通常の数学の学習方法に比べてその効果は7倍!?人工知能が学習状況を理解して進めてくれる教材「Qubena(キュビナ)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

現在、14の学習塾に導入。間違いから理解度を類推して個別に学習を進められる人工知能型教材
展開している事業の内容・特徴

20160331-1「教育七五三」という言葉がある。小学校で3割、中学校で5割、高校で7割の生徒が学習についていけずに脱落する割合を表したものだ。特に算数・数学は小学校から積み重ねて体系的に理解しなければならず、早い段階でわからなくなると、その後はずっと苦手のままとなってしまう。

しかし、現在の教育現場では一人ひとりの理解度に合わせて授業を進めるようにはなっておらず、例えば45分の授業時間のうち、実際に全員にとって有効なのは5分だけという説もある。一方、個別指導型の学習塾が人気だが、個別指導にあたる先生すべてが優秀とも限らない。

今回紹介するのは、上記の課題を解決した人工知能型の学習教材「Qubena(キュビナ)」。開発・運営するのは2012年12月に設立されたベンチャー、株式会社COMPASSだ。

「Qubena」は、初期段階につまずきやすい数学をタブレット端末で学習できるソフト。生徒の学習状況(解答や解答までのプロセス、間違った点、スピード、集中度など)を人工知能が把握し、個別に理解度を判断して授業を進めてくれる。わからない点をそのままにせず、理解できるまで次の段階に進めないため、生徒は自分のペースで学習を進められる。同社直営の学習塾での導入実験では、14週間かけて行う1学期の授業が2週間で終わり、受講者全員が学校平均点を上回ったという。実際に、学習効率が7倍にもなるという結果が得られているのだ。

同社は、もともと学習塾の運営からスタート。最初はプリントを使った授業を行っていたが、そこで蓄積したノウハウをもとに人工知能型教材の開発に至った。「Qubena」教材の単体販売はしておらず、学習塾への提供という、いわゆるB2Bのかたちをとっている。2016年3月時点で14の学習塾が導入済みだ。また、フランチャイズの募集も開始している。

B2C型のデジタル教材市場は、リクルートの「受験サプリ」やベネッセの「進学ゼミ+」など大手が次々と参入しているが、COMPASS代表の神野元基氏はあえてB2Bでの提供に絞っている。というのも、多くの学生にとって勉強は楽しいものではないため、学校や塾で先生に指導されながら慣習化しないと続かないし、そうしないと結果も出づらい。ゲーミフィケーションで自発的に学習を進められるアプリもあるが、それらは社会や理科など短期間で結果の出やすい暗記型教科のものだ。特に数学は時間をかけて体系的に理解していかないと身につかないため、継続的に勉強することが求められる。そのため「Qubena」は、先生という監督者がいて学習環境が整った場所で利用するということを基本としている。

また、日本の学生は1学年につき100万人ほどいるが、毎年卒業をしていく。しかし、先生は基本的にそのままだ。だからこそ、新しい学習方法を定着させていくには、教育の最前線にいる先生に使ってもらうのがベスト。これもB2Bで提供している大きな理由なのだという。

学生時代、世界最大のポーカー大会で19位に。シリコンバレーなどで4度起業後、5つ目の挑戦として教育ビジネスへ
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160331-2神野氏の経歴はとてもユニークだ。もともとは政治家を志していたそうだが、慶應義塾大学在籍中に世界最大のポーカー大会として知られるWorld Series Of Pokerに参加し19位となり、一躍注目を浴びた。それを足がかりとして2006年に、ポーカーイベント事業、オンラインポーカーサイトへのアフィリエイト事業などを行うベンチャー、株式会社PokerFaceの立ち上げに参画。2007年には、電子出版事業を行う株式会社Gold Source設立し、年間4億円の売り上げを達成した。また2009年には、著名人専門のオンライン電子出版社株式会社スタクロの設立に参画。さらに2010年には感情センシングサービスSmileBacks.incを設立している。そして、2012年に学習塾COMPASSを設立した。

神野氏になぜ教育ビジネスに参入したのか聞いたところ、ディープラーニングに衝撃を受けたことがきっかけだったという。2012年、Googleによって猫の画像認識で急激に注目され始めたディープラーニングと人工知能。神野氏はこれを産業革命以来の大変革だと感じた。そして、2045年に起こるといわれている「シンギュラリティ(技術的特異点)」を考えた時、子どもたちには知識一辺倒の教育ではなく、IT、デジタルデバイス、人工知能などを使いこなせる力を身につけさせたいという思いから、教育の変革に取り組み始めた。

そしてまず、東京・八王子に学習塾を開業した。学習塾をつくった理由は、ビジネスとして進める以上、成果、つまり成績向上という結果が出なければ、絵に描いた餅にすぎないということ。結果、神野氏の学習塾は地域ナンバーワンといいわれるまでに成長。そして、教育現場で活動を続けるなかで、一方通行型の集団指導型教育に限界を感じ、人工知能型教材「Qubena」の開発をスタートする。

主要5教科のなかで、英語、理科、社会は比較的短期間で成果があげられやすいが、数学で成果を出すのは時間がかかるため、あえてそこから取り組むことにしたという。国語を扱うことも検討したが、国語教材は知的財産の関係で障壁も多いということから数学から着手したそうだ。

そうしたプロセスを経て開発に取り組んだ「Qubena」は、現在、32時間で1学年分の数学を学習できるという、世界初の人工知能を用いたタブレット用教材となった。

10年ですべての分野をeラーニング化したい。さらに20年後までに学習データから子どもの未来予測もできるように
将来の展望

神野氏には、10年、20年、30年後というスパンでの計画があるという。

まずは10年後までにすべての学習分野のeラーニング化を実現したいという。学習が効率的に行えるようになれば、子供の教育はガラリと変わる。同社では「未来の君に会いに行く」という理念を掲げているが、芸術や体育、あるいは道徳など、自分の好きな分野をもっとたくさん効率的に学べるようになれば、子供はより数多くの選択肢、未来を選べるようになるだろう。

また、学習の効率化により、先生にかかる負担も劇的に下げられると考えている。その結果、例えば、いじめ問題などへの対応により多くの時間が使えるようになる。そうなれば、学校や教育現場はどんどんよい方向に様変わりしていくはずだ。

さらに20年後には、子供の学習データを人工知能で学習・分析することにより、子供の未来予測もできるようにしたいという。いずれ子供たちが社会に出る際、本当の意味で適材適所となるような仕組みをつくるという構想で、子供の頃から自分に合った仕事が明確にわかれば、進学や就職で迷い、不適合な選択をして辛い道を歩まなくても済むようになる。そんな仕組みづくりを目指している。

神野氏から30年後の展望についてのコメントを紹介して本稿を締めくくりたい。
「今でも、本当の夢は総理大臣になることです(笑)。といっても、私は政治一家の出身ではないので、まずはビジネスの世界で大成功しない限り、世の中を変える大政治家になるのは難しい。世の中を一番大きく変えられる可能性があるのは、やはり政治家でしょう。前NY市長のブルームバーグ氏は有名な起業家ですし、タリーズコーヒーを日本で成功させた松田公太氏も起業家から政治家となりました。橋本徹氏のように弁護士から政治家に転身したり、起業家から政治家に転身した例もたくさん出てきていますので、決して絵空事ではないと思います。30年後には世の中を変えられる力を持った政治家になって、より社会をよくする仕事に取り組みたいですね」

株式会社COMPASS
代表者:神野 元基氏 設立:2012年12月
URL:http://compass-e.com/ スタッフ数:13名
事業内容:
・人工知能型学習教材「Qubena(キュビナ)」の開発・運営。
・学習塾の運営。

当記事の内容は 2016/03/31 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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