度を高めながら、医療機器としての承認を受けることを目指している。

「将来的には、脂質計測のアルゴリズムをクラウド化し、デバイス開発企業やアプリ開発企業へのライセンス供与というかたちで展開していきたいと考えています」

メディカルフォトニクス株式会社
代表者:飯永 一也 氏 設立:2015年2月
URL:https://med-photo.co.jp/ スタッフ数:10名
事業内容:
非侵襲脂質計測器の開発
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
ベンチャーキャピタルのANRIや科学技術振興機構(JST)などから約2億円
ILS2018 大手企業との商談数:
12社

当記事の内容は 2019/2/4時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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