東京オリンピックがどこにいてもVRで
疑似体験できる――そんな世界を目指す!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 髙橋光二  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

VRコンテンツの制作・配信を支援する
プラットフォーム「PANOPLAZA」を提供

展開している事業の内容・特徴

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“実写系バーチャルリアリティ(VR)”に関わるウェブサービスの提供および、受託によるシステム開発やコンテンツ制作を手がけている、カディンチェ株式会社。VRコンテンツは、CGによる人工的なものと、カメラで撮影しての実写映像を用いるものに大別されるが、同社は後者を専門的に手がける研究開発型のベンチャーだ。

“実写系VR”には、PC上で360度の動画をマウスクリック一つで好きな角度から見られるようにしたものや、ヘッドマウントディスプレイを装着して映された場所が疑似体験できるようにしたものがある。同社は自社ウェブサービスとして、VRコンテンツ制作・配信からアプリケーション開発まで行えるプラットフォーム「PANOPLAZA」を提供している。

「PANOPLAZA」には、個人が作成した360度動画を「Youtube」的に投稿・共有できる「PANOPLAZA MOVIE」や、店内を「ストリートビュー」のように進み、売り場にポップアップされる商品説明が読め、さらにネットショップに飛ばすこともできる「PANOPLAZA TOUR」、音楽やスポーツなどのイベントを360度視聴可能なライブストリーミングで楽しめる「PANOPLAZA LIVE」などをラインナップ。

「今、VRを手がけるベンチャーがどんどん増えていますが、当社のように独自のプラットフォームまで構築しているところはほかにないと思います」と代表取締役の青木崇行氏は胸を張る。

また同社では、これらの機能を自社のサービスとして運用したい企業などにカスタマイズ、OEM提供している。受託開発・制作においては、例えばゼネコン向けに、遠隔地にいながら実際に操縦している感覚で、重機を動かすことができる臨場型映像システムを開発。原発の廃炉作業や火山の噴火現場の復旧など、人が危険で近づけない現場でも重機操縦に不可欠の視野を確保して作業が可能となった。

そのほか、高級外車のバーチャル試乗システムや、スカイツリーの展望回廊の窓の清掃を疑似体験できるコンテンツ、NHKのドキュメンタリー番組で放映された360度映像など、マーケティングやエンターテインメント、業務用ツールほかさまざまな用途において数々の実績がある。

元・ソニーの画像処理研究開発者コンビが
「やりたいことをやろう!」と創業

ビジネスアイディア発想のきっかけ

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同社は、2008年8月、青木氏と専務取締役の内田和隆氏によって創業された。両名は、ソニーでテレビの高画質化アルゴリズムなど画像処理の研究開発に携わっていた仲。青木氏は同社を退職したのち、大学院の博士課程に入学して、やりたかったことを研究する生活を送っていた。内田氏は、研究所の閉鎖とともに事業部への異動を命じられたことを機に退職を決意。そこで両名は、お互いに得意な“画像処理×ウェブ”技術を活用し、自分たちがやりたいビジネスを手がけようとカディンチェを設立したのだ。

手がける分野としては、内田氏が大学院生時代に自立走行ロボットの“目”を研究していたことから、360度映像をテーマとすることに決定。

「とはいえ、経営の自由度を優先し、誰からも出資を受けずスタートしたため、資金不足で……。創業当初はウェブサイトの受託開発など何でもやりました。その後、徐々に片手間的に自社サービスをつくり始め、2011年に最初の『PANOPLAZA TOUR』をリリースしました」と青木氏は振り返る。流れが大きく変わったのは、2015年にVRの波が来たこと。

「360度映像は、まさにVRとマッチする分野でしたので、この波に乗ってみようと。また、我々の出自は研究開発であって、面白いコンテンツを企画するといったことではありません。そこで、エンターテインメントなどのB to C領域よりも、技術で勝負するB to B領域に力を入れることにしたのです」

同社の強みは、360度映像専用のカメラを用いた撮影から、映像の合成・編集、配信(公開・販売)、配信先の視聴機器の設定までワンストップで対応できること。顧客のシステム環境を見て、大画像を送る時にどこがボトルネックとなるかといったことがわかるので、「ここを手直しすればよい」といったアドバイスが重宝されているという。「どこから声がかかっても、あらゆるニーズに対応できる自信があります」と青木氏は強調する。

サッカー選手22名が3Dとなって、目の前で
ゲームが繰り広げられる大迫力が味わえる!

将来の展望

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新しい技術であるVRには、誰も手がけていない“空白地帯”の技術領域がまだまだあるという。「必ずしもGoogleやソニーなどの大手に対抗しなくても、切り拓いていける最先端領域があります。そこを我々がモノにして社会還元し、得た収益を次の研究開発に投じるというサイクルを回していきたいと考えています」と青木氏は言う。

そんな青木氏らが、一つのターゲットとしている世界観がある。「『2020年の東京オリンピックは、まさかテレビで見ないですよね?』と言える世界をつくりたいと思っています(笑)」

日本では、1960年にカラーテレビの放送が開始されたものの、非常に高価であったため1964年の東京オリンピックを多くの家庭は白黒テレビで見た。今日では、4Kが登場するなど進化を遂げているが、“テレビはテレビ”だ。そうではなく、3D映像で360度の空間を疑似体験できるVRでオリンピックを楽しむことができれば、その感動はテレビ視聴を圧倒するものとなるだろう。

「視聴者はどこにいても、インターネット端末があれば自由自在にスタジアムを俯瞰するように競技を見たり、気になる選手をつまんでポップアップされる情報を調べてみたり、サッカーの22名の選手全員が3D映像となって、まさに目の前でゲームが行われているような疑似体験ができるようになったり。いろいろな楽しみ方が考えられます。そんな未体験の世界を、我々の手でつくり出したいと思っています」

また例えば、監視カメラが360度映像に置き換われば、死角がなくなり、犯罪抑止効果が劇的に高まるだろう。

「人が近づけない災害現場に入って救助や復旧を行うロボットに360度カメラを取り付けることで、より的確な作業が可能となるはず。当社の技術が社会の役に立つ分野は限りなく多い。VRにまつわるあらゆるニーズに、どんどん応えていきたいと思っています」

カディンチェ株式会社
代表者:青木 崇行 氏 設立:2008年8月
URL:http://www.kadinche.com/ スタッフ数:10名
事業内容:
事業内容: VR関連技術の研究開発および製造・販売、ソフトウェア受託開発、ウェブサイト制作

当記事の内容は 2017/09/28 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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